DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2021年シーズン回顧 第7回 NCダイノス

韓国シリーズ初優勝から一転

2021年シーズン成績 

レギュラーシーズン:67勝68敗9分(勝率.496)7位

ポストシーズン:出場せず

 

 プロ野球が9球団制に拡張することになり、2013年より本格的な一軍参入を果たし、2020年に韓国シリーズ初優勝を果たしたNCダイノス。戦力の大きな流出がなく、2021年シーズン開幕前は優勝候補として韓国シリーズ2連覇が期待された。しかし、初優勝に貢献した左腕ク・チャンモが故障で登板できないなど不安はあった。

 その不安は的中し、2020年は投打ともに圧倒的な強さで序盤から首位を独走したが、4月3日に開幕した2021年は前年のような勢いがなく2年連続のスタートダッシュ成功とはいかなかった。5月以降も勝率5割を維持してはいたが、2020年は下位に低迷していたサムソン、SSGが首位に立つなどプロ野球界の勢力分布は変わっていた。

 トレードやイ・ヨンチャンとの契約で補強するもKT、LG、サムソンなど上位との差は徐々に広がり、5位で勝率5割を維持するのがやっととなり、6月になるとNCより2年遅れてプロ野球に参入したKTが首位の座を固めていくのを見つめるしかなかった。レギュラーシーズン半分あまりを消化した7月8日から10日のキウム戦は、両チームの選手にPCR検査の陽性者がいたため中止となった。そして7月16日、遠征先の宿舎に部外者を呼んで飲酒していたことが明らかになったパク・ソンミン、パク・ミヌ、イ・ミョンギ、クォン・ヒィドンの4名の主力野手が72試合の出場停止となり、残りの2021年シーズンの試合に出場できないことになった。この騒動はキウム、ハンファなど他チームにも影響を与え、主力の二塁手だったパク・ミヌは当初出場予定だった2020年東京オリンピック野球韓国代表を辞退した。

 オリンピック野球が終了し8月10日のレギュラーシーズン再開後、出場停止となった選手たちの穴はチェ・ジョンウォン、キム・ジュウォンなどの若手野手で埋めざるを得なかった。8月11日にはキウムに抜かれ6位に後退するも踏みとどまりキウム、SSGとの4-6位の順位争いが続いた。

 9月10日には勝率5割を切り、トゥサンを加えた4チームの順位争いとなった。9月17日にはシーズン最多の6連勝で4位に浮上するも、9月26日までの8連敗で7位にまで後退した。しかしここでも踏みとどまり、レギュラーシーズン2連覇は厳しくとも5位以上のポストシーズン進出争いには残った。

 し烈な5位争いは10月末まで続き、10月28日、初優勝に向けてこちらもし烈な争いを続けていたKTとのダブルヘッダーで1敗1分けと勝てず、この時7位で残り2試合ともに勝利しても5位以上でレギュラーシーズンを終える可能性がなくなった。結局このまま7位でシーズンを終え、韓国シリーズ2連覇どころか最下位に終わった2018年以来3年ぶりにポストシーズン進出失敗となった。7月までの勝率は.514だったが、主力野手4名を出場停止で欠いた8月以降は勝率.476と失速した。

 

【投手の成績】

防御率4.54(6位) 奪三振1055(3位) 被本塁打125(2位) 与四球592(5位)

[主な先発投手]

ルチンスキー    30試合 15勝10敗 防御率3.17

シン・ミンヒョク  30試合 9勝6敗 防御率4.41

パーソンズ     24試合 4勝8敗 防御率3.72

ソン・ミョンギ     24試合 8勝9敗  防御率5.91

イ・ジェハク      17試合  6勝6敗 防御率5.20

 先発の防御率(4.56)は10チーム中7位だった。韓国3年目の外国人選手ルチンスキーが不動の先発の柱で、2年連続となるチーム最多の15勝を記録した。韓国1年目の外国人選手パーソンズは勝ち星に恵まれなかったが、終盤の10月まで先発ローテーションを守った。韓国人選手では高卒4年目の22歳の右腕シン・ミンヒョクが9勝と最多で、右の先発の柱として今後のさらなる成長が期待される。高卒3年目の21歳の右腕ソン・ミョンギは2020年より投球内容が悪化し、1勝少ない8勝どまりと伸び悩んだ。

 8月以降先発ローテーションを守り完封勝利も記録したイ・ジェハクは6勝と復活を果たした。やはり左のエースとして期待を集めた24歳のク・チャンモが1試合も登板できなかったのが非常に惜しまれる。

 

[主なリリーフ投手]

ウォン・ジョンヒョン 61試合 2勝2敗14セーブ6ホールド  防御率4.25

イム・ジョンホ    60試合 0勝4敗12ホールド 防御率4.61

ホン・ソンミン    53試合 3勝4敗14ホールド 防御率3.92

イム・チャンミン   46試合 0勝3敗17ホールド 防御率3.79 

リュ・ジヌク     44試合 1勝0敗1セーブ7ホールド 防御率2.08

キム・ジンソン    42試合 2勝4敗1セーブ9ホールド 防御率7.17

イ・ヨンチャン    39試合 1勝3敗16セーブ3ホールド 防御率2.19

キム・ヨンギュ    37試合 5勝3敗6ホールド 防御率5.37

 リリーフの防御率(4.56)で10チーム中5位だった。シーズン前半はウォン・ジョンヒョンが2020年と同じく抑えを務めていたが不調で、トゥサンからFAとなるも5月になってようやくNCと契約したイ・ヨンチャンがシーズン後半から抑えを任されるようになり安定した。左のリリーフはイム・ジョンホ、キム・ヨンギュが中心だった。

 

【野手の成績】

打率.261(6位) 本塁打170(2位) 得点702(7位) 盗塁100(4位) 失策111(4位)

捕手:キム・テグン    102試合 打率.220 7本塁打 24打点 0盗塁

一塁:カン・ジンソン   124試合   打率.249 7本塁打 38打点 9盗塁

二塁:チェ・ウォンジョン 72試合 打率.283 0本塁打 8打点 10盗塁

三塁:パク・チュニョン  111試合 打率.209 8本塁打 31打点 4盗塁

遊撃:ノ・ジンヒョク      107試合 打率.288 8本塁打   58打点   1盗塁

左翼:チョン・ジンギ   86試合 打率.231 6本塁打 21打点 6盗塁

中堅:アルテール     143試合 打率.272 32本塁打  84打点 20盗塁

右翼:ナ・ソンボム    144試合 打率.281 33本塁打 101打点 1盗塁

指名:ヤン・ウィジ    141試合 打率.325 30本塁打 111打点 2盗塁

控え:チョン・ボムモ、ユン・ヒョンジュン、キム・ジュウォン、チョン・ヒョン、チョン・ミンス、キム・ギファンなど

 2020年は圧倒的な攻撃力で初優勝となったが、2021年は得点力が落ちた。7月の不祥事による内野のパク・ミヌとパク・ソンミン、外野のクォン・ヒィドンとイ・ミョンギの出場停止処分が大きく響いた。4月29日に捕手としてはプロ野球史上初のサイクルヒットを記録、最多打点の個人タイトルを受賞したヤン・ウィジ、2年連続30本塁打以上のナ・ソンボム、2年連続で30本塁打・20盗塁以上の外国人選手アルテールからなる中軸打線の破壊力は相変わらず驚異的だったが、カン・ジンソン、ノ・ジンヒョクなど周りを固める選手たちの成績が悪化した。

 8月以降は出場停止処分の選手たちに代わる選手たちが起用された。その中では19歳の高卒新人キム・ジュウォン、高卒3年目で21歳のチェ・ジョンウォンが出場機会を増やし一軍に定着した。5月に控えの層を厚くするためSSGからトレードで移籍してきた内野手チョン・ヒョン、外野手チョン・ジンギは思わぬ形で訪れたチャンスを生かし、ポストシーズン進出をかけた5位争いにチームを踏みとどまらせた。

 

【オフシーズンの動向】

  2020年の韓国シリーズ初優勝から一転、7位に終わったことを受けてか2021年のオフシーズンは激しく動いた。12月14日、トゥサンで外野の主力として活躍してきたパク・コヌと6年最大100億ウォンで契約した。すると12月23日、2013年の一軍本格参入から外野の主力として活躍してきたナ・ソンボムがキアへと移籍した。その代わり翌12月24日、ロッテで外野の主力として活躍し個人通算2000安打以上を記録したソン・アソプと契約した。パク・コヌの補償選手として一塁の主力だったカン・ジンソンがトゥサンへ、ソン・アソプの補償選手としてリリーフ右腕のムン・ギョンチャンがロッテへ移籍した。またナ・ソンボムの補償選手としてキアからリリーフ左腕のハ・ジュニョンが移籍してきた。

 また2013年からリリーフとして活躍してきたキム・ジンソン(2022年はLGと契約)、イム・チャンミン(2022年はトゥサンと契約)を自由契約とした。長く正捕手として活躍してきたキム・テグンと、サンドハンドのリリーフ右腕シム・チャンミンと控え捕手キム・ウンミンとの1対2トレードがサムソンと成立するなど、大幅な選手の入れ替えがあった。

 外国人選手については2019年から契約しているルチンスキー、2021年から契約したパーソンズの投手2名と再契約した。2020年から契約していたアルテールとはMLB復帰の意思があるとされ再契約せず、新外国人選手としてニック・マティーニ外野手と契約した。

 

 2011年の球団創設から10年が過ぎ、新興勢力ながら一定の成果を出してきたNCダイノスは一度頂点に立った後、思わぬ形ではあったが勝ち続けることの難しさを知った。4年目となるイ・ドンウク監督も2022年シーズンは大型補強をもとに万全の態勢で巻き返しを図ろうとしている。若手の成長と合わせて新生NCダイノスは王座奪回に乗り出す。

 

(文責:ふるりん