DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2022年シーズン回顧 第2回 キウムヒーローズ

3度目の韓国シリーズ出場も初優勝ならず

 

2022年シーズン成績 

レギュラーシーズン:80勝62敗2分(勝率.563)同率3位

ポストシーズン韓国シリーズ準優勝 対SSG(2勝4敗)

 

 2021年はレギュラーシーズン5位、ポストシーズンワイルドカード決定戦敗退だったキウムヒーローズ。オフシーズンはFA(フリーエージェント)となった4番打者パク・ピョンホがKTウィズへ移籍、抑えのチョ・サンウが兵役のため軍へ入隊し、MLBで実績のある新外国人選手プイーグを補強したものの不安要素が大きく、2022年シーズン開幕前の評価は高くなかった。

 4月2日、本拠地高尺での開幕戦となったロッテジャイアンツ戦で敗れ出だしはよくなかったが、4月8日のサムソンライオンズ戦から4月15日のトゥサンベアース戦まで7連勝となった。19歳の新人パク・チャンヒョクが4月だけで5本塁打と才能の片りんを見せた。4月24日、2021年まで正捕手として活躍していたが開幕から不振だったパク・トンウォンをキアタイガーズへトレードし、金銭10億ウォンと新人ドラフト指名権、キム・テジンを獲得し手薄な内野を補強した。

 首位SSGが独走態勢を維持する中、プロ野球界最高の打者へと成長した24歳のイ・ジョンフを軸に巧みな選手起用で上位を維持し続けた。期待の外国人選手プイーグの調子が上がらない中、26歳の左の内野手ソン・ソンムンが中軸を任され打点を稼ぐようになった。右腕キム・テフンの調子が悪くなると抑えを左腕イ・スンホに交代させ、5月24日のLGツインス戦から5月31日のサムソン戦まで7連勝で2位に浮上した。特に23歳の右腕アン・ウジンがようやく素質を開花させ、三振の山を築き韓国4年目の外国人選手ヨキシュと並ぶ先発の柱に成長したのが大きかった。

 勝率6割を超えていたが、首位SSGの勢いは衰えず追いつくことはできなかった。6月からは30歳にしてプロ初セーブをあげたムン・ソンヒョンが抑えとなり、プイーグが韓国への適応を終え打撃の調子が上向いてきた。6月25日のロッテ戦から7月5日のトゥサン戦まで9連勝するもSSGに追いつくことはできず2位のままだった。オールスター戦による中断期間が終わった7月下旬から選手層の薄さが顕著になってきた。

 こうして8月12日のロッテ戦までの5連敗でLGに抜かれ3位に後退、8月23日のキア戦までの6連敗でKTウィズに抜かれ4位に後退した。首位SSG、2位LGとの差が広がる中、シーズン終盤になり抑えは左腕キム・ジェウンに交代しKTとの3位争いが続いた。9月30日のSSG戦で敗れ4位に後退、残り6試合とキウムより4試合多かったKTのほうが有利に見えた。10月8日、レギュラーシーズン最終戦のトゥサン戦で勝利するもゲーム差なしの4位のままで3位KTの残り2試合を見守ることになった。KTは10月10日のNCダイノス戦に勝つも、翌10月11日のLG戦で敗れてしまい80勝62敗2分けと144試合を終えてキウムと同率3位となってしまい、8勝7敗1分けと直接対決で勝ち越していたキウムがKTより上位の扱いを受け、5年連続で進出するポストシーズンは準プレーオフからの出場となった。

 10月16日からの準プレーオフの相手はワイルドカード決定戦でキアに勝利したキウムで、同率だったレギュラーシーズンでの決着をつけることになった。本拠地高尺での第1戦は9回表にソン・ソンムンのタイムリーなどで4点を勝ち越し8-4と勝利したが、第2戦は0-2と敗れた。舞台を敵地水原に移した10月19日の第3戦はプイーグの本塁打などで9-4と勝利したが、第4戦は6-9で敗れた。10月22日、高尺での第5戦ではソン・ソンムンの本塁打などで4-3と勝利し、3勝2敗で2位LGとのプレーオフへ進出した。

 当初キウムは準プレーオフでの疲労もあり不利かと思われた。10月24日、敵地蚕室でのプレーオフ第1戦では3-6と敗れたが、第2戦では2回表までに6点を奪うと必死の継投で7-6と勝利した。舞台を高尺に移した10月27日の第3戦では、7回裏にポストシーズンでラッキーボーイとなっていたイム・ジヨルの本塁打、イ・ジョンフの本塁打で6-4と逆転勝ちした。翌日の第4戦では先発エップラー(元オリックス)の好投とプイーグの本塁打などで4-1と勝利し、3連勝で3年ぶり3度目の韓国シリーズ進出を決めた。イ・ジョンフは4試合で打率5割と絶好調でプレーオフMVP(最優秀選手)に選ばれた。

 11月1日からの韓国シリーズではSSGと対戦し、敵地仁川での第1戦では延長10回表にチョン・ビョンウのタイムリーで1点を勝ち越し7-6と勝利した。第2戦は1-6、舞台を高尺に移した第3戦は2-8と敗れたが、第4戦では3回裏にイ・ジョンフ、ソン・ソンムンのタイムリーなどで逆転しチェ・ウォンテなどのリリーフ陣が好投し6-1で勝利し、対戦成績を2勝2敗とした。

 そして舞台を仁川に戻した韓国シリーズ第5戦ではキム・テジンのタイムリーなどで4点を奪い先発アン・ウジンも無失点に抑えたが、キム・ジェウン、チェ・ウォンテのリリーフ陣が疲労からか打たれリードを守れず4-5で敗れた。続く第6戦も6回表にイ・ジョンフの本塁打で勝ち越したが、普段は先発として登板していたヨキシュをリリーフ登板させるも逆転を許し、3-4で敗れSSGが4勝2敗で優勝となり、キウムの韓国シリーズ初優勝はならなかった。

 

【投手の成績】

防御率3.80(3位) 奪三振1010(7位) 被本塁打96(7位) 与四球491(6位)

[主な先発投手]

アン・ウジン    30試合 15勝8敗 防御率2.11

ヨキシュ      30試合 10勝8敗 防御率2.57

エップラー     33試合 6勝8敗 防御率4.30

チェ・ウォンテ   26試合 7勝5敗 防御率3.75

チョン・チャンホン 20試合 5勝6敗 防御率5.36

ハン・ヒョンヒィ  21試合 6勝4敗  防御率4.75

 先発の防御率(3.41)は10チーム中1位だった。これは全体的な質が高かったのではなく、チーム最多勝最優秀防御率最多奪三振(224)の個人タイトルを受賞したアン・ウジンと、4年連続で10勝以上を記録した外国人選手ヨキシュの二人が突出していたからだと思われる。もう一人の外国人選手エップラーは先発だけでなくリリーフでも登板した。チェ・ウォンテは韓国シリーズなどポストシーズンではリリーフに回り活躍した。

 

[主なリリーフ投手]

キム・ジェウン   65試合 3勝2敗13セーブ27ホールド 防御率3.54

イ・スンホ     53試合 3勝2敗10セーブ10ホールド 防御率3.58

ムン・ソンヒョン  45試合 0勝1敗13セーブ9ホールド 防御率3.27

キム・テフン    43試合 3勝2敗9セーブ10ホールド 防御率3.14

ハ・ヨンミン    41試合 5勝3敗2ホールド 防御率3.43

イ・ミョンジョン  27試合 4勝1敗4ホールド 防御率5.27

キム・ソンギ    26試合 3勝1敗1セーブ4ホールド 防御率5.15

 リリーフの防御率(4.41)は10チーム中4位だった。10セーブ以上の投手が3名となっているのは、開幕当初の抑えはキム・テフンだったがその後イ・スンホ、ムン・ソンヒョン、キム・ジェウンの順に交代したからである。特に24歳の左腕キム・ジェウンは自身最高の成績でリリーフ陣の大黒柱となりポストシーズンでも好投した。若手では20歳の新人イ・ミョンジョンが4勝と結果を残した。

 

【野手の成績】

打率.252(9位) 本塁打94(9位) 得点621(8位) 盗塁63(9位) 失策117(5位)

捕手:イ・ジヨン     137試合 打率.267 2本塁打 37打点 1盗塁

一塁:キム・テジン    77試合    打率.268 0本塁打 20打点 1盗塁

二塁:キム・ヘェソン   129試合 打率.318 4本塁打 48打点 34盗塁

三塁:ソン・ソンムン   142試合 打率.247 13本塁打 79打点 0盗塁

遊撃:キム・ヒィジプ   112試合 打率.222 8本塁打    36打点   0盗塁

左翼:キム・ジュヌァン  111試合 打率.192 1本塁打 28打点 1盗塁

中堅:イ・ジョンフ    142試合 打率.349 23本塁打 113打点 5盗塁

右翼:プイーグ         126試合 打率.277 21本塁打 73打点 6盗塁

指名:イ・ヨンギュ     86試合 打率.199 0本塁打 20打点 12盗塁

控え:キム・ジェヒョン、キム・ウンビン、チョン・ビョンウ、キム・スファン、パク・チャンヒョク、イム・ジヨルなど

 チームの打撃成績で下位の数字が並ぶように、得点力は低かった。しかし2年連続首位打者、初の打点王でレギュラーシーズンMVPを受賞した24歳のイ・ジョンフがプロ野球界での最強打者として数字以上の存在感でチーム力を向上させていた。外国人選手プイーグもポストシーズンで活躍するなどMLBでの実績を感じさせチームに勢いを与えた、またソン・ソンムンも不動の三塁手として主軸に成長した。キム・ヘェソンは長打力に欠けているが確実性のある打撃と俊足を生かし4番打者に起用された試合もあった。

 ただ内外野ともに一部の突出した選手を除くと層の薄さは顕著で、ポストシーズンでは準プレーオフプレーオフを勢いで勝ち抜き、総合力で勝るSSG相手に健闘したものの、第5戦以降は相手を突き放すことができず地力の差により敗れ去ってしまった。

 

【オフシーズンの動向】

 ホン・ウォンギ監督は5年連続ポストシーズン進出、韓国シリーズ準優勝と期待以上の成績を残し2023年からも再契約を結んだ。NCからFAとなっていた37歳で経験豊富なリリーフ型右腕のウォン・ジョンヒョン投手と契約して抑えの候補を増やし、またLGからフューチャースFAとなっていたイ・ヒョンジョン外野手と契約し打線の強化に努めた。また控え捕手のチュ・ヒョサンが新人ドラフト指名権とのトレードでキアへ移籍した。

 キウムからのFA選手は近年先発で活躍していたハン・ヒョンヒィがロッテへと移籍し、補償選手として21歳の若手右腕イ・ガンジュンを指名した。もう1名のFA選手のチョン・チャンホンは1月26日時点でどの球団とも未契約である。

 外国人選手については打線で中軸を任されていたプイーグは違法な賭博への関与の疑いにより再契約せず、また圧倒的な成績を残せなかったエップラーとも再契約しなかった。一方で、毎年安定した投球を見せるヨキシュとは再契約した。新外国人選手としてはアリエル・フラード投手、2020年にキウムと契約していたアディソン・ラッセ内野手と契約した。

 2023年3月、6年ぶりに開催される野球の国際大会、WBCワールドベースボールクラシック)韓国代表にはイ・ジヨン、キム・ヘェソン、イ・ジョンフの3名が選ばれた。

 

 2022年はイ・ジョンフのずば抜けた活躍もあってポストシーズンを勝ち抜き韓国シリーズでも健闘し、大いに注目を集めたキウムヒーローズ。だがそのイ・ジョンフは今後MLBへの挑戦を明らかにしている。独自のチーム編成と選手起用で結果を残してきたキウムヒーローズだが、2008年の創設以降初となるレギュラーシーズン優勝、韓国シリーズ優勝はイ・ジョンフ、そのほかにアン・ウジン、キム・ヘェソンなどプロ野球界を代表する若い才能が集まっているうちに成し遂げたい。イ・ジョンフとキウムにかかる期待は大きい。

 

(文責:ふるりん