DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2022年シーズン回顧 第1回 SSGランダース

SKの遺産と新世代の台頭でSSG初優勝

 

2022年シーズン成績 

レギュラーシーズン:88勝52敗4分(勝率.629)1位

ポストシーズン韓国シリーズ優勝

 

 SKワイバーンスとしての21年間の歴史に幕を閉じ、SSGランダースとして生まれ変わった2021年は6位でポストシーズン進出を逃すも、2022年は開幕前の3月8日に朗報が飛び込んできた。SK時代、4度の韓国シリーズ優勝に貢献した左腕キム・グァンヒョンがSSGと契約し、2年間のMLBでの選手生活を終え韓国へ復帰することになった。かつてのエースの帰還で開幕前のムードは最高潮に達した。

 4月2日、敵地昌原(チャンウォン)でのNCダイノスとの開幕戦では、先発の韓国2年目の外国人選手フォントが一世一代の投球を見せ9回裏まで相手打者の27人を完璧に抑えたが、味方打線が9回表まで無得点だったため1982年からのプロ野球40年間の歴史で一度も記録されていない完全試合達成とはならなかった。SSGはこの開幕戦で延長10回表に4点を勝ち越し、2番手キム・テッキョンが10回裏を無安打無失点(与四球1個)に抑え、プロ野球史上2度目となる継投ノーヒットノーランで勝利した。

 これでSSGは勢いに乗り、4月9日のキアタイガーズ戦でキム・グァンヒョンが韓国復帰後初勝利をあげ開幕7連勝となり、4月13日のLGツインス戦では開幕10連勝に伸ばし開幕ダッシュに成功した。ロッテジャイアンツ自由契約となった38歳の右腕ノ・ギョンウンが先発で、LGを自由契約となった39歳の左腕コ・ヒョジュンがリリーフでそれぞれ活躍し、また手術でシーズン前半は試合に出場できないパク・チョンフンやムン・スンウォンの代わりに先発を務めた右腕イ・テヤンなど、予想外の選手たちの活躍で独走態勢を固めていった。

 攻撃陣もSK時代からの生え抜きのチェ・ジョン、ハン・ユソムなどの中軸と経験豊富な元メジャーリーガーのチュ・シンス、内野のパク・ソンハン、外野のチェ・ジフン、先発左腕のオ・ウォンソクなど新世代の台頭で上位から下位まで切れ目のない打線が構成された。しかし韓国1年目の新外国人選手はあまり機能せず、MLB通算90勝の実績がある右腕ノバはかつての球威がなく、右の長距離打者として期待されたクロン(元広島)は5月以降打てなくなった。クロンの不調を埋めたのが6月12日のハンファイーグルス戦でプロ初本塁打を記録した22歳の若き左の長距離打者チョン・ウィサンだった。

 開幕前から絶対的な抑えの不在が指摘され、4月の開幕当初は左腕キム・テッキョンが抑えを務めたが、5月になり不調で右腕ソ・ジニョンに交代した。レギュラーシーズン144試合の半分近くを消化した6月下旬になっても6割台後半の勝率を維持し、キウムやLGなどの他の上位チームを寄せ付けなかった。そして7月15日から21日までのオールスター戦による1週間の中断期間をはさんで、7月7日のロッテジャイアンツ戦から7月24日のトゥサンベアース戦まで8連勝と勝率は7割近くまで上昇した。

 また結果を残せなかったノバ、クロン(元広島)の外国人選手2名を自由契約選手とし、新外国人選手として台湾プロ野球・中信兄弟で活躍していた左腕投手モリマンド、MLBでの経験が豊富な外野手ラガーレスと契約した。また手術からのリハビリを終えたパク・チョンフンとムン・スンウォンも復帰しレギュラーシーズン優勝に向け万全の体制が整ったかに思えた。しかしレギュラーシーズン残り30試合程度となった8月下旬から陰りが見え始めた。

 9月になり抑えのソ・ジニョンなどの不調で足踏みが続き、背後から好調の2位LGが迫ってきた。9月18日のトゥサン戦で乱打戦の末にオ・テゴンの本塁打で14-13のサヨナラ勝ちを収めるなど、徐々にSK時代の2010年以来となる12年ぶりのレギュラーシーズン優勝が近づいてきたかに思えた。しかし9月25日、LGとの最後の直接対決で延長10回に4点を勝ち越され敗れると、首位SSGは残り7試合でこの時残り12試合もあった2位LGとのゲーム差が2.5に縮まり、優勝争いはわからなくなってしまった。

 10月1日のキア戦で勝利しLGとのゲーム差を3.5に広げたが、10月3日、最下位ハンファイーグルス相手にまさかの敗戦で足踏みしてしまった。結局試合のなかった10月4日にLGがキアに敗れたため、SSGとしてのレギュラーシーズン初優勝、SK時代の2018年以来となる韓国シリーズ進出が決まった。4月2日の開幕から一度も首位の座を譲らない快挙を成し遂げたものの、最終戦となった10月8日のサムソンライオンズ戦まで4連敗とレギュラーシーズンを終え、試合間隔の空く韓国シリーズにやや不安を残した。

 11月1日からの韓国シリーズの相手は最後までレギュラーシーズン優勝を争ったLGではなく、プレーオフでLGに勝利したキウムヒーローズとなった。本拠地仁川での第1戦は9回裏に40歳のキム・ガンミンの本塁打で同点に追いつくも、延長10回表にリリーフで登板したモリマンドが1点を勝ち越され6-7で敗れた。続く第2戦は先発フォントの好投で6-1と勝利し、舞台を敵地高尺に移した11月4日の第3戦はラガーレスの本塁打などで8-2と逆転勝ちした。しかし続く第4戦は3-6と敗れ対戦成績を2勝2敗とされてしまった。

 舞台を仁川に戻した11月7日の第5戦は8回表まで0-4と敗色濃厚だった。しかし8回裏にチェ・ジョンの本塁打で2点を返すと、9回裏に代打キム・ガンミンの韓国シリーズ2本目となる本塁打で5-4とサヨナラ勝ちし、優勝まであと1勝とした。続く11月8日の第6戦では6回裏にキム・ソンヒョンのタイムリーで逆転し、キム・グァンヒョンが9回裏途中からリリーフで登板し1点差を守りきり、4-3で勝利し4勝2敗でSK時代から通算5度目の韓国シリーズ優勝、SSGとしては初の優勝を成し遂げた。韓国シリーズMVP(最優秀選手)は第5戦の逆転サヨナラ本塁打が印象的だったキム・ガンミンが選ばれた。

 

【投手の成績】

防御率3.87(4位) 奪三振1023(5位) 被本塁打130(1位) 与四球457(1位)

[主な先発投手]

フォント      28試合 13勝6敗 防御率2.69

キム・グァンヒョン 28試合 13勝3敗 防御率2.13

オ・ウォンソク   31試合 6勝8敗 防御率4.50

イ・テヤン     30試合 8勝3敗1ホールド 防御率3.62

モリマンド     12試合 7勝1敗  防御率1.67

パク・チョンフン  11試合 3勝5敗 防御率6.00

 先発のチーム防御率(3.41)は10チーム中2位だった。開幕戦で9回無失点の好投を見せ、チーム最多タイの13勝を記録した外国人選手フォント、韓国に帰ってきたキム・グァンヒョンの2名が先発投手陣の柱となりチームに安定感をもたらした。21歳の左腕オ・ウォンソクはプロ3年目で初の規定投球回数(144回)に達し、キム・グァンヒョンの後継者に名乗り出た。先発もリリーフもこなせるイ・テヤンの働きも大きかった。3勝どまりの外国人選手ノバの代役として契約したモリマンドは7月以降だけで7勝と期待に応えたが、韓国シリーズで2敗を喫してしまい印象を悪くした。

 

[主なリリーフ投手]

ノ・ギョンウン   41試合 12勝5敗1セーブ7ホールド 防御率3.05

ソ・ジニョン    68試合 7勝3敗21セーブ12ホールド 防御率4.01

キム・テッキョン  64試合 3勝5敗17セーブ10ホールド 防御率4.92

チェ・ミンジュン  51試合 5勝4敗5ホールド 防御率3.95

コ・ヒョジュン   45試合 1勝7ホールド 防御率3.72

チャン・ジフン   40試合 2勝6ホールド 防御率4.25

 リリーフの防御率(4.68)は10チーム中6位と、先発投手陣と比べると成績が悪かった。チーム最多セーブは5月後半から抑えを任されるも9月以降はセーブが1つもなかったソ・ジニョンで抑えの切り札不在が目立ったが、韓国シリーズでは質より量で押し切った。特筆すべきは38歳のノ・ギョンウンで、4月は先発として活躍しチームの開幕ダッシュ成功に貢献、5月からしばらく負傷により離脱するも6月下旬の復帰後は主にリリーフとして活躍、自身最多タイの12勝を記録し韓国シリーズ優勝に大きく貢献した。

 

【野手の成績】

打率.254(7位) 本塁打138(1位) 得点720(1位) 盗塁98(4位)  失策109(7位)

捕手:キム・ミンシク  104試合 打率.221 2本塁打 28打点 0盗塁

一塁:チョン・ウィサン 77試合   打率.249 13本塁打 45打点 0盗塁

二塁:チェ・ジュファン 97試合  打率.211 9本塁打 41打点 0盗塁

三塁:チェ・ジョン   121試合 打率.266 26本塁打 87打点 12盗塁

遊撃:パク・ソンハン  140試合 打率.298 2本塁打  56打点   12盗塁

左翼:ラガーレス    49試合 打率.315 6本塁打 32打点 3盗塁

中堅:チェ・ジフン   144試合 打率.304 10本塁打 61打点 31盗塁

右翼:ハン・ユソム   135試合 打率.264 21本塁打  100打点 1盗塁

指名:チュ・シンス   112試合 打率.259 16本塁打 58打点 15盗塁

控え:イ・ジェウォン、キム・ソンヒョン、オ・テゴン、キム・ガンミン、チェ・ギョンモ、ハ・ジェフン

 チーム本塁打数、得点は10チーム中1位と狭い仁川ランダースフィールドの特性を生かし得点力は高かった。打線の中軸は個人通算429本塁打のチェ・ジョン、ハン・ユソムの生え抜きのベテランが任された。またチーム唯一のレギュラーシーズン全144試合出場、チーム最多の31盗塁を記録したチェ・ジフンがチャンスメイカーとして大きく成長を遂げた。40歳となった元メジャーリーガーのチュ・シンスは年齢も考え指名打者での出場が増えたが、打撃、走塁ともに実力を発揮していた。ほかにも守備の要である遊撃手にはパク・ソンハンが定着した。ほかには22歳のチョン・ウィサンが13本塁打と活躍し、11本塁打を記録するも打率が.222と低く自由契約選手となった外国人選手クロンの穴を埋めた。代役の外国人選手ラガーレスは確実性のある打撃でチームに貢献した。

 控え選手では40歳とは思えない活躍で韓国シリーズMVPとなった外野のキム・ガンミン、内外野のユーティリティープレイヤーのオ・テゴンが欠かせない存在だった。投手から外野手に転向したハ・ジェフン(元東京ヤクルト)も6本塁打を記録した。

  

【オフシーズンの動向】

 韓国シリーズ優勝という最高の結果を残し、キム・ウォンヒョン監督は2023年からも再契約となった。FA(フリーエージェント)となった選手ではイ・テヤンが古巣ハンファへと移籍し、オ・テゴンは再契約した。外国人選手については韓国シリーズ優勝に貢献したフォント、モリマンド、ラガーレスの3名とも再契約せず、新外国人選手としてカーク・マッカーティとエンニー・ロメロ(元千葉ロッテ)の2名の投手、ギジェルモ・エレディアの1名の野手と契約した。

 また6年ぶりに開催されるWBCワールドベースボールクラシック)韓国代表として、SSGからはキム・グァンヒョンとチェ・ジョンの2名の投打の柱が選ばれた。

 

 2022年はレギュラーシーズンで首位を維持し続け、新球団としてのフレッシュなイメージが残っていたことなどで10チーム中1位の98万1546名の観客動員を記録し、過去2年間は多くの試合で無観客となったプロ野球の復興に一役買った。2023年シーズンは2連覇がかかるが外国人選手を除いて目立った補強はなく、SK時代の栄光もあってかあまり大きなプレッシャーはかかっていないように感じられる。しかしSK時代からの主力は高齢化しているため、SSGとなってから主力に定着した選手たちのより一層の成長が肝要となっている。3年目を迎えるSSGランダースはこれからプロ野球にどのような足跡を残していくのか、大いに注目されるであろう。 

 

(文責:ふるりん