DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2019年シーズン回顧 第4回 LGツインス

名将のもと新陳代謝を図る

2019年シーズン成績 

レギュラーシーズン:79勝64敗1分(勝率.552)4位

ポストシーズンプレーオフ敗退(対キウム)1勝3敗

 

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LG一筋の大打者パク・ヨンテクも40歳。2020年が現役最後のシーズンと言われている。

 

 2018年は8位に終わり、就任2年目を迎えたリュ・ジュンイル監督は、2011年から2014年までサムソンを韓国シリーズ4連覇に導いた名将として優勝から遠ざかるLGの再建を託されていた。2019年は捲土重来のため、レギュラーだったヤン・ソックァンが軍へ入隊した三塁にはキウムからトレードでキム・ミンソンを獲得するなど補強に努めた。

 3月23,24日のキアとの開幕2連戦でウィルソン、新外国人選手ケリーの2人の先発で連勝スタートとなり、韓国人左腕チャ・ウチャンと合わせこの3人がシーズンを通して先発投手陣の軸となった。2018年は16試合で1勝しかできなかった同じ蚕室野球場を本拠地とするライバル・トゥサンとは、4月のうちに2勝するなど前年との違いを見せていた。

 5月2日のKT戦で高卒新人チョン・ウヨンがプロ初セーブを記録するなど8連勝で首位SKと並んだ。打線の不振でその勢いは続かなかったが、20歳のコ・ウソクが抑えに定着するとリリーフが安定し6月上旬にはSK、トゥサンに次ぐ3位に浮上した。6月後半になるとキウムが勢いに乗り激しい3位争いを続けたが、7月5日に4位に後退するとその後浮上はなかった。

 優勝争いに残るため、7月10日、故障続きで期待に応えられなかった外国人選手ジョセフの代わりに新外国人選手ペゲーロ(元東北楽天)と契約し打線の強化を図り、また7月29日、ハンファから35歳のベテラン右腕ソン・ウンボムをシン・ジョンナクとのトレードで獲得し中継ぎとして起用した。しかしチームは上昇せずSK、トゥサン、キウムの上位3チームとの差は広がっていく一方だった。

 8月以降は大きな連勝も連敗もなく、5位争いをしていたNCとKTは勝率5割前後にとどまっていたため、勝率5割台半ばを維持し続けた4位LGに大きな動きはなかった。結局上位3チームは勝率6割を超える争いとなり、9月26日のKT戦で勝利しレギュラーシーズン4位が確定し、2016年以来3年ぶりにポストシーズンへ進出することになった。9月29日、レギュラーシーズン最後の蚕室野球場での試合となったトゥサン戦で、2001年のプロ入りから19年間LG一筋で投げ続けたイ・ドンヒョンの引退セレモニーがあり、通算701試合に登板したフランチャイズスターに盛大なはなむけの拍手が送られた。 

 ポストシーズンは5位NCとのワイルドカード決定戦から出場し、ケリーの好投とイ・ヒョンジョンのタイムリーなどで3-1と勝利し、1試合で準プレーオフ進出を決めた。 キウムとの準プレーオフ第1戦は先発ウィルソンが8回裏まで好投するも、まだ21歳で大舞台での経験に乏しいコ・ウソクがサヨナラ本塁打を浴び0-1で敗れた。第2戦は延長10回までもつれるもサヨナラ負けを喫し、もう後がなくなった第3戦ではオ・ジファンの犠牲フライ、ペゲーロの本塁打で4-2と勝利した。しかし第4戦ではリードするも投手陣が疲労からか崩れ5-10で敗れ、準プレーオフ敗退でLGの2019年シーズンは終了した。

 

【投手の成績】

防御率3.86(4位) 奪三振953(6位) 被本塁打89(8位) 与四球499(5位)

[主な先発投手]

ウィルソン     30試合 14勝7敗 防御率2.92

ケリー       29試合 14勝12敗 防御率2.55

チャ・ウチャン   29試合 13勝8敗 防御率4.12

イ・ウチャン      30試合 5勝4敗2ホールド  防御率4.85

イム・チャンギュ    30試合 3勝5敗2ホールド 防御率4.97

ぺ・ジェジュン   19試合 3勝4敗 防御率5.23

 先発の防御率3.94は10チーム中5位で、上位3チームと比べて層が薄かった。ウィルソン、ケリーの両外国人選手、チャ・ウチャンの3人に続く先発4番手以降が弱かった。5月から7月にかけ先発で5連勝した27歳の左腕イ・ウチャン、9月以降先発で起用された25歳の右腕ぺ・ジェジュンの成長が収穫で、イム・チャンギュなどは期待に応えられなかった。また先発として活躍してきた36歳のベテラン右腕リュ・ジェグクは2018年以降未勝利のまま、8月23日に突如現役引退を表明した。

 

[主なリリーフ投手]

チン・ヘス     72試合 3勝1敗20ホールド 防御率3.43

コ・ウソク     65試合 8勝2敗35セーブ1ホールド 防御率1.52

チョン・ウヨン   56試合 4勝6敗1セーブ16ホールド 防御率1.98

キム・デヒョン   41試合 5勝4敗9ホールド 防御率3.78

ムン・グァンウン  32試合 1勝1敗1セーブ3ホールド 防御率4.09

ソン・ウンボム   63試合 2勝6敗1セーブ9ホールド 防御率5.25

 リリーフの防御率は3.82で10チーム中4位だった。21歳のコ・ウソクが35セーブと、近年チームが悩まされてきた抑えの切り札不在を解消した。また高卒新人チョン・ウヨンは中継ぎとして活躍し新人王を受賞した。この2人に刺激されたか、22歳のキム・デヒョンが2018年の不振から脱し中継ぎとして活躍した。左のリリーフが弱いこともあり、チン・ヘスが2019年もチーム最多の72試合に登板した。また7月29日にトレードでハンファから加入したソン・ウンボムも、シーズン終盤に中継ぎとして活躍し新天地での復活を印象付けた。

 

【野手の成績】

打率.267(5位) 本塁打94(6位) 得点641(6位) 盗塁108(3位) 失策95(7位)

捕手:ユ・ガンナム    132試合 打率.270 16本塁打 49打点 0盗塁

一塁:キム・ヒョンス   140試合   打率.304 11本塁打 82打点 3盗塁

二塁:チョン・ジュヒョン 129試合  打率.231 2本塁打 27打点 15盗塁

三塁:キム・ミンソン   107試合 打率.260 8本塁打 50打点 2盗塁

遊撃:オ・ジファン    134試合 打率.252 9本塁打  53打点   27盗塁

左翼:イ・ヒョンジョン  120試合 打率.286 13本塁打 63打点 6盗塁

中堅:イ・チョヌン    138試合 打率.308 2本塁打 48打点 21盗塁

右翼:チェ・ウンソン   128試合 打率.315 12本塁打  75打点 2盗塁

指名:ペゲーロ      52試合 打率.286 9本塁打 44打点 2盗塁

控え:キム・ヨンウィ、シン・ミンジェ、ク・ボンヒョク、パク・ヨンテク、チョン・ミンスなど

 得点力はトゥサン、キウム、SKの上位3チームと比べかなり見劣りした。プロ野球界有数のクラッチヒッター、キム・ヒョンスが不動の4番打者で回りをイ・ヒョンジョン、チェ・ウンソンなどの打者が固め、強打の捕手ユ・ガンナムは下位打線の脅威となった。7月より加勢した外国人選手ペゲーロも長打力を発揮し打点を稼いだ。プロ野球史上最多の個人通算2439安打を記録中のパク・ヨンテクも40歳となり、故障やチームの世代交代の波もあってプロ18年間で自身最少の64試合の出場にとどまった。一方でポストシーズンでは大卒新人ク・ボンヒョクが先発出場するなど、若手の台頭も始まっていた。

 オ・ジファン、イ・チョヌン、チョン・ジュヒョンなど盗塁の多い快足の選手もそろい、長打の出にくい広い蚕室野球場の特性を生かす攻撃を試みていた。

 

【オフシーズンの動向】

  余剰戦力を対象とした2次ドラフトではSKとハンファでプロ野球界有数の二塁手として活躍してきた37歳のチョン・グヌを指名し、手薄な内野の補強に成功した。初めてFAとなった生え抜きの内野手オ・ジファンだけでなく、ソン・ウンボム、チン・ヘスといった実績のあるリリーフのFA選手とも再契約し、戦力の流出を防いだ。

 ウィルソン、ケリーの外国人選手2名とは再契約したが、2020年2月で33歳となるためやや年齢の高いペゲーロは外野手の多いチーム事情で再契約せず、25歳となったばかりの左打ちの内野手である新外国人選手ロベルト・ラモスと契約し、打線の強化を図った。

 

 2020年シーズン、LGで3年目を迎えるリュ・ジュンイル監督は、かつて率いたサムソンのような韓国シリーズで優勝できるチーム作りを進め、2019年はレギュラーシーズン4位で3年ぶりのポストシーズン進出という結果を出した。新陳代謝、世代交代がさらに進み、ベテランと若手が融合したバランスのよいチームが1994年以来の韓国シリーズ優勝をもたらすのかもしれない。

 

(文責:ふるりん