DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2021年シーズン回顧 第1回 KTウィズ

7年目での初優勝

2021年シーズン成績 

レギュラーシーズン:76勝59敗9分(勝率.563)1位

ポストシーズン韓国シリーズ優勝

 

 プロ野球10球団制への拡張により2015年から一軍へ本格参入し、2020年にレギュラーシーズン2位で初めてプレーオフに直行しポストシーズン進出と結果を残したKTウィズ。7年目となる2021年シーズンはさらなる飛躍が期待され、2019年よりKTを指揮するイ・ガンチョル監督は3年目にして韓国シリーズ優勝と最高の結果を出した。

 シーズン中盤の6月25日、65試合目で単独首位に立つと2020年東京オリンピック野球に伴う中断からの再開後の8月11日にLGへ首位の座を譲るも、8月13日に首位に返り咲き2か月以上その座を維持した。しかし10月になりラストスパートをかけられず失速すると10月23日、サムソンに首位の座を譲り、10月28日、ともに残り2試合となったところで同率首位に並んだ。結局10月30日の144試合目のレギュラーシーズン最終戦を終えても同率(.563)で終わったため、規定により10月31日、プロ野球史上初のレギュラーシーズン1位決定戦がサムソンの本拠地・大邱で行われた。KTは敵地ながらも先発クエバスの好投で1-0と勝利し、一軍参入7年目でついにレギュラーシーズン初優勝、そして韓国シリーズ初優勝を決めた。

 11月14日からの韓国シリーズは本拠地・水原ではなく、野外の気温が上がらない時季だったことで中立地の室内球場・高尺スカイドームで行われた。相手は2020年のプレーオフで敗れ、7年連続韓国シリーズ出場となったトゥサンだった。事前の予想では試合間隔が空いたKTが不利という声もあったが、レギュラーシーズン優勝と4位のチームの対戦としては妥当な結果に終わった。第1戦はレギュラーシーズン優勝決定戦と同じく先発クエバスが好投、ぺ・ジョンデの本塁打などで韓国シリーズ初勝利をあげた。そして第4戦まで4連勝、4勝0敗で韓国シリーズ初優勝を決めた。韓国シリーズMVPは二塁での再三の好守備でチームを救い、第3戦での決勝本塁打など印象的な活躍を見せた37歳のベテラン内野手パク・キョンスだった。 

 

【投手の成績】

防御率3.67(2位) 奪三振1062(2位) 被本塁打86(9位) 与四球489(10位)

[主な先発投手]

デスパイネ     33試合 13勝10敗 防御率3.39

コ・ヨンピョ    26試合 11勝6敗1ホールド 防御率2.92

エバス      23試合 9勝5敗 防御率4.12

ペ・ジェソン    26試合 9勝10敗 防御率3.68

ソ・ヒョンジュン  24試合 7勝7敗  防御率4.16

 

 先発投手の防御率3.69は10チーム中1位、クオリティースタート(先発投手が6回以上投球し自責点3以内)も1位の76試合と、層の厚い先発投手陣が初優勝の原動力となった。2年連続でリーグ最多の投球回数(188回と3分の2)を記録したデスパイネがチーム最多勝で、兵役を終え軍から除隊されたサイドスロー右腕コ・ヨンピョが自身最多の11勝と結果を残した。韓国3年目の外国人選手クエバスは故障で登板試合数が減ったが、レギュラーシーズン優勝決定戦、韓国シリーズ第1戦と大舞台で好投した。25歳のペ・ジェソン、20歳のソ・ヒョンジュンなどの若手も先発として結果を残した。

 

[主なリリーフ投手]

キム・ジェユン    65試合 4勝3敗32セーブ   防御率2.42

チュ・グォン     62試合 3勝4敗27ホールド 防御率3.31

キム・ミンス     56試合 4勝2敗11ホールド  防御率2.95

チョ・ヒョヌ     49試合 0勝9敗6ホールド 防御率2.61

パク・シヨン     48試合 3勝3敗12ホールド 防御率2.40

アン・ヨンミョン   35試合 0勝1敗4ホールド 防御率2.70

イ・チャンジェ    32試合 2勝0敗5ホールド 防御率6.05

イ・デウン      31試合 3勝2敗1セーブ9ホールド 防御率3.48

 リリーフの防御率は3.66で10チーム中2位だった。2020年シーズンオフにトレードなどで補強したパク・シヨン、アン・ヨンミョンなどが加わり層が厚くなり、抑えのキム・ジェユンはチーム史上初めてシーズン30セーブ以上を記録した。チュ・グォンなどが中継ぎとして安定した成績を残し、チョ・ヒョヌ、イ・チャンジェ以外の左の中継ぎがやや手薄だったが、リリーフの質と量は高かった。

 

【野手の成績】

打率.265(4位) 本塁打106(7位) 得点719(5位) 盗塁112(2位) 失策112(3位)

捕手:チャン・ソンウ   127試合 打率.231 14本塁打 63打点 1盗塁

一塁:カン・ベッコ    142試合   打率.347  16本塁打 102打点 10盗塁

二塁:パク・キョンス   118試合 打率.192 9本塁打 33打点 0盗塁

三塁:ファン・ジェギュン 117試合 打率.291 10本塁打 56打点 11盗塁

遊撃:シム・ウジュン      139試合 打率.268 6本塁打    48打点   16盗塁

左翼:チョ・ヨンホ    138試合 打率.236 0本塁打  48打点 12盗塁

中堅:ペ・ジョンデ    144試合 打率.259 12本塁打  68打点 19盗塁

右翼:ホイング      68試合 打率.239 11本塁打  52打点 5盗塁

指名:ユ・ハンジュン   104試合 打率.310 5本塁打 42打点 1盗塁

控え:ホ・ドファン、オ・ユンソク、シン・ボンギ、クォン・ドンジン、キム・ミンヒョク、ソン・ミンソプなど

 打線の中心は22歳の4番打者カン・ベッコで、チーム最多の本塁打・打点を記録した。今後は韓国を代表する打者としてより一層の活躍が求められる。2020年まで主軸打者として活躍し日本プロ野球阪神へ移籍した外国人選手ロハスの代わりに契約した新外国人選手アルモンテ(元中日)は故障がちで打撃成績も平凡だったため6月26日にウェーバー公示され、代役として2020年6月までハンファで活躍していたホイングと契約、韓国シリーズでも活躍するなど優勝に貢献した。

 チーム本塁打数が少なかったため10盗塁以上の選手が6名と機動力でカバーした。チーム四球数は645と最多で、長打力に欠けるが四球と足を絡めた攻撃で確実に得点し、強力な投手陣で逃げ切る勝ちパターンができていたと言える。球団創設から10年もたっていない歴史の浅いチームだったがユ・ハンジュン、パク・キョンス、ファン・ジェギュンなど他チームから移籍してきたベテラン選手たちが要所で働き、カン・ベッコ、ぺ・ジョンデ、シム・ウジュンなどKTで主力に成長した選手たちと融合し、バランスの取れたチーム構成となっていた。また控え野手のオ・ユンソクなどをロッテからトレードで獲得するなど、シーズン中でもフロントが積極的に動いたのも大きかった。

 

【オフシーズンの動向】

 FA(フリーエージェント)となったファン・ジェギュン、チャン・ソンウの2名の主力野手とは再契約したが、控え捕手だったホ・ドファンは出場機会を求めLGへ移籍した。また2016年よりKTで活躍してきた40歳のベテラン野手ユ・ハンジュンが現役を引退したため、5度の本塁打王、4度の打点王、2度のシーズンMVPなどの輝かしい経歴を誇りキウムからFAとなっていた35歳のパク・ピョンホと契約し、課題だった打線の強化に努めた。また国外でのプレーが長く2019年よりKTに所属していたイ・デウン(元千葉ロッテ)も現役を引退した。

 外国人選手ではデスパイネ、クエバスの投手2名は2022年シーズンも再契約となったが、韓国シリーズで活躍するもレギュラーシーズンでは打率が低かったホイングは再契約を見送られた。その代わりに新外国人選手ヘンリー・ラモス外野手と契約した。

 

 一軍に参入して間もない2015年から2018年までは戦力不足で最下位争いを続けたKTウィズは補強と育成をともに進め、イ・ガンチョル監督の元2021年に韓国シリーズ優勝とプロ野球界の頂点に立った。2022年シーズンは初めて追われる立場として迎えることになり、いかに他チームの逆襲をしのぎ連覇できるかに注目が集まる。カン・ベッコ、ソ・ヒョンジュンと比較的若い選手たちがチームの主軸となっているため、他の若手や新人たちが成長し戦力となれば黄金時代の到来も夢ではない。

 

(文責:ふるりん)`