DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2021年シーズン回顧 第10回 ハンファイーグルス

初の外国人監督により再建に着手

2021年シーズン成績 

レギュラーシーズン:49勝83敗12分(勝率.371)最下位

ポストシーズン:出場せず

 

  2020年はプロ野球タイ記録の18連敗が注目を集めるなど低迷が続き6年ぶりの最下位に終わり、再建のためチーム史上初となる外国人監督のカルロス・スベロ監督が就任した。2011年までの過去10年間でポストシーズン進出は2018年のみと長期低迷が続いているにもかかわらずシーズンオフに大きな補強はなく、若手の育成で底上げを図っていくことになった。

 4月3日に開幕したレギュラーシーズンで、4月7日のSSG戦で17-0とシーズン初勝利をあげ、スベロ新監督にとって韓国初勝利となった。しかし4月10日のトゥサン戦で1-18と17点差をつけられていた8回裏に32歳の外野手チョン・ジンホが敗戦処理でプロ初登板となった。チョン・ジンホはその後4月17日のNC戦、5月15日のキウム戦でも敗戦処理で登板し3試合すべて無失点に抑えたが、外野手としての出場は47試合にとどまりシーズン終了前の10月14日にウェーバー公示され現役を引退した。 

 4月後半の4連敗などで勝率が下がり始め、5月はキア、ロッテ、ハンファとの最下位争いが続いた。5月29日、本拠地・大田でのSSG戦は2020年で現役を引退したかつての4番打者キム・テギュン(元千葉ロッテ)の引退試合となった。キム・テギュンプロ野球史上初の事例で引退試合のためだけに選手登録され、試合開始前に守りなれた一塁の守備に就き、試合開始とともに選手交代でグラウンドに別れを告げた。試合終了後の盛大な引退セレモニー、チーム史上4人目となった背番号52の永久欠番指定のセレモニーでは、球場内から盛大な拍手でキム・テギュンが見送られた。

 キム・テギュンの後継者と呼ばれたのは2020年に12本塁打を記録した21歳のノ・シファンで5月までは9本塁打、41打点を記録していたが、6月以降は調子が落ちチームも勝てなくなっていった。7月1日までの10連敗で最下位に転落し、上位との差が大きく開いた。低迷から脱出するためにトレードでサムソンからイ・ソンゴン外野手、キアからペク・ヨンファン捕手を獲得し、主軸打者としての期待に応えられなかった外国人選手ヒーリーはウェーバー公示され、代役の外国人選手としてぺレスと契約した。

 7月上旬、防疫に関する規定違反でキウム、NCの選手たちが処分を受ける中、ハンファでもユン・デギョン、チュ・ヒョンサンの投手2名が10試合の出場停止処分を受けた。1年延期された2020年東京オリンピック野球などによる中断期間から再開されたあとの8月13日まで9位キアが8連勝、最下位ハンファとの差は大きく広がった。8月28日、左の長距離打者として活躍した37歳のイ・ソンヨルが現役引退を表明、世代交代がさらに進められた。

 9月4日のキア戦でキム・ミヌがハンファの韓国人選手としては2015年以来となるシーズン10勝を記録した。9月後半、ハンファがやや復調し勝率を4割に近づけ9位キアに接近した。しかし10月16日まで5連敗、10月23日のロッテ戦で最大9点差を追いつかれ15-15の引き分けに持ち込まれ2年連続の最下位が確定した。そして10月30日、最終戦のトゥサン戦まで引き分け1つを挟み6連敗、9位キアと8ゲーム差をつけられ2021年シーズンを終了した。

 

【投手の成績】

防御率4.68(7位) 奪三振1011(8位) 被本塁打115(6位) 与四球673(1位)

[主な先発投手]

カーペンター    31試合 5勝12敗 防御率3.97

キム・ミヌ     29試合 14勝10敗 防御率4.00

キンガム      25試合 10勝8敗  防御率3.19

チャン・シファン    19試合 0勝11敗1ホールド  防御率7.04

キム・ギジュン   15試合 2勝4敗 防御率4.70

チャン・ミンジェ  12試合 0勝2敗 防御率2.76

 先発投手のチーム防御率(4.55)は10チーム中6位だったが、クォリティースタート(6回以上投球し自責点3以内)は41試合で9位と層の薄さが目立った。規定投球回数(144回)に達した3名に続く先発4番手以降に人材を欠いた。チーム最多の170回を投球した韓国1年目の外国人選手の左腕カーペンターはリーグ最多の12敗で5勝のみと打線の援護に恵まれなかった。2020年はSK(現SSG)で1勝もできなかった外国人選手キンガムは新天地で本領を発揮し10勝を記録した。特に大きな成長を遂げたのは26歳のキム・ミヌで自身最多の14勝、2012年まで活躍したリュ・ヒョンジン(トロントブルージェイス)以来となる韓国人で先発の柱となる投手が現れた。

 若手では高卒新人の左腕キム・ギジュンが6月から9月にかけて先発登板の機会を与えられ2勝をあげ、2022年以降に向けて経験を積んだ。

 

[主なリリーフ投手]

カン・ジェミン    58試合 2勝1敗5セーブ13ホールド 防御率2.13

キム・ボムス     56試合 4勝9敗1セーブ9ホールド  防御率5.22

ユン・ホソル     55試合 3勝0敗8ホールド  防御率4.62

チョン・ウラム    50試合 1勝4敗15セーブ1ホールド 防御率5.64

キム・ジョンス    49試合 1勝1敗6ホールド  防御率4.82

ユン・デギョン      43試合 2勝5敗7ホールド  防御率3.94

チュ・ヒョンサン   43試合 2勝2敗4ホールド  防御率3.58

 リリーフのチーム防御率(4.83)は10チーム中9位で、大卒2年目の24歳で中継ぎの柱に定着したサイドハンド右腕のカン・ジェミンが特筆すべき存在となった。36歳のチョン・ウラムがチーム最多の15セーブを記録し、プロ野球記録を更新する個人通算登板試合を929にまで伸ばしたが年齢による衰えを感じさせ、後継者の育成が急務である。変わり種として、野手から投手に転向し29歳にして一軍初登板、初勝利を記録したチュ・ヒョンサンが中継ぎに定着した。

 

【野手の成績】

打率.237(10位) 本塁打80(9位) 得点599(9位) 盗塁110(3位) 失策120(2位)

捕手:チェ・ジェフン   116試合 打率.275 7本塁打 44打点 3盗塁

一塁:ぺレス       59試合   打率.267 5本塁打 33打点 4盗塁

二塁:チョン・ウヌォン  139試合 打率.283 6本塁打 39打点 19盗塁

三塁:ノ・シファン    107試合 打率.271 18本塁打 84打点 5盗塁

遊撃:ハ・ジュソク       138試合 打率.272 10本塁打    68打点 23盗塁

左翼:チェ・インホ    49試合 打率.206 4本塁打  23打点 2盗塁

中堅:ノ・スグァン    52試合 打率.231 1本塁打  32打点 13盗塁

右翼:チャン・ウンホ   102試合  打率.235 0本塁打  28打点 3盗塁

指名:キム・テヨン    53試合 打率.301 3本塁打 34打点 5盗塁

控え:ペク・ヨンファン、イ・ソンゴン、パク・チョンヒョン、イム・ジョンチャン、チョ・ハンミン、イ・ウォンソクなど

 投手陣に輪をかけて層が薄い野手陣も最下位に終わった大きな要因だった。2020年シーズンオフにこれまで活躍してきたベテランの野手の多くを自由契約とし、2021年もそれを進め若手の成長に期待したが1年では大幅な戦力アップとはいかなかった。正捕手チェ・ジェフン、走攻守そろう内野のハ・ジュソクなど経験豊富な選手はいるにはいたが、その数が他チームと比べ少なかった。高卒4年目の21歳チョン・ウヌォンが2020年の故障から復活、自身初となるゴールデングラブ賞二塁手部門を受賞し自身をつけた。高卒3年目の21歳ノ・シファンはチーム最多の18本塁打、84打点と主軸を任されるようになった。チーム全体の悲惨な状態にあって、特に外野は期待されていた選手の故障もあってレギュラーが定まらなかった。

 投手と異なり外国人選手が機能しなかったのも響いた。最初契約したヒーリー、代役のぺレスを合わせて12本塁打、70打点に終わり打線に厚みをもたらせなかった。

 

【オフシーズンの動向】

 2年連続最下位に終わったにもかかわらず、オフシーズンは静かで目立った補強もなかった。2022年のFA(フリーエージェント)選手となった正捕手チェ・ジェフンとは契約期間5年で再契約した。外国人選手については先発投手として活躍したカーペンター、キンガムともに再契約したが、ぺレスとは再契約せず、新外国人選手マイク・トークマン外野手と契約し打線の強化を図った。

 

 スベロ監督はMLBでのコーチ経験はあるが監督経験はなく、主にマイナーリーグでの指導に当たってきた(2019 WBSCプレミア12ではベネズエラ代表監督だった)。最下位で選手層も薄いため若手を起用しないと試合にならなかったハンファでは指導しやすかったと思われる。また審判の判定に対して抗議するなどチームを鼓舞することもあった。2年連続最下位とはいえ、勝率は2020年の.326から.371にまで上昇し期待された選手たちの一部は結果を残し、これをチームの成長の跡としてとらえることもできる。何よりもチームのことを第一に考えて情熱的に導こうとするスベロ監督に率いられたハンファイーグルスは2022年シーズンも苦戦するかもしれないが、チームの再建と成長は着実に進むであろう。

 

(文責:ふるりん