DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2019年シーズン回顧 第5回 NCダイノス

新球場で心機一転

2019年シーズン成績 

レギュラーシーズン:73勝69敗2分(勝率.514)5位

ポストシーズンワイルドカード決定戦敗退(対LG)

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昌原NCパーク馬山球場の電光掲示板。右の選手はナ・ソンボム。

 

 2018年は球団創設後初の最下位に終わり、2019年はイ・ドンウク新監督のもと再建と捲土重来を図った。まずはトゥサンからFA(フリーエージェント)となっていたプロ野球界最高の捕手ヤン・ウィジと契約し、戦力の補強に成功した。シーズン開幕前の2月に念願の新本拠地球場・昌原(チャンウォン)NCパーク馬山球場が完成し、3月19日に同球場初のプロ野球の試合である示範競技のハンファ戦が開催され、最新鋭のボールパークは野球ファンからの注目を大きく浴びた。

 3月23日、新球場での記念すべき初のレギュラーシーズン開幕戦・サムソン戦には超満員の観客が集まり、1回裏の新外国人ベタンコートの新球場初本塁打、新外国人バトラーの好投で7-0の完封勝利、イ・ドンウク監督初勝利と初物尽くしで好スタートを切った。2018年は苦しんだ先発投手陣もバトラーともう一人の新外国人選手ルチンスキー、パク・チヌやキム・ヨンギュなどの台頭、イ・ジェハクの復調もあって堅調で、ヤン・ウィジも攻守に活躍、NCは好調を維持した。

  5月上旬まではSK、LG、トゥサンの上位3チームに並走し勝率6割を超えていたが、5月3日のキア戦で攻守に欠かせない主力のナ・ソンボムが足を負傷し2019年中の復帰が未定となってから上昇ムードが途切れた。し烈な首位争いを続けるSK、トゥサンとは差が徐々に開き、戦力の違いを見せつけられはじめ、5月末からチームは下降線をたどり始めた。

 6月9日までのKT3連戦で3連勝し4位を維持したが、ここからチームの停滞が始まり、6月21日のKT戦まで7連敗、勝率5割を切り5位に後退した。レギュラーシーズンの半数程度を消化し、4位以上とは大きな差がつきだしたため、5位以上でポストシーズン進出が現実的な目標となり始めた。7月2日時点で勝率4割台後半にとどまり、故障や負傷などで戦力として機能しなかったバトラー、ベタンコートの外国人選手2名をウェーバー公示し、投手のフリードリック、外野手のスモリンスキーと2名の外国人選手と契約し巻き返しを図った。またナ・ソンボムの不在を埋めるため、キアからトレードで左打ちの外野手イ・ミョンギを獲得した。

 7月にはやや復調し、最下位争いから抜け出し上昇気流に乗ったKTとの5位争いが続いた。7月19,20日には昌原NCパークでの初のプロ野球オールスター戦が予定されていたが、19日のフューチャースオールスターは雨天中止、オールスター戦は雨により1日順延となったためやや盛り上がりを欠いた。8月4日には3連敗で勝率5割を切り、KTに抜かれ6位に後退した。

 8月7日にはまた5位に浮上したが、勝率5割前後のKTとの5位争いはし烈だった。8月27,28日のKTとの直接対決は1勝1敗だったが、8月31日にはちょうど勝率5割で同率5位に並ばれた。9月1日には再び単独5位となり、2015年の一軍参入後最下位争いを続けポストシーズンに一度も進出したことがないKTより経験で上回るNCは、9月12,13日の直接対決で連勝するなど15日のサムソン戦まで5連勝し、6位KTを突き放した。

 9月25日のトゥサン戦で9回裏にスモリンスキーの本塁打で追いつき、延長12回終了で7-7の引き分けとなったことで、NCはレギュラーシーズン5位以上が確定し、2年ぶりのポストシーズン進出を決めた。2018年、KTとは最終戦まで最下位争いを続けた末に敗れたが、2019年はポストシーズン進出争いで勝利し借りを返した。ポストシーズンは4位LGとのワイルドカード決定戦から出場したが、先発フリードリックが先制を許し4回持たず降板し、打線はノ・ジンヒョクの本塁打のみに終わり1-3で敗れ、NCの2019年シーズンは終了した。

 2018年は最下位争いをしていたこともありNCの総観客動員数(72試合)は44万2872名だったが、新球場の集客効果により2019年(72試合)は71万274名と、前年比約60%の増加だった。 

 

【投手の成績】

防御率4.01(5位) 奪三振991(3位) 被本塁打103(5位) 与四球483(6位)

[主な先発投手]

ルチンスキー    30試合 9勝9敗 防御率3.05

イ・ジェハク    23試合 10勝4敗 防御率3.75

ク・チャンモ    23試合 10勝7敗1ホールド 防御率3.20

パク・チヌ       41試合  9勝7敗5ホールド  防御率3.14

フリードリック     12試合  7勝4敗 防御率2.75

チェ・ソンヨン   26試合 4勝1敗2ホールド 防御率3.94

 先発の防御率3.74は10チーム中4位で、シーズンを通して先発として起用されたのはルチンスキーとイ・ジェハクの2人だけだった。故障で開幕に間に合わなかった22歳の左腕ク・チャンモは5月以降先発に定着し、自身初の10勝を記録した。そのほかパク・チヌは7月後半からリリーフに転向し、代わりに8月以降、22歳の左腕チェ・ソンヨンが先発に起用され、選手層は厚くない中での配置転換が効果的だった。

 

[主なリリーフ投手]

カン・ユング     67試合 3勝3敗15ホールド 防御率4.47

ペ・ジェファン    62試合 3勝5敗20ホールド 防御率3.81

ウォン・ジョンヒョン 60試合 3勝3敗31セーブ  防御率3.90

チャン・ヒョンシク  53試合 5勝4敗9ホールド 防御率4.61

キム・ゴンテ     44試合 0勝2敗7ホールド 防御率3.68

キム・ジンソン    42試合 1勝2敗5ホールド 防御率4.29

キム・ヨンギュ    30試合 5勝4敗1ホールド 防御率5.29 

 リリーフの防御率は4.46で10チーム中7位と、上位チームとは明らかな質の差があった。ブロウンセーブ(セーブ失敗)が10チーム中1位タイの17個と多く、抑えを任されたウォン・ジョンヒョンはリーグ最多の9個もあった。中継ぎは主に左のカン・ユング、右のペ・ジェファンが中心となった。まだ19歳の左腕キム・ヨンギュは5月まで先発を任されるなど、今後の成長に期待したい。

 

【野手の成績】

打率.278(2位) 本塁打128(1位) 得点674(3位) 盗塁87(8位) 失策95(7位)

捕手:ヤン・ウィジ    118試合 打率.354 20本塁打 68打点 4盗塁

一塁:モ・チャンミン   101試合   打率.305 10本塁打 55打点 3盗塁

二塁:パク・ミヌ     125試合 打率.344 1本塁打 45打点 18盗塁

三塁:パク・ソンミン   112試合 打率.267 19本塁打 74打点 2盗塁

遊撃:ノ・ジンヒョク      110試合 打率.264 13本塁打   43打点   0盗塁

左翼:イ・ミョンギ    139試合 打率.293 2本塁打  36打点 14盗塁

中堅:キム・テジン    123試合 打率.275 5本塁打  46打点 12盗塁

右翼:スモリンスキー   55試合  打率.229 9本塁打  42打点 3盗塁

指名:クォン・ヒィドン  116試合 打率.256 6本塁打 41打点 3盗塁

控え:チョン・ボムモ、イ・サンホ、キム・チャンヒョン、イ・ウォンジェ、キム・ソンウクなど

 得点力は上位チームに引けを取らなかった。突出した打者は首位打者となったヤン・ウィジくらいで、やはり5月上旬から負傷で戦線を離脱した強打の外野手ナ・ソンボムの穴は埋めきれなかった。7月にキアから移籍したイ・ミョンギは長打力こそないが俊足でチャンスメイカーとして機能し、7月になって韓国へ来た外国人選手スモリンスキーは確実性こそ低いがチャンスで打点を稼いだ。モ・チャンミン、ノ・ジンヒョクといった打者は下位打線で活躍するなど、怖さはないが堅実に得点を重ねる攻撃が特徴的だった。

 

 

【オフシーズンの動向】

  FAとなっていたヤン・ウィジと大型契約を結んだ2018年シーズンオフと違って比較的静かだった。FAとなったベテランの三塁手パク・ソンミン、2019年8月に軍から除隊され復帰した控え捕手キム・テグンとは再契約した。外国人選手はルチンスキーのみ再契約し、2019年7月から契約していたフリードリック、スモリンスキーの2名とは再契約しなかった。その代わりにマイク・ライト投手、アーロン・アルテール外野手と2名の新外国人選手と契約した。またノ・ソンホ、チョン・スミン、ユ・ウォンサンなどのリリーフ投手たちが2次ドラフトなどで移籍した。また2013年の一軍参入時からチームを支えてきたベテラン内野手ソン・シホンが現役を引退した。

 

 

 現役時代はロッテで控えの内野手だったイ・ドンウク監督はまだ45歳ながらも大抜擢に見事に応え、就任1年目にして最下位から5位に浮上と、チームの再建にある程度成功した。新球場の効果も完成して1年が過ぎる2020年シーズンともなると薄れ、2014年から2017年まで4年連続ポストシーズンに進出していたころのような強さを取り戻さないとファンたちの足はまた遠のくであろう。2010年以降のプロ野球人気上昇による拡張政策で誕生したNCダイノスが、2020年以降の近い将来のうちに韓国シリーズ初優勝を成し遂げるのを馬山の人々、そして昌原市民も待ち望んでいる。

 

(文責:ふるりん