DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2020年シーズン回顧 第4回 LGツインス

新風は吹くも韓国シリーズはなお遠し

2020年シーズン成績 

レギュラーシーズン:79勝61敗4分(勝率.564)3位

ポストシーズンプレーオフ敗退(対トゥサン)0勝2敗

 

  LGツインスは長く優勝から遠ざかるも、2019年は4位で戦力も充実していたため2020年シーズン開幕前の評価は高く優勝争いに加わるとの大方の予想だった。示範競技が中止され例年より開幕が1ヵ月以上遅れる中、4月21日からの練習試合でイ・ミンホやキム・ユンシクなどの新人が躍動し期待を高めた。

 5月5日のトゥサンとの開幕戦はキム・ヒョンスの本塁打と先発チャ・ウチャンの好投で8-2と勝利したが、翌6日のトゥサン戦から8日のNC戦まで3連敗となった。だが5月10日のNC戦から14日のSK戦まで4連勝、5月24日のKT戦から29日のキア戦まで5連勝と好調が続いた。5月21日のサムソン戦でプロ初先発となった18歳の新人イ・ミンホが6回途中無失点でプロ初勝利を記録、新外国人選手のラモスは5月だけで10本塁打を量産と新戦力がチームに勢いを与えた。また故障者の穴を埋めるため先発で起用された30歳のチョン・チャンホンが高卒新人だった2008年以来12年ぶりとなる先発での勝利を記録するな予定外の活躍を見せた。

 首位NCが独走する中、LGはトゥサンとの2位争いを続けた。6月14日のロッテ戦から18日のハンファ戦まで4連勝するも、19日のトゥサン戦から26日のSK戦まで7連敗となり5位にまで後退した。この頃からキウム、トゥサン、キアとのし烈な上位争いが始まった。6月30日のKT戦での延長11回裏、プロ初本塁打がサヨナラ打点となった26歳の外野手ホン・チャンギが7月以降躍動を始め主力に定着した。

 7月1日のKT戦から4日のサムソン戦までの4連敗で6位にまで後退したが何とか踏みとどまり、7月26日のトゥサン戦から30日のSK戦まで4連勝すると4位に浮上、混戦の上位争いを演出した。8月12日のキア戦から19日のキア戦まで7連勝を記録、3位にまで浮上した。5月に故障で離脱した抑えのコ・ウソクが7月に復帰、8月になって球威を取り戻してきたのが大きかった。NCの勢いに陰りが見え、2位キウム、3位LG、4位トゥサンによる上位争いとなった。

 9月3日のNC戦では2020年シーズン限りでの引退を公言していた41歳のパク・ヨンテクの2試合連続本塁打で6連勝、6日のロッテ戦で引き分け1つを挟み7連勝で2位にまで浮上した。9月15日のハンファ戦まで4連敗となり4位にまで後退、これに調子を上げてきたKTも加わり上位争いはさらなる混戦となった。

 10月6日のサムソン戦でパク・ヨンテクがプロ野球史上初の個人通算2500安打を達成した。大打者の最後のシーズンを最高の結果で終えようと、LGは10月7日のサムソン戦から11日のNC戦まで6連勝し2位に浮上した。10月9-11日は10日のダブルヘッダーも含め首位NCと4連戦となり、4戦4勝と独走に待ったをかけた。

 10月後半となっても順位争いには決着がつかず2位LGから5位トゥサンまで僅差の混戦となり、ポストシーズンで有利な立場に立つために最後の最後まで死力を尽くさなくてはならなくなった。10月23日のキア戦で勝利し2位を維持、24日のNC戦では延長12回で引き分け目の前でレギュラーシーズン初優勝を見せられるも、残り2試合が最下位のハンファ、9位のSKだったためレギュラーシーズン2位確定は間違いないかのような錯覚に陥った。

 しかし10月28日のハンファ戦、4回裏までに6点を奪うもその後追いつかれてしまい、延長11回表にコ・ウソクが1点を勝ち越され6-7で敗れた。翌29日は試合がなくKTが2位に浮上、30日のSKとのレギュラーシーズン最終戦でも接戦の末2-3と敗れ、144試合を終えてトゥサンと同率の3位に並ばれてしまい、直接対決で負け越していたため実質4位扱いとなり、ポストシーズンワイルドカード決定戦からの出場となった。

  ワイルドカード決定戦ではキウムと対戦した。11月1日の第1戦は雨天で翌2日に順延され、9回を終えて2-2の同点で延長戦に突入した。延長13回表にイム・チャンギュが1点を勝ち越されるも、13回裏にイ・チョヌンとシン・ミンジェのタイムリーで3-2と逆転サヨナラ勝ちし、準プレーオフ進出となった。準プレーオフではトゥサンと対戦し、11月4日の第1戦では打線が沈黙し0-4で敗れた。翌5日の第2戦は先発ウィルソンが崩れ3回裏までに8点を奪われ、ラモス、チェ・ウンソン、キム・ヒョンスの本塁打などで反撃するも及ばず7-9で敗れ、先に2敗したLGは準プレーオフで敗退となった。

 2020年シーズンの激闘が終わった翌日の11月6日、2018年からLGを指揮していたリュ・ジュンイル監督の辞任が発表された。

 

【投手の成績】

防御率4.37(2位) 奪三振1019(4位) 被本塁打123(7位) 与四球493(7位)

[主な先発投手]

ケリー       28試合 15勝7敗 防御率3.32

イム・チャンギュ  27試合 10勝9敗 防御率4.08

ウィルソン     25試合 10勝8敗 防御率4.42

チョン・チャンホン 19試合 7勝4敗  防御率3.51

イ・ミンホ        20試合 4勝4敗 防御率3.69

チャ・ウチャン   13試合 5勝5敗 防御率5.34

 先発の防御率4.26は10チーム中2位で頭数はそろっていた。韓国2年目の外国人選手ケリーが先発の柱となり、2019年は3勝止まりだったイム・チャンギュが2年ぶりに10勝以上を記録と復活を遂げた。反面、2019年は14勝を記録したウィルソンが10勝に終わり内容も悪化した。また2019年まで5年連続10勝以上を記録していたチャ・ウチャンが故障で8月以降は登板せず5勝止まりだった。高卒新人イ・ミンホが先発で起用され4勝と2021年以降に期待させる内容で、他の若手投手たちにも刺激を与えた。

 

[主なリリーフ投手]

チン・ヘス     76試合 4勝2敗22ホールド 防御率4.32

チョン・ウヨン   65試合 4勝4敗5セーブ20ホールド 防御率3.12

ソン・ウンボム   56試合 1勝4敗2セーブ2ホールド 防御率4.50

チェ・ドンファン  54試合 4勝1敗4ホールド 防御率3.47

チェ・ソンフン   48試合 2ホールド 防御率3.51

コ・ウソク     40試合 4敗17セーブ 防御率4.10

イ・ジョンヨン   34試合 3勝4ホールド 防御率3.71

キム・デヒョン   33試合 4勝3ホールド 防御率5.85

 リリーフの防御率は4.61で10チーム中2位で左右ともに層が厚かった。チーム最多登板は左腕の中継ぎの柱チン・ヘスで、2016年から5年連続で65試合以上に登板と鉄腕ぶりを発揮した。抑えの22歳のコ・ウソクがシーズン前半に2か月あまり離脱していたため、代役として20歳のチョン・ウヨンが起用された。ソン・ウンボム、チェ・ドンファンなどのベテランの活躍だけでなく、23歳で右の中継ぎに定着したイ・ジョンヨンの成長など、年齢的なバランスもとれていた。

 

【野手の成績】

打率.267(5位) 本塁打94(6位) 得点641(6位) 盗塁108(3位) 失策95(7位)

捕手:ユ・ガンナム    137試合 打率.261 16本塁打 74打点 1盗塁

一塁:ラモス       117試合   打率.278 38本塁打 86打点 2盗塁

二塁:チョン・ジュヒョン 134試合 打率.247 4本塁打  30打点 8盗塁

三塁:キム・ミンソン   87試合 打率.266 5本塁打 47打点 2盗塁

遊撃:オ・ジファン    141試合 打率.300 10本塁打  71打点   20盗塁

左翼:キム・ヒョンス      142試合 打率.331 22本塁打 119打点 0盗塁

中堅:ホン・チャンギ   135試合 打率.279 5本塁打 39打点 11盗塁

右翼:イ・ヒョンジョン  81試合 打率.296 17本塁打   50打点 1盗塁

指名:チェ・ウンソン   109試合 打率.293 15本塁打 88打点 0盗塁

控え:イ・ソンウ、キム・ヨンウィ、ク・ボンヒョク、ヤン・ソックァン、チョン・グヌ、イ・チョヌン、パク・ヨンテクなど

 打線の中心は2018年からLGに在籍するキム・ヒョンスであることに変わりなかったが、韓国1年目の外国人選手ラモスがシーズン本塁打のチーム記録(38本)を更新するなど新風を吹き込んだ。そのほかにはホン・チャンギが26歳にして外野のレギュラーに定着、離脱が長引いたイ・ヒョンジョン、イ・チョヌンなど実績のある外野手の不在を埋めた。他のポジションと比べて三塁が弱く、離脱が続いたキム・ミンソンの代わりとなる人材が育たなかった。

 2002年以来LG一筋で19年間活躍した41歳のパク・ヨンテクは主に指名打者と代打で97試合に出場、プロ野球史上最多の個人通算2236試合出場、2504安打を記録して現役を引退した。

 

【オフシーズンの動向】

 投打ともに一定の新戦力が台頭し新風を吹かせるも、勝負どころのレギュラーシーズン最終盤で勝てず韓国シリーズ進出失敗の責任をとる形で辞任したリュ・ジュンイル監督に代わってリュ・ジヒョン監督が就任した。FA(フリーエージェント)となったキム・ヨンウィ、チャ・ウチャンの2名とは再契約した。外国人選手のうちラモス、ケリーとは再契約するもウィルソンとは再契約せず、新外国人選手として左腕のアンドリュー・スアレス投手と契約した。また飲酒運転事故で2019年以降一軍出場がないユン・ヒョンジュン内野手と交換に、内野の控えの強化として経験豊富なイ・サンホをNCからトレードで獲得した。

 

 現役時代のみならず指導者としてもほぼLGでプロ生活を送ってきたリュ・ジヒョン監督は、自身が新人だった1994年以来となる韓国シリーズ優勝を目指す。パク・ヨンテクという大打者はグラウンドを去るも野手の層は厚く、投手陣同様に若手が台頭すれば十分に優勝を狙える戦力となる。NC、KTと2010年代に創設された新興勢力が2020年に上位を占めるなどプロ野球界の勢力範囲が変わる中で、1990年代からプロ野球人気を引っ張ってきた球団としての意地と誇りを見せたいところだ。

 

(文責:ふるりん