DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2023年シーズン回顧 第5回 トゥサンベアース

イ・スンヨプ新監督とともに

2023年シーズン成績 

レギュラーシーズン:74勝68敗2分(勝率.528)5位

ポストシーズンワイルドカード決定戦敗退(対NC 1敗)

 2022年はチーム史上最低の9位と低迷、8年ぶりのポストシーズン、韓国シリーズ進出失敗と一つの時代が終わったシーズンだった。そしてレギュラーシーズン終了後間もない10月14日、イ・スンヨプ新監督(元オリックス)の就任が発表され世間の注目を集めた。現役時代、韓国ではサムソンライオンズにしか所属しなかったプロ野球界の歴史に残る長距離打者(史上最多の個人通算467本塁打)が全く縁のなかったトゥサンベアースの新監督となり、2017年限りで現役を引退してからプロ野球のコーチの経験もなかったのに、チームの再建を託されたのは驚きでしかなかった。また、2018年まで活躍し最初にFA(フリーエージェント)となった際はNCダイノスに移籍するも、2度目のFAとなった捕手ヤン・ウィジ、2020年に20勝を記録した外国人選手アルカンタラ(元阪神)がトゥサンに復帰したことも大きな話題を呼んだ。

 4月1日、蚕室でのレギュラーシーズン開幕戦のロッテジャイアンツ戦は点の取り合いとなり、延長11回表に1点を勝ち越されるも、11回裏に新外国人選手ロハスの韓国初本塁打で12-10と逆転サヨナラ勝ちした。開幕前の3月、WBCワールドベースボールクラシック)に韓国代表として出場した1999年生まれの若手右腕クァク・ピンが4月だけで4勝と、新たな先発投手陣の柱に成長していた。

 SSGランダース、LGツインス、ロッテの首位争いを繰り広げていた上位3チームからはやや離れ、5月17日のキウムヒーローズ戦まで5連勝となり4位に浮上したが、これ以上の追撃はできなかった。NCダイノス、キアタイガーズなどとの勝率5割前後の5位争いに巻き込まれた。アルカンタラは韓国での2年間のブランクを感じさせない安定した投球を見せていたが、もう一人の外国人選手ディランは故障で出遅れ5月に2試合登板しただけで未勝利のまま6月8日にウェーバー公示され、代わりに6月13日、外国人選手ブランドンを復帰させた。左腕のブランドンは2022年シーズン途中の7月から契約し5勝を記録したが、チーム事情により2023年の再契約を見送られると、台湾プロ野球楽天モンキースと契約し活躍していた。

 6月22日のSSG戦まで4連敗、勝率5割を切りキウムに抜かれ6位に後退するなど上位争いから遠ざかるかに思われた。しかし7月1日のロッテ戦でカン・スンホの本塁打、クァク・ピンの好投で勝利すると流れが変わり、1週間のオールスター戦による中断期間や雨天中止を挟んで負け知らずの日々が続き、7月25日のロッテ戦までチーム新記録の11連勝となり3位に浮上した。こうして首位LG、2位SSGを射程圏内に捉えたかと思いきや、翌7月26日のロッテ戦から31日のLG戦まで5連敗となり、再び差が開いてしまった。

 8月17日のKTウィズ戦まで5連敗、勝率5割を下回りロッテに抜かれ7位にまで後退した。8月25日のSSG戦でクァク・ピンが自身初のシーズン10勝目を記録し4連勝、5位に浮上するも雨天中止などもあり6位に後退した。9月になっても雨天中止の試合が続いたがチーム状態は上向き、9月10日のサムソン戦から18日のキア戦まで6連勝で4位に浮上した。首位LGが首位を独走する中、2位以下の争いがし烈になっていた。

 10月、中国・杭州でのアジア競技大会野球の韓国代表にはクァク・ピンが選ばれたが故障で試合に登板できず、10月7日の決勝戦で台湾代表に勝利し優勝したことで兵役免除の恩典を得た。10月8日のロッテ戦でブランドンが11勝目をあげる好投で勝利、3位に浮上した。しかし雨天中止が多かったことで10月10日から17日まで8連戦と厳しい日程となり、10日のKT戦、11日のロッテ戦に敗れ5位に後退した。しかし10月12日のNCダイノス戦、13日のキア戦、14日のLG戦に勝利し3連勝、残り3試合でSSG、NCと同率3位と大混戦となった。10月15日のLG戦に敗れ5位に後退し、10月16日、17日のSSG戦でともに勝てば3位の可能性があったが、16日に敗れてしまいレギュラーシーズン5位が確定した。しかし前年の9位から順位を上げ、2年ぶりのポストシーズン進出に成功した。

 チーム史上初めて出場した10月19日のワイルドカード決定戦では、レギュラーシーズン4位のNCと遠征先の昌原で対戦した。トゥサンは3回表までに3点を奪うが、先発クァク・ピンが4回裏に5点を失い逆転された。5回表にヤン・ウィジのタイムリーなどで5-5の同点に追いつくが、5回裏にイ・ヨンハの暴投で1点を勝ち越され、7回裏に2点、8回裏に6点を追加された。8回表に1点、9回表に3点を返すも9-14で敗れ、ワイルドカード決定戦でレギュラーシーズン5位のチームは1敗でもすると敗退のため、イ・スンヨプ新監督が率いた初のポストシーズンは1試合だけで終了した。

 

【投手の成績】

防御率3.92(3位) 奪三振1013(4位) 被本塁打90(5位) 与四球491(8位)

[主な先発投手]

アルカンタラ    31試合 13勝8敗 防御率2.67

クァク・ピン    23試合 12勝7敗  防御率2.90

ブランドン     18試合 11勝3敗 防御率2.49

チェ・スンヨン   34試合 3勝6敗1セーブ 防御率3.97

チェ・ウォンジュン 26試合 3勝10敗 防御率4.93

キム・ドンジュ   17試合 3勝6敗 防御率4.14

 先発投手の防御率(3.64)は10チーム中1位だった。これはチーム最多勝(13勝)のアルカンタラ、韓国人最多勝(12勝)のクァク・ピン、シーズン途中の6月に復帰したブランドンの3名によるところが大きい。特にブランドンの加入は大きかった。しかし先発4番手以降の層は薄く、22歳の左腕チェ・スンヨン、21歳の右腕キム・ドンジュなどの若手が起用された。

 

[主なリリーフ投手]

キム・ミョンシン  70試合 3勝3敗1セーブ24ホールド 防御率3.65

チョン・チョルォン 67試合 7勝6敗13セーブ11ホールド 防御率3.96

ホン・ゴンヒィ   64試合 1勝5敗22セーブ5ホールド 防御率3.06

パク・チグク    62試合 5勝3敗2セーブ11ホールド 防御率3.59

イ・ヨンハ     36試合 5勝3敗4ホールド 防御率5.49

イ・ビョンホン   36試合 0勝0敗5ホールド 防御率4.67

 リリーフの防御率(4.34)は10チーム中6位だった。30歳のキム・ミョンシンが2年連続で自身最多かつチーム最多となる70試合に登板した。抑えはホン・ゴンヒィが7月まで、チョン・チョルォンが8月以降に務めた。リリーフ陣は右腕が多い中、20歳の若手左腕イ・ビョンホンが起用された。

 

【野手の成績】

打率.254(9位) 本塁打100(3位) 得点620(8位) 盗塁133(2位)  失策114(5位)

捕手:ヤン・ウィジ  129試合 打率.306 17本塁打 68打点 8盗塁

一塁:ヤン・ソックァン 140試合 打率.281 21本塁打 89打点 4盗塁

二塁:カン・スンホ   127試合 打率.266 7本塁打 59打点 13盗塁

三塁:ホ・ギョンミン  130試合 打率.266 7本塁打 48打点 9盗塁

遊撃:キム・ジェホ   91試合 打率.282 3本塁打 29打点 4盗塁

左翼:ロハス      122試合 打率.253 19本塁打 65打点 0盗塁

中堅:チョン・スビン  137試合 打率.287 2本塁打 33打点 39盗塁

右翼:チョ・スヘン   126試合 打率.219 1本塁打 17打点 26盗塁

指名:キム・ジェファン 132試合 打率.220 10本塁打 46打点 3盗塁

控え:チャン・スンヒョン、イ・ユチャン、パク・ケェボム、パク・チュニョン、キム・インテ、ヤン・チャニョル、キム・デハンなど

 攻撃力、得点力は下位の数字が目立つ。チーム最多本塁打、打点のヤン・ソックァン、ヤン・ウィジ、ロハス、キム・ジェファンと長打力のある打者はいたが、全体的に打率が低く確実性を欠いた。33歳の生え抜きのベテラン外野手チョン・スビンが自身初の最多盗塁の個人タイトルを受賞するなど、10盗塁以上の俊足の選手たちが4名と比較的多かった。全体的に主力野手の高齢化が進んでおり、24歳以下の若手が一軍に定着しなかった。

 

【オフシーズンの動向】

 FA選手のヤン・ソックァン、ホン・ゴンヒィともに再契約するなど、シーズンオフにはあまり大きな動きがなかった。余剰戦力を対象とした2次ドラフトでは、23歳の若手野手ソン・スンファンがNCから指名され移籍した。外国人選手について、アルカンタラとブランドンの投手2名とは再契約するも、ロハスとは再契約せず、2022年シーズン途中の6月にKTから自由契約となったヘンリー・ラモス外野手と契約した。

 

 本格的な指導者としての歩みを始めたイ・スンヨプ監督は2年目を迎え、自身の理想とする野球を掲げて勝利にこだわっていくと思われる。1年かけて選手たちを掌握し、若手たちを積極的に起用し成長させ、優勝争いを勝ち抜けるチームへと育て、現役時代と同じく指導者としても名声を残せるか、チームにとっても、イ・スンヨプ監督本人にとっても2024年は大切な1年となることであろう。

 

(文責:ふるりん