DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第8回 ロッテジャイアンツ

「止まらない転落」 
2015年成績 : 66勝77敗1分け(公式戦8位)
チーム総合採点…45点


1. 【たった1年だけのイ・ジョンウン体制】
 2014年オフシーズン、ロッテの生え抜きとして就任したイ・ジョンウン新監督。オフシーズン大きな補強はなかったが、かつてプロ野球界を盛り上げた人気チームの復活が期待された。

 3月28日、本拠地・社稷での開幕戦は新球団KTの一軍初の公式戦ということで注目された。1回表、開幕投手の新外国人投手ラリーが先制3ランを浴び、5回表には2-8とリードされていたが、新球団の経験不足に付け込み逆転し12-9と勝利した。このあと3月31日のLG戦まで開幕3連勝と好スタートを切った。4月5日のトゥサン戦はカン・ミンホの3本塁打など16得点で快勝した。ラリー、リンドブロムの新外国人投手2名は安定した投球を続けたが、ソン・スンジュン以外の韓国人投手が心もとなかった。
 5月1日、新球団KTと5対4のプロ野球史上最多人数のトレードが成立した。控え捕手チャン・ソンウ、控え外野手ハ・ジュンホ、リリーフ投手チェ・デソンなど5人の投手の代わりに、リリーフの即戦力イ・ソンミン、有望な若手投手パク・セウン、若手捕手アン・ジュンヨルなど4人の選手を獲得した。5月10日のNC戦で6連敗と上位から後退したが、5月15日から17日のKT3連戦で3連勝し勝率5割に復帰した。5月22日のLG戦は12-20で敗れたが、翌23日のLG戦は19-11で勝利するなど大味な試合もあった。24日のLG戦もカン・ミンホの2本塁打で10-3と3試合連続2ケタ得点を挙げていた。連続2ケタ得点は5月26日のSK戦まで続いたが、27日のSK戦では完封負けを喫してしまった。
 勝率5割以上をしばらく維持していたが、6月9-11日の新球団KTとの3連戦で3連敗を喫し、13日のSK戦まで5連敗を喫した。この危機を救ったのがリンドブロムで、6月14日のSK戦で韓国初完封により8勝目で連敗も止まった。だがチーム状態は上向くことはなく、ファン・ジェギュン、チェ・ジュンソクなどの中軸打者が打っても勝てない試合が続いた。キム・ソンベに安定感がなく課題の抑えが固定できず、シム・スチャンやイ・ソンミンなどが起用されたが安定した試合運びができなかった。7月14日のLG戦で4連敗となり、一時期9位にまで後退した。7月25日のキア戦で、開幕から7連敗となっていたパク・セウンがプロ初勝利をあげ、KTから移籍してきた将来のエース候補には大きな自信となった。パク・セウンは7月31日には古巣KT相手に2勝目をあげた。
 7月29日のLG戦で4連勝となったが、依然8位と上位とは大きな差がついていた。8月2日のKT戦で、外国人打者アドゥチがチーム史上初となるシーズン20本塁打・20盗塁を達成した。リンドブロムは7月以降好投すれども勝てない試合が続いた。だがポストシーズンに進出できる5位争いは5割未満の争いとなっていたため希望はあった。9月2日のKT戦、リンドブロムが12勝目をあげSKを抜き7位に浮上した。このあと調子を上げ、9月4日のキア戦で勝利しキアを抜いて6位に浮上した。そして引き分け1つを挟み、9月8日のSK戦、リンドブロムの好投と打線の爆発で10-4と勝利し、ついに5位に浮上した。
 9月15日のトゥサン戦ではラリーもリンドブロムに続いて10勝目をあげ、勝率5割に近づき5位の座を固めていくかに思われた。ところが9月20日のサムソン戦に13-17で敗れ6位に交代すると、この後勝てなくなり9月24日のトゥサンとのダブルヘッダー2連戦ともに敗れ6連敗となってしまった。9月27日のNC戦、カン・ミンホの35号本塁打とラリーの好投で連敗を脱出したが、29日のキア戦で敗れキアに抜かれ8位に後退してしまった。翌30日のキア戦はリンドブロムに託したが1-13と大敗し、公式戦5位以上の可能性がなくなり2013年以降3年連続でポストシーズン進出失敗となった。
 10月3日のLG戦まで4連敗となり公式戦8位も確定した。10月4日、公式戦最終戦となった本拠地・社稷でのKT戦で勝利し2015年シーズンを終えたが、2006年以降の過去10年で最悪の8位となってしまったため、秋空には物悲しい秋風だけが吹いていた。そして10月8日にはイ・ジョンウン監督のたった1年での解任が発表された。
 


2. 【チーム分析】
 ロッテの下位低迷を招いたのは投手陣であった。チーム防御率5.07は10チーム中8位、チーム総失点802は9位だった。特にリリーフ陣、抑えの切り札の不在が目立った。チームセーブ数19は10チーム中9位、セーブ失敗18回はトゥサンと並び最多タイだった。
 先発の軸となったのは両外国人投手で、チーム最多の13勝をあげた右腕リンドブロムは2015年シーズン、プロ野球全体でも最多となる203イニングを投げ、23回もクォリティースタート(先発として6回以上を投げ自責点3以内)を記録した。左腕ラリーも11勝と結果を残した。韓国人投手として最多勝利をあげたのは35歳のベテラン、ソン・スンジュンの8勝だったが、これに次ぐ若手が心もとなかった。期待されたイ・サンファは3勝、パク・セウンは2勝にとどまった。ロッテの生え抜きとして先発で活躍してきたが2014年シーズンオフにFA(フリーエージェント)でトゥサンに移籍した左腕チャン・ウォンジュンの穴は埋まらなかったと言える。
 前述したようにリリーフも不安定だった。2014年20セーブをあげたキム・スンフェが不振で抑えとして起用できなくなると、最後まで抑えを固定できなかった。チーム最多セーブがシム・スチャンの5で、以下イ・ソンミンが4、7月に戦列に復帰したアンダースローのチョン・デヒョンが3しかセーブを記録できなかった。その中でチーム最多の67試合に登板したホン・ソンミンはチーム最多の8ホールドと、中継ぎの柱となっていた。また左のリリーフとしてはイ・ミョンウ、カン・ヨンシクが起用され続けた。


 打線は20本塁打以上が4人とタレントがそろっていたものの、チーム成績で見ると平凡だった。チーム打率.280は10チーム中5位で、チーム本塁打数177は2位と一発の脅威はあったが、チーム総得点765は5位と他チームより抜きんでていたとは言えなかった。チームの三振数が1186と10チーム中最多で、併殺打も136で2位と粗さが目立っていて、打線につながりを欠いていた。本塁打は多いが犠牲フライは28と10チーム中最少だったのも課題である。ロッテのチームカラーは以前から派手な一発攻勢であるが、それだけでは勝利に結びつかないのは明白である。
 チームの中軸となったのはカン・ミンホ(35本塁打・86打点)、チェ・ジュンソク(31本塁打・109打点)、ファン・ジェギュン(26本塁打・98打点)、アドゥチ(28本塁打・106打点)の4人だった。安打製造機のソン・アソプは例年より低い打率.317に終わったが、カン・ミンホ、ファン・ジェギュンとともにWBSCプレミア12韓国代表として活躍した。セカンドのレギュラーのチョン・フンも135試合に出場した。特に大きな成長を遂げたのが層の薄い内野のユーティリティープレイヤーとして122試合に出場したオ・スンテクで、ショートのレギュラーだったムン・ギュヒョン、ファーストのレギュラーだったパク・チョンユンの不振を埋めた。
 守備・走塁面ではチーム最多の24盗塁で、センター、レフトともに守れたアドゥチの貢献度が高かった。KTから移籍してきたアン・ジュンヨルも控え捕手として起用され、今後の成長に期待を持たせた。



3. 【オフシーズンの動向】
 2016年シーズンはイ・ジョンウン監督に代わり、現役時代はロッテに所属しなかったが、2011年から2012年にかけてロッテのコーチを務めていたチョ・ウォヌ新監督が率いることになった。まだ44歳の若き指導者は、短命に終わる監督が続いているロッテをどのように変えていくのか注目される。
 近年の低迷から脱出するため、2016年のFA市場ではネクセンの守護神だったソン・スンナク、SKで長年リリーフとして活躍してきたユン・ギルヒョンと2人の実績ある右腕と契約し、弱点のリリーフ陣の補強に成功した。また先発、リリーフともに起用されたベテラン右腕のシム・スチャンはFAでハンファへ移籍した。野手では余剰戦力を対象とした2次ドラフトで、ネクセンで控え野手として好成績を残したパク・ホンドを指名できた。リンドブロム、ラリー、アドゥチと好成績を残した外国人選手3人とも再契約した。
 2008年から2012年まで5年連続でポストシーズンに進出していたころ、本拠地・社稷野球場は釜山周辺の野球ファンで埋め尽くされ、プロ野球人気を引っ張っていた。年々順位が下がり転落が止まらずその熱狂がすっかり遠ざかったいま、ロッテは勝利の興奮でファンたちを野球場に呼び戻すことができるか。投打ともに既存の主力だけではなく、2015年シーズンに芽生えだした新しい力の更なる台頭が望まれる。

(文責:ふるりん