DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第6回 SKワイバーンズ

「飛龍は甦るか」 
2016年成績 : 69勝75敗(公式戦6位)
チーム総合採点…60点


1. 【2年連続のポストシーズン進出ならず】
 2016年シーズン、前年の5位から1つ順位を下げて2年連続のポストシーズン進出に失敗したSKワイバーンズ。その戦いぶりを振り返りたい。


 2015年オフシーズンにチョン・ウラム、ユン・ギルヒョンのリリーフ陣、正捕手だったチョン・サンホがFA(フリーエージェント)で他チームへと移籍したため、2016年シーズン開幕前のSKへの評価は高くなかった。そのため、就任から2年目のシーズンとなるキム・ヨンヒィ監督には若手の抜擢と故障からの復活を図る選手たちの再生が求められた。

 だが予想とは正反対に出だしは順調だった。チョン・ウラムが去った抑えの座には故障が癒えた左腕パク・ヒィスが収まり、4月24日に個人通算100勝を達成したキム・グァンヒョン、先発陣に定着したアンダーハンドのパク・チョンフン、2年目を迎えた外国人投手ケリー、外国人左腕セッドン(元読売・セドン)などの先発投手陣、4番打者チョン・ウィユンも好調だった。4月後半には圧倒的な強さを見せていた首位トゥサンに食らいついていたが、5月になると調子を上げてきたNC、ネクセンとの上位争いとなった。
 5月25日に一時期5位にまで後退したもののいったん盛り返したが、6月8日までの6連敗で勝率5割を切ってサムソンと同率6位に並ばれた。さらに6月12日にはシーズン最低の7位にまで後退した。だが6月18日には4連勝で勝率5割未満ではあるものの4位にまで浮上し、混戦の中位争いを続けた。上位3チームとの差が大きくなったSKは、6月22日に不調の外国人投手セッドンを退団させ、翌23日に新外国人投手の左腕ララと契約し戦力補強に務めた。
 6月28日のKT戦で、チョン・サンホのFA移籍による人的補償として移籍してきたチェ・スンジュンの3本塁打、一軍に復帰しセッドンの代わりに先発ローテーション入りしたユン・ヒィサンの好投で勝利し勝率5割を超えた。LGでその素質を開花させられなかったチェ・スンジュンは6月だけで11本塁打と猛威を振るった。
 シーズン半ばを過ぎて勝率5割前後をさまよい、7月31日には5連敗で勝率5割を切ってキアに抜かれ5位に後退した。同じ日にキアから先発投手陣の補強としてイム・ジュンヒョクをトレードで獲得したが、期待に応えられなかった。ララもチームを勝利に導けず、キアとの4位争いが続いた。チェ・ジョンが7月以降本塁打を量産し8月までの2か月間だけで20本塁打を記録したが、チームに勢いを与えることはなかった。8月28日には一時6位にまで後退したが、キア、LGと勝率5割弱の三つ巴の4位争いが続いた。
 9月9日までの6連勝で勝率5割とし、キア、LGより消化試合数が4-5試合多かったSKは5位以上確保のために相手をもっと突き放しておく必要があった。しかし10日のハンファ戦でキム・グァンヒョンが乱調で0-14と大敗を喫してから泥沼の連敗街道が始まり、9月13日のトゥサン戦敗れると6位に後退した。結局9月23日まで9連敗と終盤の勝負所で大失速と完全に目論見が外れ、この後5位以上に浮上することはなかった。
 結局LGとキアが大きく崩れることはなく、10月5日にキアの公式戦5位以上、SKの6位以下が確定したため2年連続のポストシーズン進出はならなかった。10月8日の本拠地・仁川でのサムソン戦は、5年ほどのリハビリ生活の末に現役を引退することになった左腕チョン・ビョンドゥの引退試合となった。2011年以来の一軍登板となったチョン・ビョンドゥは1回表の先頭打者1人をアウトにしてマウンドを降りた。さらに1回裏、好調を維持していたチェ・ジョンが自身初のシーズン40本塁打を記録し、飲酒運転で公式戦出場停止となっていたテームズ(NC)に並び初の本塁打王となり、SKは7-6で勝利し2016年シーズンを締めくくった。
 

2. 【チーム分析】
 チーム成績を見ると、選手個々は活躍していたが、チームとして機能していたかといえば疑問点が目立つ。

 チーム防御率4.87は10チーム中3位だった。クォリティースタート(先発として6回以上登板し自責点は3以下)は同2位と、比較的先発投手陣はそろっていた。チーム最多勝(11勝)のキム・グァンヒョン、チーム最多の200イニング以上の投球回を記録したケリー(9勝)、初めて先発ローテーションを守ったパク・チョンフン(8勝)、6月から先発ローテーションに入ったユン・ヒィサン(9勝)が四本柱として機能した。その一方、不振のセッドン(5勝)の代役として6月に契約した外国人投手ララが2勝にとどまり、同じくシーズン途中で契約した外国人投手ハフが活躍しポストシーズン進出に成功したLGとは対照的であった。
 問題は先発陣よりリリーフ陣であった。抑えはパク・ヒィスがチーム最多の26セーブとシーズンを通して活躍したが、チームのホールド数(43)が10チーム中9位と中継ぎ陣が足を引っ張った。パク・チョンベ(11ホールド)、チェ・ビョンニョン(6勝9ホールド)と34歳のベテラン右腕2人が中継ぎ陣の柱となったが、左腕シン・ジェウン、右腕チョン・ユスと近年活躍していた中継ぎが不振だった。その一方で大卒新人キム・ジュハン、メジャーリーグベースボール(MLB)傘下のマイナーリーグに所属していたチョン・ヨンイル、シーズン序盤に先発として起用されたムン・スンウォンなど、新たな投手たちの台頭もあった。
 またチームのエラー数が130と10チーム3位だった。特にショートのレギュラーとして起用された外国人野手ゴメスが10チーム中最多の25のエラーと、投手陣の足を引っ張ることも多かった。

 SKのチーム打率.291は10チーム中4位、チーム本塁打数182は同2位と破壊力があるようだったが、得点圏打率.276は同最下位だったためチーム総得点753は同9位と明らかに得点効率が悪かった。
 打線の中心となったのは初の本塁打王となったチェ・ジョン(40本塁打・106打点)とチョン・ウィユン(27本塁打・100打点)だった。その他2ケタ本塁打の選手は5人いるが、ゴメス(21本塁打・62打点)、チェ・スンジュン(19本塁打・42打点)、パク・チョングォン(18本塁打・59打点)、イ・ジェウォン(15本塁打・64打点)、キム・ガンミン(10本塁打・47打点)と打点の少なさが目立つ。しかし二塁のレギュラーとして活躍したキム・ソンヒョンは8本塁打と長打力に秀でてはいなかったが、勝負強く65打点とチーム3位を記録していた。
 そのほかにはMLB傘下のマイナーリーグに所属していたキム・ドンヨプが7月以降だけで6本塁打と、今後に期待を抱かせた。また外野の控えとしてキム・ジェヒョン、捕手の控えとしてキム・ミンシクなどが一軍に定着した。

 2016年のSKは新旧の戦力を融合させていたが、単発的な攻撃が目立ったことと中継ぎ陣の不調により安定した戦いを続けられず、5位キアとは1.5ゲーム差の6位となりポストシーズン進出に失敗した。


3. 【オフシーズンの動向】
 キム・ヨンヒィ監督は任期満了により退任し、チーム史上初となるアメリカ合衆国出身の外国人監督トレイ・ヒルマン新監督(元北海道日本ハム)が就任した。またFAを行使したキム・グァンヒョンは4年85億ウォンで再契約したが、ひじを手術したため2017年シーズンの復帰時期は未定である。外国人選手に関してはゴメス、ララとは再契約せずケリーとのみ再契約し、ダニー・ワース内野手、スコット・リッチモンド投手の2人の新外国人選手と契約した。

 2007年、2008年、2010年と3度の韓国シリーズ優勝を達成した黄金時代は過去のものとなり、再び飛龍(英語ではワイバーン)が昇天しその雄姿を甦らせるためには外部からの大きな刺激が必要なのであろう。ヒルマン新監督が2017年シーズン、MLBや日本プロ野球での指導経験を初めてとなる韓国の野球にどのように生かしていくか注目される。


(文責:ふるりん