DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第6回 LGツインズ

竜頭蛇尾 
2011年成績 : 59勝72敗2分(公式戦6位)
チーム総合採点…35点

 2002年の韓国シリーズ進出以降、8年連続ポストシーズン進出失敗と長期低迷が続いたLGツインズ。だが2011年シーズンは期待の新外国人投手リズ、ジュキッチの加入などにより期待が大きかった。4月2日、蚕室野球場でのトゥサンとの開幕戦はリズが先発し、相手の新外国人ニッパートとの投げあいに敗れたが、翌3日、期待の若手パク・ヒョンジュンの好投もあって7−0と完封リレーでシーズン初勝利をあげた。その後4連勝で4月10日まで5勝2敗と、1997年以来14年ぶりの首位に立った。その後も大きく崩れることなく、4月は13勝10敗の3位で終えた。
 好調の要因は、パク・ヒョンジュン、リズ、ジュキッチを中心とした先発陣と、抑えとして活躍したキム・グァンサム、以前からタレントがそろっていたイ・ビョンギュチョ・インソン、パク・ヨンテクなどを中心とした打撃陣であった。5月になっても勢いは衰えず、首位SKを追走し2位の座につけていた。故障で離脱した2010年までのエース、ポン・ジュングンに代わる新しいエースとして活躍したパク・ヒョンジュンは5月までに7勝をあげ、5月6日にプロ初勝利をあげた高卒新人イム・チャンギュはリリーフで大車輪の活躍を見せ、5月だけで5勝を記録した。そのため5月も15勝10敗と勝ち越し、公式戦3分の1を終えて2位と上位につけているチームの躍進にファンも大いに期待した。
 6月も半ばを過ぎると、チームは下降線をたどり始めた。6月11日のキア戦で勝利したのが単独2位を守った最後で、翌12日から連敗街道を走り始めた。特に4連敗からの脱出がかかった17日のSK戦は、9回表まで4−1とLGがリードしていたが、イム・チャンギュがなんと4者連続押し出し四球を許したこともあって、6−4で逆転負けしシーズン初の5連敗となった。6月20日以降は相次ぐ雨天中止のため6月30日まで2試合しか行われなかったのが不振のチームにとっては救いの雨となったが、8勝11敗と初めて負け越し4位にまで後退、さらには2010年まで4年連続盗塁王の1番打者イ・デヒョンまで故障により離脱するなど、チームの見通しは一気に暗くなった。
 7月も雨天中止の試合が相次いだが、チームの調子が上向くことはなかった。イ・ビョンギュチョ・インソンなどの主力打者が不振に陥り、7月だけで5度の逆転負けを喫するなど、明らかに集中を欠いている試合も目立った。7月下旬の4連敗で、ついに29日、シーズン初めて勝率5割を割ってしまい、7月31日には下から追い上げてきた好調ロッテに同率4位の勝率5割で並ばれてしまった。そこでトレード最終期限の7月31日、ネクセンとの間で緊急トレードを断行し、2009年6月以降2年以上17年連敗を続けていた先発シム・スチャン、未完の大砲パク・ピョンホを放出し、抑えとして起用できるサイドハンドのソン・シニョン、若手の先発右腕キム・ソンヒョンを獲得した。また7月中旬にはトレードで以前は抑えを任せていたが故障で離脱したキム・グァンスをハンファにトレードし、代わりに右のユ・ウォンサン、左のヤン・スンジンと2人の投手を獲得していた。
 ソン・シニョンは期待にこたえ、8月2日のSK戦で移籍後初セーブをあげた。だが8月6日のハンファ戦で敗れ勝率5割を切ると、この後シーズン終了まで勝率5割に復帰することはなく、近年夏場に強いロッテとの差は広がる一方だった。ソン・シニョンは抑えとして安定した投球を続けたが、キム・ソンヒョンはLG移籍後1勝をあげただけで終わりあまり戦力にならなかった。その一方、パク・ピョンホは新天地で4番を任され大砲としての才能が開花し活躍した。そして8月23日から25日までの最下位ネクセンとの3連戦では3連敗し、足を引っ張られてしまった。また8月26日のハンファ戦では、先発リズが球速161km/hとプロ野球史上最速を記録した。
 それでも8月は最後に4連勝し10勝11敗1分けで終わり、9月の反撃しだいでは4位以上進出の可能性も残っていた。だがシーズンの疲労がたまってくる終盤に勢いを与える新戦力の台頭がなかったこともあり、投打ともに不調で連敗を重ねた。結局9月は後半になると、トゥサン、ハンファとの5位争いに終始し、6勝15敗と大きく負け越しただけでなく、24日のSK戦で敗れたことで公式戦5位以下が確定し、2003年以降のポストシーズン進出連続失敗を9年に延ばし、不名誉なプロ野球記録を更新した。
 10月2日のトゥサン戦でパク・ヒョンジュンが打たれて1−11で大敗し、トゥサンと同率6位に並ばれてしまった。3日のトゥサン戦でも敗れ5連敗となり、シーズン最悪の7位にまで後退した。5日のサムソン戦で引き分けたことでハンファと同率6位となった。そして10月6日、蚕室野球場でのシーズン最終戦となったサムソン戦を前に、パク・チョンフン監督が辞任を表明したものの、この試合も敗れLGは結局2年連続の6位で2011年シーズンを終えた。


 2011年シーズンのLGは、まさに「竜頭蛇尾」だった。6月末、公式戦133試合の半分を消化した67試合終了時点で36勝31敗(勝率.537)だったが、そのあとの66試合で23勝41敗2分け(勝率.359)と大きく負け越した。その例としてチームの前半の快進撃を支えたパク・ヒョンジュンは6月まで8勝をあげたが以後は5勝だけにとどまり、新人王争いに加わったイム・チャンギュも6月までの6勝から8月以降は3勝だけで、新人王の座もペ・ヨンソプ(サムソン)に譲ってしまった。


 投手陣を見ると、チーム最多勝のパク・ヒョンジュン(13勝)を筆頭に、リズ(11勝)、ジュキッチ(10勝)と3人の投手が先発ローテーションをずっと守り、2ケタ勝利を記録した。リリーフとして主に起用された高卒新人イム・チャンギュも9勝を記録した。しかし先発4番手以降があまりにも弱く、上記4人に続く勝ち星を挙げたのがキム・グァンサムの4勝で、この選手層の薄さが上位チームとの決定的な差だった。
 中継ぎは右のキム・ソンギュ、ハン・ヒィ、左のイ・サンヨルなどシーズンを通して活躍した投手はいたが、シーズン終盤にソン・シニョンを固定するまで抑えには苦労した。6月から7月にかけてはイム・チャンギュが抑えを任されることが多かったが、シーズン終盤には今後を考え先発での起用もあった。チーム防御率(4.15)は8球団中4位、失点(620)は5位と、2009年、2010年は5点台だっただけに先発3本柱の活躍でだいぶ改善された。
 LGは近年野手の補強に積極的で、強力打線が看板だった。チーム打率(.266)は8球団中4位、本塁打数(94)は4位、盗塁数(113)は4位だったが、得点(579)は6位とあまり効率は良くなかった。その理由として、チーム四死球(512)が7位で最下位のネクセンと1個差しかなく、打者につなぐ意識があまり見られなかったことがあげられる。要は打線ではなく点に過ぎなかったわけである。しかもイ・テックン、イ・ジニョンなど実績のある外野手が一塁を守り、内野の層が薄いなどバランスが悪かった。
 主力野手では、日本プロ野球・中日からLGに復帰して2年目のシーズンだった36歳のベテラン、イ・ビョンギュ(背番号9)が打率.338、16本塁打、75打点とチームの打撃三冠王となる活躍を見せ、健在ぶりを示した。そのほかには3年連続打率3割を記録したパク・ヨンテク、正捕手チョ・インソン、サードのチョン・ソンフンなど実績ある選手も安定した成績を残した。しかしイ・デヒョンはチーム最多の22盗塁を記録したものの、故障による離脱で出場試合数が少なく、史上初となる5年連続盗塁王はならなかった。


 選手もファンも6月前半までの快進撃に酔いしれた。しかしその勢いが止まると、シーズン後半の厳しい本当の戦いを知らないチームは軌道修正がまったくできず、また良かったときのイメージが捨て切れず、6連敗以上はなかったが小刻みな連敗の繰り返しという泥沼にはまるだけだった。また伝統的にトレードの下手なチームであるため、シーズン中のトレードもたいしたカンフル剤にならなかった。おそらく6月後半以降の戦いぶりがLGというチームの真の姿なのであろう。 


 公式戦終了後翌日の10月7日、キム・ギテ新監督の就任が発表された。現役時代サンバンウル、SKなどで強打者として活躍し、引退後は5年間日本プロ野球・読売などで2軍の指導者として経験を積み、2010年からLGの2軍監督に就任したまだ42歳(1969年生まれ)の若き新監督に、チームの再建が託された。しかしオフシーズンには、イ・テックンがネクセン、ソン・シニョンがハンファへとFA(フリーエージェント)で移籍し、さらには10年以上正捕手をつとめたチョ・インソンまでFAでSKに移籍してしまい、一気に戦力の流出が進んだ。だがその一方でリズ、ジュキッチの両外国人投手との再契約に成功した。
 2012年シーズン、10年ぶりのポストシーズン進出に向けて残された課題はあまりにも多いが、チームに漂い続けている負のオーラを払拭するにはまたとない好機である。キム・ギテ新監督は、いったいどのようにしてさわやかなシンパラム(新風)をこのよどみきった人気球団に吹き込み蘇生させるのであろうか。

(文責 : ふるりん