DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2019年シーズン回顧 第8回 サムソンライオンズ

チーム史上最長の暗黒時代に

2019年シーズン成績 

レギュラーシーズン:60勝83敗1分(勝率.420)8位

 

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サムソンライオンズ期待の若手投手ウォン・テイン。後ろ左側で落合英二コーチ(現在は二軍監督)が熱心に見ている。

 2014年までの韓国シリーズ4連覇から一転、2016年から3年連続でポストシーズン進出に失敗したサムソンライオンズ。2019年は球団史上最悪となる4年連続ポストシーズン進出失敗を回避することが至上命題だった。

 3月23日のレギュラーシーズン開幕戦でNCに敗れ、3月29日から4月2日まで4連敗するなど出だしはよくなかった。4月21日のハンファ戦で新外国人選手マクガイヤがチーム史上2人目のノーヒットノーラン達成で韓国初勝利を記録し、打線も23安打16得点と爆発したが、マクガイヤ本人もチームも上昇気流には乗らなかった。4月24日から30日まで5連敗で9位に沈んだ。

 5月4日には期待の高卒新人、19歳のウォン・テインが先発しプロ初勝利を記録するなど復調するが、ハンファ、KTなどとの下位争いが続き上位との差は開いていった。5月26日のキウム戦で、40歳のベテラン打者パク・ハニのタイムリーでサヨナラ勝ちし、サムソンはハンファと同率6位に並んだ。だがその翌27日、飲酒運転が発覚したパク・ハニは現役引退を表明し、サムソン一筋での19年間で個人通算2147安打を記録した名選手が突如チームを去った。

 6月6日のNC戦で31歳のペク・チョンヒョンの自身初完封で4連勝するなど6位を維持するも、勝率5割は遠かった。6月29日に7位へ後退し、6月30日から7月5日まで5連敗し、そのうち3連敗を喫した6位KTとの差が開き、勝率4割台前半のキアとの7位争いを繰り広げてしまった。7月13日から18日まで5連敗となり、オールスター戦による1週間の中断期間だった7月24日、防御率5点台と期待に応えられなかった外国人選手ヘイリーをウェーバー公示し、翌25日に代役の新外国人選手として外野手のウィリアムソンと契約、打線の強化を図った。

 7月26日から29日まで4連勝し、ポストシーズンに進出できる5位浮上に希望をつないだが、その後が続かなかった。4月のノーヒットノーラン以外あまり活躍できず4勝どまり、防御率5点台だったマクガイヤは8月8日にウェーバー公示され、代役の新外国人選手として投手のライブリーと契約した。

 8月6日、MLB・コロラドロッキーズから自由契約となっていたかつての守護神オ・スンファン(元阪神)が2013年以来となるサムソンへの復帰を発表した。だが2015年、サムソンの複数の選手が関与した海外での不法賭博でKBOから出場停止処分(72試合)を受けていたため、2019年シーズンの残り試合には出場できず、2020年シーズンの途中からサムソンの試合に出場することになった。だがこの朗報もチームに勢いをもたらさず、8月10日までの4連敗で8位に後退した。

 9月1日から11日までの9試合で6勝3敗と好調で、キアが不調だったため7位争いはし烈になったが、9月13日から18日まで5連敗したこともあり浮上することはできなかった。レギュラーシーズン最後になって調子を上げてきたハンファに背後から迫られたが、9月27日のSK戦、延長10回裏にイ・ハクチュの本塁打でサヨナラ勝ちし7位が確定した。だが、2016年からのポストシーズン進出失敗は4年連続まで伸び、チーム史上最長の暗黒時代となった。9月29日のレギュラーシーズン最終戦となったKT戦も力なく0-7で完封負けを喫した。

 

【投手の成績】

防御率4.64(7位) 奪三振924(8位) 被本塁打125(1位) 与四球523(3位)

[主な先発投手]

ペク・チョンヒョン 28試合 8勝10敗 防御率4.24

ユン・ソンファン  27試合 8勝13敗 防御率4.77

チェ・チェフン   28試合 6勝6敗   防御率4.81

ウォン・テイン     26試合  4勝8敗2ホールド  防御率4.82

マクガイヤ     21試合 4勝8敗  防御率5.05

ライブリー     9試合 4勝4敗 防御率3.95

 先発投手のチーム防御率は4.83で10チーム中8位だった。被本塁打が1位だったのは、本拠地の大邱サムソンライオンズパークが狭く本塁打が出やすいからである。

 32歳の左腕ペク・チョンヒョンが自己最多タイの8勝、チーム最多の157回を投げたが2ケタ以上の勝利を記録するも、規定投球回数に達した10チームの全選手(27名)中防御率10位以内の投手がいなかったため、エース格が不在だった。10月に38歳となったユン・ソンファンが8勝と復活の気配を見せ、高卒新人のウォン・テイン、大卒2年目の24歳の左腕チェ・チェフンが先発として起用され今後に向けての成長の土台を築いた。2019年も過去3年と同じく外国人選手の先発が振るわず、マクガイヤ、ヘイリーの2名はシーズン途中でウェーバー公示となった。8月から契約した外国人選手ライブリーは安定感がなかったが、好投した時の印象が強かったからか2020年も再契約することになった。

 

[主なリリーフ投手]

ウ・ギュミン     54試合 2勝7敗15セーブ7ホールド 防御率2.75

チャン・ピルジュン  61試合 3勝3敗11セーブ15ホールド  防御率3.62

チェ・ジグァン    63試合 3勝8敗2セーブ10ホールド  防御率4.10

イム・ヒョンジュン  71試合 1勝8ホールド 防御率3.40

キム・デウ      44試合 5勝1敗1ホールド 防御率5.13

クォン・オジュン   43試合 3勝3ホールド 防御率5.23

イ・スンヒョン    34試合 2勝1敗8ホールド 防御率1.95

 リリーフのチーム防御率は4.36で10チーム中6位と、脆弱な先発投手陣をある程度補完した。シーズン前半はチャン・ピルジュン、後半はウ・ギュミンが抑えを務めた。チーム最多登板(71試合)のイム・ヒョンジュンは左のワンポイントとして起用された。兵役のため軍へ入隊したリリーフ要員シム・チャンミンの不在は、21歳の若手右腕チェ・ジグァンの成長で埋めることができた。対照的に39歳のサイドハンド右腕クォン・オジュンも存在感を示した。

 

【野手の成績】

打率.256(9位) 本塁打122(2位) 得点622(7位) 盗塁107(4位) 失策105(4位)

捕手:カン・ミンホ    112試合 打率.234 13本塁打 45打点 0盗塁

一塁:ラフ        133試合   打率.292    22本塁打 101打点 6盗塁

二塁:キム・サンス    129試合 打率.271 5本塁打 38打点 21盗塁

三塁:イ・ウォンソク   111試合 打率.246 19本塁打 76打点 2盗塁

遊撃:イ・ハクチュ       118試合 打率.262 7本塁打    36打点   15盗塁

左翼:キム・ホンゴン   114試合 打率.297 5本塁打  46打点 10盗塁

中堅:パク・ヘミン    144試合 打率.239 5本塁打  44打点 24盗塁

右翼:ク・ジャウク    122試合  打率.267 15本塁打  71打点 11盗塁

指名:チェ・ヨンジン   96試合 打率.251 5本塁打 20打点 4盗塁

控え:キム・ドファン、パク・ケェボム、キム・ドンヨプ、ウィリアムソンなど

 本拠地・大邱ライオンズパークは狭いため本塁打数は多かったが、打率が低く得点力はあまりなかった。不動の4番打者、韓国3年目の外国人選手ラフを軸にク・ジャウク、イ・ウォンソク、カン・ミンホなどの打者が周りを固めた。シカゴカブス傘下のマイナーリーグチーム出身で、11月で29歳となったイ・ハクチュはショートを守りエラーが多かったが打撃では存在感を示した。2018年まで4年連続盗塁王だったパク・ヘミンは打撃不振で盗塁数が減ったが、それ以外にもキム・サンス、イ・ハクチュなど盗塁の多い選手がそろっていた。

 

【オフシーズンの動向】

  2019年シーズンの日程が終了した翌日の9月30日、ホ・サミョン新監督の就任が発表された。現役時代はサムソンの投手だったが、1991年からの5年間で一軍未勝利のまま引退し、フロントの職員として働いてきたためコーチなど指導者の経験がない異例の抜擢である。現役時代はサムソンの3度の韓国シリーズ優勝に貢献し、個人通算1514安打を記録した名選手出身のキム・ハンス監督が再建に失敗しチーム史上最長となる暗黒時代をもたらしたため、現役時代の名声はないが球団の内情を知り尽くした人物に今後を託したと思われる。

 2019年の外国人選手のうちライブリーのみと再契約し、年俸交渉でまとまらなかったラフ、出場機会が限られたウィリアムソンとは再契約しなかった。新外国人選手はタイラー・サラディーノ内野手、デビッド・ブキャナン投手(元東京ヤクルト)の2名と契約した。

 

 2020年シーズン、近年の他球団の傾向に従い選手時代の実績に左右されない人事で抜擢されたホ・サミョン監督には、上位から遠ざかっているチームの再建という難題が課せられている。幸い、黄金時代には不動の守護神だったオ・スンファンの復帰という明るい材料もある(出場停止が解除されるのは5月以降となる見込み)。ファンは大邱サムソンライオンズパークのマウンドにオ・スンファンが初めて上がり、チームに勝利をもたらす瞬間を待ち望んでいるであろう。

 

(文責:ふるりん