最低限の結果は出し続けるも
2021年シーズン成績
レギュラーシーズン:70勝67敗7分(勝率.511)5位
ポストシーズン:ワイルドカード決定戦敗退 対トゥサン(1勝1敗)
2020年まで3年連続ポストシーズンに進出するも初優勝には手が届かず、攻守のかなめだった内野手キム・ハソンがMLBサンディエゴパドレスへ移籍し、監督1年目のホン・ウォンギ新監督には厳しい船出となった2021年シーズン。ハンファを自由契約となったベテラン外野手イ・ヨンギュ以外大きな補強がなかった。
4月2日のレギュラーシーズン開幕後は4月21日までの7連敗などで出遅れたが、5月になると台湾プロ野球・味全からブリガム(元東北楽天)が復帰し勝率を上げ、5月23日までの7連勝で上位に接近した。しかしそれ以降勝率が下がり5月中には7位へ後退した。6月23日には6位に浮上するも上位は遠くSSG、NCなどと中位争いが続いた。韓国に適応できなかった外国人選手フレイタスをウェーバー公示し、代役の新外国人選手としてクレイグと契約し打線の強化を図った。
7月7日に3連勝で5位に浮上し、シーズン後半のし烈な順位争いに弾みをつけようとしていた。しかし7月9日から11日までのNC3連戦は両チームにPCR検査の陽性者が出たため中止となり、その後レギュラーシーズンは1年延期された2020年東京オリンピック野球のため中断となった。当初オリンピック野球に韓国代表として選ばれていたハン・ヒョンヒィは出場を辞退し、防疫のための規定を守らなかったアン・ウジンとともに36試合の出場停止処分が下され、主力投手を2人欠くことになった。そこで7月27日、2012年より主力の内野手として活躍していたソ・ゴンチャンをLGへトレードし、先発としての経験が豊富な右腕チョン・チャンホンを獲得した。また8月11日、外野のレギュラーに定着していたソン・ウヒョンが飲酒運転発覚によりウェーバー公示となり投打ともに苦しくなった。
8月10日に再開されたレギュラーシーズンでは12日から一時4位にまで浮上したが、その後SSG、NCとのし烈な4-6位争いとなった。7月に家庭の事情で帰国していたブリガムは結局韓国に戻れず9月5日に任意脱退選手となり離脱した。時期的に代役の外国人選手と契約してもポストシーズンに出場できないため補強はなかった。9月中旬からトゥサンが復調し、4位から7位までは4チームによる混戦が続いた。混戦の順位争いは10月になっても先が見えず、キウムも一進一退を繰り返した。10月16日のサムソンとのダブルヘッダーで連敗し、一時は7位にまで後退した。
10月21日に残り6試合でSSGに抜かれ6位となった。10月25日のハンファ戦で首位打者争いをしていたイ・ジョンフが自身初となるサイクルヒットを達成、チームを勢いづけた。10月29日、首位争いをしていたKTに勝利し5位SSGとは0.5ゲーム差を維持した。翌10月30日のレギュラーシーズン最終戦のキア戦で先発投手陣の柱ヨキシュが最多勝トップタイに並ぶ16勝目を記録する好投で勝利、SSGがKTに敗れたため逆転で2年連続5位が確定、4年連続ポストシーズン進出となった。
ポストシーズンは2年連続でワイルドカード決定戦から出場し、4位トゥサンと対戦した。1敗したら敗退となる中、11月1日の第1戦は9回表にイ・ジョンフのタイムリーなどで勝ち越し7-4と勝利した。しかし翌11月2日の第2戦は先発チョン・チャンホンなどが打たれ4回裏までに9失点、8-16で敗れ2年連続で準プレーオフに進めず2021年シーズンは終了した。短期決戦開始の2日前に6回を投げた最多勝投手ヨキシュを登板させられなかったのが響いたが、レギュラーシーズン最終戦での確定ではあったが5位でポストシーズン進出という最低限の結果は出した。
【投手の成績】
防御率4.33(5位) 奪三振896(10位) 被本塁打101(8位) 与四球566(7位)
[主な先発投手]
ヨキシュ 31試合 16勝9敗 防御率2.93
チェ・ウォンテ 28試合 9勝11敗 防御率4.58
チョン・チャンホン 23試合 9勝5敗 防御率4.01
アン・ウジン 21試合 8勝8敗 防御率3.26
ハン・ヒョンヒィ 18試合 6勝2敗1ホールド 防御率3.89
ブリガム 10試合 7勝3敗 防御率2.95
キム・ドンヒョク 40試合 0勝5敗1セーブ 防御率5.05
先発の防御率(4.04)は10チーム中4位だった。韓国3年目の外国人選手ヨキシュが自身初の最多勝のタイトルをブキャナン(サムソン)と分け合って受賞し、先発投手陣の柱として健在だった。開幕当初は外国人投手スミスがいたが1勝のみでウェーバー公示され、いったん2021年の再契約を見送られるも台湾プロ野球・味全で好調だったブリガムが5月から契約、家庭の事情により7月までの登板となったが7勝と結果を残した。
韓国人選手では24歳のチェ・ウォンテが9勝と最多だった。7月にトレードでLGから移籍したチョン・チャンホンは8月以降のキウムでの登板では3勝とあまり結果を残せなかった。不祥事で登板機会が減少した22歳のアン・ウジンも復帰後は結果を残した。また8月から9月まで20歳の若手キム・ドンヒョクが先発として起用されるなど、外国人選手の不在や出場停止の選手の穴を埋める起用もあった。
[主なリリーフ投手]
キム・テフン 66試合 4勝2敗11セーブ15ホールド 防御率3.22
キム・ジェウン 51試合 0勝1敗1セーブ11ホールド 防御率3.54
キム・ソンミン 47試合 2勝3敗1セーブ11ホールド 防御率3.28
キム・ソンジン 46試合 1勝3敗2ホールド 防御率5.18
ヤン・ヒョン 45試合 1勝2敗5ホールド 防御率4.69
チョ・サンウ 44試合 6勝5敗15セーブ5ホールド 防御率3.48
イ・スンホ 38試合 1勝3敗5ホールド 防御率5.51
リリーフの防御率(4.76)は10チーム中7位だった。リリーフの中心は当初中継ぎだったが、2020年最多セーブの個人タイトルを受賞しながらも不振に陥ったチョ・サンウの代わりに9月から本格的に抑えを務めるようになったキム・テフンだった。キム・ジェウン、キム・ソンミン、イ・スンホなど比較的左のリリーフが多いのが特徴的だった。若手では24歳の大卒新人キム・ソンジンが中継ぎとして活躍した。
【野手の成績】
打率.259(7位) 本塁打90(8位) 得点720(4位) 盗塁96(6位) 失策129(1位)
捕手:パク・トンウォン 131試合 打率.249 22本塁打 83打点 2盗塁
一塁:パク・ピョンホ 118試合 打率.227 20本塁打 76打点 2盗塁
二塁:ソン・ソンムン 66試合 打率.249 6本塁打 33打点 0盗塁
三塁:キム・ウンビン 97試合 打率.238 5本塁打 34打点 1盗塁
遊撃:キム・ヘェソン 144試合 打率.304 3本塁打 66打点 46盗塁
左翼:ピョン・サングォン 72試合 打率.239 0本塁打 20打点 0盗塁
中堅:イ・ジョンフ 123試合 打率.361 7本塁打 84打点 10盗塁
右翼:イ・ヨンギュ 133試合 打率.296 1本塁打 41打点 16盗塁
指名:クレイグ 61試合 打率.248 6本塁打 30打点 0盗塁
控え:イ・ジヨン、チョン・ビョンウ、シン・ジュヌ、イェ・ジヌォン、パク・チョンウムなど
プロ1年目から安打製造機として活躍してきた23歳のイ・ジョンフが5年目にして初の首位打者となり、4番打者を任される試合も増えチーム最多打点も記録した。35歳となったパク・ピョンホは故障もあり20本塁打にとどまったが、過去5度の本塁打王、4度の打点王の実績もあり主軸として欠かせない存在だった。打撃に定評のある捕手パク・トンウォンがチーム最多の22本塁打と活躍した。
ハンファから自由契約となり移籍した35歳のイ・ヨンギュは衰えぬ実力を示しチャンスメイカーとして機能した。22歳のキム・ヘェソンはキム・ハソンに代わってショートを守り全144試合に出場、初の個人タイトルとなる盗塁王を受賞したがリーグ最多の35失策と守備に関しては課題を残した。またシーズン途中の7月に兵役を終え軍から除隊され復帰した内野手ソン・ソンムンは、7月にLGへトレードされたソ・ゴンチャンの代わりに二塁を守り活躍した。2020年と同じく外国人打者が活躍できず、フレイタスと代役のクレイグを合わせて8本塁打、44打点にとどまった。
【オフシーズンの動向】
2022年のFA(フリーエージェント)選手となったパク・ピョンホがKTへ移籍した。35歳以上での移籍だったため補償選手はなく補償金のみ譲渡された。比較的控えの野手の層が薄かったため、NCから自由契約となった外野手キム・ジュヌァン、KTから自由契約となった内野手カン・ミングクと契約した。球団創設の2008年から在籍していた36歳のリリーフ左腕オ・ジュウォンが現役を引退した。
特に注目を集めたのは新外国人選手ヤシエル・プイーグとの契約だった。MLB通算132本塁打と実績があるも荒々しい性格で知られるが、過去2年間外国人打者が機能しなかったため期待は非常に大きい。もう一人の新外国人選手は右腕タイラー・エップラー投手(元オリックス)となった。2019年から契約している2021年の最多勝投手ヨキシュとは再契約したが、クレイグとは再契約しなかった。
シーズン途中の7月にソ・ゴンチャン、シーズンオフにパク・ピョンホと長年のチームの顔だった選手がチームを去るもイ・ジョンフ、キム・ヘェソン、ヨキシュなど個人タイトルを受賞する実力者を残し下位への低迷を免れているキウムヒーローズ。独自の運営方針に批判は小さくないが、過去10年間で8度のポストシーズン進出という一定の成果は出している。2022年シーズンはチーム全体の底上げを図り、韓国シリーズ初優勝という目標を掲げると思われる。2年目となるホン・ウォンギ監督の成長にも期待したい。
(文責:ふるりん)