DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第5回 キアタイガーズ

王座を守る難しさ

2018年シーズン成績

レギュラーシーズン:70勝74敗(勝率.486)5位

ポストシーズンワイルドカード決定戦(対ネクセン)敗退

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光州(クァンジュ)キアチャンピオンズフィールドの3塁内野応援席

 

1.王座からの転落

 2017年に8年ぶり11度目(プロ野球最多)の韓国シリーズ優勝を果たしたキアタイガーズ。2018年シーズンは連覇が期待されたが、前身のヘテタイガーズ時代は1983年から1997年までの15年間に9度の韓国シリーズ優勝を果たしたものの、2001年にキアとなってからは2009年と2017年の2度しか優勝していない。また2009年の翌2010年はレギュラーシーズン5位(当時は8球団制)でポストシーズン進出を逃し、2012年から2015年まで4年連続ポストシーズン進出失敗と成績が低迷した。王座を守り王者として君臨することはどのチームとて容易ではない。

 2017年の韓国シリーズ優勝はFA(フリーエージェント)となり4年100億ウォンの大型契約でサムソンから移籍した新たな4番打者チェ・ヒョンウの獲得と、ヤン・ヒョンジョン、ヘクターが2人そろって20勝の最多勝という投打の躍進が奇跡的に一致した結果であった。優勝したことでチームを大きく改造できなかったか、2018年のレギュラーシーズン開幕にあたっては現状維持で臨んだ。

 勢いというものはやはり長く続かないのか、2017年は開幕から好調で4月末でも勝率6割を大きく超える首位だったが、2018年は4月末で勝率5割を下回り首位トゥサンとは大きく差をつけられた。ヤン・ヒョンジョン、ヘクターのエース格の2人は健在でもほかの先発陣が頼りなく、リリーフ陣も切り札不在で42歳のイム・チャンヨン(元東京ヤクルト)に抑えを任せるほどだった。6月2日には2017年に一軍登板がなかったかつてのエース、ユン・ソンミンを先発に起用したが首位トゥサン相手に大敗した。

 上位との差は開くばかりで、戦力の台頭を促すため若手の起用も進めた。6月20日のNC戦で20歳の若手ユ・スンチョルが一軍初勝利を記録し、ユン・ソンミンが2016年以来のセーブと復活をアピールした。野手では21歳のチェ・ウォンジュンの先発での出場機会が増えた。それでも勝率は5割前後、順位も5位と6位をさまようなど上昇気配はなかった。

 7月になっても停滞は続き、イム・チャンヨンを先発、外国人投手パット・ディーンを中継ぎに転向させ、チェ・ヒョンウに代わって生え抜きのアン・チホンを4番打者に据えるなどカンフル剤を投入したが、7月26日には7位にまで後退し勝率も4割半ばに近づいた。ヤン・ヒョンジョンも不調に陥り8月10日には8位となり、2年連続の韓国シリーズ優勝からはかなり遠のいてしまった。

 8位のまま8月17日から9月3日までのジャカルタパレンバンアジア競技大会による中断期間を迎えた。だがアジア競技大会に出場したエースのヤン・ヒョンジョンが好投し韓国代表の3連覇に貢献すると、その勢いをそのまま9月4日から再開されたレギュラーシーズンに持ち込み、7位に浮上するとポストシーズン進出をかけた熾烈な5位争いに加わった。

 9月8日のサムソン戦ではヤン・ヒョンジョンが12勝目をあげ、サムソンを抜いて6位へ浮上した。すぐに7位へ後退したが9月16日には再び6位へ浮上、9月21日にはLGを抜いて5位に浮上し勝率5割に近づいた。勝率5割以上の4位のネクセンとはややゲーム差があり、LG、サムソン、ロッテとの5位争いが最後まで続いた。

 10月3日のサムソン戦でヤン・ヒョンジョンが3回で降板すると20失点で大敗するなど、なかなか5位を確定させることができなかった。10月9日、6位ロッテとの直接対決に敗れゲーム差なしで並ばれるも、翌10日、キアは試合がなかったがロッテがKTとのダブルヘッダー2試合で連敗したことで再び差が開いた。翌11日、本拠地・光州(クァンジュ)でロッテに完封負けを喫し0,5ゲーム差に縮められたが、翌12日、ロッテに勝利したことでレギュラーシーズン1試合を残して5位が確定、3年連続のポストシーズン進出が確定した。なお6位サムソンとは最終的にゲーム差なしで勝率で若干上回っただけのきわどい5位争いであった。

 2年連続韓国シリーズ優勝を目指したキアは、ポストシーズンをネクセンとのワイルドカード決定戦で始めることになった。10月16日、敵地・高尺(コチョク)での先発は不調でしばらく登板しなかったヤン・ヒョンジョンだった。キアは5回表にチェ・ヒョンウのタイムリーで2点を先制するも、5回裏にヤン・ヒョンジョンが同点を許し、代わったイム・チャンヨンが逆転を許した。その後イ・ボムホ(元福岡ソフトバンク)の本塁打、ナ・ジワンのタイムリーで7回表までに5-5の同点に追いつくが、7回裏にパット・ディーンが4点を勝ちこされ、結局6-10で敗れレギュラーシーズン5位だったため1敗のみでワイルドカード決定戦敗退となり、2018年のキアタイガーズの戦いは終了した。

 

2.チーム分析

 チーム防御率5.43はリーグ9位で、投手陣の不調が韓国シリーズ2年連続優勝に失敗した大きな要因となった。

 先発の防御率5.68はリーグ最下位だった。チーム最多勝はヤン・ヒョンジョンの13勝で、韓国3年目の外国人選手ヘクターは11勝と、2017年に20勝ずつ、合計40勝を記録した2人で2018年は合計24勝にとどまった。韓国2年目の外国人選手パット・ディーンは先発、リリーフともに起用され6勝にとどまった。韓国人の先発陣ではイム・ギヨンの8勝、ハン・スンヒョクの7勝が結果を残したといえるが、ともに故障でシーズンを通した活躍ができず安定感も欠き、7月から42歳のイム・チャンヨンを先発として起用せざるを得ない状況だった。

 リリーフの防御率は5.06でリーグ4位と、先発陣と比べれば比較的機能していた。抑えの切り札を欠くのが問題だったが、6月からユン・ソンミンが抑えを任されチーム最多の11セーブを記録した。中継ぎでは右のキム・ユンドンがチーム最多の64試合に登板、7勝、チーム最多の18ホールドを記録し柱となった。左の中継ぎではイム・ギジュンが55試合に登板した。20歳の若手のユ・スンチョル以外にはファン・インジュン、イ・ミヌが登板機会を増やし、今後に可能性を感じさせた。

 チーム総得点865はリーグ2位、チーム打率.295もリーグ2位、チーム本塁打数170はリーグ5位と攻撃力は相変わらず高かった。

 チェ・ヒョンウは打順で4番ではなく3番を任される試合が増えたこともあり、25本塁打・103打点と2017年よりやや成績を落とした。代わりに4番を任されたアン・チホンは23本塁打、チーム最多の118打点と活躍し、二塁の守備もあわせてチームの中核に成長した。そのほかチーム最多の26本塁打を記録したナ・ジワン、37歳を目前にして20本塁打と健在ぶりを示したイ・ボムホ(元福岡ソフトバンク)、同じく37歳ながら18本塁打・93打点を記録したキム・ジュチャンと、ベテラン野手たちの活躍も目立った。

 外国人選手では韓国2年目のバーナディーナが25本塁打、チーム最多の32盗塁と打撃、走塁両面で活躍した。全体的にベテラン野手の出番が多い中、21歳のチェ・ウォンジュンが101試合に出場し内外野の多くの守備位置を任されるなど、今後のレギュラー定着に向けて結果を残した。

 

3.オフシーズンの動向

 FAとなった選手がいなかったこともあり比較的静かだった。

 42歳のイム・チャンヨン、2018年も88試合に出場しプロ野球史上最多の個人通算2223試合出場を記録した38歳のベテラン内野手チョン・ソンフンが自由契約となった(チョン・ソンフンは現役を引退し二軍コーチに就任)。ヘクター、パット・ディーン、バーナディーナと2017年の韓国シリーズ優勝に貢献した外国人選手3名とはすべて再契約せず、ジェイコブ・ターナー投手、ジョー・ウィーランド投手(元横浜DeNA)、ジェレミー・ヘイゼルベイカー外野手と3名の新外国人選手と契約した。

 2015年に就任しキアを長く率いるキム・ギテ監督は、主力選手の高齢化が進む中、2019年シーズンを王座奪回の年と考えているのか、それとも育成の年と考えているのか、心中を察するのは難しいが、やはりヘテタイガーズの伝統を受け継いできたキアタイガーズとしては勝利しつつ緩やかに世代交代を進めていくのが最善であるのかもしれない。

 

(文責:ふるりん