DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第3回 ロッテジャイアンツ

「5年ぶりの熱狂」 
2017年成績 : 80勝62敗2分(レギュラーシーズン3位・準プレーオフ敗退)
チーム総合採点…80点


1. 【5年ぶりのポストシーズン進出】
 2017年はレギュラーシーズン3位で5年ぶりにポストシーズンへ進出し、ここ4年間の低迷に愛想をつかしていたファンを熱狂させたロッテジャイアンツ。その戦いを振り返る。


 2016年は8位に低迷し、チョ・ウォヌ監督にとってもう後のない2年目となった2017年、ロッテジャイアンツにとって最初の大きな朗報がもたらされた。1月24日、日本プロ野球メジャーリーグベースボール(MLB)・シアトルマリナーズで活躍したイ・デホ(元福岡ソフトバンク)が、2011年以来となるロッテ復帰を決めたのである。かつて2度の打撃三冠王に輝いた4番打者が戻ってきたことで、ファンの期待は高まった。開幕前の海外キャンプで環境に適応できなかった新外国人投手マーケルがレギュラーシーズン開幕直前の3月27日に退団し、すぐさま代役として左腕のアディトンと契約した。


 3月31日の開幕戦では、イ・デホがロッテ復帰後初本塁打を記録したが、2016年の直接対決で1勝15敗と大きく負け越したNCに敗れた。しかし4月1〜2日とNCに連勝し、苦手意識を払しょくした。イ・デホは4月の月間打率が.409と好調を維持し、21歳の若手右腕パク・セウンが先発投手として成長を見せ、新外国人野手バーンズも二塁に定着するなど新戦力も機能した。4月18日には出場機会が減少していた内野手のオ・スンテクなどをKTへトレードに出し、代わりに中継ぎのチャン・シファンなどを補強するなど手を緩めなかった。だが4月21日のネクセン戦まで5連敗と停滞し、勝率5割を大きく上回ることはできなかった。
 5月後半は2度の4連勝と上位に近づくかに思われたが、ここから低迷が始まった。6月3日のKT戦まで4連敗し7位にまで後退し、6月8日のNC戦では0-16とシーズン最多失点の敗戦を喫した。さらに6月18日のネクセン戦までの6連敗で、勝率5割から大きく遠ざかり2017年も上位進出ははかない夢であるかのように感じられた。
 だがシーズンはまだまだ終わっていなかった。6月28日のLG戦で延長12回表に1点を勝ち越されたが、12回裏にイ・デホ本塁打で9-9の引き分けに持ち込んだ。その後7月2日のNC戦まで引き分け1つを挟み6連勝で、依然7位だったが勝率5割に大きく近づいた。また6月30日からこの日までのNC3連戦3連勝は、この当時2位でまだ遠い目標だったNCに追いつけるかもしれないという予感を抱かせた。反撃の切り札として、それまで2勝にとどまっていた外国人投手アディトンを7月12日でウェーバー公示し、翌7月13日、家庭の事情により2016年限りで一度ロッテを退団していた外国人投手リンドブロムと契約した。
 2015年から2016年まで先発投手陣の軸となっていたリンドブロムは、7月22日のキア戦でロッテ復帰後初登板を果たした。リンドブロムは思うように結果を残せなかったが、これまで不調だったもう一人の外国人投手ラリーが復調し、パク・セウン、24歳の若手キム・ウォンジュン、37歳のベテランのソン・スンジュンと先発投手陣が固まってきた。なお7月22日にはリリーフで登板した2009年の最多勝投手チョ・ジョンフンが2010年以来7年ぶりの勝利を記録し、この後も中継ぎとして活躍した。
 8月9日のKT戦で5連勝し、勝率5割を超え6位に浮上してから快進撃が始まった。その後8月18日のネクセン戦まで5連勝し一気に4位にまで浮上し、勢いが下り坂となっていた3位NCの背中が少しずつ見えてきた。さらに8月26日のネクセン戦まで6連勝と、勝率を.542まで伸ばし3位以上が視野に入ってきた。8月は27試合で19勝8敗、勝率.703と7月までとはまるで別のチームのようであった。抑えのソン・スンナクは好調を維持し、パク・チンヒョン、ペ・ジャンホなどのリリーフ陣もそろい投手陣が安定していた。
 いわゆる「秋の野球」(ポストシーズンの俗称)が近づき、ロッテの本拠地・社稷野球場は2008年から2012年まで5年連続でポストシーズンに進出していたころの活気を取り戻していった。9月2日のハンファ戦は、赤を基調とした特製ユニフォーム付きチケットが販売されたこともあり、情熱の赤色に観客席が染まった。試合もリンドブロムの好投とカン・ミンホの本塁打などで9-0の完勝だった。翌9月3日のハンファ戦では6連勝となり、4位ながら3位NCとのゲーム差が2まで縮まった。不動の4番打者イ・デホをはじめとして安打製造機ソン・アソプ、強打の捕手カン・ミンホなどの韓国代表クラスの打者のみならず、外国人野手バーンズ、三塁に定着したシン・ボンギ、外野のチョン・ジュヌ、キム・ムンホやパク・ホンド、長距離砲チェ・ジュンソクなどわき役もそろった打線は他チームの脅威となった。
 9月17日のSK戦まで3連勝し、ついに3位NCとのゲーム差は0.5にまで縮まった。ロッテは試合消化ペースが速く、9月19日以降のレギュラーシーズンは残り6試合のみで、余裕ある戦いができた。9月19日のトゥサン戦こそ敗れたが、9月23日のネクセン戦でラリーが自身10連勝となる13勝目を記録、チームもNCを抜いてついに3位へ浮上した。この後NCはロッテと同率3位に追いつき、同時に迎えた10月3日のレギュラーシーズン最終戦が運命の分かれ道となった。この日ロッテがLGに勝利しレギュラーシーズンを5連勝で終えると、NCはハンファに引き分けてしまい0.5ゲーム差でロッテが3位となり、5年ぶりの進出が決まっていたポストシーズンは準プレーオフから出場することになった。


 10月8日からの準プレーオフは、レギュラーシーズンの最後まで3位争いを続けSKとのワイルドカード決定戦で勝利したNCと対戦した。レギュラーシーズンではロッテが9勝7敗と勝ち越し2016年の大惨敗を忘れさせてくれたが、2013年から4年連続でポストシーズンへ進出しているNCの経験や地力は侮りがたかった。
 その不安は的中した。社稷での第1戦は2-2の同点で迎えた11回表にリリーフ陣が崩れ7点を失い9-2で敗れた。第2戦は先発ラリーの好投により1-0で勝利した。舞台を敵地・馬山に移した第3戦はNCの本塁打攻勢に押され6-13で敗れたが、雨で1日順延となった第4戦はリンドブロムの好投とソン・アソプの2本塁打で7-1と勝利し、決着は社稷での第5戦に持ち越された。しかし第5戦の先発は第2戦で負傷したラリーが登板できず、9月以降は深刻な不振に陥りポストシーズンでは初登板で経験の浅い若手のパク・セウンとなり、さらに5回途中でノックアウトされてしまった。その上に打線も沈黙し0-9で敗れ、ロッテの準プレーオフ敗退が決まった。2008年以降の10年間でロッテは6回ポストシーズンに進出したが、次の段階まで勝ち抜いたのは2012年の1回だけであり、やはりポストシーズンは別物だった。
 


2. 【チーム分析】
 ロッテはイ・デホを中心とした打撃のチームというイメージが強いが、2017年は投手力が強みだった。


 チーム防御率4.56は10チーム中3位で、先発の防御率4.54は4位、リリーフの防御率4.61は3位とともに上位だった。クォリティースタート(先発として6回以上登板し自責点は3以下)は10チーム中4位の61、ホールド数59も4位であったが、完封勝利はNCと並ぶ最多の10と継投が機能していたことがわかる。先発投手陣では左腕ラリーが韓国3年目にして最多の13勝でチーム最多勝となり、21歳のパク・セウンはプロ4年目にして初の2ケタ勝利と12勝を記録した。37歳のベテラン右腕ソン・スンジュンが11勝と1勝に終わった2016年から見事な復活を遂げ、24歳で先発として起用されたキム・ウォンジュンも7勝を記録した。7月にロッテへ復帰したリンドブロムはポストシーズンで好投したものの5勝にとどまった。
 リリーフ陣では35歳のソン・スンナクが37セーブで自身4回目となる最多セーブの個人タイトルを受賞し、8月以降のチームの快進撃にも大きく貢献した。またチーム最多となる72試合に登板したペ・ジャンホは自己最多の8勝を記録した。その他チャン・シファン(53試合)、パク・シヨン(47試合)、パク・チンヒョン(45試合)など右のリリーフ陣は充実していたが、左のリリーフ陣では若手のキム・ユヨンが最多の40試合に登板と、ベテランのイ・ミョンウなどの不振もあり手薄だった。


 チーム打率.285は10チーム中6位、チーム本塁打数151は4位、チーム総得点743は7位と攻撃力はあまり高くなかった。その理由としては得点圏打率.280が10チーム中9位、併殺打数146は1位と効率が悪かったことがあると思われる。特にチェ・ジュンソクは10チーム中最多の24併殺打イ・デホは3位の22併殺打を記録した。 
 古巣に復帰し大きな期待を受けたイ・デホは4番打者としてチーム最多の34本塁打・111打点と結果を残した。レギュラーシーズン全144試合に出場し、最多安打(193)の個人タイトルを受賞、20本塁打だけでなくチーム最多の25盗塁を記録したソン・アソプも攻守の中心となった。その他には22本塁打の正捕手カン・ミンホ、18本塁打の外野手チョン・ジュヌ、14本塁打指名打者チェ・ジュンソクなどの打者がいたが、やや控え選手の層が薄かった。
 外国人野手としては守備が期待されたバーンズは下位の打順が多く15本塁打・57打点にとどまったが、安定した二塁の守備が高く評価された。その他打撃面での成績は芳しくなかったが、三塁のシン・ボンギ、ショートのムン・ギュヒョンが守備で安定した働きを見せ、ロッテは10チーム中最少の失策数86にとどめた。走塁面では代走などで起用されたナ・ギョンミンの20盗塁が目を引いた。



3. 【オフシーズンの動向】
 オフシーズンはチームに大きな衝撃が走った。2006年から正捕手としてチームの要の一人だったカン・ミンホが、自身2回目のFAを行使してサムソンへ移籍した。もう一人の主軸打者でFAを行使したソン・アソプは残留した。カン・ミンホの移籍を受け、打線の強化のためトゥサンで主力として活躍しFAを行使したミン・ビョンホンと4年総額80億ウォンで契約した。FAを行使したチェ・ジュンソク、控え外野手のイ・ウミンとは契約しない意向とみられる(2月2日現在、2人ともに2018年の所属先は未定)。余剰戦力を対象とした2次ドラフトでは、手薄な左のリリーフとしてキアからコ・ヒョジュンを指名し獲得した。手薄な左打者の補強として、ネクセンからFAを行使していたチェ・テインを、まだ一軍登板のない19歳の若手投手パク・ソンミンとのトレードの形式で獲得した。
 外国人選手については、年俸契約交渉が不調だったとみられるリンドブロムとは再契約せず(2018年はトゥサンと契約)、新外国人選手として左腕投手のフェリックス・デュブロントと契約した。2017年に活躍したラリー、バーンズの2人とは再契約した。


 チョ・ウォヌ監督は3年契約で再契約し、2017年に3位へ進出した勢いを維持して2018年こそは1992年以来となる韓国シリーズ優勝を成し遂げたいであろう。カン・ミンホに代わる捕手がいないのが最大の悩みどころだが、精神的支柱の4番打者イ・デホだけでなく、ソン・アソプや新加入のミン・ビョンホンなど脇を固める選手たちも活躍し、投手陣が引き続き安定すれば1999年以来となる韓国シリーズ進出も見えてくる。チームが勝ち続ければ観客席を埋めて大きな声援を送り続けるであろう社稷野球場のファンたちは、心から栄光の瞬間を渇望している。



(文責:ふるりん