DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第4回 LGツインズ

「チーム改造に一定の成果が」 
2016年成績 : 71勝71敗2分け(公式戦4位・プレーオフ敗退)
チーム総合採点…75点


1. 【世代交代を一気に推進】
 2016年シーズン、2年ぶりにポストシーズンへ進出し、プレーオフまで出場し健闘したLGツインズ。その戦いぶりを振り返りたい。
 
 2013年、2014年と2年連続でポストシーズンへ進出しながら、2015年はチーム史上最低の9位に終わり、2016年は何としてでも浮上のシーズンにしたかった。FA(フリーエージェント)でSKの正捕手だったチョン・サンホを獲得した以外は大きな補強はなく、若手の台頭が必須であった。

 4月1日、本拠地・蚕室での開幕戦・ハンファ戦は延長12回裏にヤン・ソックァンのタイムリーでサヨナラ勝ちし、翌2日のハンファ戦も延長11回裏にイ・ビョンギュ(背番号7)のタイムリーで2試合連続のサヨナラ勝ちと勢いを感じさせた。4月26日のサムソン戦でウ・ギュミンが2013年以来3年ぶりとなる完封勝利を記録し、勢いに乗るかと思われたが5月にはウ・ギュミンなど先発陣の不振で10日までの4連敗を喫してしまった。5月21日までに6連勝と勢いを盛り返したものの、5月29日には4連敗と一進一退が続いた。
 徐々にトゥサン、NC、ネクセンの上位3チームとの差が開き、4位以下は混戦となった。6月15日、SKに抜かれ5位に後退すると、勝率5割から遠ざかり29日には7位にまで落ち込んだ。7月14日にはさらに8位となり、勝率も4割台前半となった。シーズン半ばを過ぎてこのままでは2年連続の下位の悪夢を味わうところであったが、シーズン開幕後の4月に契約し2勝しかあげられなかった外国人投手コープランドを見切り、代役としてメジャーリーグベースボール(MLB)で実績のある左腕ハフと契約し反撃の機会をうかがった。幸いなことに、7月末の時点で4位以下は勝率5割未満で、LGにも追いつくだけの時間は残っていた。
 新戦力のハフは期待に応え好投を見せ、8月になるとLGはこれまでが嘘のような快進撃を始めた。8月10日は7連勝で6位に浮上すると、翌11日は生え抜きのベテラン打者パク・ヨンテクが個人通算2000安打を達成し、それを祝うかのように8連勝と上昇気流に乗り始めた。結局8月12日までの9連勝は2002年以来14年ぶりと、勝率は5割に近づき最下位争いから一気に4位争いに加わった。8月27日は3連勝でSKを抜いて5位に浮上し、翌28日にはチョン・ソンフンもパク・ヨンテクに続いて2000安打を達成した。
 9月以降はキア、SKとの4位争いが続いた。9月12日のNC戦で4連勝とし、キアと同率4位に並んだ。9月15日、キアとの直接対決は先発ハフ、守護神イム・ジョンウの好投で勝利し単独4位に浮上すると、翌16日のキア戦にも勝利した。そして9月17日のサムソン戦ではイ・チョヌンの本塁打でサヨナラ勝ちし、ついに勝率5割に復帰した。さらに18日のサムソン戦ではかつてMLBで活躍していたリュ・ジェグクが韓国で初の完封勝利を記録し4連勝と、雰囲気は最高潮に達していた。その後キアとのし烈な勝率5割前後の4位争いが続いたが、10月3日には2年ぶりのポストシーズン進出、6日にはソーサが3年連続2ケタ勝利を記録する好投で公式戦4位が確定した。
 10月8日、韓国シリーズ進出を決めていたトゥサンとの公式戦最終戦は、両チームにとって消化試合であったにも関わらず、同じ蚕室野球場を本拠地とするライバル対決として超満員となった。LGファンたちはこれからポストシーズンを勝ち抜き、トゥサンと韓国シリーズを戦うことを夢見ていたようであった。4回裏、2016年はここまで一軍出場がなかった42歳のベテラン、イ・ビョンギュ(背番号9・元中日)が代打として打席に立ち、レフト前ヒットを記録し場内からは大歓声が起こったものの、帰還を狙った2塁走者が本塁で憤死したためタイムリーヒットにはならなかった。LGの選手として初めて個人通算2000安打を達成し、長年チームの顔として活躍してきたが、チェ・ウンソン、イ・チョヌン、イ・ヒョンジョンなどの新鋭に押され出番がなくなった大打者イ・ビョンギュはこの打席が現役最後の雄姿となり、11月21日に2016年限りでの引退を発表した。
 
 ポストシーズンは10月10日から、蚕室にて最後まで激しく4位を争ったキアとのワイルドカード決定戦で始まった。第1戦は先発ハフが好投したが、ショートのオ・ジファンのエラーもあり先制を許し2-4で敗れた。負けたらもう後がない翌11日の第2戦は先発リュ・ジェグクが好投するも打線が援護できず、互いに無得点で迎えた9回裏、満塁の場面でキム・ヨンウィの犠牲フライにより1-0でサヨナラ勝ちし、2年ぶりの準プレーオフ進出を決めた。10月13日からネクセンとの準プレーオフが始まり、敵地・高尺での第1戦でソーサの好投により7-0と完封勝利を収め機先を制した。第2戦は1-5と敗れたが、本拠地・蚕室に戻った第3戦はハフの好投とユ・ガンナムの本塁打で4-1と勝利した。続く第4戦は3点をリードされたが5回裏に追いつき、8回裏にオ・ジファンのタイムリーで逆転、最後はイム・ジョンウが1点差を守り切り5-4で勝利、3勝1敗で2年ぶりのプレーオフ進出を決めた。
 10月21日から始まったNCとのプレーオフ、敵地・馬山での第1戦は9回表まで2-0とリードし、準プレーオフを勝ち抜いた勢いが残っているかに思われた。だが9回裏にイム・ジョンウが1点を返されると、公式戦終盤の躍進に貢献した中継ぎのキム・ジヨンに後を託すものの結局2-3で逆転サヨナラ負けを喫した。第2戦はハフが好投するも打線が援護できず0-2で敗れもう後がなくなった。本拠地・蚕室に戻った第3戦は延長11回裏、ヤン・ソックァンのタイムリーで2-1とサヨナラ勝ちしたものの、第4戦ではワイルドカード決定戦からの疲労が出たか、リリーフ登板したハフが勝ち越しを許し同点に追いつけず3-8で敗れ、プレーオフでの敗退が決定した。
 14年ぶりの韓国シリーズ進出はならなかったが、前年の9位から4位へ躍進した2016年のLGツインズは8月以降の快進撃とポストシーズンでの勝利により、世代交代を軸としたチーム改造(韓国メディアではリビルディングと表現)が結果として形に出たため、今後に期待を抱かせる内容であった。


2. 【チーム分析】
 チーム成績を見ると、投打ともに他チームより抜きんでていた部分は目立たなかったが、致命的な穴もない印象を受ける。
 チーム防御率5.04は10チーム中6位だった。チーム最多勝は33歳のリュ・ジェグクの13勝で、3年連続2ケタ勝利を記録した外国人投手ソーサが10勝でそれに続いた。この2人がシーズンを通して先発の柱であった。2013年から2015年まで3年連続2ケタ勝利を記録していたアンダースローの31歳のウ・ギュミンがやや精彩を欠き6勝に終わった。8月以降の快進撃に貢献した外国人投手ハフは、シーズン後半だけで7勝を記録し、またポストシーズンでも安定した投球を続けチームをプレーオフにまで導いた。24歳のイム・チャンギュや23歳のイ・ジュンヒョンなども先発として起用されたが、ローテーションに定着するに至らず若手の台頭は見られなかった。
 リリーフ陣は層が厚かった。チームホールド数75は1位で、抑えに定着したイム・チャンギュも28セーブを記録した。中継ぎ陣ではキム・ジヨンがチーム最多タイの17ホールドと自己最高の成績を残し、左のワンポイントとして起用されたチン・ヘスはチーム最多登板の75試合で17ホールドを記録した。他には左のアンダーハンドのユン・ジウン、右のサイドハンドのシン・スンヒョン、ベテランのイ・ドンヒョンなどもそろっていた。また38試合に登板し3勝を記録した25歳のイ・スンヒョンが、サムソンからFAで移籍してきたチャ・ウチャンの人的補償に指名されLGを去ったのが惜しまれる。
 
 LGのチーム打率.290と10チーム中6位だが、チーム本塁打数118は同9位、チーム総得点786は同7位と、一発はあまり期待できずさほど得点が高いとは言えなかった。だがチームの改造がはっきり表れていた。
 代表的なのが26歳のチェ・ウンソンで、自己最多の128試合に出場、打率.313、81打点を記録しチームの4位浮上に大きく貢献した。シーズン終盤はセンターのレギュラーとなりチーム最多の19盗塁を記録、108試合に出場したキム・ヨンウィ、自己最多の103試合に出場し外野の定位置を確保したイ・チョヌン、攻守ともに成長し正捕手の座を手にしたユ・ガンナムなど、2015年までと比べて打線は様変わりした。そのほかヤン・ソックァン、ムン・ソンジェ、イ・ヒョンジョンなども控えでありながら勝負強い打撃で存在感を見せた。
 一方で従来からの主力選手も持ち味を発揮した。37歳のベテランで2000安打を達成したパク・ヨンテクがチーム最多の138試合に出場し、打率.346、11本塁打、90打点と健在ぶりを示した。2015年シーズン途中からLGと契約し、韓国に慣れた外国人打者ヒメネスがチーム最多の26本塁打、102打点を記録し打線の中軸となり、18盗塁と快足も披露した。ショートのレギュラーとして活躍を続けるオ・ジファンも自己最多の20本塁打を記録した。パク・ヨンテクに続いて2000安打を記録した36歳のベテラン、チョン・ソンフンも126試合に出場した。2015年は不振だったセカンドのレギュラー、ソン・ジュインも122試合に出場、打率.322と復活をアピールした。

 2014年シーズン途中よりLGを率いるヤン・サンムン監督は、投手コーチ出身らしく多様な投手を育成し手堅い野球でLGのチーム改造を進めている。


3. 【オフシーズンの動向】
 オフシーズン最も話題を呼んだのは、近年サムソンの先発投手陣の一角を担っていたFAの左腕チャ・ウチャンを4年総額95億ウォンの大型契約で迎えたことである。代わりにウ・ギュミンがFAでサムソンへ移籍し、両チームの主力先発投手がそのまま入れ替わる形となった。外国人選手はソーサ、ハフ、ヒメネスの3名と再契約した。

 2016年に一定の成果を出し、2013年以降4年間で3回のポストシーズン進出と2003年から2012年まで続いた暗黒時代より完全に抜け出した感があるLGツインズ。2017年シーズンはさらなる戦力の台頭、若手とベテランの融合で2002年以来となる韓国シリーズ進出を果たし、蚕室野球場に集うファンたちが寒さすら感じる秋の夜空のもと、黒く光り輝くチームジャンバーを着て熱心に応援できるようにしたいものである。


(文責:ふるりん