DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2021年シーズン回顧 第2回 トゥサンベアース

ポストシーズンでの強さを見せつけるも

2021年シーズン成績 

レギュラーシーズン:71勝65敗8分(勝率.522)4位

ポストシーズン韓国シリーズ 準優勝

 

 6年連続で韓国シリーズに出場した2020年はNCに敗れ初優勝を許し、シーズンオフにオ・ジェイル、チェ・ジュファンと2名の主力野手がFA(フリーエージェント)となり移籍したトゥサンベアーズ。さらにアルカンタラ、フレクセンの外国人選手2名も再契約せず日本プロ野球MLBへ移籍し、代役の外国人選手2名も未知数で開幕前の評価は高くなかった。そこでシーズン開幕前の3月に左腕ハム・トクチュを交換相手にトレードでLGから右の長距離打者ヤン・ソックァンを獲得した。

 4月3日のレギュラーシーズン開幕から5月までは勝率5割を維持していたが、6月以降に勝率も順位も下がり、勝率5割を切り7月から7位に低迷していた。8月には首位を快走するKT、それを追うLGやサムソンなどの上位とは差がつき絶望的な状況にあった。だが9月になると復調しキウム、SSG、NCなどとのし烈な4-5位争いに加わった。

 9月後半には勝率5割に復帰、4位に浮上しレギュラーシーズン5位までのポストシーズン進出をかけた争いは最後までもつれた。10月22日、直接対決に敗れSSGに4位の座を譲り5位に後退した。10月24日のLGとのダブルヘッダー第1戦で先発ミランダ(元福岡ソフトバンク)がシーズン奪三振プロ野球新記録を更新、最終的には227個まで伸ばした。この日のダブルヘッダー2試合で1勝1分けとし4位に復帰した。順位争いは10月30日の最終戦までもつれ、トゥサンはハンファに勝利し4位が確定、7年連続出場となったポストシーズンは初めてワイルドカード決定戦から出場となった。

 しかしここで危機が訪れた。レギュラーシーズンでは先発投手陣の軸として活躍していたミランダ、ロケットの2名の外国人選手が故障で登板できなくなった。11月1日からの5位キウムとのワイルドカード決定戦、第1戦こそ敗れたが第2戦は16得点と打線の爆発で勝利し、3位LGとの準プレーオフに進んだ。プレーオフは第1戦、第3戦で勝利し2勝1敗で2位サムソンとのプレーオフにまで進出した。2020年までプレーオフは最大5試合、3戦先勝制だったが2021年は東京オリンピック野球による中断期間などで最大3試合、2戦先勝と短縮され、これがすでにポストシーズンで5試合を消化していたトゥサンに幸いした。サムソンは2015年以来6年ぶりのポストシーズン進出で、経験に勝るトゥサンが第1戦、第2戦ともに勝利し、プロ野球史上初となる7年連続韓国シリーズ進出を決めた。外国人選手2名の不在はキム・ミンギュ、クァク・ピンと20代前半の若手が埋め、イ・ヨンハがロングリリーフで好投するなど短期決戦慣れしているチームの強みが出た。

 こうして勢いに乗る中、韓国シリーズの相手はレギュラーシーズン初優勝のKTで、2020年のプレーオフで勝利しているためトゥサン有利ともいわれた。しかしポストシーズンで息の抜けない7試合を戦い、韓国シリーズでは疲労がチーム全体ではっきり出始めた。KTの強力な投手陣を打線が攻略できず接戦をものにできず第1戦、第2戦ともに敗れ、第3戦になってミランダがようやく先発登板したが流れは変わらず、第4戦まで4連敗となり0勝4敗で2年連続の韓国シリーズ準優勝となった。

 

【投手の成績】

防御率4.26(3位) 奪三振1045(5位) 被本塁打104(7位) 与四球587(6位)

[主な先発投手]

ミランダ      28試合 14勝5敗 防御率2.33

チェ・ウォンジュン 29試合 12勝4敗  防御率3.30

ロケット      21試合 9勝9敗 防御率2.98

クァク・ピン    21試合 4勝7敗 防御率4.10

ユ・ヒィグァン   15試合 4勝7敗 防御率7.71

 先発の防御率(4.41)はリーグ5位だった。韓国1年目にして1984年以来37年ぶりにシーズン奪三振記録(227)を塗り替え、最優秀防御率の個人タイトルとシーズンMVPも受賞した外国人左腕ミランダが圧倒的な成績を残した。韓国人選手では先発として初めてフルに稼働したチェ・ウォンジュンが2年連続の10勝以上、自身最多の12勝を記録した。韓国1年目の外国人右腕ロケットは9勝を記録したが、10月に手術を受けるため離脱しポストシーズンで登板しなかった。

 22歳のクァク・ピンが先発として起用され4勝を記録しポストシーズンでも好投するなど成長の跡を感じさせたが、35歳のベテラン左腕ユ・ヒィグアンが不振で4勝どまりと結果を残せず、先発投手陣の層はKTなど他の上位チームと比べて薄く途中まで苦戦した要因の一つとなった。

 

[主なリリーフ投手]

ホン・ゴンヒィ   65試合 6勝6敗3セーブ17ホールド 防御率2.78

キム・ミョンシン  58試合 3勝2敗2ホールド 防御率4.30

キム・ガンニュル  50試合 3勝21セーブ 防御率2.09

イ・スンジン    47試合 1勝4敗2セーブ13ホールド 防御率3.91

ユン・ミョンジュン 45試合 1勝1ホールド 防御率4.73

イ・ヒョンスン   38試合 5勝1敗7ホールド 防御率1.93

イ・ヨンハ     35試合 5勝6敗1セーブ2ホールド 防御率6.29

キム・ミンギュ   31試合 2勝3敗1ホールド 防御率6.07

 リリーフの防御率(4.06)はリーグ3位だった。ホン・ゴンヒィ、キム・ミョンシン、イ・スンジン、ユン・ミョンジュンなどタフな中継ぎ右腕が層の薄い先発陣に代わって試合の流れを壊さないことが目立った。やや層が薄い左のリリーフは38歳のベテランのイ・ヒョンスンが中心だった。課題の抑えは過去2年の故障から復活したキム・ガンニュルが任された。若手投手陣では主力として期待されたイ・ヨンハ、キム・ミンギュはレギュラーシーズンで結果を残せなかったが、ポストシーズンで好投し韓国シリーズ進出に貢献した。

 

【野手の成績】

打率.268(2位) 本塁打110(4位) 得点738(2位) 盗塁81(8位) 失策89(8位)

捕手:パク・セヒョク  96試合 打率.219 0本塁打 30打点 4盗塁

一塁:ヤン・ソックァン 133試合 打率.273 28本塁打 96打点 2盗塁

二塁:カン・スンホ   113試合 打率,239 7本塁打 37打点 8盗塁

三塁:ホ・ギョンミン  136試合 打率.278 5本塁打 59打点 5盗塁

遊撃:パク・ケェボム  118試合 打率.267 5本塁打 46打点 4盗塁

左翼:キム・ジェファン 137試合 打率.274 27本塁打 102打点 2盗塁

中堅:チョン・スビン  104試合 打率.259 3本塁打 37打点 12盗塁

右翼:パク・コヌ    126試合 打率.325 6本塁打 63打点 13盗塁

   キム・インテ   133試合 打率,259 8本塁打 46打点 0盗塁

指名:フェルナンデス  141試合 打率.315 15本塁打 81打点 0盗塁

控え:チャン・スンヒョン、チェ・ヨンジェ、オ・ジェウォン、キム・ジェホ、アン・ジェソク、チョ・スヘン、アン・グォンスなど

 何と言っても開幕前の3月のトレードでLGから移籍してきたヤン・ソックァンがチーム最多の28本塁打を記録し、中軸として活躍したことに尽きる。FAで移籍したオ・ジェイル、チェ・ジュファンの補償選手としてサムソン、SSGから移籍してきたパク・ケェボム、カン・スンホが戦力として機能し、主力選手が流出してもその穴を的確に埋めることができ、このやりくりのうまさが韓国シリーズ7年連続出場という結果にも表れている。

 こうした新戦力にフェルナンデス、キム・ジェファン、ホ・ギョンミン、パク・コヌ、チョン・スビンなどの従来からの主力選手たちが例年通りの活躍をし、リーグ有数の得点力のある打線が維持された。またこれまで控えに回っていたキム・インテが自身最多の133試合に出場、主力へと成長したのも大きかった。主力として期待されていた捕手パク・セヒョクが不振で、9月まではチャン・スンヒョン、チェ・ヨンジェなどと日替わりでの起用だった。また若手では19歳の高卒新人の内野手アン・ジェソクが一軍で96試合に出場し、今後に期待を抱かせた。

 

【オフシーズンの動向】

 FA(フリーエージェント)となった2名のうち4番打者として活躍を続けたキム・ジェファンとは契約期間4年で再契約したが、ともに主軸を打ってきたパク・コヌはNCと契約し、2年連続で主力選手が流出した。しかしパク・コヌの補償選手として2020年からNCで一塁のレギュラーとして活躍していたカン・ジンソンを指名するなど、穴埋めには抜かりがない。一方、3度の韓国シリーズ優勝に貢献するも2020年以降は成績が低下していた個人通算101勝の左腕ユ・ヒィグァンが現役を引退した。

 外国人選手では先発投手陣の柱となったミランダは再契約し、2019年から契約を続けてきた安打製造機フェルナンデスとも再契約する方向である。またポストシーズンに登板できなかったロケットは再契約せず、新外国人選手としてロバート・ストック投手と契約した。

 

 7年連続で韓国シリーズに出場しそのうち3度の優勝と、強豪としてのイメージが崩れていないトゥサンベアース。レギュラーシーズンで4位に終わってもポストシーズンで経験の差を生かし強さを見せてきたが、優勝するには明らかに足りない部分があった。2015年、トゥサンが14年ぶりに韓国シリーズで優勝した際に一軍参入1年目の新球団で最下位に終わったKTがたゆまぬ努力を続け、6年の歳月をかけてトゥサンに勝ち韓国シリーズで初優勝するなどプロ野球界の勢力図は変わってきている。こういった中で2015年からチームを率いるキム・テヒョン監督はいかにして戦力を向上させ、監督として自身4度目となる韓国シリーズ優勝に導くのか、その手腕に注目が集まる。

 

(文責:ふるりん