DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第5回 キアタイガース

 2016年は公式戦5位で5年ぶりのポストシーズン進出を果たし、また4年100億ウォンの大型契約でFA(フリーエージェント)となっていたチェ・ヒョンウと契約し、例年になく上昇ムードにあるキアタイガース。3年目を迎えるキム・ギテ監督は世代交代と戦力の底上げに成功し、2009年以来となる韓国シリーズ優勝を目指す。


【投手陣】

〈先発〉 
△ヤン・ヒョンジョン、ヘクター、◎△パット・ディーン、ホン・ゴンヒィ、キム・ユンドン
〈リリーフ〉
チェ・ヨンピル、キム・グァンス、ハン・スンヒョク、◎パク・チンテ、△シム・ドンソプ、パク・チフン、イム・チャンヨン

注 : ◎は新加入、△は左腕

 FAを行使したが1年契約で残留した韓国人エースのヤン・ヒョンジョン、2016年はチーム最多の15勝をあげた韓国2年目の外国人選手ヘクターの2人が先発投手陣の大黒柱である。それを支える形で新外国人選手の左腕パット・ディーンが加わった。4番手以降がやや弱くホン・ゴンヒィ、若手のキム・ユンドンなどの競争となり、上位進出のためには先発投手陣の層を厚くしなければならない。
 リリーフで注目されるのは24歳の右腕ハン・スンヒョクで、示範競技では150km/h以上の速球を連発しているため、40歳のベテランのイム・チャンヨン(元東京ヤクルト)に代わる新たな抑えとなる可能性が出てきた。シム・ドンソプ以外に信頼できる左腕が少ないため、若手の台頭に期待したい。また肩の故障でリハビリ中のかつての主力投手ユン・ソンミンの復帰も待たれる。


【打撃陣】

〈ベストオーダー〉

1.バーナディーナ(中) ◎△   
2.ソ・ドンウク(ニ) △ 
3.キム・ジュチャン(右) 
4.チェ・ヒョンウ(左) ◎△ 
5.イ・ボムホ(三)  
6.ナ・ジワン(指) 
7.キム・ジュヒョン(一) 
8.イ・ホング(捕) 
9.キム・ソンビン(遊)  

〈控え〉
(捕手) ペク・ヨンファン、ハン・スンテク
(内野手) アン・チホン、ホン・ジェホ、△イ・インヘン、△チェ・ウォンジュン、チェ・ビョンヨン
(外野手) △シン・ジョンギル、△ノ・スグァン、キム・ホリョン、イ・ジュンホ

注 : ◎は新加入、△は左打者、×は両打ち。

 何といってもチェ・ヒョンウの加入が打線全体を大きく変える。2016年は首位打者打点王の二冠王、4年連続30本塁打以上とサムソンの主軸として活躍してきた33歳の打者は待望の4番として活躍が期待される。また新外国人選手のバーナディーナは長距離砲ではなく、俊足を生かした1番打者などチャンスメイカーの役割を任されると思われる。これにナ・ジワン、イ・ボムホ(元福岡ソフトバンク)、キム・ジュチャンなどの主力打者が加わり、強力打線が構成されるようになった。
 実力者がそろい、2016年は主力外野手として活躍していたキム・ホリョンや、軍へ入隊する前は二塁手として活躍していたアン・チホンなどが控えに回るなど、野手の層は依然と比べて厚くなった。状況に応じたキム・ギテ監督の選手起用に注目したい。

  
 若手の積極的な起用や伸び悩んでいた選手の再生などにより、2013年から続いた沈滞ムードの払拭に成功し、チェ・ヒョンウの補強により近年にない高揚感に包まれたキアタイガース。カリスマ性を備えてきたキム・ギテ監督の指揮のもと、前身のヘテ時代も含めて最多となる11回の韓国シリーズ優勝を誇る栄光の歴史に新たな1ページを書き加えることができるのであろうか。


本拠地
 光州・キアチャンピオンズフィールド

 韓国南西部の中心都市・光州(クァンジュ)はソウルや釜山などの大都市から遠く、発展も遅れがちであった。その理由のひとつとして韓国特有の地域対立があり、釜山、大邱を中心とした南東部出身者の政治家が多かった1960年代から90年代後半まで、韓国政府からも差別的待遇を受けてきたことがあげられる。そういった光州や周辺の全羅南道の人々の鬱屈した感情を晴らすひとつの手段として、1980年代韓国シリーズ4連覇を達成したヘテタイガースへの応援があった。
 21世紀の現在もその雰囲気が残っていて、試合中には全羅南道ご当地ソングである「南行きの列車(ナメンヨルチャ)」が観客席から何度も聞こえ、独特の風情をかもしだしている。首都圏の蚕室野球場などでも、光州や周囲の全羅道出身者が集まるためビジター応援席がキアファンで真っ赤に染まることもある。2001年夏、キアタイガースに生まれ変わってから15年以上の歳月が流れたが、ファンたちは相変わらず「ヘテ」に憧れている。それを反映してか、2016年シーズンよりキアチャンピオンズフィールドの内野スタンドの壁面に、ヘテ時代の9度の韓国シリーズ優勝を記念したエンブレムが飾られている。
 2014年開場とまだ新しさの残るボールパークは年々施設を拡充し、野球ファンたちのニーズにこたえようとしている。西日がまぶしいためホームのキアは3塁側ベンチを使用し、応援ステージも3塁側内野席に設置されている。外野には木造の椅子とベンチ、砂場などもあり、ファミリー層が利用しやすくなっている。







[交通アクセス]

 周囲は住宅地や中小工場が並ぶ庶民的な町で、球場の入り口付近に停留所があるものの、運行形態が複雑なため外国語の案内表示があっても市内バスでのアクセスはあまりお勧めできない。韓国各都市からのバスが発着する光州総合バスターミナルからは徒歩でも15分程度で、大通りに沿って歩けば着くためわかりやすい。広大なバスターミナル周辺には旅館やホテルも多く、デパートもあるためショッピングや食事をする場所には事欠かない。
 高速鉄道KTX・SRTは光州松汀(クァンジュソンジョン)駅に停車し、ソウル市内のソウル駅や龍山(ヨンサン)駅、水西(スソ)駅から1時間50分前後で到着する。ただし同駅からキアチャンピオンズフィールドは約10km離れ、地下鉄やバスなど公共交通機関でのアクセスは時間を要する。タクシーで30分程度かかるため、18時半開始の試合をソウル市内から日帰り観戦する場合はかなりのハードスケジュールとなる。2017年3月現在、光州松汀駅からソウル市内の水西行きの最終の高速鉄道SRTは23時6分発となっている。
(文責 : ふるりん