DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2022年シーズン回顧 第4回 KTウィズ

韓国シリーズ連覇ならずも地力を証明

2022年シーズン成績 

レギュラーシーズン:80勝62敗2分(勝率.563)同率3位

ポストシーズンプレーオフ敗退 対キウム(2勝3敗)

 

 2021年は韓国シリーズ初出場にして初優勝と、プロ野球10球団で最後に加盟(2013年)してから10年足らずで頂点にたどり着いた。2022年から再契約となったイ・ガンチョル監督は連覇を目標とし、オフシーズンにはキウムからFA(フリーエージェント)となっていた5度の本塁打王に輝いた長距離打者パク・ピョンホと契約し補強に努めた。しかし4月2日のレギュラーシーズン開幕を前に23歳の主軸打者カン・ベッコが負傷で長期離脱となり暗雲が立ち込めた。

 4月2日、開幕戦のサムソンライオンズ戦には勝利したが翌4月3日のサムソン戦から4月7日のSSGランダース戦まで4連敗、4月9日のハンファイーグルス戦から4月15日のロッテジャイアンツ戦まで5連敗と出だしで躓いた。しかし4月19日のLGツインス戦から4月23日のNCダイノス戦まで5連勝など持ち直した。

 2021年、サムソンとのレギュラーシーズン優勝決定戦や韓国シリーズで好投し優勝に大きく貢献した韓国4年目の外国人選手の右腕クエバスは4月8日のハンファ戦を最後に故障で離脱し、復帰が見通せなくなった。5月になり首位を独走するSSGとの差が広がってしまい、5月18日、クエバスをウェーバー公示し新外国人選手の左腕ベンジャミンと契約した。また5月21日にLGから新人ドラフト指名権の代わりに控えの内野手チャン・ジュヌォン、5月22日にSSGからチョン・ソンゴン投手の代わりにイ・チェホ投手をトレードで獲得と、戦力補強に動いた。5月26日、2022年より契約していた外国人選手ラモスも負傷で復帰が見通せなかったため、新外国人選手としてアルフォードと契約した。

 レギュラーシーズンの3分の1の48試合を消化した5月28日の時点で勝率.438の8位と、勝率が7割を超えていた首位SSGとは12.5ゲームも差がついていた。しかし6月4日よりカン・ベッコが2022年レギュラーシーズン初出場を果たしトレードなどで補強に努めたことで反撃の体制が整い、6月21日には33勝33敗で勝率5割に復帰した。またハンファとのトレードでリュ・ヒィウン投手の代わりにイ・シウォン外野手を獲得し補強に余念がなかった。6月30日のサムソン戦から7月9日のロッテ戦まで7連勝しキアを抜いて4位に浮上した。

 レギュラーシーズン後半になりアルフォード、ベンジャミンなどの新戦力が機能し徐々に勝率を上げ、8月21日のキア戦から8月26日のSSG戦まで5連勝しキウムを抜いて3位に浮上した。首位SSG、2位LGに追いつくことはできずキウムとのし烈な3位争いが最後まで続いた。残り試合が少なくなった9月25日のNC戦から10月4日のサムソン戦まで5連勝し3位に浮上した。残り試合を勝ち続ければ3位でポストシーズン進出が決まるところだったが、10月5日のサムソン戦、10月7日のキア戦で勝てず足踏みした。

 10月8日のキア戦で勝利し、ゲーム差なしでキウムはこの日で全日程を終え、KTは残り2試合となった。しかし翌10月9日のLG戦が雨天で10月11日に順延となってしまい、これが運命の悪戯となった。10月10日のNC戦に勝利し、翌11日のLG戦に引き分け以上なら単独3位でポストシーズンは準プレーオフから進出となった。ところが9回裏に1点をリードするも抑えのキム・ジェユンが逆転サヨナラ負けを許し、144試合を終えてキウムと勝率で並ばれ同率3位となり、しかも直接対決で7勝8敗1分けと負け越していたため下位の扱いとなり、ポストシーズンは10月13日からワイルドカード決定戦から出場し5位のキアと対戦することになった。

 本拠地水原でのワイルドカード決定戦第1戦では3回裏にチョ・ヨンホのタイムリーなどで3点を先制し、先発ソ・ヒョンジュンの好投もあって6-3で勝利し、1試合だけで10月16日からのキウムとの準プレーオフ進出を決めた。敵地高尺での第1戦は4-4で迎えた8回裏にキム・ジェユンなどが4点を勝ち越され4-8で敗れた。続く第2戦は1回表にパク・ピョンホのタイムリーなどで2点を先制し、先発ベンジャミンの好投もあって2-0で勝利し対戦成績を1勝1敗とした。10月19日の本拠地水原での第3戦は先発コ・ヨンピョが打たれ2-9で敗れ2敗目となりもう後がなくなった。第4戦は5回裏のパク・ピョンホのタイムリーなどで逆転し9-6で乱打戦を制し、2勝2敗で決着は10月22日の第5戦にもつれ込んだ。

 敵地高尺での第5戦は3回表にアルフォードの本塁打で2-1と勝ち越すも、先発ベンジャミンが4点を失い逆転され、8回表に1点を返したが3-4で敗れ、2書3敗で準プレーオフ敗退となり韓国シリーズ連覇はならなかった。振り返ると5月までの勝率は.440だったが6月以降の勝率は.630もあり、序盤の出遅れが響いた形となった。

 

【投手の成績】

防御率3.51(2位) 奪三振1074(3位) 被本塁打92(9位) 与四球364(10位)

[主な先発投手]

コ・ヨンピョ    28試合 13勝8敗 防御率3.26

ソ・ヒョンジュン  27試合 13勝6敗  防御率3.05

オム・サンベク   33試合 11勝2敗 防御率2.95

デスパイネ     30試合 8勝12敗 防御率4.53

ペ・ジェソン    24試合 3勝9敗 防御率4.21

ベンジャミン    17試合 5勝4敗 防御率2.70

 先発投手の防御率3.53は10チーム中3位、クオリティースタート(先発投手が6回以上投球し自責点3以内)は1位の81試合と、先発投手陣の質は高かった。サイドハンド右腕のコ・ヨンピョは2年連続で10勝以上と先発の柱として活躍、2020年の新人王で21歳のソ・ヒョンジュンは2年ぶりの13勝と成長を見せた。また26歳の右腕オム・サンベクが初の2ケタ勝利を達成、自己最多の11勝を記録した。韓国3年目の外国人選手デスパイネが8勝どまりと成績を落とすも、故障で自由契約選手となったクエバスの代役となった左腕の外国人選手ベンジャミンが活躍した。

 

[主なリリーフ投手]

キム・ミンス     76試合 5勝4敗3セーブ30ホールド  防御率1.90

キム・ジェユン    61試合 9勝7敗33セーブ   防御率3.26

チュ・グォン     58試合 3勝3敗1セーブ15ホールド 防御率3.91

パク・ヨンヒョン   52試合 0勝1敗2ホールド 防御率3.66

シム・ジェミン    44試合 4勝1敗6ホールド 防御率3.74

イ・チェホ      38試合 5勝3ホールド 防御率2.95

 リリーフの防御率は3.61で10チーム中2位だった。キム・ミンスがチーム最多の試合登板数で中継ぎの柱となった。抑えのキム・ジェユンは自身最多の33セーブを記録したが、リリーフの失敗も目立った。若手では19歳の新人右腕パク・ヨンヒョンが中継ぎで活躍し可能性を見せた。信頼された左の中継ぎがシム・ジェミンだけと手薄だった。

 

【野手の成績】

打率.254(8位) 本塁打119(2位) 得点631(7位) 盗塁89(8位) 失策96(9位)

捕手:チャン・ソンウ   117試合 打率.260 18本塁打 55打点 1盗塁

一塁:パク・ピョンホ   124試合   打率.275  35本塁打 98打点 1盗塁

二塁:オ・ユンソク       111試合 打率.234 6本塁打 37打点 2盗塁

三塁:ファン・ジェギュン 141試合 打率.262 10本塁打 64打点 10盗塁

遊撃:シム・ウジュン      132試合 打率.240 4本塁打    34打点   23盗塁

左翼:アルフォード    80試合 打率.286 14本塁打  50打点 5盗塁

中堅:ペ・ジョンデ    144試合 打率.266 6本塁打  56打点 19盗塁

右翼:チョ・ヨンホ    131試合 打率.308 3本塁打  44打点 5盗塁

指名:カン・ベッコ    62試合 打率.245 6本塁打 29打点 0盗塁

控え:キム・ジュンテ、パク・キョンス、シン・ボンギ、チャン・ジュヌォン、キム・ミンヒョク、ソン・ミンソプなど

 キウムから移籍した36歳のパク・ピョンホは2019年以来3年ぶり6度目の本塁打王と結果を残した。しかし負傷で開幕から2か月ほど離脱していたカン・ベッコは最後まで調子が上がらないまま終わった。その代わりにシーズン途中から契約したアルフォードが韓国に早く適応して中軸を任されるようになり、6月以降の快進撃に貢献した。そのほかにもチャン・ソンウ、ファン・ジェギュンなどのベテランも攻守に存在感を発揮した。

 内野はやや手薄だったが外野の層は厚く、ペ・ジョンデは2年連続でレギュラーシーズン全144試合出場を果たした。打撃が弱かったがキム・ミンヒョクも132試合に出場と、守備固めが中心だったソン・ミンソプも含め100試合以上に出場した外野手が4名いた。

 

【オフシーズンの動向】

 2018年から主力の遊撃手として活躍していたシム・ウジュンが兵役のため軍へ入隊することになり、補強としてサムソンから2度目のFAとなったベテラン内野手キム・サンスと契約し、その補償選手として控え外野手のキム・テフンがサムソンへ移籍した。また初めてFAとなった控え内野手のシン・ボンギとは再契約した。

 外国人選手についてはデスパイネとの再契約を見送り、新外国人選手としてボー・サルサー投手と契約した。2022年シーズン途中から契約したアルフォード、ベンジャミンの2名の外国人選手は結果を残したため再契約した。

 また2023 WBCワールドベースボールクラシック)の韓国代表は2021年の韓国シリーズ優勝を評価されイ・ガンチョル監督が指揮することになった。同大会の韓国代表にはKTからコ・ヨンピョとオム・サンベクの投手2名、カン・ベッコとパク・ピョンホの野手2名の計4名が選ばれた。またリリーフとして活躍するチュ・グォンは中国生まれのため、2017年と同じく中国代表としてWBCに出場する方向である。

 

 韓国シリーズ連覇はならなかったが、3年連続でポストシーズン進出は果たし地力は証明した。2023年シーズンは開幕前にイ・ガンチョル監督がWBC韓国代表を指揮するためチームを離れるのが心配ではあるが、戦力の流出は少なく2年ぶりの韓国シリーズ優勝は狙える位置にある。新興球団ではありながらファンたちに魔法をかけて夢を見続けさせられるか、韓国代表監督の重責を担ったイ・ガンチョル監督の手腕が試される。

 

(文責:ふるりん)`