DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第4回 NCダイノス

「新興勢力から強豪へ」 
2017年成績 : 79勝62敗3分(レギュラーシーズン4位・プレーオフ敗退)
チーム総合採点…75点


1. 【4年連続ポストシーズン進出へ】
 2013年から一軍に参入し、2014年以降2017年まで4年連続ポストシーズン進出と新興勢力ながら結果を残したNCダイノス。その戦いを振り返る。


 2016年は初めて韓国シリーズに出場したがトゥサンの前に4戦全敗と完膚なきまでに叩きのめされ、2014年から主砲として活躍した外国人野手テームズMLB(メジャーリーグベースボール)・ミルウォーキーブルワーズへ移籍するなど、2017年シーズン開幕前の評価はさほど高くはなかった。だが、NCには新興球団ながら結果を残してきたため地力がついていた。
 

 3月31日の開幕戦では、2016年に対戦成績15勝1敗と圧倒したロッテと対戦し、新外国人投手マンシップを先発に起用し、新外国人野手スクラッグスの韓国初本塁打も出て、9回表は抑えのイム・チャンミンが1点を返されたもののて6-5で勝利した。しかしその後ロッテに連敗し、4月4日のハンファ戦で完封負けと3連敗を喫した。マンシップ、スクラッグスの新外国人選手だけでなく、先発として起用されるようになった20歳の左腕ク・チャンモ、外野のレギュラーに定着したクォン・ヒィドンなども機能し、4月27日のKT戦まで引き分け1つを挟み9連勝と好調の首位キアに負けない勢いを保持した。
 マンシップは5月10日のネクセン戦まで開幕7連勝とチームの快進撃に貢献していたが、この後故障で2か月ほど戦線を離脱した。その代役として故障で出遅れた韓国人のエース格のイ・ジェハクを先発に起用したが、あまり調子は上がらなかった。キアとNCのマッチレースは6月になっても続いた。6月13日のネクセン戦まで6連勝と首位キアに追走し3位トゥサン以下との差は大きく開いていた。
 6月半ば、4番打者として活躍していたスクラッグスが負傷で離脱してもナ・ソンボム、パク・ソンミンなどを4番に起用する日替わり打線で何とかしのいだ。先発投手陣がやや不調でもキム・ジンソン、ウォン・ジョンヒョン、イム・チャンミンなどのリリーフ陣は健在で、6月23日から25日のキア3連戦で3連勝し、レギュラーシーズンの半分を超えた73試合目でキアと同率首位に並んだ。6月28日のネクセン戦で外国人エースのハッカーが好投し8勝目、チームも5連勝とキアとの同率首位を守ったが、ここから転落が始まった。
 本格的に梅雨入りとなった6月29日のネクセン戦が雨天中止となり、以降7月前半には3度の雨天中止に見舞われ、ハッカーの故障離脱もあり6月30日から7月13日までの9試合で1勝8敗と不振に陥った。特に7月11日から13日までのキア3連戦に3連敗し、ゲーム差が8にまで広がったものの、マンシップ、スクラッグスの復帰により7月18日のハンファ戦から7月23日のSK戦まで6連勝と、再び息を吹き返したかに見えた。しかしシーズン前半は鉄壁だったリリーフ陣の不調が続き勝ち星を伸ばせなくなった。
 8月になると調子を上げてきたトゥサンの影がちらつき始め、8月12日、13日の直接対決で敗れたことにより2位の座をトゥサンに譲った。この後8月16日のキア戦まで5連敗となった。8月中は何とか2位トゥサン、首位キアとの差が広がらずに済んだが、8月30日、9月1日と4位ロッテに連敗し2ゲーム差に縮まった。終盤のラストスパートの時期にハッカーがまたもや離脱し、9月12日のトゥサン戦では2回裏までに8点をリードしながら逆転され13-14で敗れた。そして9月17日のネクセン戦に敗れ、ついにロッテと0.5ゲーム差とすぐ背後に迫られた。
 9月23日のLG戦で敗れ3連敗となり、ロッテに抜かれ4位に後退した。9月30日のネクセン戦まで4連勝と勝利への執念を見せ、ロッテと同率3位に並んだ。なお、この試合は2017年限りで現役引退を表明した41歳の「人生は」イ・ホジュン(のように)の引退試合となった。主に代打や控えとして起用されたイ・ホジュンポストシーズンにも出場し、その引退は心から惜しまれた。ロッテとの3位争いの決着は10月3日のレギュラーシーズン最終戦まで持ち込まれ、ロッテはLGに勝利したものの、NCは1回表に5点を先制するもその後追いつかれ結局8-8の引き分けで4位となり、ポストシーズンワイルドカード決定戦から出場した。


 10月5日の馬山でのワイルドカード決定戦ではSKと対戦した。1回表にナ・ソンボムの本塁打で先制するとその後も追加点を挙げ10-5で勝利し、レギュラーシーズン4位だったため1勝のみで準プレーオフへ進出となった。
 10月8日からの準プレーオフでは、最後まで3位を争ったロッテと対戦した。レギュラーシーズン終盤の勢いでは明らかにロッテのほうが上回っていたが、ポストシーズンの経験においては4年連続出場のNCのほうが新興勢力ながら5年ぶりの出場だった相手より一日の長があった。敵地・社稷での第1戦では2-2の同点で迎えた延長11回表、相手のエラーやモ・チャンミン満塁本塁打で9-2と勝利した。第2戦は22歳の若手チャン・ヒョンシクが先発したが打線が援護できず0-1で敗れた。本拠地・馬山に舞台を移した第3戦ではスクラッグスの本塁打のみならず、9月に軍から除隊され復帰したばかりだったノ・ジンヒョクの2本塁打もあって13-6で勝利し、2勝目をあげ優位に進めた。
 雨で1日順延となった第4戦は1-7で敗れたが、再び舞台を社稷に移した第5戦では先発ハッカーの好投、37歳のベテラン野手ソン・シホンの活躍もあって9-0と完勝し、3勝2敗でプレーオフ進出を決めた。
 10月17日からのプレーオフでは、レギュラーシーズン2位のトゥサンと対戦した。過去2年のポストシーズンでともに敗れていた因縁の相手だったが、3年連続の対戦となったこのプレーオフではまたもや高い壁となった。敵地・蚕室での第1戦こそスクラッグスの満塁本塁打などで13-5と勝利したが、第2戦はリードしていたものの6回裏の8失点などリリーフが機能せず7-17で敗れた。舞台を馬山に移した第3戦では、2017年はミルウォーキーブルワーズで31本塁打を記録したテームズが始球式を行うなど盛り上げ役を務めたが、先発ハッカーが崩れ打線も反撃できず3-14と大敗した。そして第4戦はポストシーズン初先発のチョン・スミンに託したが3回で降板し、2番手以降も振るわず5-14で敗れ、プレーオフでの敗退が決まった。

 
 2017年のNCは韓国シリーズ出場はならなかったが、的確な選手補強と果敢な選手の育成と抜擢で上位を維持し、ポストシーズンではロッテに勝つなど一定の成果を収め、新興勢力から強豪へとその地位を変化させていったといえようか。



2. 【チーム分析】
 優勝するには物足りない戦力だったが、NCは4年連続ポストシーズン進出という結果を残した。


 チーム防御率4.71は10チーム中4位で、先発の防御率5.05で7位だったが、リリーフの防御率4.32は2位と継投で勝ちを拾った傾向が見て取れる。クォリティースタート(先発として6回以上登板し自責点は3以下)は10チーム中9位の48と先発陣が弱かった。外国人投手のハッカー、マンシップは12勝ずつと結果を残したが、韓国人選手の層が厚くはなかった。2013年から2016年まで4年連続2ケタ勝利を記録したイ・ジェハク、2016年は11勝を記録したチェ・グムガンがともに5勝どまりと大きな誤算だったが、22歳のチャン・ヒョンシクが9勝、20歳のク・チャンモが7勝と、先発として起用された若手が一定の結果を残し将来性を感じさせた。
 リリーフではキム・ジンソンがチーム最多の69試合に登板、自身初の10勝を記録と先発が崩れても粘り強い投球で勝ちを拾った。抑えのイム・チャンミンはチーム最多の29セーブを記録したが、うち7月以降は8セーブだけで、チームのシーズン後半の停滞を示していた。その他には右のウォン・ジョンヒョン(68試合)、イ・ミンホ(60試合)、左のイム・ジョンホ(59試合)、カン・ユング(39試合)などが起用された。完封勝利10は10チーム中1位、セーブ失敗11は最少とリリーフは機能していたと見られる数値ではあるが、完封は6月以前が7試合、7月以降が3試合となっていた。


 チーム打率.293は10チーム中3位、チーム本塁打数149は6位、チーム総得点786は4位と攻撃力は一定の水準を保った。主砲として期待された外国人野手スクラッグスはチーム最多の35本塁打・111打点と合格点の内容だった。生え抜きの主力外野手ナ・ソンボムはチーム最多の173安打、24本塁打・99打点、32歳にして自身最高の17本塁打・90打点を記録した三塁手のモ・チャンミン、.363の高打率を残した俊足の二塁手パク・ミヌ、チーム最多の141試合に出場し19本塁打・86打点を記録したクォン・ヒィドンなどが主軸を打った。
 ショートを守ったソン・シホン、センターなど外野で起用されたイ・ジョンウクと、37歳のベテラン野手たちも経験を活かしチームに欠かせない存在だった。その他には内野のパク・ソンミン、チ・ソックン、外野のキム・ソンウクなども盛んに起用された。正捕手は132試合に出場したキム・テグンが務めた。


3. 【オフシーズンの動向】
 オフシーズンは大物のFA(フリーエージェント)承認選手を獲りにいかず、ソン・シホン、イ・ジョンウク、チ・ソックンのFAを行使した3人のベテラン野手とはすべて再契約した。外国人選手については、33歳と微妙な年齢に差し掛かったハッカー、開幕7連勝後は勝ち星を伸ばせなかったマンシップと投手2人を退団させ、27歳のローガン・ベレット、プロ野球の外国人選手としては初の台湾出身となる25歳の王維中と契約し外国人選手の若返りを図った。またスクラッグスとは再契約した。また2013年以降正捕手を務めたキム・テグンが兵役のため軍へ入隊し、代役となる捕手の育成が急務となった。


 2011年のNC球団創設時から指揮を執るキム・ギョンムン監督は、選手育成には定評がありNCでも複数の若手を主力選手として完成させた。チームの成績を左右する外国人選手もたいがい優秀で、投打ともに経験豊富な選手がそろってきている。2018年こそは韓国シリーズ初優勝と意気込んでいるはずだ。時期は到来している。



(文責:ふるりん