DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第10回 KTウィズ

「2年目の停滞」 
2016年成績 : 53勝89敗2分(公式戦最下位)
チーム総合採点…40点


1. 【2年目の飛躍はならず】
 一軍参入後2年目となった2016年シーズンも2年連続最下位に終わったKTウィズ。その戦いを振り返りたい。


 一軍参入後初のシーズンだった2015年は最下位だったものの、後半は他チームと互角に戦い、オフシーズンはFA(フリーエージェント)となっていたベテラン外野手ユ・ハンジュン、2次ドラフトでLGからイ・ジニョンを獲得するなど戦力の補強に務め、2013年一軍参入と歴史は浅くとも2014年以降は上位争いを続けるNCのように飛躍を遂げるのではないかとも期待された。また外国人選手と他チームより1名多い4名まで契約できるのもアドバンテージと見られた。だが現実は厳しかった。


 4月1日、敵地・仁川でのSKとの開幕戦は、2015年までSKに所属していたキム・ヨンフンの本塁打と、新外国人マリモンの好投で8-4とチーム史上初の開幕戦勝利を記録し、2015年は公式戦初勝利まで12試合かかったことを考えると幸先良いスタートだった。さらに3日のSK戦も新加入のベテラン打者イ・ジニョンの本塁打、新外国人ピノの好投で2勝目を挙げた。さらに5日の本拠地・水原でのシーズン初の公式戦だったサムソン戦ではこれまた新外国人バンワートの好投、ユ・ハンジュンの移籍後初本塁打で3勝目と、順風満帆に思えた。
5月前半まで、終始最下位だった2015年とは大きくムードが違っているようだった。ユ・ハンジュンの負傷離脱が不安視されたが、これまでネクセンなどで活躍の場を得られなかった27歳の外野手チョン・ミンスが攻守ともに活躍しその穴を埋めた。5月14日にはトゥサンからトレードで左打者のユ・ミンサンを獲得し補強に務めた。しかし5月後半になり他チームが調子を上げてくると思うように勝てなくなり、9位にとどまるようになった。5月27日のネクセン戦で20歳の若手チュ・グォンがチーム史上初となる完封勝利を記録し、3連敗から脱出し再び上昇ムードに乗るかと思われた。
 だが6月1日まで4連敗と勝率は4割近くまで下がり、上位との差が大きく開いてきた。6月8日のトゥサン戦で先発チュ・グォン、新しく抑えを任されたキム・ジェユンなどの継投で勝利しキアを抜いて8位に浮上したものの、すぐに9位に後退した。チーム最多の6勝を記録していたマリモンも負傷で離脱し、戦力的に苦しくなりキアやハンファとの最下位争いが続いた。6月21日までの4連敗で2016年シーズン初めてハンファと同率最下位に並ばれたが、23日のトゥサン戦でチュ・グォンが好投して勝利し何とか単独9位に戻った。
 7月7日、マリモンを退団させ新外国人投手ローウィーと契約し巻き返しを図ったが、翌8日のSK戦で3連敗となりついに初の単独最下位(10位)に転落してしまった。7月10日に一時サムソンを抜いて9位に浮上したが、12日のネクセン戦で敗れまたもや最下位に転落するとその後浮上することはなかった。またこの日、不祥事が報じられた主力打者のキム・サンヒョン(11本塁打)が試合途中で交代させられると、翌13日には退団となり戦力的に大きな痛手をこうむった。試合を重ねるにつれ選手層の薄さが浮き彫りとなり、7月28日のキア戦で3連敗するとついに勝率が4割を切ってしまった。
 7月29日、最後の補強として戦力にならず退団となったピノに代わる新外国人投手としてネクセンから退団したばかりのフィアベンドと契約し、最下位脱出を図った。そして7月31日のロッテ戦はフィアベンドの移籍後初登板、外国人打者マルテのチーム史上初となる5試合連続本塁打で3連勝とし、ささやかな反抗を試みた。また、本拠地・水原でのこの試合で打ったマルテのシーズン第22号が、KTでの最後の本塁打になるとはその時誰もが思わなかったであろう。
 8月には地獄が待っていた。マルテが負傷で一軍から離脱し、フィアベンドやローウィーなどの外国人投手たちも期待に応えられず、打線も迫力を欠いたため8月13日までシーズン最長の9連敗となり、9位サムソンからも5ゲーム差がついてしまった。翌14日のNC戦でようやく連敗から脱出したが、起爆剤はどこにもなかった。8月20日のハンファ戦で9回裏ユン・ヨソプがチーム史上初となるサヨナラ本塁打を記録するなど、つかの間だけ厳しい現実を忘れさせてくれるような勝利もあった。
 9月3日のLG戦で先発ローテーションに定着したチュ・グォンが6勝目をあげ、4連敗から脱出した。9月7日、敵地・大邱でのサムソン戦では7月以降一軍に定着した捕手イ・ヘチャンが1試合3本塁打を記録したが、チームが勝てなかっただけでなくサムソンの大打者イ・スンヨプ(元オリックス)がこの試合で個人通算2000安打(韓国のみでの記録)を達成したため、あまり注目されない不運もあった。9月10日のキア戦ではパク・キョンスが2年連続20本塁打となる満塁本塁打で記録するなど、勝率3割台で最下位脱出の望みが薄くなってきたKTについては、選手の個人成績だけがプロ野球界の関心事となりつつあった。
 9月18日、公式戦優勝を目前にしていたトゥサンに1-11と大敗し7連敗となり、9位サムソンとのゲーム差は11にまで開いた。9月22日にはまたもやトゥサンに勝利を献上し、目の前で公式戦優勝達成の瞬間を見せつけられた。早々と2年連続最下位が確定し、10月5日、本拠地・水原での最後の公式戦となったハンファ戦でも敗れ6連敗となった。すでに消化試合となっていた10月7日、9日のNC戦で連勝し、9位サムソンとは11.5ゲーム差で2015年(.364)を少し上回る勝率(.373)で2016年シーズンを終えた。



2. 【チーム分析】
 チーム成績を見ると投打ともに戦力不足は明らかで、他チームに大差をつけられての最下位は当然の帰結だった。10チーム中で唯一4連勝以上がなく、勝率を伸ばせなかった。


 チーム防御率5.92は10チーム中最下位で、クォリティースタート(先発として6回以上登板し自責点は3以下)は同9位の38、チームホールド数(38)は同8位、チームセーブ数(27)はロッテと同数の8位と、先発、リリーフともに主力として一定以上の数字を残した選手はいたが層は薄かった。
先発投手陣で、4月の開幕から10月のシーズン終了までローテーションを守ったのは外国人投手バンワート(6勝)だけだった。5月からローテーション入りした21歳のチュ・グォンが完封を含む6勝を記録したのが明るい材料だった。しかし期待されたチョン・デヒョン(4勝)、チョン・ソンゴン(0勝7敗)の左腕2人など他の韓国人選手が活躍できなかっただけでなく、シーズン途中で退団したマリモン(6勝)、ピノ(2勝)、7月から加入したローウィー(3勝)、フィアベンド(KT移籍後のみ2勝)と外国人投手もことごとく活躍できず、新球団の特例として認められた他チームより1名多い外国人選手枠を生かせなかった。
 リリーフではMLB傘下のマイナーリーグ出身で、2015年のKT入団後本格的に投手へ転向した26歳のキム・ジェユンがチーム最多の8勝14セーブを記録したのが目を引いた。中継ぎではチーム最多登板・ホールド(67試合・12ホールド)のホン・ソンヨン、22歳のシム・ジェミン(59試合)、24歳のイ・チャンジェの左腕3人と、コ・ヨンピョ、オム・サンベク、チョ・ムグン、ペ・ウヨルなどの右腕が主に起用された。また先発にリリーフに酷使されたチャン・シファン(3勝12敗6セーブ3ホールド)の成績が、選手層が薄くやりくりに苦労していたチームを象徴している。
 投手力のみならず守備力も低かった。チームエラー数(130)は10チーム中最多、守備率(.976)は10チーム中最低と、脆弱な投手陣の足を引っ張った。21歳ながらもショートやサードで起用されたシム・ウジュンがエラー12個と、歴史の浅いチームは成長の余地が大きくこれからに期待したい。


 攻撃力は投手力以上に乏しかった。チーム打率.276は10チーム中最下位、チーム本塁打数116、チーム得点数672も最下位であった。
 シーズンを通して主力として活躍したのは1番打者としてチーム最多の37盗塁、143試合出場を記録したイ・デヒョン、二塁のレギュラーとしてチーム最多打点(80)と20本塁打を記録したパク・キョンス、36歳ながら新天地で衰えぬ打撃を披露したイ・ジニョン、ショートで堅実な守備を見せた35歳のベテラン内野手パク・キヒョクなどであった。一時期負傷で一軍から離脱していたが、14本塁打・64打点を記録したユ・ハンジュンも層の薄いチームでは欠かせない存在であった。チーム最多の22本塁打を記録した外国人打者マルテが故障でシーズン終盤に出場できなかったのも悔やまれる。
 主力打者としての活躍が期待されたオ・ジョンボクは、公式戦開幕前の飲酒運転による出場停止もあり96試合の出場にとどまった。またキム・ヨンフン、ユ・ミンサン、チョン・ミンス、ハ・ジュンホなど他チームでは活躍の場を与えられなかった選手たちが控えとして活躍の場を得るなど、歴史の浅いチームならではの長所も発揮された。
2015年シーズンオフの不祥事で、主力として期待されながらも2016年シーズンは50試合の出場停止処分を受けていたチャン・ソンウの不在で、捕手の起用が最大の課題とされていた。34歳のベテラン捕手ユン・ヨソプは6本塁打と打撃の面では申し分なかったが守備の面で問題が多く、シーズン当初はキム・ジョンミンが先発することが多かったが、7月以降はかつてネクセンで出場機会がなかったイ・へチャンが主に捕手として出場するようになり、1試合3本塁打を含む6本塁打と打撃でも結果を残した。
 
 開幕前は補強により期待が膨らみながらも、一部の選手の不祥事や主力の負傷による離脱など不運が重なり、選手層の薄さが露呈して投打ともに他チームと対等に戦える武器が少なく、勝率3割台で2年連続最下位という停滞に陥ってしまった。



3. 【オフシーズンの動向】
 2013年のチーム創設当初から指揮していたチョ・ボムヒョン監督は契約期間満了で退任し、2012年から2013年までトゥサンの監督だったキム・ジヌク新監督が就任した。しかし他チームからのFA選手などの補強はなく、現有戦力の底上げで最下位脱出を狙うとみられる。
 2017年1月22日、KTの中心打者として活躍してきたマルテが祖国のドミニカ共和国で自動車による交通事故で死亡した。まだ33歳の若さであり、水原KTウィズパークに飾られた遺影の前には献花台が設置され、早すぎる死を惜しむ声が絶えなかった。
 外国人選手は2017年シーズンより他チームと同じ3名までとなる。左腕フィアベンドとのみ再契約し、右腕のローウィーとバンワートは再契約を見送られ、ドン・ローチ投手、ジョニー・モネル内野手と2名の新外国人選手と契約した。


 近年のプロ野球人気の上昇により10球団目のプロ野球チームとして創設されたKTウィズは、9球団目のNCのたった2年後に創設されたこともあり選手の確保が難しく、また選手の管理など運営の面でも未熟な面をさらしてしまい、現状では成績的に他チームと大きな差をつけられてしまった。しかし最新鋭のボールパークとして球団創設とともに整備された水原KTウィズパークに集まるファンたちは徐々に増えており、新球団の特例で2013年から2015年にかけて多数獲得できた有望な若手たちが主力となれば、他チームと対等に戦えるようになり、プロ野球の規模を拡大した意義があったと証明されることになる。どのような強豪チームも一朝一夕にその地位を確立したわけではない。KTウィズは焦らずに自分たちのチームスタイルを確立し、いつか必ず訪れるであろう栄光に向かって走り続けてほしい。

(文責:ふるりん