DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2022年シーズン回顧 第7回 サムソンライオンズ

8年ぶりの韓国シリーズ優勝は遠い幻に

2022年シーズン成績 

レギュラーシーズン:66勝76敗2分(勝率.465)7位

ポストシーズン:出場せず

 2021年はプレーオフでトゥサンベアースに敗れたがレギュラーシーズン2位で6年ぶりのポストシーズン進出と成果を出したサムソンライオンズ。4連覇を成し遂げた黄金時代だった2014年以来となる8年ぶりの韓国シリーズ優勝が期待されたが、オフシーズンに攻守の要だった外野手パク・ヘミンがFA(フリーエージェント)となりLGツインスへ移籍し、その穴を埋められるほどの目立った補強はなかった。

 4月2日のレギュラーシーズン開幕後は一進一退が続き、4月7日のトゥサン戦から4月10日のキウムヒーローズ戦までの4連敗、4月15日のSSGランダース戦から4月20日のNCダイノス戦まで5連敗となり下位に低迷した。5月4日のNC戦から8日のロッテジャイアンツ戦まで5連勝し、勝率5割に戻した。5月19日のハンファ戦で勝利し首位SSG、2位LGに迫り3位に浮上した。

 しかし5月24日のキアタイガーズ戦から5月28日のLG戦まで5連敗となり再び下位に後退した。その後も調子が上がらず勝率5割が遠かった。6月下旬から思うように勝てなくなり、6月30日のKTウィズ戦に敗れてから地獄が始まった。7月になって全く勝てなくなり、梅雨時で雨天中止も多かったが恵みの雨にならなかった。

 7月16日の3年ぶりのプロ野球オールスター戦で、ドリームオールスターのファン投票選出選手12名のうちサムソンの選手が連敗中にもかかわらず6名を占めるなど、期待されてはいたが応えることができなかった。7月15日から7月21日までのオールスター戦による中断期間が終わっても勝てず、7月23日のキウム戦で1982年の球団創設以来ワーストとなる13連敗となってしまった。この時点で勝率は4割少々で8位と上位からは大きく離され、8年ぶりの韓国シリーズ優勝どころか2年連続のポストシーズン進出も厳しくなった。

 結局7月31日のロッテ戦でもオ・スンファンがリードを守れず引き分けに終わり、この時点で勝率は.402しかなく順位は9位だった。翌8月1日、2020年から指揮していたホ・サミョン監督は辞任し、フューチャースチーム(二軍に相当)の監督だったパク・チンマンが監督代行として残り試合の指揮を執ることになった。8月4日のトゥサン戦は先発ウォン・テインの好投もあってパク・チンマン監督代行にとって初勝利となった。

 しばらくは一進一退だったが、8月27日のハンファ戦から9月1日のキア戦まで4連勝し調子が上向いてきた。9月3日のトゥサン戦は開幕から12連敗中だった左腕ペク・チョンヒョンのレギュラーシーズン初勝利でトゥサンを抜いて8位に浮上した。その後大きな連勝はなかったが、ロッテ、NCなどと6位の座をかけてし烈な争いが続いた。9月18日にはロッテを抜いて7位に浮上、連敗が続いて勝率が下がって5位キアとの差が縮まった。9月23日のKT戦で19歳の新人イ・ジェヒョンの本塁打でサヨナラ勝ちし、5位以内にわずかな可能性を残した。

 9月25日、キアとの直接対決で敗れて差が広がるも、10月1日のトゥサン戦まで3連勝し最後の最後まで望みを捨てなかった。結局10月4日のKT戦に敗れ5位以上の可能性がなくなり、2年ぶりにポストシーズン進出に失敗した。レギュラーシーズン最終戦となった10月8日のSSG戦では勝ち星に恵まれなかった外国人選手スアレス(元東京ヤクルト)の好投で勝利し、8位ロッテとは1ゲーム差の7位で2022年シーズンを終えた。9月以降は18勝11敗と勝ち越し有終の美を飾った。 

 

【投手の成績】

防御率4.33(7位) 奪三振971(10位) 被本塁打129(2位) 与四球478(7位)

[主な先発投手]

ブキャナン     26試合 11勝8敗 防御率3.04

ウォン・テイン     27試合  10勝8敗  防御率3.92

スアレス      30試合 6勝8敗 防御率2.49

ペク・チョンヒョン 24試合 4勝13敗 防御率5.20

ファン・ドンジェ  13試合 1勝3敗   防御率7.06

ホ・ユンドン    12試合 4勝3敗  防御率6.55

 先発投手のチーム防御率(4.21)は10チーム中9位だった。最も安定した先発投手は韓国1年目の外国人選手スアレスだったが、打線の援護などに恵まれず6勝にとどまった。韓国3年目の外国人選手ブキャナンは3年連続10勝以上とこちらも安定した内容だった。22歳のウォン・テインは2年連続10勝以上を記録するも、内容は2021年より悪かった。

 2021年は自身最多の14勝を記録した35歳のペク・チョンヒョンが唯一の左腕の先発で、開幕から12連敗など内容が悪化した。さらに5番手以降の先発投手の人材が不足し、若手を起用するも定着できず層が薄いままで上位に残れなかった大きな要因となった。

 

[主なリリーフ投手]

オ・スンファン    57試合 6勝2敗31セーブ2ホールド 防御率3.32

ウ・ギュミン     60試合 4勝3敗1セーブ16ホールド  防御率3.26

イ・スンヒョン(54番)  58試合 2勝4敗1セーブ14ホールド 防御率4.53

イ・スンヒョン(20番)  54試合 0勝2敗13ホールド 防御率4.68

イ・ジェイク     42試合 3勝2敗7ホールド 防御率5.94

ムン・ヨンイク    39試合 1勝2敗1セーブ2ホールド  防御率3.35

 リリーフのチーム防御率(4.52)は10チーム中5位だった。リリーフ陣の軸は40歳のオ・スンファン、37歳のアンダースローのウ・ギュミンと2人のベテランだった。オ・スンファンは6月30日から7月23日までの13連敗中にセーブ失敗を重ね限界かと思われたが、8月以降は復調した。中継ぎでは左腕の背番号54番、右腕の背番号20番の2人のイ・スンヒョンが貢献した。

 

【野手の成績】

打率.270(2位) 本塁打103(7位) 得点663(4位) 盗塁90(6位) 失策118(3位)

捕手:カン・ミンホ    130試合 打率.258 13本塁打 66打点 0盗塁

一塁:オ・ジェイル    135試合   打率.288    21本塁打 94打点 2盗塁

二塁:キム・ジチャン   113試合 打率.280 0本塁打 25打点 25盗塁

三塁:イ・ウォンソク   88試合 打率.267 10本塁打 60打点 0盗塁

遊撃:キム・サンス       72試合 打率,251 2本塁打    29打点   2盗塁

左翼:ピレラ       141試合 打率.342 28本塁打  109打点 15盗塁

中堅:キム・ヒョンジュン 118試合 打率.275 0本塁打 22打点 5盗塁

右翼:ク・ジャウク    99試合  打率.291 5本塁打  37打点 11盗塁

指名:キム・ジェソン   63試合 打率.335 3本塁打 26打点 0盗塁

控え:キム・テグン、オ・ソンジン、カン・ハヌル、イ・ジェヒョン、パク・スンギュ、キム・ホンゴンなど

 打線の中心は韓国2年目の外国人選手ピレラ(元広島)だった。打率、本塁打、打点ともに個人タイトル争いに加わるほどの成績を残した。ほかには36歳の左打者オ・ジェイル、37歳の捕手カン・ミンホとベテランの野手たちが打線の中軸を任された。2022年から5年契約を結び中軸として期待された29歳のク・ジャウクが故障で出場試合数を減らしたのが惜しまれた。カン・ミンホを支えるキム・テグン、キム・ジェソンなど移籍してきた捕手たちも活躍した。

 若手の台頭も特筆すべきである。特に21歳のキム・ジチャンはプロ3年目で攻守に成長を遂げ、3年連続20盗塁以上と安定した成績を残した。またLGへ移籍したパク・ヘミンの後継者として20歳でプロ2年目のキム・ヒョンジュンが起用され、プロ初打点や初盗塁を記録し118試合に出場と可能性を感じさせた。19歳の新人の内野手イ・ジェヒョンは一軍定着こそならなかったが、7本塁打と才能を感じさせた。

 

【オフシーズンの動向】

 2022年シーズン終了後、9月以降は好成績を収めたパク・チンマン監督代行は正式な監督に就任した。 

 若手の台頭もあり出場機会を減らしFAとなった生え抜きの32歳の内野手キム・サンスはKTへと移籍した。補償選手としては控えの外野手キム・テフンが指名された。また内野のユーティリティープレイヤーとして重宝されFAとなったオ・ソンジンは古巣ハンファに移籍した(等級CのFA選手だっため補償選手の指名はなし)。またスアレス、ピレラ、ブキャナンと投打の軸として活躍した外国人選手3名は全員2023年も再契約した。

 2023 WBCワールドベースボールクラシック)の韓国代表には投手のウォン・テインのみ選ばれた。

 

 現役時代に2005年、2006年とサムソンで2度の韓国シリーズ優勝に貢献した守備の名手だったパク・チンマンは現役引退後に指導者としての経験を積み、満を持して監督の座についた。大きな補強もなく、2023年シーズン開幕時点でもベテランに依存する部分が多いチームではあると思われるが、世代交代を推し進めつつ2年ぶりのポストシーズン進出、その先の韓国シリーズ優勝に向けてどのようにチームを再建していくのか、1年目の新人監督ながらその手腕に大いに注目が集まるであろう。

 

(文責:ふるりん