DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第9回 KTウィズ

4年目にして一歩前進

 

2018年シーズン成績

レギュラーシーズン:59勝82敗3分(勝率.418)9位

ポストシーズン:出場せず

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本拠地・水原(スウォン)KTウィズパークでカン・ベッコが打席に入る。2018年は29本塁打で高卒新人のシーズン本塁打記録を更新。

 

1.4年目にして最下位脱出

 2015年より一軍へ参入したが、3年連続最下位、しかも勝率3割台とKTウィズの苦闘は続いた。9番目のプロ野球チーム・NCダイノスの創設からわずか2年で10番目のプロ野球チームとして誕生したKTは、既存の球団と伍するだけの選手層をそろえられなかった。新人ドラフトで他チームよりも多くの有望な新人選手たちを指名できたが、育成のノウハウもなかった。

 こういった惨状から脱するため、2017年にはMLB(メジャーリーグベースボール)・サンフランシスコジャイアンツで試合に出場した韓国代表経験のある内野手ファン・ジェギュンが韓国へ復帰する際、古巣のロッテではなくKTと4年契約を結ばせることに成功し、トゥサンで2011年から7年間活躍した外国人投手ニッパートとも契約し、積極的に戦力を補強した。また開幕前の海外キャンプでその打撃の才能を見せ付けていた高卒新人カン・ベッコも話題になっていた。

 3月24日、レギュラーシーズン開幕戦のキア戦で、まだ18歳だったカン・ベッコはプロ初打席で初本塁打というプロ野球史上2人目の快挙をやってのけ、2018年のKTはこれまでとは違うのではないかという予感を抱かせた。カン・ベッコは3月中の7試合だけで4本塁打と、KTだけでなくプロ野球界全体の注目を集めた。

 4月12日まで10勝6敗と順調な出だしだったが、翌13日から19日まで6連敗とつまづいた。カン・ベッコの加入で打線に厚みがましたが、リリーフを中心とした投手陣が相変わらず弱かった。そのカン・ベッコも4月は1本塁打のみとプロの壁に苦しんだかのようだった。5月になるとKTは8位に後退、勝率5割からも遠ざかっていった。5月25日のLG戦で3連勝し7位に浮上したが、上位に迫ることはできなかった。

 6月2日までの4連敗で8位に後退した。6月8日のネクセン戦でカン・ベッコが2本塁打を記録し高卒新人ながら10号本塁打を記録したが、チームは勝てず4連敗で9位にまで落ち込んだ。その後6月16日までの6連敗で勝率は3割台に落ち込み、6月23日までの引き分け1つを挟む4連敗でさらに勝率は下がり、キム・ギョンムン監督が辞任するなどこれまでにない不調に陥っていたNCとの最下位争いが始まった。

 6月下旬からは梅雨の季節で雨天中止となった試合のおかげもあって復調した。7月4日のサムソン戦に勝利し勝率を4割に戻し、レギュラーシーズンの後半になって希望が見えてきた。すでに開幕から16本塁打を記録していたカン・ベッコは、7月14日のオールスター戦に監督推薦選手として出場し、高校時代投手としても試合に出場していた経験を生かし6回表にマウンドへ上がって打者2人から三振を奪い、7回裏にオールスター戦史上最年少安打記録(18歳)を更新した。

 7月27日のLG戦では19歳の高卒新人キム・ミンが一軍初先発で5回を1失点に抑え、一軍初勝利を記録し、その後も先発として起用され続けた。7月31日時点で依然9位だったが、勝率.438で最下位NCとは5ゲーム差をつけ、8位ロッテとは0.5ゲーム差と、上の順位を狙える位置にはつけていた。しかし8月5日のネクセン戦でシーズン最多の20失点で敗れ4連敗するなど調子を落とし、最下位NCが近づいていった。8月17日から9月3日までのジャカルタパレンバンアジア競技大会にはKTから誰も選ばれず、一軍の試合が行われなかった中断期間による恩恵と言えるものはなかった。

 9月4日からレギュラーシーズンが再開され、ポストシーズン進出のかかる5位争いは勝率4割台後半となったため、9月8日の時点で勝率.431、残り26試合だった9位KTにもまだ可能性が残っていた。しかし9月9日から15日までの6連敗、対照的にNCの7連勝でKTは最下位に転落してしまった。だが9月15日のサムソン戦でカン・ベッコが高卒新人としてはプロ野球新記録となる22号本塁打を放ち、希望を抱かせた。

 9月20日のロッテ戦ではカン・ベッコが高卒新人としてはプロ野球初となる3打席連続本塁打を記録したが、最下位KTは10-11で敗れた。9月26日のキア戦では外国人選手ロハスがチーム史上初のシーズン40本塁打を記録し勝利に貢献した。NCが不振に陥り、9月29日のサムソン戦で引き分け再び9位に浮上したが、10月2日までの4連敗で再び最下位に転落した。10月10日のロッテとのダブルヘッダー2連戦は、カン・ベッコの29号本塁打、先発キム・ミンの7回無失点の好投などで連勝し最下位から脱出した。

 10月12日のネクセン戦に敗れたため、レギュラーシーズンの最終順位決定は翌13日のトゥサン戦に持ち越しとなった。4年連続最下位か、初の最下位脱出なるかをかけた一戦は、すでにレギュラーシーズン優勝を決めていたトゥサンではあったが、9回裏に抑えのキム・ジェユンから3-3の同点に追いつく粘りを見せ、試合は延長戦に入った。10回表にロハスが2打席連続となる43号本塁打で1点を勝ち越し、10回裏に32歳の左腕ホン・ソンヨンが無失点に抑え、KTが4-3で勝利し自力で9位を決めて2018年シーズンを終えた。なお、2018年限りで自由契約となりKTのコーチへ転身したホン・ソンヨンにとってはこの試合が現役最後の登板で、後輩たちにチームの更なる飛躍を託して身を引いた。

  2018年シーズン、投打ともにある程度戦い方が構築され初の勝率4割台でシーズンを終えることができた。上位との差はまだ少なくなく勝ちきれない試合が目立ち最下位争いにとどまったが、実力不足の新球団というイメージを払拭するのにはある程度成功した。

 

 

2.チーム分析

 チーム防御率5.37はリーグ7位で、過去3年と比べてリーグ最悪に近い内容だった投手陣には一定の改善が見られた。

 先発のチーム防御率5.51はリーグ7位だった。37歳の外国人選手ニッパート、韓国4年目の外国人選手の左腕フィアベンド、2017年シーズンオフにネクセンから移籍した左腕クム・ミンチョルの3人がチーム最多の8勝を記録し、シーズンを通して先発として登板し続けた。また27歳のコ・ヨンピョは2年連続規定投球回数(144)に達し6勝を記録した。 

 しかし期待された若手はあまり結果を残せず、23歳の右腕チュ・グォンは2017年よりさらに内容が悪化し3勝どまりだった。一方で19歳の高卒新人キム・ミンは7月以降だけで4勝と今後に期待を抱かせる内容を見せた。

 リリーフの防御率5.14はリーグ6位で、上位チームと比べても極端な差はなかった。チーム最多登板(62試合)のキム・ジェユンは7勝15セーブと期待にこたえた。22歳の右腕オム・サンベクがチーム最多の12ホールドで右のイ・ジョンヒョク、左のホン・ソンヨンとシム・ジェミンなどがリリーフで主に起用された。

 

 2018年シーズンのKTの攻撃陣では、本塁打数が以前より大幅に増加した(2017年のチーム本塁打数は119本)。チーム打率.275はリーグ9位だがチーム本塁打数206はリーグ2位と長打力はあったが、総得点757はリーグ8位とつながりを欠いた打線だった。最も注目された19歳の高卒新人カン・ベッコは7月からは主に1番打者で起用され、29本塁打・84打点を記録し高卒新人のシーズン本塁打プロ野球記録を大幅に更新した(新人のプロ野球シーズン本塁打数記録は1996年、現代ユニコーンスのパク・チェホンの30本)。KTだけでなくプロ野球界の今後を担う才能を見せてくれた。

 4番を任されたのは韓国2年目の外国人選手ロハスで、チーム最多の43本塁打・114打点だけでなく18盗塁を記録し、走攻守ともに中心的存在だった。そのほかにはパク・キョンスが25本塁打・74打点、ファン・ジェギュンが25本塁打・88打点、37歳のベテラン打者ユ・ハンジュンが20本塁打・83打点を記録し中軸打者として機能した。ほかにはユン・ソンミン(19本塁打)、捕手チャン・ソンウ(13本塁打)、内外野のユーティリティープレイヤーのオ・テゴン(12本塁打)と2ケタ本塁打の選手が8名と、切れ目のない打線が構築された。

 

3.2019年シーズンに向けて

 かろうじて4年連続最下位を免れたKTウィズは、監督をキム・ジヌクからイ・ガンチョルに交代させた。イ・ガンチョル新監督は他チームの投手コーチを歴任し、一軍の監督は初めてではあるがこれまでの選手育成の手腕が評価されたと思われ、チームの大黒柱となる投手の育成に努めることであろう。

 FAとなった選手ではパク・キョンス、クム・ミンチョルの2人ともに再契約した。またショートの守備の名手だったパク・キヒョク、個人通算2000安打を達成した走攻守そろった外野手イ・ジニョンなど、実績あるベテラン選手たちが現役を引退し、投打ともに世代交代を進めた。

 また2017年から先発をつとめたコ・ヨンピョが軍へ入隊したが、代わりにMLB・シカゴカブス傘下のマイナーリーグチームや日本プロ野球千葉ロッテに在籍した経験があり、2015 WBSCプレミア12などで韓国代表に選ばれた29歳の右腕イ・デウンが新人ドラフトで指名され入団し、先発としての活躍が期待されている。

 外国人選手に関しては、4番打者を任されたメル・ロハスのみ再契約し、33歳のフィアベンド、37歳のニッパート(外国人選手としてはプロ野球史上最多の102勝)とは再契約しなかった。代わりの新外国人選手としてウィリアム・クエバス投手、ラウル・アルカンタラ投手と2名の右腕と契約した。

 

 たった1つではあるが順位を上げたKTウィズは、2019年シーズン、イ・ガンチョル新監督のもとカン・ベッコなどの若手の活躍と成長によりチームを底上げし、さらに高いところを目指していくであろう。一軍参入から5年目、どれだけチームが成長したのかを見せなくてはならない重要なシーズンになりそうだ。

 

(文責:ふるりん