DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2020年シーズン回顧 第5回 キウムヒーローズ

混乱からの転落

2020年シーズン成績 

レギュラーシーズン:80勝63敗1分(勝率.559)5位

ポストシーズンワイルドカード決定戦敗退(対LG)

 

 2019年はレギュラーシーズン3位ながらプレーオフを勝ち抜き、5年ぶりに韓国シリーズへ進出したキウムヒーローズ。2020年シーズンはソン・ヒョク新監督を迎え、投打ともに優秀な選手をそろえ韓国シリーズ初優勝も夢ではないと言われた。だが2019年の打点王の外国人選手サンズが日本プロ野球阪神へ移籍し、代役の外国人選手についての不安があった。

 3月の示範競技が中止となり、例年より1か月以上遅かった5月5日のレギュラーシーズン開幕戦では光州でキアと対戦、11-2で快勝した。5月8日のハンファ戦から12日のサムソン戦まで4連勝するも、5月13日のサムソン戦から16日のLG戦まで4連敗となった。そして5月24日のロッテ戦から28日のNC戦まで4連敗と調子が上がらなかった。開幕投手で韓国4年目の外国人選手ブリガム(元東北楽天)の不振が響いた。新外国人選手のモッターは打率1割台で韓国に適応できなかったため、5月末にウェーバー公示された。

 5月30日、キム・ヘェソンのサイクルヒットなどでKTに14-3と大勝すると、6月2日のハンファ戦から6日のLG戦まで5連勝と勢いに乗った。6月20日、モッターの代役の外国人選手として2016年のシカゴカブスワールドシリーズ優勝に貢献したMLBメジャーリーグベースボール)出身の内野手ラッセルと契約した。朗報でチームの士気が高まったか、6月17日のロッテ戦から25日のLG戦までシーズン最多の8連勝となり、2位に浮上し首位NCの独走に待ったをかけようとした。特にチュ・ヒョサンは6月18日のロッテ戦、19日のSK戦と代打で2試合連続サヨナラ打点を記録したプロ野球史上初の選手となった。

 7月19日のSK戦から25日のロッテ戦まで4連敗し4位に後退したが、7月26日のロッテ戦から8月2日のサムソン戦まで6連勝となった。新外国人選手ラッセルがイ・ジョンフ、キム・ハソンなどのそろう打線に加わり、パク・ピョンホが負傷で一軍から外れるアクシデントはあったが、得点力の向上で調子の落ちてきた首位NCに迫っていった。8月16日のロッテ戦で勝利し、3連敗となった首位NCに0.5ゲーム差と迫った。だが2日後の8月18日、NCとの直接対決で敗れ、19日はNCに勝利したものの首位の座を奪うことはできなかった。

 シーズン後半に入りNCだけでなくLG、トゥサン、KTなどとのし烈な上位争いが続いた。ブリガム、ヨキシュの外国人選手2名以外に信頼できる先発投手が少なく、早い回からの継投でかわしていかざるを得ない試合が目立ってきた。9月後半、NCが再び首位独走態勢に入ると、キウムは3位に後退し徐々にチームの調子が落ちていった。ラッセルも9月以降は攻守両面の不調で目立たなくなった。10月2日のSK戦ではホ・ジョンヒョプの3本塁打で3連敗から脱出するも、翌3日、4日と最下位争いをしていたSKに連敗し苦しい展開が続いた。

 10月7日、首位NCに敗れゲーム差が9にまで広がり、残りは12試合とレギュラーシーズン優勝が厳しくなると、翌8日のNC戦を前にしてソン・ヒョク監督の辞任が発表され、プロ野球選手の経験がないキム・チャンヒョンコーチが監督代行として指揮を執ることになった。10月8日のNC戦で勝利し、10月14日と15日にKT、16日と17日にトゥサンとし烈な上位争いを繰り広げる相手に4連勝するも、2位LG、3位キウム、4位トゥサン、5位KTが2.5ゲーム差にひしめく大混戦から抜け出せず、ドーム球場を本拠地とし他チームより試合の消化が早いキウムにとってこの状況は不利で、残りは3試合だけだった。

 10月18日のトゥサン戦に敗れ4位に後退すると、残り2試合となり他チームの試合結果を見ているだけとなった。10月23日のトゥサン戦は復帰したパク・ピョンホの本塁打などで勝利した。しかしこの後5位トゥサンが3連勝し、10月30日、レギュラーシーズン最終戦となったトゥサン戦では先発ヨキシュが好投するも打線が沈黙し0-2で敗れ、最後の最後で5位に後退し、3年連続進出となったポストシーズンワイルドカード決定戦からとなった。結局2位KTから5位キウムまでたった1ゲーム差の大混戦だった。

 LGとのワイルドカード決定戦は11月1日に行われる予定だったが、雨天で翌2日に順延された。試合は接戦となり、7回表にパク・ピョンホの本塁打で1点を勝ち越したが、7回裏に押し出しの四球で2-2の同点に追い付かれ、試合は延長に突入した。13回表にパク・トンウォンのタイムリーで1点を勝ち越したが、13回裏にキム・サンスが逆転され3-4で敗れ、レギュラーシーズン5位は1敗もできないワイルドカード決定戦で敗退となった。 

 

【投手の成績】

防御率4.39(3位) 奪三振950(8位) 被本塁打126(6位) 与四球446(10位)

[主な先発投手]

ヨキシュ     27試合 12勝7敗 防御率2.14

ブリガム     21試合 9勝5敗 防御率3.62

ハン・ヒョンヒィ 25試合 7勝9敗  防御率4.98

イ・スンホ    23試合 6勝6敗  防御率5.08

チェ・ウォンテ  21試合 7勝6敗 防御率5.07

チョ・ヨンゴン  10試合 3勝3敗 防御率5.28

 先発の防御率4.45は10チーム中6位だった。韓国2年目の外国人選手ヨキシュが自身初の個人タイトルとなる最優秀防御率を受賞し先発投手陣の柱となった。2019年まで3年連続10勝以上を記録したブリガムは長期の離脱が響き9勝止まりだった。韓国人の先発投手は固定されていたがあまり質は高くなく、故障者が出ると層の厚い中継ぎを先発させて細かい継投でかわしていたこともあった。まだ21歳の左腕イ・スンホの成長が待たれる。同じ21歳の右腕チョ・ヨンゴン以外積極的に先発に起用された若手が少なかったのが残念であった。

 

[主なリリーフ投手]

キム・サンス    60試合 3勝3敗5セーブ11ホールド 防御率4.73

ヤン・ヒョン    58試合 8勝3敗2セーブ11ホールド 防御率3.30

キム・テフン    53試合 7勝10ホールド 防御率4.22

チョ・サンウ    53試合 5勝3敗33セーブ 防御率2.15

イ・ヨンジュン   52試合 2勝3敗25ホールド 防御率4.73

キム・ジェウン   43試合 1勝1敗1ホールド 防御率4.68

チョ・ソンウン   42試合 2勝5ホールド 防御率5.40

アン・ウジン    42試合 2勝3敗2セーブ13ホールド 防御率3.00

 リリーフの防御率は4.33で10チーム中1位だった。左右ともに層が厚く、抑えのチョ・サンウは安定した投球で最多セーブの個人タイトルを受賞した。先発投手陣が手薄なのを中継ぎで補うことも多く、そのためヤン・ヒョンは8勝、キム・テフンは7勝を記録した。29歳となった左腕イ・ヨンジュンはようやく主力に定着、主にワンポイントリリーフとして起用された。

 

【野手の成績】

打率.269(7位) 本塁打127(8位) 得点759(5位) 盗塁113(2位) 失策112(1位)

捕手:パク・トンウォン 112試合 打率.250 12本塁打 50打点 0盗塁

一塁:パク・ピョンホ  93試合     打率.223 21本塁打 66打点 0盗塁

二塁:キム・ヘェソン  122試合 打率.285 7本塁打 61打点 25盗塁

三塁:チョン・ビョンウ 119試合 打率.237 8本塁打 48打点 7盗塁

遊撃:キム・ハソン   138試合 打率.306 30本塁打  109打点   23盗塁

左翼:ホ・ジョンヒョプ 111試合 打率.268 10本塁打 43打点 0盗塁

中堅:パク・チュンテ  128試合 打率.245 5本塁打 29打点 5盗塁

右翼:イ・ジョンフ   140試合 打率.333 15本塁打 101打点 12盗塁

指名:ソ・ゴンチャン  135試合 打率.277 5本塁打 41打点 24盗塁

控え:イ・ジヨン、チュ・ヒョサン、キム・ウンビン、ラッセル、キム・ギュミン、パク・チョンウムなど

 走攻守そろった大型遊撃手キム・ハソン、シーズン二塁打数のプロ野球記録(49)を更新したイ・ジョンフと若い才能ある野手たちが中軸を打ったが、2019年の本塁打王だったパク・ピョンホが負傷などでシーズンを通して活躍できず、成績も振るわなかった。またモッター、ラッセルの2名の外国人選手で3本塁打、34打点にとどまったのが響き、NC、トゥサン、KT、LGと優勝争いを繰り広げた他チームはすべて外国人選手が主軸を打ち結果を残したのとは対照的だった。他の上位チームより長打力に欠けたため、キム・ヘェソン、ソ・ゴンチャン、キム・ハソンの3名が20盗塁以上と機動力を生かした野球となっていた。失策がリーグ1位と守備が足を引っ張り、特にラッセルは56試合で12失策と守備の面でも期待に応えられなかった。

 開幕前のトレードでキアから移籍したパク・チュンテ、ロッテから移籍したチョン・ビョンウが主力として活躍するなど、補強の予算が限られているキウム特有の選手獲得と起用のうまさは発揮されていた。

 

【オフシーズンの動向】

 オフシーズンは球団幹部や2020年限りで現役を引退したイ・テックンなどによるグラウンド外の騒動が報じられた。そのため新監督の人選に時間がかかったか、2021年1月21日、ようやくホン・ウォンギ新監督の就任が発表された。

 最も注目されたのは25歳のキム・ハソンのポスティングによるMLB移籍で、サンディエゴパドレスと4年契約を結んだ。豪打俊足のキム・ハソンの世界最高峰の舞台での活躍が期待される。FA(フリーエージェント)となっていた中継ぎ右腕のキム・サンスは、いったんキウムと再契約してから3億ウォンの金銭トレードでSKへと移籍した。外国人選手は最優秀防御率の個人タイトルを受賞したヨキシュのみ再契約し、韓国で4年間活躍したブリガム、期待外れだったラッセルは再契約を見送られた。新外国人選手として右腕のジョシュ・スミス投手、右打者のデビッド・フレイタス捕手と契約した。その他の補強としては、ハンファを自由契約となった35歳のベテラン外野手イ・ヨンギュと契約した。

 

 優勝候補とされながらも10月での突然の監督交代などによる混乱から5位に転落し、失望のうちに終わったキウムヒーローズ。攻守ともに軸となっていたキム・ハソンのMLBへの移籍で戦力的には苦しくなった。特に野手の選手層が薄くなった中、キウムで長年コーチとして指導してきたホン・ウォンギ新監督はこれまでの球団の方針を受け継ぎ、どのようにしてチームを再建するか注目される。

 

 

(文責:ふるりん