DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第7回 キアタイガース

「再建へ歩み出す」 
2015年成績 : 67勝77敗(公式戦7位)
チーム総合採点…55点


1. 【キム・ギテ新監督、再建に着手】
 2013年から2014年にかけ2年連続8位と低迷し、ソン・ドンヨル監督(元中日)も石をもって追われる形で辞任し、暗黒に染まりつつあったキアタイガース。再建を託されたのは、本拠地・光州出身ながらこれまで前身のヘテ、キアに在籍したことはなかったが、2014年シーズン途中で辞任したもののLGを11年ぶりのポストシーズンへと導く指導力が評価されたキム・ギテ新監督だった。2014年シーズンオフ、セカンドのレギュラーだったアン・チホンが国際大会での兵役免除の機会を得られず軍へ入隊、そしてセンターを守っていたイ・デヒョンが新球団KTへ特別指名で移籍するなど、大きな戦力低下が見られたキアの前途は困難であるかのように見えたが、2013年までキアに在籍しメジャーリーグベースボール(MLB)に挑戦したが失敗したユン・ソンミンの復帰が決まるなど、明るい話題もあった。


 3月28日、本拠地・光州でのLGとの開幕戦に勝利し、雨天中止や戦力の整っていない新球団KTとの対戦が続いたことで、幸運にも4月5日のKT戦まで開幕6連勝と好発進だった。だが4月11日のサムソン戦まで5連敗してしまった。復帰したユン・ソンミンはこれまでチームの課題だった抑えとして起用され、エースのヤン・ヒョンジョン、スティンソン、ハンバーの両外国人に続く先発投手の発掘が急務となったが、これといった人材を見つけられなかった。4月は勝率5割前後をさまよい、混戦が続いていた。4月15日のLG戦、ヤン・ヒョンジョンの牽制球につり出されたLGの一塁走者ムン・ソンジェが二塁でのタッチプレーでセーフとなった際、キム・ギテ監督がグラウンドに横たわるパフォーマンスなどで猛抗議するも判定は覆らず退場を命ぜられたが、この際もファンたちは監督に拍手喝さいを送った。
 5月6日、ハンファとの3対4の大型トレードが成立し、中継ぎとして活躍したキム・グァンスなどを獲得した。5月10日、2014年から続いていたネクセン戦の連敗を11で止め、この試合で勝利投手となったイム・ジュンヒョクが投手陣の救世主となった。5月12日のKT戦は延長10回表ユン・ソンミンが3点を勝ち越されたが、その裏キム・ミヌの3ランなどで逆転サヨナラ勝ちした。このあとキム・ミヌは内野のユーティリティープレイヤーとして重宝されるようになった。チームはなかなか上昇気流に乗らなかったが、大卒新人の外野手キム・ホリョンをスタメン起用するなど、キム・ギテ監督が新しい息吹をチームに吹き込むようになっていた。
 エースのヤン・ヒョンジョンは安定した投球で勝ち星を積み重ね、外国人投手スティンソンも徐々に韓国に適応し、ユン・ソンミンもセーブ数トップを維持していったが、イ・ボムホ(元福岡ソフトバンク)、ピル以外の中軸打者が弱かったこともあり、5割前後から勝率を伸ばせずロッテ、SKなどと6位から8位の間をさまよい続けた。7月6日、最下位KT相手に3連戦3連敗を含む4連敗を喫し、上位との差が大きく広がった。さらに7月14日のLG戦で5連敗と7位だったが勝率5割が大きく遠のいた。
 7月16日のLG戦、エースのヤン・ヒョンジョンの力投と、これまで無名に近かった捕手ペク・ヨンファンの2本塁打で15-1と大勝し連敗から脱した。かつてMLB完全試合を達成したが韓国に適応できなかった外国人投手ハンバーを退団させ、新外国人投手エバン・ミーク(登録名はエバン)と契約しテコ入れを図った。エバンは7月下旬からリリーフとして起用された。ペク・ヨンファンの活躍に刺激を受け2年目の24歳の捕手イ・ホングも活躍し、8月2日のハンファ戦までシーズン最多の6連勝、6位に浮上し勝率も5割に復帰した。
 8月18-19日のSK2連戦、スティンソン、イム・ジュンヒョクの好投、イ・ホングの本塁打などで連勝し5位に浮上、勝率5割を超えることができた。しかしここまでリリーフで好投し4勝していたエバンが離脱し9月1日のハンファ戦まで6連敗となり、6位に後退し勝率5割から遠のいた。ポストシーズンに進出できる5位争いは5割未満の大混戦となり、SK、ハンファ、ロッテとの接戦が続いた。9月5日のサムソン戦では23歳の左腕イム・ギヨンのプロ初勝利、23歳の左打者オ・ジュンヒョクのプロ初本塁打と新鮮な顔ぶれが起爆剤になるかと思われたが、5位の座は遠かった。
 9月21日のSK戦はヤン・ヒョンジョン、キム・グァンヒョンのプロ野球界を代表する左腕の先発対決となり、ピルの2本塁打の活躍でキアが7-0と勝利し、5位争いで優位に立つかと思われた。ヤン・ヒョンジョンは次の登板の9月26日のSK戦でも15勝目をあげたが、チームに勢いはつかなかった。9月29日のロッテ戦でユン・ソンミンが自身初となるシーズン30セーブを記録し、公式戦残り6試合で5位SKとは2ゲーム差とまだ希望は残っていた。
 10月2日のトゥサン戦で2-1と接戦を制しハンファを抜いて6位に浮上、残り4試合で5位SKと0.5ゲーム差と、2011年以来となる4年ぶりのポストシーズンが見えだしてきた。しかし翌3日のトゥサン戦は乱打戦となり7-7のまま延長に突入し、10回表2点を勝ちこされそのまま7-9で敗れてしまった。そして4日のトゥサン戦では完封負けを喫し、公式戦6位以下が確定しポストシーズン進出はならなかった。結局10月6日の公式戦最終戦となったLG戦で4連敗となり、2015年シーズンは7位で全日程を終了した。結果は残せなかったが、5位だった2012年以来3年ぶりに終盤までポストシーズン進出を争うことができ、キム・ギテ監督は就任1年目に再建への手ごたえを感じ取ることができたと思われる。
 

2. 【チーム分析】
 2015年シーズンも上位に進出できなかったキアは、新旧交代の時期に差し掛かっている。
 
 チーム防御率4.79は10チーム中5位、チーム総失点739は6位と、投手陣の成績はそこまで悪いとは言えなかった。
 チーム最多勝のエース、ヤン・ヒョンジョンは15勝を記録、防御率2.44と打高投低の近年のプロ野球に置いて安定した数字を残し、初の最優秀防御率のタイトルを獲得した。それに続いたのは外国人投手スティンソンで韓国1年目にして11勝を記録したが、7月以降の後半戦の内容が悪く2016年シーズンの再契約は見送られた。そのほかには31歳にして主に先発で自己最多の9勝と予想外の活躍を見せたイム・ジュンヒョクの存在が大きかった。そのほかに元メジャーリーガーのキム・ビョンヒョン(元東北楽天)など様々な選手が先発として起用されたが、結果を残せなかった。
 リリーフ陣では守護神ユン・ソンミンが30セーブと安定した内容だったが、中継ぎ陣はあまり質が高くなかった。その中で目を引くのが41歳のベテラン、チェ・ヨンピルで59試合に登板し5勝を記録、防御率2.89とまったく年齢を感じさせない内容だった。リリーフ陣で左投手があまりいなかったこともありシム・ドンソプがチーム最多の69試合に登板したが、防御率は5点台と内容は悪かった。そのほかには右腕パク・チュンピョ、ホン・ゴンヒィなども起用された。また7月に入団しリリーフとして起用されたエバンは、9月以降の内容が悪く2016年シーズンの再契約は見送られた。

 上位進出に失敗したの最大の要因は打線の弱さだった。チーム打率.251は10チーム中最下位、チーム本塁打数136は7位、チーム総得点648は最下位だった。
 不動の主軸は自己最多、チーム最多の28本塁打を記録したイ・ボムホ(元福岡ソフトバンク)、韓国2年目の外国人打者でチームの打点王(101)のピルだった。周りを固める打者が弱く、近年イ・ボムホとともに打線の中軸となっていたナ・ジワンがたったの7本塁打・31打点と不振に終わったのが最大の誤算であった。34歳のキム・ジュチャンが自己最高の18本塁打・62打点の成績を残したが、故障が多く98試合の出場にとどまるなど、外野のレギュラーは固定できなかった。キム・ウォンソプ、シン・ジョンギル、キム・ダウォンなどのベテランの日替わり起用だけでなく、大卒新人の外野手キム・ホリョンが112試合に出場と将来を見据えた起用もあった。
 イ・ボムホのサード、ファーストのピル以外の内野のレギュラーも固定できず、軍へ入隊したセカンドのアン・チホン、ショートのキム・ソンビンの穴は埋まらなかった。そのため36歳のベテラン、キム・ミヌが内野のユーティリティープレイヤーとして重宝された。カン・ハヌル、パク・チャンホなど一軍で一定の試合数に出場した若手の期待が待たれる。正捕手争いはイ・ホングが12本塁打、ペク・ヨンファンが10本塁打と20代中盤の2人に競わせそれぞれ打撃面で結果を残し、相乗効果をもたらした。 
 チーム盗塁数115は10チーム中4位と走力のないチームではなかったが、シン・ジョンギルの19個がチーム最多盗塁と図抜けた選手はいなかった。外国人打者ピルが14盗塁と、勝負強い打撃だけでなく走塁面でもチームに貢献していたのが目を引く。


3. 【オフシーズンの動向】
 2015年オフシーズンは他チームのFA(フリーエージェント)の選手に手を出さないなどおとなしかった。唯一のFA選手だったイ・ボムホも4年契約で残留した。キアでも主力として活躍した投手ソ・ジェウン、強打者チェ・ヒィソプと2人の元メジャーリーガーも現役を引退し、さらにチームの新旧交代が進んでいくと思われる。外国人選手はピルと3年目の再契約を結び、新外国人投手として2015WBSCプレミア12米国代表として活躍し、グループリーグの韓国戦で先発として好投した右腕ジーク・スプライル(登録名はジーク)、MLB通算12勝の29歳の右腕ヘクター・ノエシ(登録名はヘクター)の2名と契約した。
 キム・ギテ監督はまだ46歳と指導者としては若く、成長途上のチームを熱血指導で引っ張っていくことであろう。2016年シーズン、2年目のシーズンでいきなり大きな結果を残すのは難しいと思われるが、そう遠くない将来に安定して上位に進出できるチーム作りを目標としたい。


(文責:ふるりん