定位置に逆戻り
2019年シーズン成績
レギュラーシーズン:58勝86敗(勝率.403)9位
2018年は11年ぶりのポストシーズン進出と結果を残したハン・ヨンドク監督のもと、ハンファは優勝争いができるチームに生まれ変わったかと思わせたが、それはただの幻想でしかなかったようである。目立った戦力の補強はなく、30代中盤以上のベテランが投打の主力の多くを占めるなど不安が多かった。開幕前には起用法に不満を持ちトレードを志願したベテラン外野手イ・ヨンギュに参加活動停止処分を科した騒動もあった(処分は9月に解除された)。
3月23日のレギュラーシーズン開幕戦の翌日、24日のトゥサン戦で新外国人選手チャド・ベルが好投し11-1でシーズン初勝利を記録した。だが3月28日のキア戦で25歳の主力内野手ハ・ジュソクが負傷し2019年シーズン中の復帰は難しいと診断され、大きな戦力ダウンとなった。それでも4月10日から13日まで4連敗が一度あったが、5月中旬までは勝率4割台後半で6位につけていた。だが先発投手陣が弱く、2ケタ以上の失点で大敗する試合が目立った。
5月16日まで3連勝しあと1勝で勝率5割となるところだったが、結局5割には届くことはなかった。5月後半になると6位は維持したが得点力不足で連勝できず、勝率は下がっていった。5月31日の時点で同率6位のハンファ、キア、サムソンと5位キウムのゲーム差は5.5まで広がり、レギュラーシーズン60試合を消化する前に上位と下位が明確に分かれてしまった。
6月半ばまでサムソンとの6位争いが続いたが、6月12日から19日までの7連敗で9位にまで後退してしまった。一時期持ち直したかに思えたが、6月27日から7月5日までまたもや7連敗で勝率は3割台となり、レギュラーシーズン後半はロッテとの最下位争いが続いた。期待した若手は高卒2年目の19歳チョン・ウヌォン以外は戦力にならず、先発として安定した成績を伸したチャド・ベルとサーポルド、2年目の外野手ホイングの3名の外国人選手と一部の選手を除き、投打ともに選手層の薄さが浮き彫りとなった。
そして7月14日からオールスター戦による1週間の中断期間を挟んで7月30日までシーズン最悪の8連敗と、さらなる奈落が待っていた。勝率は3割5分台まで落ち込み、勝率4割の8位以上すら遠く感じられた。中継ぎの強化のためソン・ウンボムをLGへトレードに出し、シン・ジョンナクを補強した。だが8月3日、首位SK相手に完封負けを喫しついにロッテに抜かれて最下位に転落し、2015年のプロ野球10球団制への拡大以降はチーム初となる悪夢が見え始めた。幸いにもロッテも上昇気流に乗れず、ハンファは8月18日には6月以来となる3連勝で9位に浮上した。
だが8月20日から27日までまた6連敗を喫して最下位に転落した。しかも8月27日のキウム戦は相手の4番打者パク・ピョンホに4本塁打を浴びる0-15の屈辱的な大敗だった。しかしロッテもハンファを突き放せず、8月30日には最下位を再び脱出できた。
9月になり、残り20試合を切るとハンファは調子を取り戻し、ロッテは連敗を続け差が開き、8位以上に接近し始めた。チャド・ベル、サーポルドの2人が好調で、19歳の高卒新人キム・イファンも先発で好投しチームに勢いを与え、LGから移籍してきたシン・ジョンナクも中継ぎで試合を作った。そして9月16日から26日まで、雨天中止2試合という幸運もあったがシーズン最多の6連勝で勝率を4割に戻し、8位サムソンまで1.5ゲーム差まで迫った。だが残り3試合は3連敗でシーズンを終了した。2019年は2年連続ポストシーズン進出どころか、ロッテと最下位争いを続け9位とこれまでの定位置に戻った印象を残した(9位はプロ野球が9球団制だった2013~2014年まで2年連続最下位だった時以来)。
【投手の成績】
防御率4.80(9位) 奪三振934(7位) 被本塁打120(2位) 与四球526(2位)
[主な先発投手]
サーポルド 31試合 12勝11敗 防御率3.51
チャド・ベル 29試合 11勝10敗 防御率3.50
チャン・ミンジェ 26試合 6勝8敗 防御率5.43
キム・ボムス 45試合 5勝9敗1セーブ1ホールド 防御率5.68
キム・イファン 11試合 4勝3敗 防御率4.26
先発投手のチーム防御率は4.87で10チーム中9位だった。規定投球回数(144回)に達したのは韓国1年目ながら10勝以上を記録したサーポルドとチャド・ベルの外国人選手2名だけだった。韓国人の最多勝は29歳の右腕チャン・ミンジェの6勝で、しかも6月以降は未勝利だった。10月に24歳となった左腕キム・ボムスは5月から7月にかけて先発を任されたが、8月以降はリリーフに回されるなど、シーズンを通してローテーションを守れる韓国人の先発投手が不在だったのが下位に低迷した要因の一つだった。悲惨な状態の中でも、8月後半から先発で起用された高卒新人キム・イファンが4勝と今後に期待を抱かせた。
[主なリリーフ投手]
チョン・ウラム 57試合 4勝3敗26セーブ 防御率1.54
アン・ヨンミョン 67試合 4勝7敗13ホールド 防御率3.92
パク・サンウォン 61試合 1勝4敗12ホールド 防御率3.97
イ・テヤン 55試合 1勝6敗10ホールド 防御率5.81
シン・ジョンナク 44試合 5勝1敗5ホールド 防御率5.84
イム・ジュンソプ 34試合 1勝3敗1ホールド 防御率4.20
リリーフのチーム防御率は4.71で10チーム中最下位だった。34歳のベテラン左腕チョン・ウラムが不動の抑えとして機能していたが、中継ぎ陣の質が2018年より大幅に劣化し、サーポルド、チャド・ベルの2名の優秀な外国人の先発投手の足を引っ張った。その中ではアン・ヨンミョン、パク・サンウォンの2名は比較的安定していた。先発も含め、本来なら働き盛りとなる25歳前後の投手が一軍の戦力としてあまり機能していないのが問題だった。
【野手の成績】
打率.256(8位) 本塁打88(8位) 得点607(8位) 盗塁105(5位) 失策106(3位)
捕手:チェ・ジェフン 135試合 打率.290 3本塁打 31打点 3盗塁
一塁:キム・テギュン 135試合 打率.290 6本塁打 62打点 3盗塁
二塁:チョン・ウヌォン 142試合 打率.262 8本塁打 57打点 14盗塁
三塁:ソン・グァンミン 122試合 打率.264 7本塁打 51打点 8盗塁
遊撃:オ・ソンジン 122試合 打率.224 3本塁打 36打点 7盗塁
左翼:チャン・ジンヒョク 113試合 打率.254 5本塁打 1打点 13盗塁
中堅:チョン・グヌ 88試合 打率.278 3本塁打 30打点 8盗塁
右翼:ホイング 124試合 打率.284 18本塁打 73打点 22盗塁
指名:イ・ソンヨル 129試合 打率.256 21本塁打 85打点 8盗塁
控え:チ・ソンジュン、ノ・シファン、キム・フェソン、キム・ミンハ、チェ・ジンヘンなど
投手陣と同じく選手層が薄い野手陣も厳しい状況だった。35歳のベテランの左打者イ・ソンヨルが健在で打線の軸となるなど、あまり若さを感じさせなかった。また韓国2年目の外国人選手ホイングも2018年より打撃成績は低下したが、攻守ともに欠かせない存在だった。かつての4番打者キム・テギュン(元千葉ロッテ)も37歳となり長打が減った。25歳のハ・ジュソクが開幕早々に離脱し復帰できなかった影響は少なくなかったが、代役はこれまで控えに甘んじていた同じ左打者で30歳のオ・ソンジンが務めた。
ベテランが目立つ中でも高卒2年目で19歳のチョン・ウヌォンがチーム最多の142試合に出場、37歳のベテラン内野手チョン・グヌを外野に追いやり、守備力も高くチームの数少ない希望となった。後輩のノ・シファンや一軍に定着できていない20代前半の若手選手の奮起を期待したい。
【オフシーズンの動向】
9位という結果を受け、2019年オフシーズンは補強に乗り出した。余剰戦力を対象とした2次ドラフトではKTから控え捕手のイ・へチャン、トゥサンから控え外野手のチョン・ジンホと左腕イ・ヒョンホの3名を指名した。また控え捕手チ・ソンジュンと軍から除隊されたばかりの左の内野手キム・ジュヒョンをロッテへトレードし、先発として起用できる右腕チャン・シファンと19歳の若手捕手キム・ヒョヌを獲得した。
FAとなっていたイ・ソンヨル、キム・テギュン、ユン・ギュジンのベテラン3名は再契約した。またサーポルド、チャド・ベル、ホイングと外国人選手3名も全員再契約した。一方、FAで2013年シーズンオフにSKから移籍し、5年以上主力として活躍したベテラン野手チョン・グヌは余剰戦力を対象とした2次ドラフトでLGへ移籍し、ベテランへの依存度が高い中でチームの世代交代も図った。
2020年シーズン、就任3年目を迎えるハン・ヨンドク監督は強い危機感を抱いていると思われる。投打ともに2019年の上位チームと比べ厳しい状況にあり、2017年シーズン途中まで指揮していた前任のキム・ソングン監督がベテランを偏重した影響がいまだに残り中堅が育たず手薄であり、若手への世代交代も急には進まない。育てながら勝つのが理想であるが、数年後を考え選手の育成に専念したとしてもおかしくはなく、2019年10月に就任したチョン・ミンチョル団長(元読売)など経営陣も難しい判断を迫られるかもしれない。
(文責:ふるりん)