8年ぶりの韓国シリーズ進出失敗、史上最低の9位に
2022年シーズン成績
レギュラーシーズン:60勝82敗2分(勝率.423)9位
ポストシーズン:なし
2015年の優勝から2021年まで史上最長の7年連続で韓国シリーズ出場を果たしたトゥサンベアース。だが、2021年はレギュラーシーズン4位で11月開始と例年より遅い時期のポストシーズンで準プレーオフ、プレーオフが短縮された日程に助けられた面が強かった。選手の育成には定評があるチームだが、オフシーズンには毎年のようにFA(フリーエージェント)となった主力選手たちが移籍し、チーム力は徐々に低下していた。2021年シーズンオフも外野手のパク・コヌがNCダイノスへと移籍していた。
レギュラーシーズン開幕前に2021年の最優秀防御率、プロ野球新記録となるシーズン奪三振数を記録、シーズンMVP(最優秀選手)にも選ばれた外国人選手ミランダ(元福岡ソフトバンク)が故障で登板できなくなり、不安が大きくなった。しかし4月2日、ハンファイーグルスとの開幕戦で新外国人選手ストックが韓国初登板で初勝利、主軸として期待されたヤン・ソックァンにも初本塁打が出て上々のスタートを切った。SSGランダースが開幕10連勝で独走態勢に入る中、順調に勝ち星を積み重ねていった。
5月になっても好調はしばらく維持され、軍から除隊され一軍初登板となった23歳のチョン・ウヌォンがリリーフで起用され、5月7日のKTウィズ戦で初勝利をあげた。また21歳の左腕チェ・スンヨンも5月11日のキウムヒーローズ戦でプロ入り後先発での初勝利をあげるなど明るい材料が多かった。5月12日には首位SSGを追走し2位につけていたが、この時が2022年シーズンのピークだったといえる。
4月に2試合登板しただけで未勝利のミランダが再び故障で登板できなくなり、先発投手陣の柱が不在だったトゥサンは徐々に勝てなくなり、5月20日のロッテ戦まで引き分け1つを挟み5連敗で7位にまで後退した。5月31日のキアタイガーズ戦から6月3日のサムソンライオンズ戦まで4連敗となり勝率は4割台に落ち込み、再び勝率5割を超えることはなかった。6月25日のキア戦でミランダが2か月ぶりに一軍で先発登板したが、1回表だけで7つの四死球を与え4失点で降板してしまった。
レギュラーシーズンのちょうど半分を消化した6月30日時点で32勝38敗2分けでロッテと同率7位、首位SSGからは大きく離されるも5位以内でポストシーズン進出ならまだ可能性が感じられた。しかし7月以降はさらに勝てなくなり勝率は4割台前半まで下がった。結局ミランダは7月14日にウェーバー公示され、代役の新外国人選手として同じ左腕のブランドンと契約した。7月26日のロッテ戦から7月29日のハンファ戦まで4連勝となり6位に浮上したが、これが2022年シーズン最多の連勝で5連勝以上はなく勢いに乗って順位を伸ばすことができなかった。
8月になるとまた順位が8位にまで下がり、5位以上への進出が厳しくなってきた。シーズンも佳境に入る9月からは終盤の追い上げが期待されたが、9月2日のロッテ戦から9月7日のハンファ戦までの5連敗が致命的で9位に後退してしまった。これ以降大きな連敗はなかったがNC、サムソンなどが調子を上げ追いつくことができなかった。勝率3割台の最下位ハンファに追いつかれる心配は少なかったが上位進出の望みも薄く、新人王の資格がありリリーフで活躍するチョン・チョルォン、8月以降先発で安定した投球を見せていた23歳の右腕クァク・ピンが数少ない明るい材料だった。
10月2日のロッテ戦に敗れ、1982年にOBベアースとして球団が創設されてからは最低最悪の順位となるシーズン9位が確定した。目標としていた8年連続韓国シリーズ進出どころか、6位に終わった2014年以来となる8年ぶりのポストシーズン進出失敗でもあった。
10月8日、本拠地蚕室でのレギュラーシーズン最終戦となったキウム戦は2015年、2016年、2019年と3度の韓国シリーズ優勝に主力として貢献した37歳の内野手オ・ジェウォンの引退試合として大勢の観客が集まった。試合には敗れたものの、オ・ジェウォンは2度の韓国シリーズ優勝を共にし当時のエースピッチャーだった外国人選手ニッパートの祝福を受けるなど盛大な引退セレモニーが行なわれ、久しぶりにポストシーズンを迎えられなかったファンたちのせめてもの慰みになった。こうして屈辱的な成績に終わった2022年シーズンのトゥサンベアースの戦いは幕を閉じた。
【投手の成績】
防御率4.46((8位) 奪三振977(8位) 被本塁打117(4位) 与四球555(2位)
[主な先発投手]
ストック 29試合 9勝10敗 防御率3.55
チェ・ウォンジュン 30試合 8勝13敗 防御率3.60
クァク・ピン 27試合 8勝9敗 防御率3.78
イ・ヨンハ 21試合 6勝8敗 防御率4.93
チェ・スンヨン 48試合 3勝7敗 防御率5.30
ブランドン 11試合 5勝3敗 防御率3.60
先発投手の防御率は4.20で10チーム中8位だった。未勝利で7月に自由契約となったミランダの空白が数字にもはっきりと表れている。チーム最多の165回に登板した外国人選手ストックは9月以降投球内容が悪化し、また2021年は12勝を記録した右腕チェ・ウォンジュンも8勝どまりだった。23歳のクァク・ピンは8月以降最も信頼できる先発投手へと成長し、自身最多の8勝を記録した。ミランダの代役となったブランドンも5勝とそれなりの結果を残した。
[主なリリーフ投手]
キム・ミョンシン 68試合 3勝3敗10ホールド 防御率3.62
チョン・チョルォン 58試合 4勝3敗3セーブ23ホールド 防御率3.10
ホン・ゴンヒィ 58試合 2勝9敗18セーブ 防御率3.48
イ・スンジン 35試合 3勝1敗2ホールド 防御率6.61
イム・チャンミン 32試合 0勝2敗6ホールド 防御率3.95
リリーフの防御率は4.82で10チーム中9位と、先発と同様に手薄だった。29歳のキム・ミョンシンが自身最多かつチーム最多となる68試合に登板した。開幕当初抑えはキム・ガンニュルだったが、故障でホン・ゴンヒィに交代した。23歳で中継ぎの柱に成長したチョン・チョルォンは一軍初登板からチーム最多の23ホールドを記録し、2022年の新人王を受賞した。
【野手の成績】
打率.255(6位) 本塁打101(8位) 得点638(6位) 盗塁90(6位) 失策118(3位)
捕手:パク・セヒョク 128試合 打率.248 3本塁打 41打点 2盗塁
一塁:ヤン・ソックァン 107試合 打率.244 20本塁打 51打点 1盗塁
二塁:カン・スンホ 134試合 打率,264 10本塁打 62打点 12盗塁
三塁:ホ・ギョンミン 121試合 打率.289 8本塁打 60打点 10盗塁
遊撃:キム・ジェホ 102試合 打率.215 1本塁打 21打点 0盗塁
左翼:キム・ジェファン 128試合 打率.248 23本塁打 72打点 2盗塁
中堅:チョン・スビン 127試合 打率.259 3本塁打 41打点 15盗塁
右翼:キム・インテ 83試合 打率,247 5本塁打 25打点 1盗塁
指名:フェルナンデス 119試合 打率.309 6本塁打 77打点 0盗塁
控え:チャン・スンヒョン、キム・ミンヒョク、パク・ケェボム、アン・ジェソク、チョ・スヘン、アン・グォンス、キム・デハンなど
2019年の韓国シリーズ優勝に貢献したキム・ジェファン、キム・ジェホ、フェルナンデスなどの主力野手の高齢化で攻撃力は低下した。その一方で2021年よりSK(現SSG)より移籍した28歳のカン・スンホの存在感が攻守ともに増した。右の長距離砲として期待されたヤン・ソックァンは故障により2021年より成績を落としたが、それでも2年連続20本塁打以上を記録した。22歳のキム・デハン、20歳のアン・ジェソクと期待の若手もレギュラー定着とはならなかった。
【オフシーズンの動向】
レギュラーシーズン終了から間もない10月14日、イ・スンヨプ新監督(元オリックス)の就任が発表されプロ野球界を驚かせた。現役時代、韓国ではサムソンのみに所属、個人通算467本塁打などのプロ野球記録保持者で韓国代表でも活躍した大打者が、これまで縁のなかったトゥサンで指揮を執ることになった。しかも2017年限りでの現役引退以降、主にテレビ局の野球解説委員として活動し本格的なプロ野球チームでの指導者の経験はない。
チーム史上最低最悪の9位から巻き返すために戦力補強にも動いた。2018年まで所属していたプロ野球界屈指の強打の捕手、NCからFAとなっていたヤン・ウィジと契約し復帰させた。ヤン・ウィジの補償選手としては若手のチョン・チャンミン投手が指名された。これにより、ヤン・ウィジが移籍してから主力として活躍し初めてFA選手となったパク・セヒョク捕手はNCへと移籍した。パク・セヒョクの補償選手としては控えのパク・チュニョン内野手を指名した。
チームの刷新のためフェルナンデス、ストック、ブランドンの3名の外国人選手とは再契約せず、新外国人選手としてホセ・ロハス外野手、ディラン・ファイル投手と契約した。そして2020年にトゥサンで20勝を記録した外国人選手アルカンタラ(元阪神)と再び契約した。
2023 WBC(ワールドベースボールクラシック)韓国代表にはクァク・ピンとチョン・チョルォンの投手2名、ヤン・ウィジと捕手1名の合計3名が選ばれた。
キム・テヒョン監督の指揮により2015年から2022年まで3度の韓国シリーズ優勝という黄金時代に終止符が打たれたトゥサンベアース。知名度は抜群だが指導者としては未知数のイ・スンヨプ新監督に再建を託す思い切った手段に出たトゥサンベアースは、2023年シーズンにおいて特に注目されるチームの1つとなることは間違いない。
(文責:ふるりん)