DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2022年シーズン回顧 第3回 LGツインス

韓国シリーズへの道は果てしなく遠い

 

2022年シーズン成績 

レギュラーシーズン:87勝55敗2分(勝率.613)2位

ポストシーズンプレーオフ敗退(対キウム)1勝3敗

 

 2022年シーズン開幕前、LGツインスは投打ともに戦力が充実し、優勝候補の呼び声が高かった。2021年は最後までレギュラーシーズン優勝を争い3位に終わり、4位だったトゥサンベアースに準プレーオフで敗れてしまったが、手ごたえをつかんだ2年目のリュ・ジヒョン監督は2002年以来の韓国シリーズ出場、1994年以来の韓国シリーズ優勝を現実的な目標としていたと思われる。

 レギュラーシーズン開幕戦の4月2日のキアタイガーズ戦から7日のキウムヒーローズ戦まで5連勝と勢いに乗ったかに見えたが、SSGがその上を行く開幕10連勝だった。韓国4年目の外国人選手ケリー、新外国人選手プルトコの2人が先発投手陣の軸として安定し、サムソンからFA(フリーエージェント)で移籍してきた俊足巧打の外野手パク・ヘミンも活躍、SSGが首位を独走する中で上位につけていた。チームの好調に合わせ守護神コ・ウソクもセーブを重ねた。

 5月末に好調のキウムに押され3位に後退するも、しばらくはSSGとキウム、LGの3強による順位争いとなった。5月30日には韓国に適応できなかったルイーズをウェーバー公示し、2021年と同様に外国人野手の不調に苦しめられた。6月4日には代役の新外国人選手ガルシアと契約し、打線の強化を図った。

 7月3日には2020年で現役を引退したかつての主力打者パク・ヨンテクの永久欠番(33番)の盛大なセレモニーが行われた。パク・ヨンテクは自身が新人だった2002年以来となるLGの韓国シリーズ進出、そして28年ぶり3度目となる優勝を心から願っていた。パク・ヨンテクの熱意に押されたかこの日のロッテジャイアンツ戦から7月10日のトゥサン戦まで7連勝と勢いに乗り、SSG、キウムとのし烈な首位争いを続けた。

 8月6日のキウムとの直接対決で、主力打者に成長したムン・ボギョンの本塁打、先発に定着したイ・ミンホの好投などで勝利し2位に浮上すると、調子を落としたキウムを突き放し首位SSGに迫っていった。8月26日のキア戦から9月4日のロッテ戦まで7連勝と勝率は6割を超え、優勝争いはSSGとの一騎打ちの様相を呈したが、9月6日と7日のSSGとの直接対決で1敗1分けと勝てなかった。首位争いと合わせてケリー、プルトコの外国人選手2名による最多勝争いもし烈になった。

 SSGが終盤に近付き失速していく中、LGは調子を維持し優勝争いは最後までわからなくなってきた。また9月25日、SSGとの最後の直接対決で延長10回のキム・ミンソンの満塁本塁打で勝利し、首位浮上の可能性を残した。しかしそれまで雨天などで中止になった試合が多く、9月末からは強行日程となり疲労のためか思ったほどは勝てず、10月4日のキア戦に敗れ3連敗となり、試合がなかったSSGのレギュラーシーズン優勝が決まり、LGの2位も確定した。

 10月11日、レギュラーシーズン最終戦となったKTウィズ戦では9回裏にオ・ジファンのタイムリーでサヨナラ勝ちし、ポストシーズンに向けて勢いをつけた。最終的な勝率は6割を超えていたが、SSGの独走を止めることはできなかった。

 3年連続で進出したポストシーズンプレーオフからの出場となり、相手は準プレーオフでKTに勝ったキウムとなった。LGとしては2020年、2021年とポストシーズンで敗れた苦手意識のあるトゥサンではなく、準プレーオフが第5戦までもつれ疲労が残っているであろうキウム相手なら有利に進められるのではないかと思われた。しかし15勝を記録した外国人選手のプルトコが故障明けで、ガルシアもルイーズと同じく韓国に適応できずポストシーズンの前に自由契約選手となっていて、2021年と同様に外国人野手不在のままポストシーズンに臨むことになるなど不安は少なくなかった。しかもそれが予想よりも悪い流れを生み出してしまった。

 10月24日、本拠地蚕室でのプレーオフ第1戦は最多勝投手(16勝)となったケリーの好投もあって6-3で勝利した。翌10月25日の第2戦は故障明けの先発プルトコが2回までに6点を失い、キム・ヒョンスのタイムリーなどで反撃したが6-7で敗れた。舞台を敵地高尺に移した10月27日の第3戦では先発キム・ユンシクが好投するも、6回裏以降の継投がすべて裏目に出てしまい、打線もチャンスを生かせず4-6で敗れ後がなくなってしまった。

 10月28日の第4戦ではケリーを先発させたが先制を許し、打線もつながらず1-4で敗れ、第2戦以降の3連敗でプレーオフ敗退となり、2002年以来20年ぶりとなる韓国シリーズ進出に失敗した。選手層では投打ともにキウムを上回っていたように見えたが、20年以上続くチームとしての勝負弱さを克服できず、ファンは失望を繰り返してしまった。韓国人で最多となる12勝を記録した先発要員のイ・ミンホが故障していたわけでもないのにプレーオフで1回も登板しないなど、選手起用にも疑問点が多く残った。

 

【投手の成績】

防御率3.33(1位) 奪三振1031(5位) 被本塁打94(8位) 与四球451(9位)

[主な先発投手]

ケリー       27試合 16勝4敗 防御率2.54

プルトコ      28試合 15勝5敗 防御率2.39

イ・ミンホ        26試合 12勝8敗 防御率5.51

キム・ユンシク   23試合 8勝5敗 防御率3.31

イム・チャンギュ  23試合 6勝11敗 防御率5.04

 先発の防御率(3.66)は10チーム中4位だった。最多勝投手の個人タイトルを受賞したケリー、プルトコの外国人選手2名で31勝を稼いだ。韓国人では21歳の右腕イ・ミンホが12勝と最多勝だったが投球回数が119回と3分の1と多くなかった。また22歳の左腕キム・ユンシクが8勝と成長を見せた。韓国人の経験豊富な先発が何名か活躍していれば、優勝も夢ではなかったかもしれない。

 

[主なリリーフ投手]

キム・ジンソン   67試合 6勝3敗12ホールド 防御率3.10

チョン・ウヨン   67試合 2勝3敗35ホールド 防御率2.64

イ・ジョンヨン   65試合 4勝4敗1セーブ22ホールド 防御率3.34

チン・ヘス     64試合 4勝12ホールド 防御率2.40

コ・ウソク     61試合 4勝2敗42セーブ 防御率1.48

キム・デユ     59試合 2勝1敗13ホールド 防御率2.04

チェ・ドンファン  47試合 0勝1敗 防御率4.14

チェ・ソンフン   45試合 0勝0敗6ホールド 防御率2.16

イ・ウチャン    36試合 5勝2ホールド 防御率1.81

 リリーフの防御率(2.89)は10チーム中1位で、左右ともに質が高く優勝争いを続けられた大きな原動力となった。ケリー、プルトコ以外の韓国人の先発投手陣が6回以上を投げられないことが多く、その分リリーフ陣の比重が大きくなった。それはチームの総ホールド数がリーグ最多の107だった点にはっきり表れている。チーム最多登板はサイドハンドからの速球でリーグ最多の35ホールドを記録した23歳のチョン・ウヨンと、NCダイノスから自由契約となり新天地で復活した37歳の右腕キム・ジンソンだった。抑えは24歳のコ・ウソクは自身初の最多セーブの個人タイトルを受賞し、プロ野球を代表するリリーフとなった。

 

【野手の成績】

打率.269(3位) 本塁打118(3位) 得点715(3位) 盗塁102(2位) 失策89(10位)

捕手:ユ・ガンナム    139試合 打率.255 8本塁打 47打点 0盗塁

一塁:チェ・ウンソン   126試合   打率.296 12本塁打 83打点 6盗塁

二塁:ガルシア      39試合 打率.206 4本塁打  19打点 4盗塁

三塁:ムン・ボギョン   126試合 打率.315 9本塁打 56打点 7盗塁

遊撃:オ・ジファン    142試合 打率.269 25本塁打  87打点   20盗塁

左翼:キム・ヒョンス      141試合 打率.286 23本塁打 106打点 2盗塁

中堅:パク・ヘミン    144試合 打率.289 3本塁打 49打点 24盗塁

右翼:ホン・チャンギ   118試合 打率.286 1本塁打   51打点 13盗塁

指名:イ・ジェウォン   85試合 打率.224 13本塁打 43打点 3盗塁

控え:ホ・ドファン、ソ・ゴンチャン、キム・ミンソン、イ・サンホ、イ・ヒョンジョン、ムン・ソンジュなど

 サムソンからFAで移籍してきたパク・ヘミンは期待に応え1番打者として活躍、22歳の左打者ムン・ボギョンが主力に成長、イ・ジェウォンやムン・ソンジュなども台頭しキム・ヒョンス、オ・ジファン、ユ・ガンナム、チェ・ウンソンなど実績のある選手たちと融合して得点力は向上した。しかし2021年と同じく外国人野手は機能せずルイーズとガルシアの2名で合計66試合にしか出場できず、5本塁打、25打点のみと10チーム中最低の成績に終わった。短期決戦で流れを変えられる長打が期待できる外国人選手の不在で得点のチャンスをことごとく生かせず、プレーオフ敗退の原因の一つになってしまった。

 

【オフシーズンの動向】

 プレーオフでの敗退を受け、2年連続でポストシーズンを勝ち抜けなかったため采配が疑問視されたユ・ガンナム監督の再契約はなく、ネクセン(現キウム)、SK(現SSG)で監督経験のあるヨム・ギョンヨプ新監督が就任したが、これは激動のオフシーズンの始まりに過ぎなかった。

 LGからFAとなった選手のうちユ・ガンナムはロッテ、チェ・ウンソンはハンファ、フューチャースFAとなったイ・ヒョンジョンはキウムへと移籍した。代わりにキアからFAとなった捕手パク・トンウォンと契約しユ・ガンナムの穴を埋めることになった。ユ・ガンナムの補償選手として左腕投手キム・ユヨン、チェ・ウンソンの補償選手として右腕投手ユン・ホソルを指名した。またパク・トンウォンの補償選手としてリリーフ左腕投手キム・ユヨンがキアへ移籍した。ほかには故障で2022年は登板がなく自由契約選手となったベテラン左腕チャ・ウチャンはロッテと契約した。

 外国人選手についてはケリー、プルトコの2名とは再契約したが、新外国人選手として契約したアブラハムアルモンテ外野手はメディカルテストで不合格とされ契約が撤回された。代わりにオースティン・ディーン外野手と契約しチェ・ウンソンが抜けた穴を埋めようとしている。

 WBCワールドベースボールクラシック)韓国代表にはキム・ユンシク、コ・ウソク、チョン・ウヨンの投手3名、オ・ジファン、キム・ヒョンス、パク・ヘミンの野手3名と国内のプロ野球チームからは最多の6名が選ばれた。

 

 2022年は近年になく戦力が充実していたが首位には立てず、2013年以来9年ぶりにレギュラーシーズン2位でプレーオフに進出するも、有利な立場を生かせずキウムの前に敗れ去ってしまう勝負弱さやもろさを乗り越えられなかった。こういう悪い意味での伝統が根強いチームであり、2023年シーズン、FAによる主力選手の流出という困難を乗り越え、どのようにして捲土重来を図り優勝を狙っていくのか、ヨム・ギョンヨプ新監督の手腕が試される。

 

(文責:ふるりん