DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第10回 KTウィズ

「底辺から這い上がれず」 
2017年成績 : 50勝94敗(レギュラーシーズン最下位)
チーム総合採点…25点


1. 【まだまだ少なからぬ実力差が…】
 プロ野球10球団中で最も歴史が新しいKTウィズは、2015年の一軍参入から2年連続最下位と予想通り苦戦が続き、2017年はキム・ジヌク新監督を迎えて浮上を図ったが、またしても他球団との実力差を痛感させられた。その戦いを振り返る。


 2年連続最下位で終わり、若い選手と他チームで出場機会が減っていたベテラン選手から主に構成されたKTウィズは、2016年オフシーズンには新外国人選手以外の目立った補強をしなかった。将来性ある若手の成長に期待をかけたといえば聞こえはいいが、あまりにも確実性がなかった。


 3月31日の開幕戦ではSKに3-2で勝利し、先発の新外国人投手ローチも韓国初勝利を記録した。4月2日のSK戦では先発フィアベンドの好投、新外国人野手モネルの2試合連続本塁打でチーム史上初の開幕3連勝となった。4月6日のトゥサン戦では25歳の生え抜きのサイドスロー、コ・ヨンピョがプロ先発初勝利をあげ、4月9日のサムソン戦ではフィアベンドの完封により4連勝と好調を維持した。
 しかしその後は連勝ができず、新外国人モネルも打てなくなった。そのため4月18日に中継ぎのチャン・シファンと右腕キム・ゴングクをロッテへトレードし、打線の強化のために内野のユーティリティープレイヤーのオ・テゴン、若手左腕ペ・ジェソンを獲得した。だが打線の不振で4月28日のLG戦まで5連敗となり、勝率5割を切った。徐々に上位との差が開き、気が付けばハンファやサムソンとの最下位争いに落ち込んでいた。5月10日のキア戦でフィアベンドの好投、5月11日のキア戦ではこれまで不調だった21歳の若手チュ・グォンの好投で久しぶりの連勝を記録した。
 5月14日には20歳の若手左腕チョン・ソンゴンが2015年以来の勝利を記録し、チームも連勝で7位と勝率5割に近づいた。しかしチョン・ソンゴンはこのあと10連敗となってしまい、2勝目は9月1日まで待たなくてはならなかった。5月20日のネクセン戦まで5連敗し9位に後退したが、5月24日のサムソン戦まで3連勝と8位に浮上した。この試合で29歳のイ・サンファがプロ初セーブを記録し、リリーフ陣に欠かせない存在となった。
 5月31日には出場機会が少なくなっていた捕手キム・ジョンミンをNCへトレードし、中継ぎの強化としてカン・ジャンサンを獲得した。しかし6月1日のSK戦まで5連敗と再び9位に後退した。6月2日、3日のロッテ戦は2試合連続2ケタ得点で連勝したが、ここからが地獄の始まりだった。6月4日のロッテ戦に敗れると、6月13日のサムソン戦まで7連敗を喫し、最下位が近づいてきた。6月9日には不振で退団したモネルに代わり契約した新外国人野手ロハスに救世主としての希望が託された。
 6月14日のサムソン戦はロハスの韓国初打点となるタイムリー、22歳になる若手リュ・ヒィウンの好投で連敗から脱出したが、翌15日のサムソン戦から6月21日のロッテ戦まで6連敗となり、ついに最下位へ転落した。連敗中の6月16日のハンファ戦で、37歳のベテラン外野手イ・ジニョンがKT所属の選手としては初の個人通算2000試合出場・2000安打を達成した。6月22日のロッテ戦でリュ・ヒィウンの2勝目となる好投、36歳のベテラン野手ユ・ハンジュンの本塁打などで連敗から脱出するも、翌23日のSK戦から再び4連敗となった。
 6月28日のハンファ戦で勝利するも、レギュラーシーズンの半分あまりを消化し、勝率3割台で選手層の薄いKTはますます9位以上との差が広がっていった。ロハスは攻守に活躍したがチャンスメイカータイプだったため、7月7日、先発として期待されたが結果を残せなかった左腕チョン・デヒョンともう一人の若手左腕ソ・ウィテをネクセンにトレードし、ネクセンで4番打者を任されたこともあるユン・ソンミンを獲得した。翌8日のキア戦でユン・ソンミンはKT移籍後初本塁打を記録したが、試合は先発ローチが9失点など合計20失点で大敗した。梅雨の季節で雨天試合の中止も相次ぎ、結局7月12日のサムソン戦までシーズン最多の8連敗となった。
 7月13日のサムソン戦ではロハスの2本塁打、23歳の若手チョン・ヒョンのサヨナラタイムリーで勝利し、15日ぶりの勝利を記録した。この後オールスター戦による中断期間を迎えたが、停滞するムードは変わらず7月21日のネクセン戦まで4連敗、7月28日のNC戦まで5連敗となり、勝率は2割台にまで近づいた。結局6月から7月の2か月間でわずか8勝しかできず、その間の勝率は.181に過ぎなかった。
 8月6日のSK戦でコ・ヨンピョが5月13日以来の勝利となる5勝目を記録し、チームも約2か月ぶりの連勝を記録した。真夏のKTの本拠地・水原では内野応援席での「ウォーターパーク」と称する水の大量噴射が名物となり、8月11日のキア戦ではイ・ヘチャンの逆転サヨナラタイムリーにより普段よりも多くの水しぶきが舞った。9月19日のトゥサン戦まで4連敗となり、翌20日のトゥサン戦では勝利したが雨天による6回コールドゲームだった。そして8月26日のサムソン戦まで5連敗と、残り30試合を切り9位サムソンとの差も広がる一方で3年連続最下位が現実化してきた。
 秋の声が聞こえるようになると真夏の悪夢を忘れさせるようにチーム状態も改善された。9月6日のネクセン戦では、4月19日のキア戦での2勝目以来先発で14連敗を喫していたローチがようやく3勝目を記録した。翌7日のトゥサン戦でも勝利し、4月9日以来となる4連勝を記録した。9月14日、15日のLG戦ではチーム史上初となる2試合連続サヨナラ勝ちで、最下位ながらも今後につながる戦いを見せた。
 すでに最下位が確定していた10月1日、優勝を目前にしたキアを相手にチーム新記録の1試合20得点で大勝した。皮肉にも本拠地・水原は最下位に沈むKTのファンではなく、優勝を待ち望むキアファンが押し掛けたため入場券が完売していた。結局翌2日のキア戦、3日のレギュラーシーズン最終戦となったキア戦と連敗し、2016年のトゥサンに続いてまたもや目の前で相手のレギュラーシーズン優勝を見せつけられてしまった。戦力補強を怠ったが故の6月から7月にかけての低迷が響き、勝率は.347と過去2年間よりも下回ってしまい、あまり進歩や成長が感じられないまま2017年のKTの戦いは終わった。


2. 【チーム分析】
 2017年のKTは、投打ともに他チームに対抗できる要素が少なく、選手層も薄かったため3年連続最下位は当然の帰結であった。


 チーム防御率5.75は10チーム中9位で、先発の防御率5.72は9位だったが、リリーフは防御率5.86で最下位だった。クォリティースタート(先発が6回を投げ自責点3以下)は10チーム中8位の49試合と、全く試合が作れなかったわけではなかった。しかし打線やリリーフの弱さで勝ち星は伸びず、10チーム中唯一10勝以上の投手がいなかった。チーム最多勝は先発ローテーションを守り続けたコ・ヨンピョ、最優秀防御率(3.04)の個人タイトルを受賞したフィアベンドの8勝だった。チーム最多の165回を投げたローチは4勝15敗と、打線の援護がなく不運にも最多敗戦投手となってしまった。2016年は6勝を記録し、さらなる成長が期待された22歳のチュ・グォンは伸び悩み5勝に終わった。同じ22歳のリュ・ヒィウンが4勝と今後に期待を抱かせた。21歳の左腕チョン・ソンゴンは防御率8点台と苦しい内容だったが、選手層の薄さで先発に起用され続け3勝12敗と大きく負け越した。
 リリーフでは抑えとして期待されたキム・ジェユンが6月以降成績が悪化し15セーブのみにとどまり、代わりにチーム最多の70試合に登板したイ・サンファが中継ぎに抑えに大きな働きを見せた。23歳の左腕シム・ジェミンが64試合、21歳の右腕オム・サンベクが52試合に登板し中継ぎとして起用されたが、チャン・シファンを4月にトレードで放出し中継ぎの層が薄く、特定の選手を酷使したためリリーフの質が低下したとみられる。そのためか、延長戦で粘れず10チーム中で唯一引き分けの試合がなかった。FAでロッテから移籍するも過去2年間一軍未勝利だった37歳のベテラン右腕キム・サユルが先発でも起用され3勝を記録するなど、復活の兆しを見せた。
 守備陣は10チーム中最多の112失策で投手陣の足を引っ張った。盗塁阻止率(27.6%)と内野の打球処理率(88.27%)は最低、外野の補殺数(16)も最少と守備力の低さを実証する数字が並ぶ。内外野ともにあまりレギュラーを固定できなかった影響もあるとみられるが、守備の改善は今後の大きな課題となっている。

 
 チーム打率は.275で10チーム中9位、チーム総得点は655で最下位、チーム本塁打数は119で9位と、打撃陣も投手陣同様に最弱だった。
 レギュラーシーズン開幕時からKTに所属していた選手で最多出場を果たしたのは36歳のベテラン外野手ユ・ハンジュン(13本塁打・68打点)で、その次が33歳のベテラン内野手で131試合に出場したパク・キョンス(15本塁打・66打点)だった。4番打者として期待した外国人選手モネルが2本塁打のみで5月中に退団し、代役として契約したロハスは18本塁打・56打点と結果を残した。さらなる打線の強化として7月にトレードで獲得したユン・ソンミンは、KTでも13本塁打・58打点とネクセン時代と変わらない勝負強い打撃を見せた。他には4月にロッテからトレードで獲得したオ・テゴンもKT移籍後121試合に出場し15盗塁を記録、快足の内野のユーティリティープレイヤーとして重宝された。
 今後チームの主力に成長することが期待される若手では23歳のチョン・ヒョンが124試合に出場したが、ショートで先発する試合が増えるも守備面で課題が多かった。そのため36歳のベテラン内野手パク・キヒョクも併用された。また22歳の内野手シム・ウジュンは守備に難があったが、18盗塁と快足を披露した。外野はユ・ハンジュン、6月に契約したロハス以外はレギュラーが固定できず、チーム最多盗塁(23)のイ・デヒョンも負傷で100試合の出場にとどまり、イ・ジニョン、ハ・ジュンホ、オ・ジョンボクなどが流動的に先発出場した。捕手は11本塁打イ・ヘチャン、8本塁打のチャン・ソンウが併用され打撃面では他チームに劣っていなかったが、盗塁阻止率の低さが目立った。

 
3. 【オフシーズンの動向】
 3年連続最下位という底辺からの脱却のため、2016年までロッテで三塁手として活躍し、2017年はMLB(メジャーリーグベースボール)・サンフランシスコジャイアンツに所属していたファン・ジェギュンと4年総額88億ウォンで契約した。余剰戦力を対象とした2次ドラフトではネクセンから実績のある左腕クム・ミンチョルなどを獲得した。
 外国人選手については、フィアベンド、ロハスとは再契約し、新外国人選手として、2011年から2017年までの7年間で外国人選手としてはプロ野球史上最多の個人通算94勝を記録したニッパートと契約した。代わりにローチの再契約は見送られた。


 ファン・ジェギュン、ニッパートとこれまでにない補強を敢行した2018年のKTは、就任から2年目となるキム・ジヌク監督にとっては最下位脱出が至上命題となる。だが選手層を短期間で厚くすることは難しく、決して簡単な道のりではない。プロ野球界にとって「新しいお客さん」ではなく、実力で一目置かれる存在になるためにはまだ年数がかかるかもしれないが、まずは目の前の課題を少しずつ克服し、将来の栄光へとつなげていきたい。


(文責:ふるりん