DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第7回 NCダイノス

「大健闘」 

2013年成績 : 52勝72敗4分 (公式戦7位)
チーム総合採点…70点



 2013年シーズン、1軍に初めて参入した「第9球団」こと新球団NCダイノスは開幕前の予想では最下位候補であったが、徐々にチーム力を向上させ7位に入る大健闘を見せた。かつてトゥサンで若手を育て上位争いの常連にし、2008年北京五輪で韓国代表を優勝させた名将キム・ギョンムン監督の指導力は確かだった。
  
 4月2日、本拠地・馬山での初の公式戦の相手は、近隣の釜山広域市を本拠地とする人気球団・ロッテだった。先発は期待の新外国人アダムで6回無失点と好投したが、リリーフが打たれ0-4の完封負けとなった。翌3日のロッテ戦は5回裏に捕手キム・テグンのタイムリーでチーム史上初の得点を記録し先制したが、先発の新外国人チャーリーも好投したが逆転され、9回裏FAでSKから移籍してきた主砲イ・ホジュンのタイムリーで2-2の同点に追いつく粘りを見せた。しかし延長10回表に1点を勝ち越され敗れた。結局開幕7連敗となり、新球団の前途は多難に見えた。
 4月11日のLG戦で先発イ・ジェハクの好投もあり、4-1でようやく初勝利をあげた。そして本拠地馬山では4月13-14日のSK戦で初の連勝を記録した。しかしこの上昇ムードも、4月16-18日最下位争いをしていたハンファとの3連戦に敗れたことで吹き飛んでしまい、引き分け1つをはさんで4月28日まで最悪の9連敗となってしまった。ただ、8位だったハンファもNC以外の球団にほとんど勝てず、最下位脱出の可能性は低くなかった。
 4月30日のLG戦でようやく連敗を止めシーズン4勝目をあげたが、勝率はこの時点で.196しかなく、投打ともに1軍で戦うレベルに達していないかに思えた。5月8日のハンファ戦で期待の若手ナ・ソンボムのプロ初安打を含む2本塁打が出て打線が強化され、翌9日ようやく6試合目にして初めてハンファ戦で勝利した。そして12日のトゥサン戦では初の1試合2ケタ得点で17-5と大勝し、徐々に自信をつけていった。そして15日のロッテ戦で勝利し、ハンファを抜いて8位に浮上し勝率も3割に達した。この時既に期待の若手右腕イ・テヤンは先発ですでに4勝をあげ、イ・ジェハク、そしてアダム、チャーリー、エリックの外国人投手3人からなる先発ローテーションは他球団に引けを取らないものとなっていた。
 そして5月22日から25日まで初の4連勝を記録し、8位ではあったが最下位ハンファとの差を広げていった。当初申告選手として契約していたベテラン投手ソン・ミンハンと正式契約を結び、6月5日にはロッテ在籍時以来となる2009年以来4年ぶりの先発勝利をあげ、貴重な戦力として活躍した。その後6月11日から14日まで4連敗、6月22日から29日まで6連敗と、5月まで活躍していたイ・テヤンも勝てなくなってしまい8位で足踏みを続けた。先発陣はそろっていたが、抑え、中継ぎともにリリーフの起用に苦労したのが弱点となっていた。
 7月2日のネクセン戦で先発チャーリー、イ・ミンホのリレーで初の完封勝利を記録した。7月12日から14日まで馬山でのロッテとの3連戦で3連勝し、勝率.394と4割に近づいたが、その後オールスター戦をはさんで7月25日まで5連敗と再び下降線となった。7月31日にはイ・ジェハクが見事に球団史上初の完封勝利となる6勝目をあげ、新人王の有力候補に躍り出た。
 8月2日のハンファ戦で4連勝し、勝率も4割を突破し最下位ハンファとのゲーム差も9.5まで広げた。この日先発だったチャーリーは非常に安定した投球で最優秀防御率のタイトル争いにも加わっていた。そしてキム・ジョンホも盗塁王争いの1位を走っていた。8月16日にはシーズン3度目の4連勝で勝率も.424となり、7位キアまで3.5ゲーム差と射程圏内にとらえたが打線が弱くシーズンを通して5連勝以上はできなかった。9月1日、キアとの直接対決で12-3と大勝し1.5ゲーム差といよいよ7位以上が見えてきた。
 その後連勝できず9月16日から22日まで4連敗してしまったが、キアがどうしようもない状態に陥り全く勝てなくなっていたため差が広がることはなかった。27日のハンファ戦で勝利しキアが引き分けたため、ついに初の7位へと浮上した。30日のキアとの直接対決で敗れたためまた8位に後退したが、10月1日のネクセン戦に勝利しキアが敗れたため同率7位に並んだ。試合がなかった10月3-4日にキアが連敗したため、幸運に恵まれた部分もあったがNCの公式戦7位が確定した。そして10月5日、2013年シーズン最後の公式戦となった馬山でのSK戦も逆転勝ちし、初の1軍でのシーズンを本拠地のファンの喝采を浴びながら締めくくった。勝率も.419と4割台前半で終えることができた。


 チーム成績を検証する。
 チーム防御率は3.96で9球団中3位と上位球団に引けを取らなかった。特筆すべきは、最優秀防御率(2.48)のタイトルを獲得しチーム最多の11勝をあげた外国人投手チャーリー、10勝と初の2ケタ勝利をあげ新人王を受賞し防御率2位(2.88)と安定していたイ・ジェハクと、9球団トップクラスの先発2人がそろっていた点である。打線の援護がなく4勝にとどまったが、先発ローテーションを守ったエリックも評価に値する。もうひとりの外国人投手アダムは首脳陣と対立し8月に帰国し、実力を十分に発揮できなかった。全員活躍できなかったが、新球団の特例として外国人選手3人まで(他球団は2人まで)という利点は非常に大きかった。
 問題はリリーフ陣にあった。セーブ数26は9球団中8位、ホールド数31は最下位と数字を見ても明らかである。クォリティスタート(先発投手が6回以上投げ自責点3以下に抑える)の試合数が9球団中最も多い74だったのは、チャーリー、イ・ジェハクという強力な先発を擁していただけでなく、リリーフに明らかな不安があったからである。チーム最多のセーブ数は若手右腕イ・ミンホの10で、途中からリリーフに回ったソン・ミンハンの9がそれに続いた。中継ぎで最も目立ったのはサイドハンド右腕のイム・チャンミンがチーム最多の9ホールドと、柱というには物足りなかった。2012年オフに特別指名で移籍してきた左腕イ・スンホ、アンダースローのコ・チャンソンといった実績のあるリリーフ投手が活躍できなかった。
 打線は上位球団と比べだいぶ見劣りした。チーム打率.244は9球団中最下位、チーム総得点588は8位と得点力は低かった。20本塁打、86打点とチーム二冠王となったベテランの主砲イ・ホジュン、低打率ながら効果的な一発の多かった大卒新人クォン・ヒィドン(15本塁打)、攻守の要として期待された若手ナ・ソンボム(14本塁打)、SKから移籍し活躍したモ・チャンミン(12本塁打)とパンチ力のある打者がそろい、狭い馬山野球場を本拠地としていこともあり、チーム本塁打数86は6位と少し怖さはあった。また低打率をカバーするため、選手層の厚いサムソンでは出番がなかったがNCでその才能をようやく発揮し初の盗塁王に輝いたキム・ジョンホ(50個)、代走として起用された若手イ・サンホ(25個)など、キム・ギョンムン監督は得意の機動力を生かした野球を見せ、チーム盗塁数142は3位と、選手層が薄いなりの特徴ある戦い方は心得ていた。
 観客動員数も大健闘だった。2013年シーズンの総観客動員数は528739名(1試合平均約8260人)で9球団中5位だった。これは首都圏に本拠地を置くトゥサン、LG、SK、近隣の釜山広域市を本拠地とする人気球団ロッテに次ぐ数字であった。これはもともと馬山ではロッテの準本拠地で主催試合が時々行われ、野球熱の高い地域だったことがあげられる。最初は勝てなかった新球団も時間が経つにつれ勝ち星を積み重ねられるようになり、既存球団にない新鮮な感動と興奮に惹かれファンも増えていった。2013年シーズン、ロッテが前年比で約40%観客動員数を減らしたのも、かつてロッテを応援していた馬山周辺の野球ファンがNCへと流れていってしまったことも要因の一つとして推察される。


 オフシーズンも活発に動いた。まずキム・ギョンムン監督が2011年シーズン途中まで率いていたトゥサンからイ・ジョンウク、ソン・シホンの2人の大物FA選手を引き抜き、若い選手の多いチームに刺激剤を与えた。2014年シーズンのみ他球団より1人多い4人の外国人選手と契約できることから、チャーリー・シレック、エリック・ハッカーと再契約しただけでなく、初の外国人打者として米国メジャーリーグでも実績のあるエリック・テームズ、新外国人投手サド・ウェーバーとも契約した。このような戦力の充実から、2014年シーズンは上位進出を予測する声も上がっている。しかし2年目ということで他球団の警戒も厳しくなっているため、投打ともに今後の主力となる若手が大きく育っていかないと、思わぬ低迷に陥ることもあるだろう。慢心は禁物である。 

(文責:ふるりん