DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第9回 サムソンライオンズ

 
 2011年から2014年まで韓国シリーズ4連覇を達成したが、2015年に一部の選手の不祥事がたたったか韓国シリーズで敗れると、新本拠地・大邱サムソンライオンズパークで迎えた2016年は相次ぐ戦力の流出や世代交代の失敗でチーム史上最悪の9位にまで転落した。さらに戦力流出が進み、このような難局で就任したキム・ハンス新監督は再建という大きな課題に立ち向かわなくてはならない。


【投手陣】

〈先発〉 
◎ラナウド、◎ペトリック、ユン・ソンファン、△チャン・ウォンサム、◎ウ・ギュミン
〈リリーフ〉
シム・チャンミン、△ペク・チョンヒョン、キム・ドンホ、◎イ・スンヒョン、キム・デウ、クォン・オジュン
注 : ◎は新加入、△は左腕

 韓国シリーズ4連覇に貢献した左腕チャ・ウチャンがFA(フリーエージェント)を行使しLGへ移籍したが、代わりにLGからFAを行使したサイドハンドの右腕ウ・ギュミンと契約した。これでラナウド、ペトリック(元横浜DeNA)の新外国人選手2名が活躍すれば先発ローテーションの頭数は足りるのだが、3月の示範競技で登板した際にラナウドが足を負傷し、4月中は一軍で登板できない見込みである。2016年は外国人選手が全員活躍できず下位に低迷したが、2017年シーズンはその悪夢を繰り返したくないところだ。
 リリーフ陣は頭数こそそろっているが、他チームと比べて特に質が高いとは言い難い。抑えは2016年にチーム最多の25セーブをあげたシム・チャンミンが任されると思われる。また将来を考え海外キャンプの練習試合から登板の機会を与えられている高卒新人のチェ・ジグァン、チャン・ジフンなど若手の成長に賭けることも考えられる。


【打撃陣】

〈ベストオーダー〉

1.パク・ヘミン(中)△ 
2.ペ・ヨンソプ(左)△ 
3.ク・ジャウク(右)△  
4.ラフ(一) ◎
5.イ・スンヨプ(指) △  
6.チョ・ドンチャン(三)
7.ペク・サンウォン(二) △ 
8.イ・ジヨン(捕) 
9.キム・サンス(遊)  

〈控え〉
(捕手)◎チェ・ギョンチョル、◎ナ・ウォンタク
内野手)ソン・ウィジュン、キム・ジェヒョン、△◎カン・ハヌル、◎イ・ウォンソク、キム・ジョンヒョク
(外野手)△ウ・ドンギュン、△イ・ヨンウク、△パク・ハニ、△キム・ホンゴン


注:◎は新加入、△は左打者。

 2016年は首位打者打点王最多安打などの打撃タイトルを受賞した主砲チェ・ヒョンウがFAでキアへ移籍したことで、攻撃力は大きく低下したとみられる。代役として新外国人選手のラフに期待が集まる。プロ野球史上通算最多の443本塁打(韓国のみでの記録)の大打者イ・スンヨプ(元オリックス)も40歳となり、ク・ジャウク、パク・ヘミンなど次代のサムソンライオンズを担う選手たちの成長と奮起を期待したい。
 FAを行使しトゥサンから移籍したユーティリティープレイヤーのイ・ウォンソク、チェ・ヒョンウの人的補償として一軍での出場経験も多いカン・ハヌルなど、手薄な内野は十分に補強された。また経験豊富な控え捕手としてLGを放出されたチェ・ギョンチョルとも契約した。外野は長距離打者こそ少ないが比較的選手層は厚いため、チェ・ヒョンウの抜けた穴は機動力で補っていくことが考えられえる。

 
 現役時代はサムソンの主力打者として2002年の初優勝をはじめとして、3度の韓国シリーズ優勝に貢献したキム・ハンス新監督。韓国シリーズ4連覇から世代交代の端境期にあるチームでどのように新陳代謝を進めていくのか、過去に年間最下位、長い低迷期のないサムソンゆえにプレッシャーも大きいとは思うが、焦らず着実に強化に努めてほしい。


本拠地
 大邱サムソンライオンズパーク
 
 大邱(テグ)は韓国南東部にある人口250万人以上の韓国第4の都市である。広い盆地に位置し、夏は大変暑く冬はかなり冷える。そのため春先のナイター観戦は、日中暖かくても少し厚着をしていったほうがよい。
 電子製品を中心に世界的な大企業となったサムソングループであるが、同グループ発祥の地ということでサムソンライオンズ大邱を本拠地としている。2016年より中心市街地から小さな峠を越えた東側に新築された大邱サムソンライオンズパークを本拠地としている。観客席は約24300と約10000だった前本拠地と比べ倍増し、内野は上段・下段の二層構造となっている。







 大邱サムソンライオンズパークは緩やかな起伏の丘を開発して建設され、周囲には商店や食堂などは少ない。しかし交通アクセスは非常によく、大邱都市鉄道(地下鉄)2号線・大公園(テゴンウォン)駅の目の前で、幹線道路もすぐ横を通っていてバスも頻繁に運行されている。2016年より大公園駅に近づくと2号線の電車内ではイ・スンヨプの声による到着案内放送も流れる。

 メジャーリーグベースボール(MLB)、フィラデルフィアフィリーズの本拠地・シティズンズバンクパークを参考に設計され、客席がサムソンのチームカラーの青に統一された特徴的なデザインの野球場には電光掲示板、観客席ともに最新鋭の設備が導入され、快適な観戦環境が提供されている。2015年までの本拠地だった大邱市民運動場野球場と同じくホームが三塁側となっている。ファールグラウンドが狭くて内野席の臨場感もあり、他の韓国の野球場に見られない八角形の形状である。両翼99.5m、センター122,5mとなっているが、外野フェンスが直線的で右中間、左中間がやや狭い。グッズショップは球場の外側にあり、内部の通路沿いの売店も充実している。

 開場から1年が過ぎた大邱サムソンライオンズパークは、韓国の新しい野球文化の発信地として高い評価を受けている。今後のさらなる進化に期待したい。


[交通アクセス]
 大邱都市鉄道(地下鉄)2号線・大公園駅4,5番出入口の目の前にある。大邱市内の玄関口・東大邱駅から大公園駅までは、都市鉄道(地下鉄)1号線で半月堂(パノォルダン)駅まで行き、2号線に乗り換えて35分程度。都市鉄道は遠回りで時間もかかるため、韓国での移動に慣れている場合は東大邱駅前から大邱サムソンライオンズパーク方面へのバスに乗ってもよい(937番バスなどで15〜20分)。大邱中心市街地である中央路(チュンアンノ)・半月堂駅付近までは都市鉄道で20分程度である。
 東大邱駅まではソウル市内から高速鉄道KTX・SRTで1時間30〜45分。釜山から東大邱までは40〜55分。なお、東大邱からソウル市内の水西(スソ)行の最終の高速鉄道SRTは23時50分発と、平日に18時半開始の試合を観戦しても長引かなければソウル市内から日帰りが可能である(2017年3月現在の運行ダイヤによる)。
 
(文責:ふるりん