DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第5回 キアタイガース

「着々と進む強化」 
2016年成績 : 70勝73敗1分け(公式戦5位・ワイルドカード決定戦敗退)
チーム総合採点…70点


1. 【5年ぶりのポストシーズン進出】
 2016年シーズン、5年ぶりにポストシーズンへ進出し、着実に成長を見せたキアタイガース。その戦いぶりを振り返りたい。
 
 2015年は7位に終わり、ソン・ドンヨル前監督(元中日)時代の低迷もあって、キム・ギテ監督就任から2年目を迎えるキアの開幕前の評価はさして高くはなかった。3月の公式戦開幕前には、前身のヘテ時代に1999年まで活躍し、海外での不法賭博でサムソンを退団したイム・チャンヨン(元東京ヤクルト)と契約し、周囲を驚かせた。公式戦開幕からシーズンの前半は出場停止処分を受けることになっていたが、後半の勝負所で国内外での豊富な経験が生かされると判断しての補強であったと思われる。

 公式戦開幕後の4月上旬、2005年までキアに在籍していた内野手ソ・ドンウクをネクセンから無償トレードで獲得し、4月19日の2016年シーズン初の一軍出場で代打本塁打を放つなど、その後セカンドのレギュラーとして活躍した。また4月15日には、前身のヘテ時代も含めてキム・ジュチャンがチーム史上初となるサイクルヒットを達成した。だが思うように勝てず勝率5割が遠かった。新外国人投手のヘクターは安定した投球を続けるも、エースのヤン・ヒョンジョンに勝ち運がなく開幕から4連敗となった。
 5月15日、本拠地・光州では2015年限りで引退したチェ・ヒィソプ、ソ・ジェウンの引退セレモニーがあり、それを祝うかのようにハンファに勝利し勝率5割に乗せたが、勢いに乗ることはできず上位との差は開いていった。6月8日には5連敗で9位にまで後退し、すぐに8位へ浮上したがもう一度5連敗がありまたもや9位に落ち込んだ。だが6月29日までナ・ジワンの3試合連続本塁打もあり6連勝で5位にまで浮上し、混戦の中位争いに加わった。
 7月1日のネクセン戦で2番手として出場停止処分が解けたイム・チャンヨンが復帰後初登板を果たすと、7月7日のKT戦ではシーズン初セーブを記録し、これまで固定できていなかった抑えに光明が見え始めた。また7月末にはトレードでSKから左腕コ・ヒョジュンを獲得し、先発投手陣の強化を図った。
 夏はキアの季節だった。センターの定位置を確保したキム・ホリョン、出場機会を増やしたノ・スグァン、捕手イ・ホングなどが攻守で活躍し、7月31日のSK戦で6連勝となり4位に浮上、ヘクターも10勝目をあげた。8月2日のハンファ戦でパク・チャンホのサヨナラタイムリーで7連勝となった。その後8月は勝率5割弱をさまよい、SKとの4位争いが続いた。8月12日のネクセン戦ではキム・ジュチャンがランニング本塁打を含む2本塁打と活躍したが、イム・チャンヨンがサヨナラ負けを許し5位に後退した。8月末にまた4位に浮上し、8月31日には故障で戦線を離脱していたユン・ソンミンがシーズン初セーブを記録するなど、ポストシーズン進出争いをかけた終盤戦に向けて頼もしい選手が帰ってきた。
 9月になると4位争いには絶好調のLGが加わり、三つ巴の争いはし烈さを増していった。9月15-16日、敵地・蚕室での直接対決でヤン・ヒョンジョン、ヘクターと先発の柱2人を立てたが連敗し、5位に後退した。このころSKが連敗で離脱し、4位争いはLGとキアの一騎打ちとなった。9月27日、光州でのLG戦でまたもやヤン・ヒョンジョンを先発に立てたが敗れ、4位の座が遠のいた。10月3-5日、ヘクター、ヤン・ヒョンジョン、ユン・ソンミンで3連勝するも、6日のサムソン戦で敗れLGが勝利したため、公式戦5位が確定した。
 2011年の準プレーオフ以来5年ぶりの出場となった10月10日からのポストシーズンは、し烈な4位争いを最後まで続けたLGとワイルドカード決定戦で対戦した。公式戦5位のキアは第1戦で敗れた時点でポストシーズン敗退となるルールだったが、好調を維持していたヘクターが敵地・蚕室で先発し好投した。打線も相手のエラーに付けこんで先制点を挙げ、9回裏はイム・チャンヨンが抑え4-2で勝利し、決着は第2戦にもつれ込んだ。この試合でヤン・ヒョンジョンも7回無失点と好投したが、打線が援護できなかった。その後ユン・ソンミン、イム・チャンヨンと継投策をとったが、9回裏満塁の場面で準プレーオフに進出した場合先発として起用する予定だったと思われる外国人投手ジークを登板させたものの、犠牲フライを打たれ0-1とサヨナラ負けを喫し、ポストシーズンでの敗退が決まった。


 2016年シーズン、キアタイガースは補強の成功と若手の台頭で新旧の戦力が融合し5年ぶりのポストシーズン進出という一定の成果を出し、今後の上位進出に希望を抱かせた。


2. 【チーム分析】
 チーム成績を見ると、投打ともに大きな穴はないが選手層が厚くはなかった中位のチームだったのがはっきりしてくる。

 チーム防御率4.97は10チーム中5位だった。高額年俸の外国人投手ヘクターがチーム最多の15勝で、10チーム中最多タイの3度の完投を記録するなど、長いイニングを投げられるのが特徴だった。左腕ヤン・ヒョンジョンも3度の完投など10勝を記録し、ヘクターと並んで200イニング以上を投球と、エース級の2人が先発の柱としてチームを引っ張った。同じく10勝をあげた外国人投手ジークは防御率5点台で、クォリティースタート(先発として6回以上で自責点3以下)を記録したのが11回と、ヤン・ヒョンジョンの22回、ヘクターの21回の半分程度とだいぶ見劣りした。4番手以降の先発投手陣のやりくりには苦労し、24歳のホン・ゴンヒィやひじ痛からの復帰を果たしたハン・ギジュなどが起用されたが、その他の若手も含めローテーションに定着するに至らなかった。そのため中継ぎが中心の起用だった42歳のベテラン、チェ・ヨンピルも2試合先発登板の役割が回ってきたこともあった。
 リリーフ陣は比較的機能していた。チームホールド数74は2位タイで、セーブ数38もネクセンと並び最多タイだった。経験豊富な40歳のイム・チャンヨンは出場停止処分が解けた7月以降だけで15セーブを記録し、チームの後半戦の5位進出に大きく貢献した。5月から6月にかけてはキム・グァンスが抑えを任され7セーブとイム・チャンヨンの復帰までの穴を埋めるなど、チーム最多タイの54試合に登板した。左のリリーフの柱はシム・ドンソプで、そのほかにも24歳のパク・チュンピョ、23歳のハン・スンヒョクとキム・ユンドンなど若手が中継ぎ陣として奮闘した。
 先発投手陣の層は厚くなかったがヘクター、ヤン・ヒョンジョンというエース級2人に多彩なリリーフ陣という運用で、試合運びが不安定だった下位チームとの差をつけた。
 
 キアのチーム打率.286と10チーム中9位だったが、チーム本塁打数179は同3位と長打力があり、チーム総得点803は同6位と他チームに見劣りしない程度の攻撃力はあった。
 打線の中心となったのは34歳にして33本塁打・108打点と自身最高の成績を残したイ・ボムホ(元福岡ソフトバンク)であった。また35歳のキム・ジュチャンも23本塁打・101打点と自身最高の成績で、初のゴールデングラブ賞(外野)を受賞した。また生え抜きの主力打者ナ・ジワンも25本塁打・90打点、キア3年目の外国人打者ピルも20本塁打・86打点と活躍した。
 若手では大卒2年目で24歳の外野手キム・ホリョンが124試合に出場、チーム最多の19盗塁を記録するなど走攻守に活躍した。その他ショートのレギュラーに定着したカン・ハヌル、捕手として最多の106試合に出場したイ・ホングなど、以前から期待されていた選手たちが一軍の戦力として機能するようになり新旧交代が進んだ。4月にトレードで移籍してきた32歳のソ・ドンウクが124試合に出場し自身最多の16本塁打・67打点、31歳のキム・ジュヒョンが自身初の2ケタ本塁打の9本塁打を記録するなど、遅咲きの花たちも見られた。


3. 【オフシーズンの動向】
 2016年に5位と着実に前進を見せたキアは、オフシーズンに大きな投資を続けた。サムソンの韓国シリーズ4連覇に貢献し、2016年も打率・打点の打撃二冠王だったFAのチェ・ヒョンウと4年100億ウォンの大型契約を結び、打線を強化した。またFAによる海外への移籍も噂されていたエースのヤン・ヒョンジョンも、1年契約で残留させることに成功した。外国人選手はヘクターと再契約したが、ジーク、ピルとの再契約を見送り、新外国人選手として左腕パット・ディーン、オランダ出身の外野手ロジャー・バーナディーナと契約した。

 過去4年あまりの転落・低迷から脱出しつつあるキアは、2017年シーズンは大型補強で周囲の期待も高くなっている。3年目を迎えるキム・ギテ監督にとって勝負をかけたシーズンとなり、2016年に結果を出せなかったが一軍を経験した若手たちが力をつければ、2009年以来のプロ野球史上最多となる11回目の韓国シリーズ優勝も夢ではないかもしれない。


(文責:ふるりん