DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2021年シーズン回顧 第8回 ロッテジャイアンツ

反撃するも時すでに遅し

2021年シーズン成績 

レギュラーシーズン:65勝71敗8分(勝率.479)8位

ポストシーズン:出場せず

 

  2018年から3年連続でポストシーズン進出に失敗し優勝争いから遠ざかっているロッテジャイアンツ。オフシーズンも目立った補強はなく、ベテランが主体となったチームは開幕前の評価も高くはなかった。

 4月3日、遠征先・仁川でのSSGとの開幕戦は雨天中止となり、翌4日の開幕戦は新生SSGランダースに初勝利を献上した。4月6日のNC戦にイ・デホ(元福岡ソフトバンク)の本塁打などで勝利するもそこから波に乗れなかった。4月17日のサムソン戦では12失点後に外野手チュ・ジェヒョン、内野手ペ・ソングンとオ・ユンソクと3名の野手が登板、4月23日のトゥサン戦でも12失点後に捕手カン・テユルが登板するなど、敗戦処理とはいえ投手不足が明らかだった。5月1日のハンファ戦でも11失点後に内野手キム・ミンスとペ・ソングンの2名の野手が登板した。

 5月8日のサムソン戦は9回表に9-8と逆転すると、ベンチが代走などで本職の捕手を使い切っていたため、プロでは捕手としての出場経験がないイ・デホが9回裏に捕手として出場し勝利に貢献した。しかし翌9日のサムソン戦で敗れこの時点で12勝18敗、勝率4割の最下位で、5月11日のSSG戦を前にホ・ムンフェ監督の更迭、そして2020年からフューチャース(二軍)監督を務めていた外国人のラリー・サットン監督の就任が発表された。ロッテは2019年にもヤン・サンムン監督をシーズン途中の7月で更迭し最下位に終わっていた。サットン新監督にはホ・ムンフェ監督が積極的ではなかった若手の起用が求められたが、チーム状態はすぐに改善しなかった。

 5月30日までの6連敗で勝率3割台の最下位に低迷したが、6月4日のKT戦でパク・セウンがプロ初の完封勝利を記録し希望が見えてきた。しばらくはキア、ハンファとの最下位争いが続いたが、6月20日のサムソン戦で勝利し9位、6月23日のNC戦は高卒新人ナ・スンヨプ本塁打などで勝利し8位に浮上、勝率を4割台に戻した。

 7月11日に9位キアが6連勝で8位ロッテとゲーム差なしで並び、1年延期された2020年東京オリンピック野球による中断期間に入った。8月10日よりレギュラーシーズンが再開され、キアとの8位争いが続いた。8月14日のLG戦でソン・アソプが33歳でチーム史上初の個人通算2000安打を達成した。9位キアが8月末から連敗となり差を広げ勝率を4割台後半に乗せ、ロッテは9月4日のNC戦で勝利しトゥサンと同率7位に並び、翌8日にはまた8位に後退するも、レギュラーシーズン5位以上でポストシーズン進出の可能性が少し見えてきた。

 10月1日のKTとのダブルヘッダー第1戦で39歳のイ・デホが韓国での個人通算2000安打を達成した。この時点で8位ながらも同率6位のNC、SSGとは2.5ゲーム差、5位キウムとは3ゲーム差と残り22試合で大逆転でのポストシーズン進出の可能性を残していた。そして10月7日のトゥサン戦に勝利し勝率を.488にまで上げ、7位NCと0.5ゲーム差まで迫った。

 しかしこれ以上勝率を伸ばせず、勝率5割前後でトゥサン、キウム、SSG、NCの4チームがひしめき合う4-5位争いには完全に割って入ることができなかった。10月23日のハンファ戦はイ・デホ本塁打などで最大9点差を追いつき15-15の引き分けに持ち込み望みをつないだが、10月27日のキア戦で敗れ5位以上の可能性が消滅し、4年連続ポストシーズン進出失敗となった。結局2020年の7位より1つ下げた8位でシーズンを終えた。7月までの勝率は.421だったが、8月以降の勝率は.550と明らかに反撃が遅すぎた。

 

【投手の成績】

防御率5.38(10位) 奪三振1055(3位) 被本塁打133(8位) 与四球657(2位)

[主な先発投手]

ストレイリー    31試合 10勝12敗 防御率4.07

パク・セウン    28試合 10勝9敗 防御率3.98

フランコ      37試合 9勝8敗1ホールド 防御率5.40

イ・インボク      25試合  3勝1ホールド  防御率4.11

ノ・ギョンウン   14試合 3勝5敗 防御率7.35

イ・スンホン    16試合  0勝3敗  防御率5.77

 先発投手のチーム防御率(5.37)は10チーム中最下位だった。韓国2年目の外国人選手ストレイリーは15勝から10勝と勝利数を減らし、最多奪三振の個人タイトルを受賞した2020年と比較して投球内容が悪化した。韓国人で最多勝のパク・セウンは4年ぶりの10勝達成と復活した。もう一人の外国人選手フランコは10月以降リリーフに回るなど先発としては安定感を欠いた。

 上記の3名以外に100回以上を投球した選手がおらず、先発投手陣の層の薄さが8位に終わった大きな要因にもなった。シーズン終了後に自由契約となった37歳のノ・ギョンウンを超える若手もなかなか現れなかった。30歳で先発に転向し9月以降だけで3勝をあげたイ・インボクがシーズン後半の好調を支えた一人となった。

 

[主なリリーフ投手]

ク・スンミン     68試合 6勝5敗20ホールド 防御率4.33

キム・ウォンジュン  61試合 4勝4敗35セーブ 防御率3.59

チェ・ジュニョン   44試合 4勝2敗1セーブ20ホールド 防御率2.85

キム・ドギュ     43試合 2勝1敗5ホールド  防御率5.79

キム・デウ      39試合 2勝2敗9ホールド 防御率5.09

キム・ジヌク     39試合 4勝6敗8ホールド 防御率6.31

チン・ミョンホ    33試合 2勝2敗3ホールド 防御率4.81

ソ・ジュヌォン    26試合 1勝3敗3ホールド 防御率7.33

 リリーフのチーム防御率(5.68)は10チーム中10位で、先発と同じく質は高くなかった。チーム最多登板は右腕ク・スンミンで、手薄な先発陣の代わりに奮闘した。若手では高卒2年目の20歳で新人王の有力候補にもなったチェ・ジュニョン、2020年東京オリンピック野球韓国代表にも選ばれ出場した19歳の高卒新人の左腕キム・ジヌクが中継ぎで活躍した。抑えはキム・ウォンジュンが2年連続で務め2020年を上回る35セーブを記録したが、リーグ最多の5度のセーブ失敗と安定感を欠いた。

 

【野手の成績】

打率.278(1位) 本塁打107(6位) 得点727(3位) 盗塁60(10位) 失策85(10位)

捕手:チ・シワン     73試合 打率.241 7本塁打 26打点 0盗塁

一塁:チョン・フン    135試合   打率.292  14本塁打 79打点 8盗塁

二塁:アン・チホン    135試合 打率.306 10本塁打 82打点 3盗塁

三塁:ハン・ドンヒィ   129試合 打率.267 17本塁打 69打点 0盗塁

遊撃:マチャド         134試合 打率.279 5本塁打    58打点   5盗塁

左翼:チョン・ジュヌ    144試合 打率.348 7本塁打  92打点 6盗塁

中堅:チュ・ジェヒョン   95試合 打率.252 5本塁打  26打点 4盗塁

右翼:ソン・アソプ     139試合  打率.319 3本塁打  58打点 11盗塁

指名:イ・デホ          114試合 打率.286 19本塁打 81打点 0盗塁

控え:アン・ジュンヨル、ナ・スンヨプキム・ミンス、ペ・ソングン、キム・ジェユ、シン・ヨンスなど

 長打力は高くなかったがチーム打率は1位など攻撃陣は上位チームに引けを取らなかった。35歳のチョン・ジュヌが自身最高の打率で、192安打でリーグ最多安打、チーム最多打点を記録し中軸として活躍した。2000安打を達成したイ・デホとソン・アソプ、オフシーズンに初めてFA選手となったチョン・フンなど生え抜きの主力は期待通りの成績を残した。キアから移籍して2年目のアン・チホンはようやく本領を発揮したと言える。

 若手ではミン・ビョンホンの病気による引退で空いた外野の一角に22歳のチュ・ジェヒョンが定着した。2020年から三塁のレギュラーに定着した同じ22歳のハン・ドンヒィは攻守ともに成長を見せ、将来の主軸としての期待を抱かせた。課題の捕手はチ・シワンと軍から除隊され復帰したアン・ジュンヨルの併用となった。攻撃陣が機能して大量得点を奪っても投手陣が失点を重ね主導権を握れない試合も少なくなかった。

 

【オフシーズンの動向】

 10年以上生え抜きの主力打者として活躍し2度目のFA選手となったソン・アソプがNCへ移籍したことが最大の衝撃で大きな痛手となった。補償選手としてリリーフ右腕のムン・ギョンチャンがNCより移籍した。もう一人生え抜きの打者でFA選手となったチョン・フンとは再契約した。

 外国人選手はストレイリー、フランコ、マチャドの3名と全員再契約せず、DJ・ピーターズ外野手、左腕チャーリー・バーンズ投手、右腕グレン・スパークマン投手(オリックス)の3名の新外国人選手と契約した。2020年から2年間ショートの好守備でチームを支えたマチャドと再契約しなかった代わりに、サムソンから22歳の若手チェ・ハヌル投手を交換相手にトレードでショートを守れる31歳の内野手イ・ハクチュを獲得した。 

 

 2021年は後半から巻き返したとはいえ序盤の低迷が響き8位に終わり、ポストシーズン進出失敗と停滞から完全に抜け出すことはできなかった。2005年から2007年まで現代ユニコーンス(解散)などで外国人選手として活躍したサットン監督は韓国をよく知っているため近年増えている他の外国人指導者よりもアドバンテージがあり、投打ともに若手を積極的に起用してある程度新陳代謝に成功した。チームの象徴的存在である40歳間近のイ・デホは2022年シーズン限りで現役を引退するとされており、ソン・アソプの移籍もあり世代交代はこれまで以上に必須となっている。1992年の最後の韓国シリーズ優勝から30年が過ぎようとしている中、1999年以来となる韓国シリーズ出場に向け残された課題はあまりにも多い。

 

(文責:ふるりん