DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第2回 トゥサンベアース

「前年王者の意地」 
2017年成績 : 84勝57敗3分け(韓国シリーズ準優勝)
チーム総合採点…85点


1. 【韓国シリーズ3連覇ならず】
 2015〜2016年と2連覇を達成し、2017年はチーム初の韓国シリーズ3連覇を目標としたが、キアタイガースに敗れ王者の座を譲ったトゥサンベアーズ。その道のりを振り返る。
 

 レギュラーシーズンでは独走し、韓国シリーズ4勝無敗で優勝を果たした2016年の圧倒的な強さもあり、目立った補強はなかったが2017年も優勝争いの中心になると予想されていた。開幕前に2016年の韓国シリーズ優勝に貢献した外国人投手ボウデン(元埼玉西武)が故障で離脱し、先発投手陣に大きな不安が残った。3月31日のレギュラーシーズン開幕戦のハンファ戦は、外国人エースの先発ニッパートの好投で3-0と完封勝利をおさめたが、開幕10試合で4連敗もあり4勝6敗とやや低調だった。そして打線の強化のため、4月16日に控え捕手のチェ・ジェフンをハンファにトレードし、代わりに控え内野手としてシン・ソンヒョン(元広島)を補強したが、あまり機能しなかった。
 4月30日のロッテ戦では、2016年に引退したかつての主力選手ホン・ソンフンの引退セレモニーが開催されたが、この試合も完封負けと勢いに乗れず、首位争いをするキア、NCとの差が開いた。その後5月14日のロッテ戦まで、5月21日のキア戦まで2度の4連勝と、ようやく調子を上げてきた。シーズン前からの課題だった抑えにはイ・ヨンチャンが定着し、22歳の若手左腕ハム・トクチュが結果を残し安定した投手起用が図られた。
 6月7日のサムソン戦ではチョン・ジンホがサイクルヒットを達成したが、その後チームは下降線をたどった。6月20日のキア戦では20失点の大敗と、首位との力の差を見せつけられた。レギュラーシーズン144試合のちょうど半分を消化した72試合目の6月28日のSK戦では完封負けで4連敗となり、5位にまで後退した。さらに7月1日のハンファ戦に敗れ勝率5割となり、チームは危機に陥った。7月4日のKT戦でボウデンがシーズン初勝利をあげ勝率5割を維持すると、その後は前年の王者としての強さを取り戻し始めた。
 キム・ジェファン、パク・コヌの主力打者2人が好調を維持し、7月27日のKT戦まで7連勝となり、3位ながら2位NC、首位キアへと大きく近づいた。この試合で6年ぶりのセーブを記録したキム・ガンニュルは、9月半ば以降に調子を落としたイ・ヨンチャンの代わりに抑えを任されるようになった。その後8月8日のハンファ戦までシーズン最多の8連勝と投打がかみ合い、2位NCまで0.5ゲーム差に迫った。8月13日、NCとの直接対決では、延長10回裏オ・ジェウォンのタイムリーで逆転サヨナラ勝ちしてついに2位へ浮上した。
 首位を独走していたキアの勢いに陰りが見え、8月26日のLG戦で5連勝となり2ゲーム差にまで縮めた。9月12日、13日と3位NCに連勝しキアへの追撃の手を緩めず、9月22日の敵地・光州での起亜との直接対決ではチャン・ウォンジュンの好投とヤン・ウィジの本塁打などで完封勝利を収めると、24日のKT戦で勝利し6連勝となり、ハンファに敗れたキアとついに同率首位に並んだ。しかし試合のなかった9月26日にキアが勝利し再び2位となった。
 9月27日のKT戦で敗れ試合がなかったキアとのゲーム差が1に広がった。9月29日のLG戦、10月1日のハンファ戦に勝利すると、この日キアがKTに敗れたことで再び0.5ゲーム差となり、決着は10月3日のレギュラーシーズン最終戦:SK戦に持ち込まれた。この日、1ゲーム差で追う2位トゥサンが勝ち、キアがKTに敗れた場合のみ逆転でレギュラーシーズン優勝となるところだった。トゥサンは4回裏までに2点を奪ったが、7回表に3点を奪われて逆転を許し、そのまま敗れてしまいレギュラーシーズン2位が確定、ポストシーズンプレーオフからの出場となった。

 
 10月17日からのプレーオフは、レギュラーシーズン4位ながら同3位ロッテとのプレーオフで勝利したNCとの対戦となった。2015年、2016年に続き3年連続ポストシーズンで対戦するNCとは過去2回ともに勝利している相性の良さがあった。蚕室での第1戦は先発ニッパートが6失点と不調で5-14と敗れたが、第2戦はキム・ジェファンの2本塁打など打線が活発で17-7と勝利すると、敵地・馬山に舞台を移した第3戦は先発ハム・トクチュの好投とオ・ジェイルの本塁打で14-3と連勝した。第4戦はオ・ジェイルの1試合4本塁打9打点の活躍、36歳のベテラン右腕キム・スンフェの好リリーフで14-5と勝利し、プレーオフは第2戦以降3連勝で3年連続の韓国シリーズ進出を決めた。
 10月25日からの韓国シリーズでは、最後までレギュラーシーズン優勝を争ったキアと対戦した。敵地・光州での第1戦はプレーオフで5本塁打と活躍したオ・ジェイルの本塁打などで5-3と勝利した。しかし第2戦は先発ハム・トクチュが7回無失点と好投するも、キアの先発ヤン・ヒョンジョンに完封され0-1で敗れた。舞台を蚕室に移した第3戦は3-6、第4戦は1-5と敗れもう1つも負けられなくなった。第5戦は先発ニッパートが7失点と崩れてしまい、7回裏に6点を奪い1点差まで追い上げたが、結局このまま敗れてしまい第2戦以降4連敗で韓国シリーズ敗退となり、3連覇はならなかった。


 キアに王者の座を譲ってしまった格好になったが、レギュラーシーズン前半72試合では勝率.507にとどまったものの、後半72試合では勝率.685と前年の王者としての意地は見せた格好になった。


2. 【チーム分析】
 韓国シリーズ準優勝、年間2位となった2017年のトゥサンは攻撃・守備の数値でも「2位」が目立った。
 チーム防御率4.38は10チーム中2位で、先発の防御率は4.43で3位だったが、リリーフの防御率は4.31で1位だった。クォリティースタート(先発投手が6回自責点3以内の成績)は10チーム中2位の69試合で、先発陣は充実していた。特にチーム最多タイ(14勝)の32歳の左腕チャン・ウォンジュンの安定感が光っていた(防御率3.14)。2016年は22勝、防御率2.95を記録したニッパートは14勝、防御率4.06と成績が悪化した。その他には左腕ユ・ヒィグァンが11勝、若手左腕ハム・トクチュが9勝を記録した。韓国2年目の外国人投手ボウデンは故障による出遅れで2016年の18勝から3勝へと大きく勝利数が減少した。
 リリーフは年間を通して安定していた。チーム最多セーブ(22)のイ・ヨンチャンが9月後半から不調に陥ると、70試合とチーム最多登板を記録したキム・ガンニュルが抑えの座を任され、ポストシーズンでも活躍した。また36歳にして自己最多の69試合に登板したキム・スンフェが7勝11ホールドと中継ぎの柱となった。左のリリーフは右と比べて手薄だったがイ・ヒョンスンが主に起用された。なお、大卒新人キム・ミョンシンは負傷で3か月程度戦線を離脱したが、主にリリーフで39試合に登板し3勝5ホールドを記録、成長の可能性を感じさせた。
 

 チーム打率(.294)、総得点(849)、本塁打数(178)も10チーム中2位だった。打線の中心は主に4番打者を任されたキム・ジェファンで、チーム最多の35本塁打・115打点を記録した。主に3番打者を任されたパク・コヌは.366の高打率に加え20本塁打・チーム最多の20盗塁と走塁でも高い能力を見せた。その他にも韓国2年目の外国人野手エバンス(元東北楽天)は27本塁打・90打点、左の長距離砲オ・ジェイルは26本塁打・89打点とキム・ジェファンの後の打順を任され活躍した。
 2015年、2016年の韓国シリーズ2連覇に貢献したキム・ジェホ、ホ・ギョンミン、オ・ジェウォン、ミン・ビョンホンなどの野手は軒並み成績を落としたが、その代わりにリュ・ジヒョク、チェ・ジュファン、チョン・ジンホなどが成長を見せた。また正捕手のヤン・ウィジは111試合のみの出場だったが、第2捕手のパク・セヒョクが97試合に出場と、野手に関してはどのポジションでも選手層の厚さが光っていた。



3. 【オフシーズンの動向】
 まず2013年以降外野の主力選手として活躍したミン・ビョンホンがFA(フリーエージェント)承認選手となり、ロッテへと移籍した。またニッパート、ボウデン、エバンスの3人の外国人選手とすべて再契約しなかった。その代わりにセス・フランコフ投手、ジミー・パラデス外野手(元千葉ロッテ)の新外国人選手2人、2017年はロッテと契約していた外国人投手リンドブロムと新たに契約した。


 韓国シリーズ3連覇を逃したことで、トゥサンにとっては一つのサイクルが終わった。2018年シーズンは就任から4年目となるキム・テヒョン監督は次の世代をにらんだ育成路線に転換するのか、あくまでも2年ぶりの韓国シリーズ優勝を狙うのか、早いうちに方針を明確に示す必要がある。2017年までの10年間で8回のポストシーズン進出と結果を残している中、多数の主力選手を自前で育成してきた独自の路線が維持され、優勝争いに加わることが期待される。


(文責:ふるりん