DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第9回 サムソンライオンズ

「去り行く大打者を見送りつつ」 
2017年成績 : 55勝84敗5分(レギュラーシーズン9位)
チーム総合採点…30点


1. 【大打者イ・スンヨプ最後のシーズン】
 チーム史上最低の9位となった2016年から、2017年はキム・ハンス新監督のもと建て直しを図り、チームの象徴だった大打者イ・スンヨプ(元オリックス)が引退したサムソンライオンズ。その戦いを振り返る。


 2016年オフシーズン、FA(フリーエージェント)を行使して主砲チェ・ヒョンウがキア、先発投手陣で活躍してきた左腕チャ・ウチャンがLGへと移籍し、戦力低下が心配された。補強としてはFAを行使した先発投手候補ウ・ギュミンをLG、経験豊富な内野手のイ・ウォンソクをトゥサンから獲得した。そして2017年に41歳を迎え2年契約が終了する大打者イ・スンヨプが現役を引退するのではないかと言われ、その最後のシーズンに注目が集まった。


 3月31日の開幕戦ではキアに2-7と敗れ、4月2日のキア戦でイ・スンヨプ本塁打、先発ユン・ソンファンの好投で16-3とシーズン初勝利をあげた。だが4月12日のハンファ戦まで7連敗とつまづき、4月18日のトゥサン戦に引き分けると、翌19日のトゥサン戦から4月29日のSK戦まで引き分け1つを挟んで8連敗と、開幕から20試合を過ぎてもたった3勝しかしていない圧倒的最下位に沈んでしまった。
 流出した主力選手の不在が大きかったこと以上に、期待した新外国人選手3名が活躍していなかったことが悪影響を与えた。投手ラナウドは故障で出場できず、投手ペトリック(元横浜DeNA)は先発しても勝ち星に恵まれなかった。契約が2月と遅かった野手ラフはなかなか韓国に適応できなかった。ペトリックは4月29日のSK戦でようやく韓国初勝利を記録し、ラフは5月2日のトゥサン戦でサヨナラ本塁打を打つなど調子を上げ、主軸打者としての信頼を得ていった。
 5月12日のネクセン戦でペク・チョンヒョンが29歳にしてプロ先発初勝利、チャン・ピルジュンがシーズン初セーブを記録しその後抑えに定着した。5月16、17日のSK戦でシーズン初の連勝を記録し勝率がようやく2割を超えた。5月19日のハンファ戦でウ・ギュミンが移籍後初勝利をあげ、21日のハンファ戦でシーズン初の3連勝となり、9位ハンファとの差を縮めた。なお、21日の試合では先発ユン・ソンファンがハンファのロサリオに与えた死球からベンチ総出の乱闘劇が始まり、暴力行為に加担したペトリックなど合計4名が退場となった。さらに警告試合となったため、死球を与えた2番手キム・スンヒョンも退場となってしまった。
 5月24日のKT戦でラナウドがようやく韓国での一軍初登板を果たし、戦力が充実してきた。そしてラナウドが韓国初勝利をあげた5月31日のロッテ戦から6月3日のキア戦までシーズン初の4連勝と、勝率も3割台半ばまで上げてきた。6月6日のトゥサン戦では延長10回表、イ・スンヨプの2ランにより12-10で勝利した。6月15日のKT戦では、キム・デウが4年ぶりの先発勝利をあげるなど、選手層が薄いながらも何とかやりくりする姿勢が見えた。そして6月21日のLG戦で先発キム・デウが好投して勝利し、チームもKTを抜いて9位に浮上すると、イ・スンヨプの2本塁打で勝利した6月24日のハンファ戦まで4連勝となった。
 6月30日のSK戦まで4連敗と足踏みしたが最下位には転落せず、7月12日のKT戦まで3連勝し勝率が4割を超えた。2016年に開場した大邱サムソンライオンズパークで開催された初のオールスター戦(7月15日)は、ファン・選手間投票で選出され出場したイ・スンヨプとその息子たちが務めた。1995年から22年以上の間、韓国の野球界で輝きを放ち続けた大打者のユニフォーム姿を見られる時間は残り少なくなっていた。
 7月23日のLG戦では、パク・ヘミンの活躍で勝利しハンファを抜いて8位に浮上した。勝率は4割台前半で7位以上とは大差がついていたが、選手たちはわずかな可能性を信じて戦い続けた。8月3日のトゥサン戦まで5連敗しハンファと同率8位に並ばれたが、いったん突き放したものの8月11日のハンファとの直接対決に敗れ9位に後退した。このころからイ・スンヨプは、2017年シーズン最後の遠征地を訪れるたびに、記念品を贈呈され相手チームからも名残惜しくユニフォーム姿での別れを告げられるようになった。
 8月25日のSK戦まで5連敗を喫し、勝率3割台に戻ってしまい8位ハンファとの差も開いてしまった。そして9月1日のSK戦までまたもや5連敗となり、レギュラーシーズン残り20試合で勝率3割台後半とポストシーズン進出の可能性も限りなく小さくなった。この試合で41歳を超えたイ・スンヨププロ野球記録の459本目の二塁打を記録した。すでにプロ野球史上最多の463本塁打を記録していた大打者の現役生活も、残りわずかとなっていた。
 チームがシーズン終盤で最下位争いをしていると、個人タイトル争いだけが注目されるようになる。9月14日のNC戦で2本塁打6打点と活躍したラフは打点王争いでチェ・ヒョンウらと競い、2015年、2016年と連続して盗塁王に輝いたパク・ヘミンは3年連続盗塁王を確実にしていた。21失点で大敗した9月17日のトゥサン戦でもラフは2打点と活躍し、チェ・ヒョンウを抜いて打点王争いトップに立った。結局9月23日の8位ハンファとの直接対決に敗れ、サムソンは2年連続9位が確定した。結局ラフは韓国1年目にして打点王の個人タイトルを受賞した。
 イ・スンヨプ引退試合は、大邱サムソンライオンズパークでの10月3日のレギュラーシーズン最終戦のネクセン戦に決まった。プロ野球の歴史にその名を深く刻んだ大打者の最後のユニフォーム姿を見ようと、満員の観衆で埋まった試合の始球式はイ・スンヨプと苦楽を共にしてきた妻が務めた。またサムソンの選手たちは、引退を機に永久欠番に指定されたイ・スンヨプの36番をつけて試合に出場した。イ・スンヨプ自身も3番一塁で先発出場した。そして迎えた1回裏の第1打席、イ・スンヨプはライトスタンドへと自身通算466本目の本塁打を打ち上げた。まだその興奮冷めやらぬ3回裏、イ・スンヨプの2打席連続、自身現役最後となる467本目(韓国での記録のみ)の本塁打は、美しい放物線を描いて再びライトスタンドへと飛びこんだ。
 イ・スンヨプは現役最後の試合、9回表の守備にも就いて1995年のプロ入り以来23年間の現役生活に別れを告げた。試合終了後には盛大な引退セレモニーも開かれ、場内の2万人以上の観客は惜しみない拍手を送り、サムソンライオンズのみならず韓国代表が出場した国際大会で活躍してきた大打者を笑顔で送り出した。だが2017年のサムソンは下位に低迷したままその戦いを終え、後輩の選手たちは大先輩のイ・スンヨプに心置きなく引退してもらったとは言い難かった。
 


2. 【チーム分析】
 2017年のサムソンは、4月までに大きく負け越したのが最後まで響き、選手層が厚くなかったため若手の起用も少なくなかったが、チーム史上初の勝率3割台、2年連続9位で終えた。


 チーム防御率5.90は10チーム中最下位で、先発の防御率6.02も最下位だったが、リリーフは防御率5.75で9位だった。いずれにしろ投手陣全体が弱く下位にとどまった大きな要因であったことに変わりない。クォリティースタート(先発が6回を投げ自責点3以下)は10チーム中最少の43試合で、先発投手陣が脆弱だった理由としては、2016年同様外国人投手が結果を残せなかったことがあげられる。ラナウドは故障もあり11試合のみの登板で2勝、ペトリックは先発ローテーションを守り続けたが防御率は6点台で3勝と、外国人投手の勝利数が5勝のみと10チーム中最少だった。チーム最多勝は36歳のベテランで2013年以降5年連続2ケタ勝利を記録したユン・ソンファンの12勝だったが、これに続く先発が弱かった。FAによりLGから移籍したウ・ギュミンは7勝に終わった。29歳にしてリリーフのみならず先発としても起用されたペク・チョンヒョンが自己最多の8勝と結果を残した。20歳の若手チェ・チュンヨンが3勝のみと結果はあまり残せなかったが、将来を見据えて先発に起用されることもあった。
 リリーフでは66試合とチーム最多登板のシム・チャンミンが16ホールド、チーム最多の21セーブのチャン・ピルジュンが中心的な存在だった。左のリリーフではかつて先発として活躍していたチャン・ウォンサムが最多の49試合に登板した。その他には37歳のクォン・オジュン、プロ2年目で25歳のキム・スンヒョンが起用されたが、選手層は薄く中継ぎ陣で失点を抑え試合の流れを引き寄せる試合は少なかった。

 
 チーム打率は.279で10チーム中8位、チーム得点は757で6位、チーム本塁打数は145で7位と、攻撃力は決して低くなかった。
 8月に41歳となったイ・スンヨプはチーム2位の24本塁打、3位の87打点と現役を引退する選手の成績ではなかった。韓国1年目ながらチーム最多の31本塁打、124打点を記録し、打点王の個人タイトルを受賞した外国人野手ラフが4番として機能した。また自身初のレギュラーシーズン全144試合に出場した24歳のク・ジャウクが21本塁打、107打点を記録し、新たなチームの顔に成長した。
 サムソンの隠れた特徴として、チーム盗塁数が10チーム中最多の98個だったことがある。レギュラーシーズン全144試合に出場した不動の1番打者パク・ヘミンは40盗塁で、3年連続の盗塁王の個人タイトルを受賞した。他にもFA行使でキアへ移籍したチェ・ヒョンウの補償選手として移籍しショートのレギュラーに定着したカン・ハヌルが12盗塁、チェ・ヒョンウの移籍で主にレフトを守ったキム・ホンゴンが11盗塁、クリーンアップを打ったク・ジャウクも10盗塁と、走れる選手がそろい長打力不足を補っていた。
 その他にはFAを行使しトゥサンから移籍したイ・ウォンソクが三塁のレギュラーとして121試合に出場、自己最多の18本塁打と活躍した。また34歳のベテラン内野手チョ・ドンチャンが2005年以来12年ぶりとなる122試合出場で復活を印象付けるなど、野手に関しては地力のあることを証明した。なおパク・ハニ、キム・サンスなど2011年から2014年の韓国シリーズ4連覇に貢献した選手たちは負傷などで出場機会が減ってしまい、イ・スンヨプの引退もあって選手の入れ替えが今後も進む可能性がある。捕手はイ・ジヨンが最多の103試合に出場したが打撃が弱いため、25歳のクォン・ジョンウンも時折起用され6本塁打を記録した。

 
3. 【オフシーズンの動向】
 2年連続9位という低迷から脱するため、FAを行使したロッテの正捕手カン・ミンホと4年総額80億ウォンで契約し、イ・スンヨプが去った打線の強化に努めた。余剰戦力を対象とした2次ドラフトでは、2012年まで所属しLGで活躍していた34歳のベテラン内野手ソン・ジュインを指名し復帰させた。また結果を出せなかった多数の選手たちを自由契約として刷新を図った。
 外国人選手については、打点王を受賞したラフとは再契約し、期待に応えられなかったペトリックとラナウドの投手2人は再契約を見送られた。新外国人選手として、2017年にMLB(メジャーリーグベースボール)・シンシナティレッズで30試合に登板(うち20試合が先発)し5勝を記録したティム・エーデルマン投手と契約した(2月9日時点でもう1名の外国人選手は未定)。


 キム・ハンス監督にとって2年目となる2018年のサムソンは、2011年から2014年にかけて韓国シリーズ4連覇を達成したメンバーからの入れ替えをさらに進めると思われる。イ・スンヨプが去り、新たなチームの精神的支柱となる選手を探すのは難しいが、長期低迷を経験したことがないサムソンライオンズの地力が試されるシーズンとなろう。積極的な補強も敢行し、まずは3年ぶりのポストシーズン進出が目標となる。


(文責:ふるりん