DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第5回 SKワイバーンズ

「外国人監督の効果は」 
2017年成績 : 75勝68敗1分(レギュラーシーズン5位・ワイルドカード決定戦敗退)
チーム総合採点…65点


1. 【チーム史上初の外国人監督は?】
 2017年よりチーム史上初の外国人監督、トレイ・ヒルマン(元北海道日本ハム)が指揮し話題を呼んだSKワイバーンズ。その戦いを振り返る。


 2016年のSKは6位に終わり、2017年は2年ぶりのポストシーズン出場が目標となった。かつてMLB(メジャーリーグベースボール)・カンザスロイヤルズを指揮したとはいえ、韓国では初めての采配を振るうヒルマン監督については開幕前で期待半分、不安半分といったところだった。またエースとして活躍してきたキム・グァンヒョンがひじの手術のため2017年は一軍で登板しない方針だったため、その不在による戦力の低下が懸念されていた。
 

 3月31日の開幕戦でKTに敗れると、4月7日のNC戦まで開幕6連敗と出だしで躓いた。この日、キアとの4対4大型トレードが成立し、イ・ホングとイ・ソンウの捕手2人、外野のノ・スグァンなど4名の野手を獲得した。翌4月8日のNC戦でチェ・ジョンが1試合4本塁打と活躍し、シーズン初勝利を記録した。その後4月18日のネクセン戦まで6連勝と息を吹き返した。
 2016年の本塁打王チェ・ジョンは4月末までに12本塁打と好調で、新たな左の大砲ハン・ドンミンが9本塁打、キアから移籍してきたイ・ホングが6本塁打と、狭い仁川SK幸福ドリーム球場を生かした一発攻勢がチームの特徴になっていった。5月5日、韓国に適応できず一軍で3試合しか出場できなかった外国人野手ワースを退団させ、7日に代役のロマック(元横浜DeNA)と契約した。ロマックは5月13日のキア戦で韓国初本塁打を記録し、内外野複数のポジションを守れるため長打力のあるユーティリティープレイヤーとして重宝された。
 6月1日のKT戦、故障で離脱していた外国人投手ダイアモンドが好投し6連勝と再び上昇気流に乗り、上位戦線に進入した。6月は好調を維持し、6月28日のトゥサン戦では外国人投手ケリーが10勝目をあげる好投で3-0と勝利し、6連勝で3位につけ首位争いをするキアとNCを脅かす存在になるかと思われた。7月5日のキア戦は4回裏までに11点差をつけたが、5回表途中で先発ダイアモンドが降板するとリリーフが崩れ、一時は12-15と逆転されてしまった。だがキアのリリーフ陣を攻略し、結局18-17で勝利した。
 勢いに乗れば本塁打攻勢で大量得点を奪って勝利するが、切り札のいないリリーフ陣が足を引っ張りこれ以上勝率を伸ばすことはできなくなった。7月25日のキア戦でもチェ・ジョンの35号本塁打、ロマックの2本塁打などで6点差を逆転したが、結局追いつかれ延長10回裏にエラーでサヨナラ負けとなった。翌7月26日のキア戦でも敗れ6連敗となり、順位は6位にまで後退した。
 8月3日のネクセン戦で4連敗、勝率5割となり優勝争いからは大きく後退した。8月7日のNC戦で敗れ勝率5割を切って7位にまで後退した。8月19日のキア戦で36歳のベテランのパク・チョングォンの本塁打、先発ムン・スンウォンの好投で13-1と快勝し3連勝で勝率5割を突破すると、混戦の5位争いに加わった。8月27日のハンファ戦では、先発パク・チョンフンが好投し自身初のシーズン10勝目を記録、チームも4連勝でLGを抜いて6位に浮上と、明るい兆しが見えてきた。
 9月2日のKT戦ではロマックの韓国初の1試合3本塁打など打線の爆発で15-7と勝利し3連勝、ネクセン、LGとのし烈な5位争いが続いた。9月5日のロッテ戦では主砲チェ・ジョンが2年連続の40本塁打を記録した。9月7日のネクセン戦ではロマックのサヨナラ本塁打で勝利し、試合後に引退セレモニーを開いたパク・チェサンの門出を祝った。9月10日のネクセン戦では主砲チェ・ジョン、ロマックなどの本塁打などで17得点、ケリーの15勝目と主力選手の活躍で5位に浮上した。その後徐々に6位以下との差を広げ、9月20日のキア戦ではロマックの30号本塁打、先発ダイアモンドの10勝目で勝利し6位ネクセンに3.5ゲーム差をつけた。
 9月29日のロッテ戦で敗れたものの、LGもトゥサンに敗れたためネクセンとともにレギュラーシーズン5位以上の可能性が消滅し、SKの同5位が確定、2015年以来2年ぶりとなるポストシーズン進出が決まった。


 ポストシーズンワイルドカード決定戦から出場し、10月5日に敵地・馬山でレギュラーシーズン4位のNCと対戦した。先発にレギュラーシーズンでは16勝を記録しエースに成長したケリーを立てたが、3回裏途中8失点で降板と崩れた。2017年に一軍での出場機会が増えたチョン・ジンギが2本塁打と活躍したが、5-10と敗れてしまった。SKはレギュラーシーズン5位で1敗でもすればワイルドカード決定戦で敗退となるため、ここで2017年のSKの戦いは終了した。


 2017年のSKは、プロ野球史上最多のチーム本塁打数234を記録したことが話題となった。MLBの監督経験者らしいヒルマン監督により緻密な野球が展開されたとはいいがたいが、センターへの痛烈な打球を防ぐために二塁手をベース近くに立たせる極端な守備シフトや、バントによる奇襲で3塁走者を生還させるなど、ユニークな采配を見せることがあった。



2. 【チーム分析】
 2年ぶりのポストシーズン進出という一定の成果をあげた2017年のSKは、勝つ野球よりも見せる野球のチームだった。


 チーム防御率5.02は10チーム中6位で、先発の防御率4.67は5位だったが、リリーフの防御率5.63は7位と足を引っ張った。クォリティースタート(先発として6回以上登板し自責点は3以下)は10チーム中6位の57で平均的だった。その中でチーム最多の16勝を記録したケリーは20回のクォリティースタートを記録し、自身初の個人タイトルとなる最多奪三振(189)を受賞し、先発投手陣の柱として活躍した。その他にはアンダースローの右腕パク・チョンフンが自身初の2ケタ勝利となる12勝を記録し、手術のリハビリで一度も一軍登板がなかったキム・グァンヒョンの不在を埋めた。その他には左腕ダイアモンドが10勝、ムン・スンウォンとユン・ヒィサンがそれぞれ6勝を記録した。
 リリーフでは抑えの切り札の不在が目立ちチーム最大の弱点となっていた。最多セーブはパク・ヒィスの8で、10チーム中唯一10セーブ以上の投手がいなかった。また10チーム中最多の22試合のセーブ失敗(ブロウンセーブ)も記録された。リリーフの中心的存在はチーム最多の16ホールドを記録したパク・チョンべであった。その他にはチーム最多の63試合に登板し6勝5セーブ11ホールドを記録したキム・ジュハン、ムン・グァンウン、チェ・ビョンニョン、ソ・ジニョンなどが起用されたが質は高くなく、左のリリーフがパク・ヒィス以外にシン・ジェウンしかいないなど層の薄さも目立った。


 プロ野球史上最多のチーム本塁打数234を記録したといえども、チーム打率.271は10チーム中最下位、チーム総得点761は5位と攻撃力が強みというチームでもなかった。2年連続本塁打王となった主砲チェ・ジョン(46)を筆頭にロマック(31)、ハン・ドンミン(29)、キム・ドンヨプ(22)、ナ・ジュファン(19)、パク・チョングォン(16)、チョン・ウィユン(15)、チョン・ジンギ(11)、イ・ホング(10)と9名が2ケタ本塁打を記録したが、チーム本塁打234のうち6割近くの138本がソロと得点効率が悪かった。他にもチーム三振数(1100)も10チーム中1位、得点圏打率(.273)は同最下位と粗さが目立った。
 チーム盗塁数58は10チーム中最下位で、両翼95mと狭い本拠地を生かした本塁打頼みの攻撃だったような印象がさらに強まる。ただし4月にトレードでキアから移籍し自身最多の131試合に出場した外野手ノ・スグァンが盗塁16を記録し、他にもチョ・ヨンホ(13)、キム・ガンミン(10)と2ケタの盗塁を記録した選手が合計3名いて、チームの戦術に一定の幅を持たせていた。
 チーム失策数(108)は2位と特に連携のミスが目立ったが、その中では二塁のレギュラーとして起用されたキム・ソンヒョンが高い守備率(.990)を記録した。捕手ではイ・ジェウォンが114試合と最多出場を記録したが、4月にトレードでキアから古巣SKに復帰した36歳のイ・ソンウが8月以降出場機会を増やし、レギュラーシーズン終盤のし烈な順位争いを勝ち抜くのに貢献した。


3. 【オフシーズンの動向】
 オフシーズンは大物のFA(フリーエージェント)承認選手を獲りにいかず、FAを行使したチョン・ウィユンとも再契約した。外国人選手については、2017年に10勝を記録したがうちLG戦のみ4勝と偏りがあったダイアモンドとの再契約を見送り、新外国人投手アンヘル・サンチェスと契約した。結果を残したケリー、ロマックとは再契約した。


 2018年のSKは、本来ならばエースとして活躍しているはずのキム・グァンヒョンが本格的に復帰することが予想されるが、手術明けのためシーズンを通しての起用は難しいとみられる。そのため層の薄い若手投手陣の底上げが急務となる。また韓国の野球や文化に慣れたヒルマン監督がどのような采配を振るうかも注目される。8年ぶりの韓国シリーズ優勝が理想ではあろうが、2年連続のポストシーズン進出が現実的な目標となろう。


(文責:ふるりん