DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2023年シーズン回顧 第8回 サムソンライオンズ

初のシーズン最下位は免れたが…

2023年シーズン成績 

レギュラーシーズン:61勝82敗1分(勝率.427)8位

ポストシーズン:出場せず

 2022年はシーズン途中の7月でホ・サミョン監督が辞任、パク・チンマン監督代行が最後まで指揮を執り、7位でポストシーズン進出に失敗した。パク・チンマン監督は2023年から正式な監督に就任、巻き返しを図ることになったが、10年以上主力として活躍していた内野手キム・サンスがFA(フリーエージェント)となりKTウィズへ移籍し、若返りがさらに求められることになった。

 4月1日、遠征先の昌原でのNCダイノスとのレギュラーシーズン開幕戦で完封負けを喫し、4月6日のハンファイーグルス戦から12日のSSGランダース戦まで6連敗と出だしでつまづいた。その後持ち直したが、4月20日のキウムヒーローズ戦から23日のキアタイガーズ戦まで4連敗となり最下位に近づいた。しかし4月26日のトゥサンベアース戦から30日のKTウィズ戦まで5連勝、勝率5割に戻した。

 4月27日、36歳のベテラン内野手イ・ウォンソクを交換要員に、キウムからリリーフ右腕のキム・テフンをトレードで獲得した。これは40歳の守護神オ・スンファンが不調だったこともあり、リリーフの補強を図ったと思われる。5月3日、オ・スンファンは2005年のプロ入り以降初めて先発で登板し、5回3失点で敗戦投手となり、翌4日に調整のため出場選手登録が抹消された。

 5月17日のキア戦まで4連敗となり7位、試合が雨天中止となった翌18日に8位へ後退したが、翌19日のNC戦でオ・スンファンが9回裏に登板し勝利、4月18日のキウム戦以来のセーブをあげ復活をアピールした。しかし順位は上がることはなく勝率は下がっていった。

 投打ともに厳しい状況が続き、6月13日のLGツインス戦から17日のKT戦まで5連敗、9位にまで後退した。不振はさらに続き、6月20日のキウム戦から24日のSSG戦まで5連敗、最下位にまで転落した。さらに7月2日のハンファ戦に敗れ4連敗、レギュラーシーズン144試合のちょうど半分となる72試合を消化して27勝45敗、勝率.375で9位のキアと4.5ゲーム差もあった。

 7月5日、打線の強化のため捕手キム・テグンを交換要員にキアタイガーズから内野手リュ・ジヒョクを獲得した。7月6日、浦項でのトゥサン戦に敗れ9位ハンファと6.5ゲーム差と、1982年のプロ野球開始後、初のシーズン最下位の悪夢がちらつき始めた。しかし、オールスター戦前後の1週間の中断期間を経て、少しずつ9位との差を詰めていった。

 8月10日、負傷により2023年シーズン中の復帰が困難と判断された外国人投手スアレス(元東京ヤクルト)は4勝どまりでウェーバー公示された。この日に試合はなかったがキウムが最下位に転落、サムソンが9位に浮上した。翌8月11日、NCからウェーバー公示されていた外国人投手ワイドナーと契約した。この日のSSG戦に勝利し8位に浮上したが、翌12日のSSG戦に敗れ9位に後退した。

 8月22日のハンファ戦に勝ち8位に浮上したが、勝率は.434と5割が遠く最下位争いを続けた。9月8日のトゥサン戦に敗れ9位に後退すると、9月15日のNC戦から2試合雨天中止を挟んで22日のトゥサン戦まで5連敗となり、最下位転落の危機となった。9月27日のハンファ戦で勝利し5連敗から脱出、試合のなかった9月29日にハンファが敗れ8位に浮上した。

 10月、中国・杭州でのアジア競技大会野球の韓国代表ではウォン・テイン、キム・ジチャン、キム・ソンユンの3名が出場し、10月7日、台湾代表との決勝戦で勝利し優勝、ウォン・テインとキム・ジチャンは兵役免除の恩典を得た。一方で10月3日のロッテ戦で敗れ9位に後退したが、10月6日、19歳の高卒新人イ・ホソンが5回1失点でプロ初勝利をあげ、8位に浮上した。

 し烈な最下位争いは最後まで続き10月10日のキウム戦で3連敗となったが順位は変わらず、10月14日、大邱でのSSG戦で41歳のオ・スンファンがシーズン30セーブ目、韓国プロ野球史上初となる個人通算400セーブを達成した。10月15日、遠征先の昌原でのNC戦がシーズン最終戦となったが敗れてしまい、9位ハンファが勝ったため順位は確定しなかった。翌10月16日、ハンファがロッテに敗れたことでサムソンの8位が確定した。パク・チンマン監督の1年目は低迷が続き2年連続ポストシーズン失敗となり、最下位キウムとは2ゲーム差しかなかった。

 

【投手の成績】

防御率4.61(10位) 奪三振899(10位) 被本塁打120(1位) 与四球484(9位)

[主な先発投手]

ブキャナン     30試合 12勝8敗 防御率2.54

ウォン・テイン      26試合 7勝7敗  防御率3.18

ワイドナー     20試合 7勝5敗 防御率4.54

ペク・チョンヒョン 18試合 7勝5敗 防御率3.67

チェ・チェフン   15試合 1勝7敗   防御率6.68

 先発投手のチーム防御率(4.25)は10チーム中7位だった。韓国4年目の外国人選手ブキャナン(元東京ヤクルト)がチーム最多の12勝、4年連続10勝以上と安定した投球を見せた。韓国人で最多の投球回数(150回)を記録した23歳のウォン・テインは、リリーフ陣の不調もあり7勝どまりだった。この2名以外の先発投手の層が薄く、連勝が難しく最下位争いから抜け出せなかった。シーズン途中の8月から加入したワイドナーもあまり活躍できなかった。

 

[主なリリーフ投手]

キム・テフン     71試合 6勝7敗3セーブ11ホールド 防御率7.11

イ・スンヒョン(20番)  60試合 4勝3敗14ホールド 防御率3.60

オ・スンファン    58試合 4勝5敗30セーブ 防御率3.45

ウ・ギュミン     56試合 3勝1敗13ホールド  防御率4.81

イ・ジェイク     51試合 1勝3敗11ホールド 防御率3.95

イ・スンヒョン(54番)  48試合 1勝5敗1セーブ14ホールド 防御率4.53

キム・デウ      44試合 0勝2敗4ホールド  防御率4.50

ホン・ジョンウ    36試合 2勝3敗4ホールド 防御率4.50

 リリーフのチーム防御率(5.16)は10チーム中10位だった。4月にキウムから移籍し、チーム最多の71試合(サムソンでは63試合)に登板したキム・テフンの防御率が7点台と、層の薄さをよく表している。41歳のオ・スンファンが抑えで30セーブを記録、38歳のアンダースローのウ・ギュミンとリリーフ陣ではベテランが健在だった。

 

【野手の成績】

打率.263(6位) 本塁打88(8位) 得点636(7位) 盗塁103(5位)  失策103(7位)

捕手:カン・ミンホ    125試合 打率.290 16本塁打 71打点 12盗塁

一塁:オ・ジェイル    106試合   打率.203    11本塁打 54打点 1盗塁

二塁:キム・ジチャン   99試合 打率.292 1本塁打 18打点 13盗塁

三塁:リュ・ジヒョク   66試合 打率.268 2本塁打 28打点 22盗塁

遊撃:イ・ジェヒョン      143試合 打率.249 12本塁打    60打点   5盗塁

左翼:ク・ジャウク    119試合  打率.336 11本塁打  71打点 12盗塁

中堅:キム・ヒョンジュン 109試合 打率.275 3本塁打 46打点 5盗塁

右翼:キム・ソンユン   101試合  打率.314 2本塁打  28打点 20盗塁

指名:ピレラ       139試合 打率.285 16本塁打  80打点 6盗塁

控え:キム・ジェソン、カン・ハヌル、キム・ドンジン、キム・ヨンウン、キム・ドンヨプ、イ・ソンギュなど

 30歳のク・ジャウクが打線の中軸となり、打率.336と首位打者争いに加わった。韓国3年目の外国人選手ピレラ(元広島)は34歳という年齢による衰えか、2022年までと比べて成績を落とした。37歳のオ・ジェイルも成績を落とし、チーム全体の攻撃力の低下につながった。また38歳のベテラン捕手カン・ミンホはピレラと並ぶチーム本塁打数最多タイと健在ぶりをアピールした。

 若手では20歳のイ・ジェヒョンが遊撃手でチーム最多の143試合に出場と、21歳の外野手キム・ヒョンジュンと並んで新たなチームの顔に成長しつつある。22歳の二塁手キム・ジチャンも後輩たちに刺激を受け、攻守にさらなる成長が求められる。

 

【オフシーズンの動向】

 弱点となったリリーフの補強に乗り出し、KTで個人通算169セーブを記録しFA選手となっていたリリーフ右腕キム・ジェユンと契約した。補償選手には同じリリーフ右腕のムン・ヨンイクが指名された。またサイドハンドのリリーフ右腕でキウムからFA選手となっていたイム・チャンミンとも契約した。一方、サムソンからFA選手となっていたキム・デウ、オ・スンファン、カン・ハヌルの3名と再契約した。余剰戦力を対象とした2次ドラフトでもLGから左腕チェ・ソンフン、キウムから右腕ヤン・ヒョンと2名のリリーフを指名した。一方でリリーフ右腕のウ・ギュミンは2次ドラフトでKTから指名され移籍した。

 外国人選手はブキャナン、ピレラ、ワイドナーの3名とすべて再契約せず、デビッド・マキノン内野手(元埼玉西武)、コナー・シーボルド投手、デニー・レイエス投手と3名の新外国人選手と契約した。

 

 サムソンライオンズは2011年から2014年まで韓国シリーズ4年連続優勝と輝かしい実績があるが、近年はポストシーズン進出も2021年のみで下位に終わることが多くなった。そのためオフシーズンは課題のリリーフ陣の強化に務め層は厚くなり、幸い力のあるベテランも健在で、20代前半の若手が投打ともに主力に成長しつつある。2024年シーズン、パク・チンマン監督は新旧の戦力を融合し、レギュラーシーズン5位以内で3年ぶりのポストシーズン進出を目指すことが現実的な目標となりそうだ。

 

(文責:ふるりん