DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第10回 NCダイノス

突然訪れた転機

 

2018年シーズン成績

レギュラーシーズン:58勝85敗1分(勝率.406)最下位

ポストシーズン:出場せず

f:id:takefumif:20180914205038j:plain

2018年までNCの本拠地だった馬山(マサン)総合運動場野球場

 

1.初の最下位

 NCダイノスは、2011年創設の新興球団でありながら2017年まで4年連続ポストシーズン進出と結果を残し、2018年シーズン開幕前は優勝候補の一角に上げられていた。球団創設以来指揮を執り続けるキム・ギョンムン監督にとっても、監督として自身初の韓国シリーズ優勝をかけた勝負の年であった。開幕前の3月に手薄な捕手を補強するため、ハンファからチョン・ボムモをトレードで獲得していた。

 3月24日、レギュラーシーズン開幕戦のLG戦では新外国人選手で台湾出身の王維中が7回を1失点に抑え韓国初勝利を記録、その後27日のハンファ戦まで3連勝と順調なスタートだった。4月4日のサムソン戦までの開幕10試合で8勝2敗と、ここまでは優勝候補にふさわしく見えた。

 ところが4月8日、優勝候補とされたトゥサンとの対戦で9回裏に逆転され10-11と敗れるなど、4月15日まで9連敗を喫し下位へと落ちていった。2017年までチームの強みとされていたリリーフ陣が疲弊し、安定した試合運びができなくなり、4月24日までまた5連敗を喫した。

 王維中、ベレットの両外国人選手以外の先発投手陣のやりくりが苦しく、5月5日には9位に後退した。また2017年まではリーグ屈指の破壊力を誇っていた打線も沈黙し始め、5月15日のロッテ戦で敗れついに最下位へ転落した。そして5月25日まで6連敗となり、勝率は3割台半ばまで落ち込み勝率4割台半ばだった9位サムソンとも大きな差がついてしまった。

 結局最下位から抜け出せなくなり、6月4日にはキム・ギョンムン監督が成績不振で退任、ユ・ヨンジュン団長が監督代行として指揮を執った。だが6月6日まで5連敗、この時点で勝率は.328まで落ち込んだ。翌7日のロッテ戦でユ・ヨンジュン監督代行になって初勝利を記録し、6月16日のKT戦まで5連勝、9位KTとの差を縮めた。

 しかし6月30日まではまた4連敗を喫し、レギュラーシーズン144試合の半分以上を消化して最下位に低迷し続ける予想外の事態となった。7月になるとイ・ミンホが抑えに定着しリリーフが安定してきたことで、7月末には勝率が4割に近づき最下位脱出の希望が見えてきた。7月30日には中継ぎのユン・スホをトゥサンへトレードに出し、トゥサンから控えの外野手だったイ・ウソンを獲得して打線の強化につとめた。

 8月には勝率4割に復帰し9位KTとの差を縮め、8月17日からジャカルタパレンバンアジア競技大会野球のための中断期間に入った。NCからは左打ちの内野手パク・ミヌが韓国代表に選ばれ、大会3連覇により兵役免除の恩典を受けることができた。9月4日からレギュラーシーズンが再開されたが、6日まで4連敗とつまづいてしまった。

 NCの本拠地・馬山総合運動場野球場の横では新球場の建設が進んでいた。2018年は球団創設以来使用してきた野球場を一軍が利用する最後の年と予定されていたため、本拠地を移転するに当たって何としても最下位は避けたかった。そして9月7日から15日までシーズン最多の7連勝でKTを抜いて9位に浮上した。

 だが9月22日までの4連敗でKTを突き放せず、さらに9月30日までの6連敗でまたもや最下位に転落した。10月2日のキア戦で延長11回の激闘を制しまた9位に浮上し、6日のネクセン戦でモ・チャンミン本塁打によりサヨナラ勝ちするなど勢いに乗ったかに思われた。だが10月7日、馬山総合運動場での2018年最後の試合は、過去に馬山を準本拠地として利用していたロッテと対戦したが敗れてしまいまたもや最下位に転落した。

  KTも勝ちきれなかったため最下位争いは最後の最後までわからなかったが、10月12日のトゥサン戦でも2-13と大敗した。KTが敗れNCが勝てば9位で2018年を終えられる翌13日のハンファ戦でも敗れてしまった。結局2013年の一軍参入から6シーズン目にして初の最下位で2018年シーズンを終えた。

 

 

2.チーム分析

  投打ともにリーグ下位の数値が並び、初の最下位はやむなしだったことがわかる。また突如世代交代の過渡期が訪れたにもかかわらず、投打ともに若手の台頭が少なかった。

 チーム防御率5.50はリーグ最下位と低迷した大きな要因となった。そのうち先発のチーム防御率5.48はリーグ6位だった。チーム最多勝は外国人選手の王維中の7勝で先発の柱となっていた。もう一人の外国人選手ベレットは6勝だった。韓国人選手ではイ・ジェハクの5勝が最多で、21歳の左腕ク・チャンモは5勝と2017年に続いて先発として起用された。

 しかし5人目の先発が確立できなかったのが上位チームとの決定的な差で、2017年に9勝を記録し期待された23歳の右腕チャン・ヒョンシクは故障で1勝止まりだった。また先発が登板した回数(704回)はリーグ最下位で、内容がそこまで悪くなくとも先発が試合をつくれないことが目立った。

 リリーフのチーム防御率5.53はリーグ8位で、先発陣とあまり数値の差がなく試合を壊してしまうことも目立った。チーム最多登板の左腕カン・ユングはリリーフだけでチーム最多タイの7勝・17ホールドを記録したが、防御率は6.09と高かった。2015年から2017年まで抑えを任されていたイム・チャンミンが故障で8試合のみの登板にとどまったのが痛く、代役の抑えとしてはイ・ミンホがチーム最多の14セーブを記録した。

 中継ぎではほかにウォン・ジョンヒョンがチーム最多タイの17ホールドを記録したが、防御率7.15のキム・ジンソンが50試合に登板するなど全体的に層が薄かった。21歳の左腕チェ・ソンヨンなど若手が伸び悩みあまり結果を残せなかった点が、脆弱な投手陣の底上げをもたらさなかった。

 

 チーム総得点660はリーグ最下位で攻撃力に乏しかった。チーム打率.261、チーム本塁打数143ともに最下位で迫力に欠けていた。

 生え抜きの外野手ナ・ソンボムが唯一レギュラーシーズン144試合に出場、打率.318・23本塁打・91打点と存在感を示した。韓国2年目の外国人選手スクラッグスはチーム最多の26本塁打・97打点を記録したが、打率.257と安定感を欠いた。ほかには故障で81試合の出場にとどまったが、モ・チャンミンが17本塁打・62打点と勝負強い打撃を見せた。

 また二塁のレギュラーだったパク・ミヌ、自己最多の125試合に出場し11本塁打を記録したノ・ジンヒョクは期待通りの結果を残した。だが三塁のレギュラーとして期待されたパク・ソンミンが2017年に続き103試合のみの出場で16本塁打・55打点にとどまり、2019年まで4年間の大型契約に見合わない内容だった。

 主軸としての活躍が期待された外野のキム・ソンウクも13本塁打・45打点の成績にとどまり、チーム全体が停滞していたことが察せられる。シーズン後半に20歳の若手キム・チャンヒョンがショートで先発出場する試合が増え、最下位に低迷するチームの数少ない希望となっていた。 

 

3.オフシーズンの動向

 2018年シーズン終了後まもなく、守備コーチをつとめてきた44歳のイ・ドンウク新監督の就任を発表しチームの再建に乗り出した。また2014年にFA(フリーエージェント)となりトゥサンから移籍し外野の主力として活躍したイ・ジョンウクが現役を引退し、チームはさらなる世代交代が進むことになった。

 オフシーズンで最も話題を呼んだのは、2010年からトゥサンの正捕手として活躍し、FAとなっていたヤン・ウィジと4年総額最大125億ウォンの超大型契約を結んだことである。これで2017年シーズンオフに軍へ入隊したキム・テグン(2019年9月ごろ除隊予定)の穴を埋めるどころか、新たな主軸打者が誕生したとまで言える。新興球団のNCは過去にもイ・ホジュン、イ・ジョンウク、ソン・シホン、パク・ソンミンなど他チームで活躍しFAとなった大物選手を獲得し、チームの強化を図ってきた。

 またFAとなっていた内野手モ・チャンミンとも再契約し、薄くなった選手層を守った。ヤン・ウィジの補償選手としては、伸び悩んでいた24歳の右腕イ・ヒョンボムが指名されトゥサンへ移籍した。またスクラッグス、王維中、ベレットの外国人選手3名とは再契約せず、ドリュ・ルチンスキー投手、エディ・バトラー投手、クリスティアンベタンコート捕手の3名の新外国人選手と契約した。

 

 2019年シーズンより使用する予定の新本拠地・昌原(チャンウォン)NCパークは完成間近であり、最新の技術を導入したボールパークとしてプロ野球ファンたちに愛される空間となることが期待される。またこれまでソウル郊外の高陽(コヤン)市を本拠地としていた二軍は、新本拠地の完成により馬山総合運動場野球場を利用することになり、プロ野球で初めて一軍と二軍の球場が隣接し、選手の育成と起用がより円滑化されることが期待される。プロ野球界の規模があらゆる面で拡大していった2011年に創設され、新たな息吹をもたらしたNCダイノスは今後もさらなる進化を遂げ、近い将来の韓国シリーズ初優勝に向けて進んでいくことであろう。

 

(文責:ふるりん