DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第8回 キアタイガース

「栄光の歴史に泥を塗る」 

2013年成績 : 51勝74敗3分 勝率.408 (公式戦8位)
チーム総合採点…25点



 示範競技で好調だったことと、熱狂的なファンが多いせいで前年5位だったにも関わらず開幕前に「優勝候補」と持ち上げられてしまったキアタイガースにとって、過去に10度の韓国シリーズ優勝を成し遂げた本拠地・光州無等野球場の最後のシーズンであったが結局は8位に低迷し、輝かしい栄光の歴史に泥を塗ってしまった。示範競技を首位で終えて韓国シリーズも優勝したのは、過去10年以内では2007年のSKだけであり、全くあてのない根拠であった。

 3月30日、地元・光州でのネクセンとの開幕戦は乱打戦の末10-9で勝利し、2004年以来9年ぶりの開幕戦勝利となった。4月2日から7日まで5連勝と「優勝候補」にふさわしい戦いぶりだったが、うち3連勝は最下位候補のハンファ相手だった。4月3日のハンファ戦でFAでロッテから移籍してきたキム・ジュチャンが負傷で離脱したが、勢いに陰りは見られなかった。
 4月を通して投打ともに好調を維持し、首位に立ち続けた。ヤン・ヒョンジョン、キム・ジヌ、ソーサ、ヤン・ヒョンジョンなどの先発陣がそろい、課題の抑えには2012年先発として活躍したアンソニー・レルー(元福岡ソフトバンク)が定着した。打線では復活を期すチェ・ヒィソプがチャンスで打ち、ナ・ジワン、シン・ジョンギルも続いた。しかし4月18日、光州でのLG戦のように12-13とリリーフ陣が崩れ乱打戦で敗れるなど、課題も見えていた。
 5月4日のネクセン戦で、3月のWBC(ワールドベースボールクラシック)での不調からの回復が遅れ公式戦初登板となったユン・ソンミンがロングリリーフで好投しシーズン初勝利をあげると、首位固めに入るかと思われた。5月6日、2009年の韓国シリーズ優勝に貢献したが近年は出番が減っていた長距離打者キム・サンヒョン、中継ぎのチン・ヘスが、SKのソン・ウンボム、シン・スンヒョンの投手2人と2対2でトレードされた。これは野手が余り気味で、課題のリリーフを補強するためだったと思われる。しかし逆効果だったが、5月12日まで5連敗となり首位から滑り落ちてしまった。
 その後投打ともに以前の勢いを取り戻せず、ネクセン、サムソンの首位争いから少し離された3位にとどまった。6月2日には3連敗で5位にまで後退し、7日までにも3連敗で勝率5割を切り6位とユン・ソンミンの不調も響いた。ところがこのあとイ・ヨンギュ、キム・ソンビン、ナ・ジワンなど打線の好調で6月20日まで一気に9連勝で3位にまで浮上し、優勝戦線に残るかと思われた。ところが試合が4日間なかったことで勢いが続かず、6月26日に引き分けてから4連敗で5位に後退と安定感が全くなかった。
 7月になると投手陣の崩壊で状況は悪化した。これまで20セーブをあげていたアンソニーが7月初めに2軍落ちすると、その後復調は難しいと判断され退団となってしまった。代役して先発で調子の上がらなかったユン・ソンミンが抑えに回ることになったが、当然先発陣が手薄となりその前の中継ぎが弱く、ユン・ソンミンの登板機会がないという悪循環を招いた。大きな連敗はなかったが連勝はなく勝率はどんどん下がり、7月末にはちょうど5割になってしまい6位キアと上位との差は広がっていった。
 新外国人として左腕ビローと契約し先発として起用したが、全く刺激剤にならなかった。若手を起用して打開を図ろうにもめぼしい人材がおらず、不調の主力をそのまま使い続けた。トレードで補強したソン・ウンボムも全く役に立たなかった。その結果8月17日までの5連敗など、連勝がなくひたすら負け続けた。気がつけば勝率は4割半ばとなり、すぐ背後に8位の新球団NCが迫ってきていた。当然シーズン前半熱心に応援していたファンたちも足が遠のき出し、すぐ隣で新球場の工事が順調に進んでいる中、最後の時を迎えつつある無等野球場にはひと足早い秋風が吹き始めていた。
 9月になってもまったく同じだった。9月5日から10日まで5連敗、9月18日から24日まで6連敗と希望が見えない戦いが続き、勝率は4割少々まで落ち込んだ。そして24日にはついにNCと同率7位に並ばれ、27日SK戦で引き分けNCが勝ったため8位に後退した。9月30日、NCとの直接対決でパク・キョンテ、キム・ジヌの完封リレーで3-0と勝利し、また単独7位に浮上した。
 しかし10月の残り3試合で3連敗し、結局8位に終わってしまった。10月4日のシーズン最終戦となったネクセン戦は、無等野球場にとって最後となるキアタイガースの試合だったが、内容はこれまでを象徴するような内容だった。先発ヤン・ヒョンジョンは6回2失点と好投したが打線が援護できず、終盤にリリーフが崩れてしまった。特に2点リードされた9回表、1982年から続いてきた栄光の歴史を締めくくる最後のマウンドにおいてユン・ソンミンが登板したが3点を追加されてしまい、9回裏も併殺打で試合終了となり3-8と敗れてしまい、約8100人の観客たちを落胆させ、2014年こそあの完成間近の新しい野球場で勝利の美酒に酔いたい、と僅かな希望を抱かせるだけだった。
 2013年のキアは6月までが33勝29敗2分け(勝率.532)だったが、7月以降は18勝45敗1分け(勝率.286)と極端な成績だった。


 チーム成績を検証する。
 チーム防御率は5.12で9球団中8位と悲惨な状況だった。開幕当初は先発投手陣が揃っているという評価だったが、結局規定投球回数に達したのはソーサ(9勝)だけだった。左のエースとして期待されたヤン・ヒョンジョンは防御率3.10と評価できるが、故障での離脱も長く9勝にとどまった。右のエース格だったキム・ジヌは前年より内容が悪化しこちらも9勝、ベテランのソ・ジェウンは衰えからか5勝どまりだった。なお、大卒新人の左腕イム・ジュンソプは序盤好調で5勝と結果を残し、数少ない可能性を感じさせる若手だった。
 リリーフ陣は中継ぎ、抑えとともに決め手を欠いた。アンソニー退団後はユン・ソンミンが抑えとして7セーブを記録したが、それ以前の中継ぎが弱く登板機会が少なかった。アンダースローのベテランのユ・ドンフン、シーズン後半から復帰した若手左腕シム・ドンソプが比較的安定していたが、先発でも抑えでも結果を残せなかったソン・ウンボムなど、期待に応えられなかった選手が目立った。 
 チーム打率.261は9球団中6位、本塁打数88は5位、盗塁数141は4位、総得点587は6位と、攻撃力は高くもなく低くもなかった。チーム打点王のナ・ジワン(21本塁打・96打点)、チーム本塁打王の24本のイ・ボムホ(元福岡ソフトバンク)と中軸は上位球団に引けを取らなかった。またシン・ジョンギルが自己最高の打率.310を記録し、故障で一時期離脱したが不動の一番打者イ・ヨンギュも21盗塁と安定した成績を残した。だが序盤は好調だったベテランの大砲チェ・ヒィソプがたった11本塁打に終わり、かといって目覚しい若手の台頭もないなど、こちらも選手層の薄さが目立ってしまった。FAで契約したキム・ジュチャンも負傷でたった47試合の出場と期待を裏切ってしまった。また近年二遊間を守ってきたアン・チホン、キム・ソンビンの不振や離脱も響いた。


 前身のヘテ時代、数々の栄光をもたらしたソン・ドンヨル監督(元中日)に任せて2年目を終えたが、ここまでどうしようもない状況に陥ってしまうと指導力にも疑問符をつけられてしまっている。オフシーズンはFAで主力外野手のイ・ヨンギュがハンファへ移籍してしまい、その代役としてLGでかつて4年連続盗塁王に輝いた俊足の外野手イ・デヒョンと契約した。さらにFAを行使したエースのユン・ソンミンは、米国メジャーリーグ移籍を目標として渡米しキアを去った。
 外国人選手も総入れ替えとなり、2011年日本プロ野球最多勝に輝いたデニス・ホールトン(元読売)、抑え候補のハイロ・アセンシオの投手2人、右の大砲ブレット・ピルと野手1人の3名と契約した。2014年シーズン、キアは完成した新球場・光州キアチャンピオンズフィールドで新たなスタートを切り、前年の悪夢を糧に飛躍を試みている。ソン・ドンヨル監督にとっても正念場の一年となり、まず2011年以来3年ぶりとなるポストシーズン進出が現実的な目標であるが、主力選手の流出もあり決して平坦な道のりではないであろう。
 
(文責:ふるりん