DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2019年シーズン回顧 第7回 キアタイガーズ

変革の時が来たか

2019年シーズン成績 

レギュラーシーズン:62勝80敗2分(勝率.437)7位

 

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 2017年に前身のヘテタイガーズ時代から通算して11回目の韓国シリーズ優勝を果たしたキアタイガーズは、2018年は5位にとどまった。2019年は外国人選手3名もすべて入れ替え、目立った戦力補強をせず開幕前の練習試合などで若手投手を起用するなど、優勝よりも将来を見据えたシーズンであると思われていた。

 3月23日、本拠地・光州(クァンジュ)でのLGとの開幕戦でエースのヤン・ヒョンジョンが好投するも0-2と完封負けを喫し3連敗となった。その後ヤン・ヒョンジョンは4月まで不調が続き開幕5連敗となった。また先発の柱として期待したウィーランド(元横浜DeNA)、ターナーの両外国人選手も勝てず、4月16日から26日までシーズン最悪の9連敗に陥り、最下位に低迷していた。

 5月2日のサムソン戦でようやくヤン・ヒョンジョンがシーズン初勝利をあげたが、5月4日から8日まで4連敗、5月10日から16日まで6連敗に陥り、再び最下位に転落してしまった。この不振の責任を取る形でキム・ギテ監督が辞任し、パク・フンシク監督代行が指揮を執ることになった。また韓国に適応できなかった外国人選手ヘイゼルベイカーを自由契約とし、代役の外国人選手としてタッカーと契約、打線の強化と最下位からの脱出を図った。

 5月17日のハンファ戦でパク・フンシク監督代行就任後初勝利をあげると、5月19日から26日まで7連勝と勢いを取り戻し9位に浮上した。5月31日にはハンファ、サムソンと同率6位に並んだが、6月になると1日から9日までの8試合で1勝7敗と勢いは止まった。エースのヤン・ヒョンジョンは好投を続けたが、他に信頼に足る先発投手がいなかった。2017年の優勝に貢献した主力打者もかつてほどの勢いはなく、過渡期にさしかかっていた。

 そういった中で勝率4割台前半で7位から9位を行き来していた6月後半、イ・チャンジン、パク・チャンホなどの野手がレギュラーに定着し新風は吹いてはいた。だが6月27日から30日まで4連敗し8位に後退、勝率も.407と5割が遠くなってしまった。最下位争いをしていたKTが連勝を重ねNCとの5位争いに加わると、キアはサムソンとの7位争いをせざるを得なくなった。7月5日、長打力不足を解消するため、俊足の外野手イ・ミョンギを交換相手にNCから右の大砲候補イ・ウソンを獲得した。

 2017年の優勝に貢献した37歳のベテラン内野手イ・ボムホ(元福岡ソフトバンク)は、7月13日、2009年まで所属した古巣のハンファを相手に光州で盛大な引退試合を行い、キアとハンファの両チームの選手、関係者、ファンから盛大な拍手を送られ19年あまりのプロでの現役生活に幕を閉じた。背番号25は、イ・ボムホの代わりに三塁を守るようになった24歳のパク・チャンホへと譲られ、チームの世代交代を印象づけた。

 8月10日まで4連勝するなど復調しサムソンを抜いて7位に浮上するも勝率は4割半ばにとどまり、5割近くの勝率で5位争いを続けるNC、KTとの差は縮まらなかった。8月17日から24日まで6連敗し、7位は維持したが6位KTとの差はさらに広がり、5位以上でポストシーズン進出はかなり厳しくなってきた。8月30日から9月4日まで5連勝するも、順位は7位のままだった。

 残り20試合を切り、5位以内が厳しくなると将来を考え、韓国での適性がないと判断されたウィーランド、ターナーの外国人選手2名を早めに帰国させ若手に出場機会を与えた。9月6日から23日まで3勝11敗と大きく負け越しサムソン、ハンファとの7位争いは最後までもつれたが、9月28日のLG戦で勝利し、3連勝で2019年シーズンを終了した。パク・フンシク監督代行が就任してからは49勝50敗1分と勝率5割近くに戻していたため、2015年以来4年ぶりのポストシーズン進出失敗は、5月半ばまでの絶不調が響いた形となった。

 

【投手の成績】

防御率4.65(8位) 奪三振976(5位) 被本塁打101(6位) 与四球504(4位)

[主な先発投手]

ヤン・ヒョンジョン 29試合 16勝8敗 防御率2.29

ウィーランド    28試合 8勝10敗 防御率4.75

ターナー      28試合 7勝13敗 防御率5.46

キム・ギフン      19試合  3勝6敗  防御率5.56

ホン・ゴンヒィ   21試合 2勝9敗  防御率7.16

イ・ミヌ      32試合 2勝6敗1セーブ1ホールド 防御率5.43

 先発投手のチーム防御率は4.77で10チーム中7位だった。序盤は5連敗と不振だったが、エースのヤン・ヒョンジョンは最優秀防御率の個人タイトルを受賞し不動の存在だった。だがそれに続く韓国人の信頼に足る先発投手の不在が上位に進出できなかった要因の一つとなった。またウィーランド、ターナーの2名も期待外れで、規定投球回数(144)に達した外国人選手15名のうち防御率はウィーランドが14位、ターナーが15位だった。19歳の高卒新人キム・ギフンは先発で起用され3勝を記録し、今後に向けて貴重な経験を積んだ。

 

[主なリリーフ投手]

ムン・ギョンチャン  54試合 1勝2敗24セーブ 防御率1.31

ハ・ジュニョン    59試合 6勝2敗15ホールド  防御率4.96

チョン・サンヒョン  57試合 1勝4敗15ホールド  防御率3.12

コ・ヨンチャン    55試合 1勝3敗1セーブ10ホールド 防御率3.50

イム・ギジュン    52試合 2勝2敗6ホールド 防御率3.44

パク・チュンピョ   49試合 5勝2敗15ホールド 防御率2.09

イ・ジュニョン    37試合 1勝1ホールド 防御率6.35

 リリーフのチーム防御率は4.50で10チーム中8位だった。抑えとしてシーズン開幕当初に起用したキム・ユンドンが振るわず、4月末にプロ初セーブを記録した当時26歳のムン・ギョンチャンが抑えに定着した。リリーフだけで起用された投手の防御率は悪くなかったが、ホン・ゴンヒィ、イ・ミヌなど先発、リリーフともに起用された選手の防御率は低かった。若手では20歳の左腕ハ・ジュニョン、23歳の右腕チョン・サンヒョンが中継ぎの柱に成長した。

 

【野手の成績】

打率.264(6位) 本塁打76(10位) 得点605(9位) 盗塁87(8位) 失策110(2位)

捕手:ハン・スンテク   105試合 打率.223 3本塁打 27打点 1盗塁

一塁:ユ・ミンサン    61試合   打率.291 5本塁打 26打点 0盗塁

二塁:アン・チホン    105試合 打率.315 5本塁打 49打点 4盗塁

三塁:パク・チャンホ   133試合 打率.260 2本塁打 49打点 39盗塁

遊撃:キム・ソンビン      121試合 打率.292 3本塁打    40打点   5盗塁

左翼:チェ・ヒョンウ   136試合 打率.300 17本塁打  86打点 0盗塁

中堅:イ・チャンジン   133試合 打率.270 6本塁打  48打点 8盗塁

右翼:タッカー      95試合  打率.311 9本塁打  50打点 0盗塁

指名:キム・ジュチャン  100試合 打率.300 3本塁打 32打点 3盗塁

控え:キム・ミンシク、チェ・ウォンジュン、ファン・ユンホ、リュ・スンヒョン、ナ・ジワンなど

 得点力、特に長打力不足の打線が下位に低迷した最大の要因だった。2017年の韓国シリーズ優勝に貢献したナ・ジワンなどの打者が成績を落とした一方で、35歳のベテラン打者チェ・ヒョンウが4番打者として健在だった。また低反発球の影響か、強打の二塁手アン・チホンも成績を落とし存在感が弱まった。

 その反面、7月に現役を引退したイ・ボムホに代わり三塁を守るようになったパク・チャンホ盗塁王(39個)の個人タイトルまで受賞する活躍を見せたが、ほかに走力のある選手が少なくチーム盗塁数は少なく長打力不足を補えなかった。また2018年7月にKTからトレードで移籍し、 内野から外野へコンバートされ28歳にして才能が開花したイ・チャンジンがセンターの定位置を確保した。5月に韓国へ来た代役の外国人選手タッカーは本塁打を量産するタイプではなかったが、合格点の成績だった。

 

【オフシーズンの動向】

  何といってもチーム初の外国人監督となるマット・ウィリアムズ新監督の就任が話題を呼んだ。MLB(メジャーリーグベースボール)で個人通算378本塁打三塁手として活躍し、ワシントンナショナルズでも監督経験のある大物指導者の招へいは、チームを本気で変革しようという姿勢の表れでもある。2019年の外国人選手はタッカーのみ再契約し、アーロン・ブルックス、ドリュー・ギャニオンと2名の投手の新外国人選手と契約した。

 しかし、10年以上チームの主力として活躍しFA(フリーエージェント)となったアン・チホンがロッテと契約し移籍してしまった。その補償選手として、ロッテから2019年に高卒新人で一軍登板を果たした有望株の右腕キム・ヒョンスを指名した。SKから無償トレードで二塁を守れるベテラン内野手ナ・ジュファン、キウムからトレードで控え外野手のパク・チュンテと2億ウォンの代わりに長打力のある三塁手チャン・ヨンソクを獲得し、アン・チホンが抜けた課題の打線の強化を図った。また余剰戦力を対象とした2次ドラフトでトゥサンからピョン・ジンス(ピョン・シウォンに改名)を指名するなど、リリーフ陣も補強した。

 

 2020年シーズン、外国人監督と大幅なコーチ陣の入れ替えでキアタイガーズは変革に乗り出した。投打、攻守ともに課題は多いがマット・ウィリアムズ監督がどのように自身の目指す野球を慣れない韓国の地で実現させていくのか、注目を集めることであろう。

 

(文責:ふるりん