4年ぶりにポストシーズンへ進出するも
2022年シーズン成績
レギュラーシーズン:70勝73敗1分け(勝率.490)5位
2021年はチーム史上最低の9位に終わり、チーム史上初の外国人監督だったウィリアムス監督からキム・ジョングク監督に交代して臨んだ2022年シーズン。本拠地光州出身で、NCダイノスの主力打者として活躍しFA(フリーエージェント)となったナ・ソンボムが移籍、また2021年はMLBテキサスレンジャースと契約していた左腕の先発投手陣の柱ヤン・ヒョンジョンが復帰し、巻き返しには十分な戦力をそろえた。
4月2日のLGツインスとのレギュラーシーズン開幕戦ではヤン・ヒョンジョンが光州での復帰後初登板となるも敗れた。4月5日から7日までのハンファイーグルスとの3連戦で3連勝したが勢いは続かず、4月27日のKT戦から5月3日のキウムヒーローズ戦まで6連敗となった。また4月23日にはイ・ミヌ投手とイ・ジニョン外野手と2対1の交換トレードで22歳の若手キム・ドヒョン投手、翌4月24日にはキム・テジンと10億ウォンの交換トレードでキウムから強打の捕手パク・トンウォンを獲得し、開幕後も戦力補強を怠らなかった。
こうして5月4日のキウム戦から5月10日のKTウィズ戦まで6連勝、その後も好調を維持した。5新戦力のパク・トンウォンだけでなく4月は不振だった韓国1年目の外国人選手ソクラテスが5月になり調子を上げ、ナ・ソンボムと並ぶ打線の顔となった。5月9日にはパク・トンウォンの加入で出場機会が少なくなったキム・ミンシク捕手をSSGにトレードし、キム・ジョンビン投手とイム・ソクチン外野手を獲得した。こういった積極的な姿勢が実を結び、5月26日には順位を3位にまで上げ首位SSG、2位キウムに迫る勢いだった。
だが6月にはLGに押され4位に後退した。6月26日のトゥサンベアース戦から7月6日のKT戦まで8連敗となり勝率5割を切ってしまい、5位に後退した。その間の6月28日、防御率5,89で3勝のみと結果を残せなかった外国人選手ロニーをウェーバー公示し、代役の新外国人選手として左腕パノーニと契約した。8連敗からの脱出後は7月8日のハンファ戦から7月12日のLG戦まで4連勝と5位を維持し、下位への転落は防がれた。
3年ぶりに開催された7月16日のプロ野球オールスター戦では、ナヌムオールスターファン投票選出選手の12名のうち9名をキアが占め、ファンが2022年シーズンのキアに期待していることがよく表れていた。オールスター戦による中断期間が終わった7月22日から7月24日までのロッテジャイアンツ戦で3連勝、特に24日はプロ野球史上最多となる23点差(23-0)での大勝と今後の追い上げに期待が集まったが5位のままで、それから勝率を伸ばせず8月は勝率5割前後をさまよい続けた。
6位以下は勝率5割から遠く、SSG、LG、キウム、KTの上位4チームとの差は縮まらなかった。9月7日のロッテ戦から9月10日のトゥサン戦まで4連勝と4位以上への進出にわずかな希望が見えたが、9月11日のトゥサン戦から9月21日のLG戦まで9連敗と絶望が待っていた。だが9月22日から9月24日までの6位NCとの3連戦で2勝1敗と勝ち越し、5位の座は死守した。
10月7日、光州でのKT戦は2009年、2017年の韓国シリーズ優勝に主力打者として貢献したナ・ジワンの引退試合となり11-1と勝利しレギュラーシーズン5位が確定、ナ・ジワンの最後の花道を最高の形で祝福した。10月8日のKT戦で敗れレギュラーシーズン全日程を終え、4年ぶりに出場するワイルドカード決定戦ではキウムと同率3位となるも直接対決で負け越したため下位扱いとなったKTとまたも対戦することになった。
10月13日、敵地水原でKTに2勝しないと準プレーオフに進出できない不利な条件のもと、ワイルドカード決定戦第1戦では先発ノリン(元埼玉西武)が3回裏に3点を先制され、その後2点を返すが8回裏に20歳の若手イ・ウィリが3点を追加され2-6で敗れ、2022年のキアタイガーズの戦いはここで幕を閉じた。勝率5割を維持できないチームでは、短期決戦とはいえ厳しい上位争いを戦ってきたチームに太刀打ちできなかった。
【投手の成績】
防御率4.20(6位) 奪三振1042(4位) 被本塁打120(3位) 与四球526(3位)
[主な先発投手]
ヤン・ヒョンジョン 30試合 12勝7敗 防御率3.85
イ・ウィリ 29試合 10勝10敗 防御率3.86
ノリン 21試合 8勝8敗 防御率2.47
イム・ギヨン 26試合 4勝13敗1S 防御率4.24
パノーニ 14試合 3勝4敗 防御率2.72
ハン・スンヒョク 24試合 4勝3敗 防御率5.27
先発投手のチーム防御率(3.90)は10チーム中6位だった。34歳のヤン・ヒョンジョンは期待通りに先発投手陣の柱となり、チーム最多の12勝を記録しチームの浮上に貢献した。20歳の若手イ・ウィリはプロ2年目にして初の10勝を記録した。外国人選手ではノリン(元埼玉西武)が安定した投球を見せるも5月下旬から7月下旬まで2か月間故障で登板せず、ロニー、パノーニと外国人投手3名で合計14勝にとどまった。ノリン、パノーニの外国人選手2名は左腕で、ヤン・ヒョンジョン、イ・ウィリの左腕に続く右腕の先発投手の層が薄く、上位チームとの差に表れた。
[主なリリーフ投手]
イ・ジュニョン 75試合 1勝1敗1セーブ17ホールド 防御率2.91
チョン・ヘヨン 55試合 3勝7敗32セーブ 防御率3.38
チャン・ヒョンシク 54試合 2勝3敗1セーブ19ホールド 防御率3.12
チョン・サンヒョン 50試合 5勝5敗2セーブ16ホールド 防御率3.30
キム・ジェヨル 47試合 1勝2敗1セーブ5ホールド 防御率6.07
ユン・ジョンビン 47試合 3勝1敗5ホールド 防御率5.03
パク・チュンピョ 34試合 1勝8ホールド 防御率5.40
リリーフのチーム防御率(4.72)は10チーム中7位だった。21歳のチョン・ヘヨンが抑えを任され、チーム最多登板の左腕イ・ジュニョン、右腕チャン・ヒョンシクとチョン・サンヒョンの2名が中継ぎを任された。しかしその他のリリーフの質は高いとは言えなかった。
【野手の成績】
打率.272(1位) 本塁打113(4位) 得点720(1位) 盗塁103(1位) 失策107(8位)
捕手:パク・トンウォン 123試合 打率.247 18本塁打 57打点 1盗塁
一塁:ファン・デイン 129試合 打率.256 14本塁打 91打点 0盗塁
二塁:キム・ソンビン 140試合 打率.287 3本塁打 61打点 13盗塁
三塁:リュ・ジヒョク 127試合 打率.277 2本塁打 48打点 8盗塁
遊撃:パク・チャンホ 130試合 打率.271 4本塁打 45打点 41盗塁
左翼:イ・チャンジン 111試合 打率.301 7本塁打 48打点 3盗塁
中堅:ソクラテス 127試合 打率.311 17本塁打 77打点 17盗塁
右翼:ナ・ソンボム 144試合 打率.320 21本塁打 97打点 6盗塁
指名:チェ・ヒョンウ 132試合 打率.264 14本塁打 71打点 1盗塁
控え:ハン・スンテク、キム・ギュソン、キム・ドヨン、イ・ウソン、コ・ジョンウク、キム・ホリョンなど
投手陣よりもさらに攻撃陣の数字が改善され、4年ぶりにポストシーズン進出を果たすことができた。NCより移籍したナ・ソンボムは唯一のレギュラーシーズン全144試合出場で、チーム最多の本塁打と打点を記録、打線の核として機能した。ソクラテスも走攻守に活躍しチームに勢いを与えた。また4月にキウムからトレードで移籍したパク・トンウォンも特に打撃面で期待通りの成績を残した。26歳のファン・デインは後半に失速したが自身最多の91打点を記録した。
プロ野球全体で2021年より盗塁数が減少した中、チーム盗塁数は10チーム中最多(103)だった。特にパク・チャンホは2019年以来2度目となる盗塁王の個人タイトルを受賞した。3月の示範競技で活躍し期待された19歳の新人の内野手キム・ドヨンは満足のいく打撃成績を残せなかったが、13盗塁と走塁では結果を残し2023年以降の可能性を感じさせた。
【オフシーズンの動向】
唯一のFA選手となったパク・トンウォンはLGと契約し、補償選手として左腕の中継ぎとして活躍するキム・デユ投手を指名した。パク・トンウォンの移籍に備え、キウムとのトレードで新人ドラフト指名権の代わりに一軍で控えとして起用されていた25歳のチュ・ヒョサン捕手を補強していた。またハン・スンヒョク、チャン・ジスの投手2名をハンファへトレードし、22歳の若手内野手ピョン・ウヒョクを獲得した。
外国人選手はソクラテスとのみ再契約し、ノリンとパノーニの2名とは再契約しなかった。新外国人選手としてはショーン・アンダーソン投手、アドニス・メディーナ投手の右腕2名と契約した。
2023 WBC(ワールドベースボールクラシック)韓国代表にはヤン・ヒョンジョンとイ・ウィリの投手2名、ナ・ソンボムの野手1名と合計3名が選ばれた。
監督1年目のキム・ジョングク監督は4年ぶりのポストシーズン進出に成功し、上場の結果を残した。しかしせっかくシーズン中の4月にトレードで補強したにも関わらずパク・トンウォンがFAとなりLGへ移籍してしまい、代わりに前年のナ・ソンボムのような大物のFA選手の補強もなく、2022年のオフシーズンは低調な内容に終わった。チームの残した成績や数字は悪くないとはいえ、優勝したSSGなどの上位と比べ投打ともに選手層は薄い。だがイ・ウィリ、キム・ドヨンなどの若手に続く選手の育成と抜擢を進め、チームの底上げを図りさらなる上位進出を図りたいところである。
(文責:ふるりん)