DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2019年シーズン回顧 第6回 KTウィズ

5年目の進化

2019年シーズン成績 

レギュラーシーズン:71勝71敗2分(勝率.500)6位

f:id:takefumif:20190330162252j:plain

水原KTウィズパークの内野通路には、かつて現代ユニコーンスの本拠地だったころの面影がある。

 

 プロ野球10球団で最も新しく、2015年に本格的な参入を始めたKTウィズは、2017年まで3年連続最下位という苦難の道を歩み、2018年にようやく9位と最下位脱出に成功した。しかしそれもNCとの最終戦までもつれたし烈な争いに勝っただけであり、コーチとしての経験は豊富でも一軍監督としての指揮は初めてだったイ・ガンチョル監督が就任した2019年も苦戦が予想された。不幸にもそれは的中し、3月23日のレギュラーシーズン開幕戦から28日まで遠征続きで5連敗となってしまった。 

 3月29日、本拠地・水原(スウォン)での開幕戦となったキア戦でようやく初勝利をあげたが、3月31日から4月5日までまた5連敗となり低迷が続いた。そして4月23日から5月2日まで2019年シーズン最悪の8連敗を喫し、勝率は3割を切り最下位に転落していた。しかし、これ以上の奈落はなくあとは上昇するだけだった。

 5月12日のキウム戦で勝利し最下位から9位に浮上すると、16日のキア戦まで4連勝して7位に浮上すると、5月18日から23日までまた4連勝で勝率も4割台に乗せた。5月24日から28日、6月2日から6日までと2度の4連敗を喫したことで、9位にまで後退し勝率も再び3割台となった。

 KTはこれまで序盤は健闘しても、中盤から地力の差が出てしまい連敗を重ね最下位争いから抜け出せないでいた。ところが2019年は6月7日から9日まで最下位ロッテ相手に3連勝し8位に浮上すると、最下位争いから抜け出し始めた。先発で起用したキム・ミン、ペ・ジェソンの若手が結果を残しだし、開幕当初は先発として期待したイ・デウンを抑えに配置転換したのが特に大きかった。また高卒プロ2年目のカン・ベッコの活躍に刺激を受けたか、23歳のキム・ミンヒョクが外野のレギュラーに定着するなど新たな風が吹き始めた。6月8日、23歳のペ・ジェソンが新人だった2015年の5月まで在籍していた古巣ロッテ相手に先発でプロ初勝利を記録すると、この後先発に定着しシーズン後半の快進撃の原動力となった。

 6月25日から7月5日までの11試合で9勝1敗1分け(8連勝あり)とロッテ、キア、サムソン、ハンファを一蹴し、7位以下を大きく突き放して6位の座を固めるとともに勝率5割、5位NCに近づき、これまでと全く違うKTは他球団の脅威となった。2015年から2018年までの4年間で最高でも5連勝しかなかったチームとは思えなかった。しかも主力打者のカン・ベッコを負傷で欠いての連勝街道だった。

 7月9日から12日まで3連敗したが、7月13日から18日まで5連勝、そのうち3位トゥサンに3連勝と勢いは止まらず勝率5割まであと2勝まで迫った。KTがレギュラーシーズンの半分の72試合以上を消化してポストシーズン進出をかけた5位争いに加わるなど、事前に予想した者はほとんどいなかったであろう。まさに台風の目だった。

 8月4日のキウム戦で勝利するとNCを抜いてついに5位へ浮上した。8月7日に6位へ後退したが、NCとの5位争いは続いた。8月14日から8月20日まで5連勝と勢いは衰えず、8月29日のトゥサン戦で勝利し、124試合目でついに勝率5割(61勝61敗2分)に届いた。8月31日のハンファ戦で勝利し、勝率5割でNCと同率5位に並んだが、9月1日のハンファ戦で敗れまた6位に後退した。

 初のポストシーズン進出に期待がかかったが、勝負どころの終盤戦で経験不足が出た。9月10,11日と8位サムソン相手に連敗すると、12,13日のNCとの5位の座をかけた直接対決でも敗れ合計4連敗となったのが響き、5位以上は厳しくなった。だがチーム史上初の勝率5割以上という目標は残り、9月25日にNCがレギュラーシーズン5位以上を確定させ、KTの6位以下が確定し初のポストシーズン進出の夢は破れても最後まで懸命に戦った。

 9月29日、本拠地・水原での2019年シーズン最終戦ではサムソン相手に7-0と完封勝利を収め、急速な進化を遂げたシーズンはちょうど勝率5割(71勝71敗2分)で幕を閉じた。またこの試合では高校時代投手だったカン・ベッコがライトから投手へと守備位置を変更して7回表を無失点に抑え、勝利に貢献した。

 

【投手の成績】

防御率4.29(6位) 奪三振848(10位) 被本塁打118(4位) 与四球481(7位)

[主な先発投手]

エバス      30試合 13勝10敗 防御率3.62

アルカンタラ    27試合 11勝11敗 防御率4.01

ペ・ジェソン    28試合 10勝10敗 防御率3.76

キム・ミン       27試合  6勝12敗  防御率4.96

キム・ミンス      28試合  8勝5敗2S1ホールド 防御率4.96

 先発の防御率4.44は10チーム中6位とポストシーズンに進出した上位5チームと比べ差はあったが、さらに下位のチームより質は高かった。クエバス、アルカンタラの両外国人選手は期待に応え韓国1年目で10勝以上を記録した。また23歳の左腕ペ・ジェソンがチーム史上初めてシーズン10勝以上を記録した韓国人投手となった。20歳の右腕キム・ミンは大きく負け越したがシーズンを通して先発として起用され経験を積み、2018年9月に兵役を終えた大卒の27歳の右腕キム・ミンスもプロ初勝利を含む8勝と、軍へ入隊した先発投手コ・ヨンピョの不在を感じさせなかった。

 

[主なリリーフ投手]

チュ・グォン     71試合 6勝2敗2セーブ25ホールド 防御率2.99

チョン・ユス     62試合 3勝1敗1セーブ7ホールド  防御率3.39

チョン・ソンゴン   52試合 3勝3敗8セーブ11ホールド   防御率5.53

イ・デウン      44試合 4勝2敗17セーブ 防御率4.08

キム・ジェユン    43試合 2勝2敗7セーブ9ホールド 防御率2.27

ソン・ドンヒョン   34試合 2勝3敗5ホールド 防御率4.75

 リリーフの防御率は4.10で10チーム中5位だった。層は厚くなかったが、6月からイ・デウンを抑えで起用し固定したことで投手起用が立てやすくなった。右のチュ・グォン、左のチョン・ソンゴンなど生え抜きの選手が成長し、リリーフとして信頼がおけるようになった。18歳の高卒新人、左腕ソン・ドンヒョンはリリーフとして活躍し、9月後半は3試合先発で起用されるなど2020年以降の飛躍が期待される。

 

【野手の成績】

打率.277(4位) 本塁打103(5位) 得点650(5位) 盗塁104(6位) 失策102(5位)

捕手:チャン・ソンウ   127試合 打率.262 7本塁打 41打点 0盗塁

一塁:オ・テゴン     123試合   打率.250 6本塁打 35打点 19盗塁

二塁:パク・キョンス   137試合 打率.247 10本塁打 65打点 0盗塁

三塁:ファン・ジェギュン 124試合 打率.283 20本塁打 67打点 10盗塁

遊撃:シム・ウジュン      138試合 打率.279 3本塁打    28打点   24盗塁

左翼:ロハス       142試合 打率.322 24本塁打  104打点 4盗塁

中堅:キム・ミンヒョク  127試合 打率.281 0本塁打  32打点 22盗塁

右翼:カン・ベッコ    116試合  打率.336 13本塁打  65打点 9盗塁

指名:ユ・ハンジュン   139試合 打率.317 14本塁打 86打点 3盗塁

控え:パク・スンウク、ユン・ソンミン、チョ・ヨンホ、カン・ミングクなど

 2018年、29本塁打で新人王を受賞した20歳のカン・ベッコに続いて24歳のシム・ウジュン、キム・ミンヒョクと年上の選手が発奮し主力へ成長、ユ・ハンジュン、パク・キョンス、ファン・ジェギュンなどのベテラン勢とかみ合ってチームとしてのまとまりが出てきた。2017年6月からKTと契約しているロハスは2018年の43本塁打と比べ、低反発球の影響で本塁打数は減少したが、打線の軸として好成績を残した。控えの選手層は厚くなかったが、6月後半からは固定されたメンバーで高い攻撃力を発揮し初のポストシーズン争いに加わった原動力となった。

 

【オフシーズンの動向】

  2度目のFAとなっていたユ・ハンジュンと再契約し戦力の流出を防いだ。また手薄な中継ぎの補強として、余剰戦力を対象とした2次ドラフトでキウムからイ・ボグンを指名した。また出場機会が減少していた右の内野手ユン・ソンミンをSKへトレードし、控え捕手ホ・ドファンを獲得した。クエバス、ロハスの外国人選手2名とは再契約したが、アルカンタラとは再契約しなかった(2020年はトゥサンと契約)。代わりの新外国人選手としてキューバ出身のオドリサメル・デスパイネ投手と契約した。

 

 イ・ガンチョル監督は大方の予想を覆し、就任1年目でKTを初めてポストシーズン争いできるチームにまで引き上げた。2017年まで3年連続最下位と結果を出せなかったが、辛抱して生え抜きの選手たちが成長するのを待ったKTのフロントにも称賛を送りたい。躍動感にあふれていた2019年のKTは、新陳代謝が思うようにいかなかった歴史のある7位以下のチームを上回ることができた。だが2020年、さらに上を目指すなら警戒が厳しくなるため、これまで以上に若い選手たちの成長が求められる。新球団というイメージも薄れてきた2020年シーズンは、プロ野球10番目の球団の将来を左右する1年となるのかもしれない。

 

(文責:ふるりん