DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第1回 キアタイガース

 夏場以降の怒涛の快進撃で、12年ぶり10度目の韓国シリーズ優勝を成し遂げ、プロ野球界の主役となったキアタイガース。王者として迎えた2010年シーズンは、韓国シリーズ2連覇が当然の目標となるが、前年よりも他球団の警戒も厳しくなるであろうし、その道のりは決して平坦ではないだろう。だが、優勝で自信をつけた選手たちが力を発揮すれば、かつて韓国シリーズ4連覇の黄金時代を築いた前身のヘテのようなチームへと成長していくであろう。


【投手陣】

〈先発〉 
ユン・ソンミン、、△ヤン・ヒョンジョン、ロペス、ロドリゲス、チョン・テヒョン
〈中継ぎ〉
ソン・ヨンミン、クァク・チョンチョル、△パク・キョンテ、キム・ヒィゴル、シン・ヨンウン、ソ・ジェウン、△チョン・ヨンウン
〈抑え〉
ユ・ドンフン

注 : △は左腕

 2009年韓国シリーズ優勝の原動力となった先発投手陣は、2010年シーズンも期待できる。13勝をあげ優勝に貢献した外国人投手ガトームソン(元福岡ソフトバンク)が退団したが、代役の新外国人ロドリゲス、成長著しい若手のチョン・テヒョンなど、その穴を埋める先発投手も台頭してきている。また、2009年最多勝(14勝)の外国人投手ロペス、若き右のエースのユン・ソンミン、左のエースに成長したヤン・ヒョンジョンと、先発三本柱は健在だ。
 2009年シーズンは先発が比較的長いイニングを投げたため、あまり中継ぎへの依存度が高くなく、多少リリーフ陣の層が薄い。だがソン・ヨンミン、クァク・チョンチョルなど、若くて連投のきく投手が多く、この中から先発ローテーションに食い込む者が出てくると面白い。抑えは2009年22セーブをあげたアンダースローのユ・ドンフンで決まっている。
 全体として先発でもリリーフでも左腕不足のため、2年目のチョン・ヨンウンなどの成長に期待がかかる。


【打撃陣】

〈ベストオーダー〉

1.イ・ヨンギュ(中) △
2.イ・ジョンボム(左) 
3.ナ・ジワン(指) 
4.チェ・ヒィソプ(一) △
5.キム・サンヒョン(三)  
6.キム・サンフン(捕) 
7.イ・ヒョンゴン(遊) 
8.アン・チホン(二) 
9.キム・ウォンソプ(右)△  

〈控え〉
チャ・イルモク、イ・ソンウ、キム・ソンビン、ホン・セワン、キム・ジョングク、パク・キナム、チェ・ヨンギュ、△イ・ジョンファン

注 : △は左打者。

 2009年シーズンは、開幕後LGからトレードで移籍してクリーンアップに定着し、36本塁打、126打点で2冠王に輝いたキム・サンヒョンと、元メジャーリーガーで33本塁打とようやっと本領を発揮したチェ・ヒィソプの大砲2人が他球団の脅威となっていた。また韓国シリーズ第7戦で劇的なサヨナラ本塁打を記録した若手のナ・ジワンも23本塁打と、2009年は勢いだけであまり首脳陣に信用されていなかったようなところがあったが、2010年シーズンは指名打者として主軸として安定した活躍が期待される。
 この3人の長距離打者たちの脇を固めるのは快足の1番打者イ・ヨンギュ、40歳を迎えんとしているが老いてなおますます盛んなイ・ジョンボム(元中日)などであり、いやらしさはあまり感じないが、ここ一番での集中力が高くチャンスに強い打線が機能すれば、2010年シーズンも安定した戦いが望める。また2009年新人王争いに加わったセカンドのアン・チホンは、キャンプ、示範競技を通してあまり状態がよくないが、韓国を代表する大型内野手へ成長するために更なるスケールアップを期待したい。


 2009年の優勝は、前年6位に終わっていたこともあり、誰もが予想しないことであった。しかし2010年シーズンは、その優勝がまぐれだったと言わせないためにも、最多優勝回数を誇る王者らしい堂々たる強さが求められる。本拠地の光州や、韓国全土の全羅南道(チョルラナムド)出身者たちを2年連続で熱狂させ、プロ野球界の更なる盛り上がりに貢献できるであろうか。
 

本拠地
 光州・無等運動場野球場

 韓国南西部最大の都市・光州(クァンジュ)は、ソウルや釜山などの大都市から遠く、発展も遅れている。その理由として韓国特有の地域対立があり、釜山、大邱を中心とした南東部出身者の政治家が多かった1960年代から90年代後半までの韓国政府からも差別的待遇を受けてきた。その中で誕生したヒーローが、全羅南道出身の政治家・金大中(キム・デジュン)であり、軍事政権化では何度も弾圧され命の危機に瀕したが、不屈の精神で1998年大統領の座につき南北関係の改善などに努め、2009年8月永眠した。2009年10月のキアの優勝は、天国の金大中にささげるものだったのかもしれない。なお、金大中の死去後数日間、プロ野球の派手な応援は自粛となり普段より球場は静かだった。
 最近減少気味だった観客動員数も、久しぶりの快進撃によりヘテ時代の威光がよみがえったかファンたちが球場に押し寄せ、8月以降は休日ともなれば大入り満員が続き、ご当地ソングである「南行きの列車(ナメンヨルチャ)」がスタジアムに何度も鳴り響いた。またソウル・蚕室野球場でのキア戦も、光州や周囲の全羅道出身者が集まるため、3塁側ビジター応援席は真っ赤に染まった。
 球場はかなり老朽化が進み、新球場建設を望む声も高いが、いったん決定したドーム球場建設も反対運動などにより白紙化するなど、計画自体が定まらず着工のめどは今のところたっていない。韓国人はこの球場をかなり恥ずかしがるが、いかにも地方球場らしいひなびたたたずまいは、遠くからこの球場を尋ねてきた野球ファンたちの心を和ませる。
 
 2010年シーズンから、入場料が値上げとなった球場が多いが、ここは自由席が7000ウォンと変化はなく、食事をしながらのグループ観戦に適したテーブル席が内外野に設置され、1塁側内野席にはソレントR席(1人当たり2万ウォン)、外野席にはスポティージR席(1人当たり1万5000ウォン)と、それぞれ親会社キア自動車の車種の名前がつけられる。 

 なお、2010年シーズンも2009年に引き続き、全羅北道の地方都市・群山(クンサン)で主催試合が9試合開催される予定である。

 

(グッズショップはあるが、2009年シーズンはあまり品揃えはよくなかった。2010年シーズンはグッズの拡充を期待したい。〉


(チケット売り場は球場外にもあるが、野球場自体が大きな運動公園の中にあり、公園入口でもチケットを販売している。)


[交通アクセス]

光州の市街地にあるが、周囲は住宅地や中小工場が並ぶ下町で、繁華街から少し離れたところにあり、球場の入り口付近にも停留所があるものの、バスでのアクセスは土地勘がないとお勧めできない。
Korail(韓国鉄道公社)光州駅からではタクシーで約10分程度。
ただし、ソウル、大田方面からの湖南線の木浦(モクポ)行き超特急KTXは、光州駅に行かず光州市内の西部にある光州松汀(クァンジュソンジョン)駅にしか停車しないので、要注意。

韓国各都市からのバスが発着する、光州総合バスターミナルからはタクシーで5,6分程度。


(文責 : ふるりん