DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2020年シーズン回顧 第8回 サムソンライオンズ

未来への投資

2020年シーズン成績 

レギュラーシーズン:64勝75敗5分(勝率.460)8位

ポストシーズン:進出せず

 

 2016年以降ポストシーズン進出失敗が続き、暗黒時代から抜け出せないサムソンライオンズ。現役時代に一軍未勝利で、現場での指導者よりもフロントでの職務経験が長いホ・サミョン監督が就任したことで優勝寄りは再建を目指したように思われ、優勝争いに加わることはないとの大方の予想だった。2017年から2019年まで4番打者として活躍した外国人選手ラフと再契約をしなかった割には補強がおとなしく。ブキャナン(元東京ヤクルト)、サラディーノの新外国人選手2名以外の新戦力は少なかった。一方、2019年8月にMLBメジャーリーグベースボール)より復帰するも出場停止処分が残っていたオ・スンファン(元阪神)の韓国での復帰登板がいつになるかにも注目されていた。

 3月の示範競技が中止となり、例年より1か月以上遅れた5月5日の本拠地・大邱での開幕戦でNCに完封負けを喫すると、7日までNCに同一カード3連敗を喫した。これで勢いに乗ったかNCは首位を独走し始めた。5月8日のキア戦でサラディーノの韓国初本塁打、先発チェ・チェフンの好投などで4-0と完封リレーによりホ・サミョン新監督に初勝利がもたらされた。5月13日のキウム戦でブキャナンが韓国初勝利をあげたが、15日のKT戦から19日のLG戦まで4連敗となった。

 5月27日のロッテ戦から30日のNC戦まで4連勝となり、6月前半は勝率を上げ徐々に上位へ近づいていった。左腕のチェ・チェフン、右腕のウォン・テインと韓国人の若手投手が先発に定着し、野手でも高卒新人キム・ジチャン、パク・スンギュなどの若手に出場機会が与えられた。出場停止処分が解けたオ・スンファンは6月9日のキウム戦の8回表に中継ぎとしてサムソンでの復帰登板を果たした。その後2試合の中継ぎ登板を経て、6月16日のトゥサン戦、9回裏に1点をリードした場面で登板し無失点に抑え、オ・スンファンは2013年以来となる韓国でのセーブを記録した。

 6月17日のトゥサン戦で勝利し勝率を5割に乗せると、6月27日のロッテ戦で勝利し勝率5割を突破した。6月30日のSK戦から7月4日のLG戦まで5連勝し5位に浮上、ポストシーズン進出争いに加わるかに思えた。しかし7月8日のキウム戦から11日のKT戦まで4連敗してしまった。7月18日のロッテ戦で韓国2年目の外国人選手ライブリーがようやくシーズン初勝利をあげ再び上昇気流に乗るかと思われたが、7月19日のロッテ戦から29日のハンファ戦まで5連敗となった(この間4試合が雨天中止)。

 ラフの代わりとなる4番打者を固定できず苦戦が続く中、故障による欠場が続いていたサラディーノをウェーバー公示し、新外国人選手パルカと契約し打線の強化を図った。8月には8位に後退すると勝率5割に届くことはなくなり、投打ともに選手層の薄さがはっきり出てきた。ポストシーズン進出争いから遠のく中、8月25日のLG戦でパルカの韓国初本塁打で勝利するも、パルカはその後低打率にあえぎ起爆剤にならなかった。また軍を除隊され復帰した中継ぎ右腕のシム・チャンミンもかつての球威が感じられず、チームの救世主にならなかった。一方で同じく軍を除隊され復帰したカン・ハヌルはショートに定着した。

 9月になると3日のトゥサン戦から6日のNC戦までの3連勝以外は連敗が続き勝率は下がり、最下位争いをしていたSKとハンファが勝率3割台で上昇しそうな気配もなかったため8位が定位置となった。10月前半にはポストシーズン進出が絶望的となり、個人記録だけが目標となった。10月16日のハンファ戦でブキャナンがサムソンの外国人選手としては1998年以来22年ぶりとなるシーズン15勝目をあげた。10月20日のSK戦で25歳のチェ・チェフンがプロ3年目にして自身初のシーズン10勝を達成した。

 10月30日、本拠地・大邱でのシーズン最終戦となったNC戦はプロでの22年間サムソンだけで活躍したリリーフ右腕クォン・オジュンの引退試合となった。クォン・オジュンは1点をリードした9回表に登板し、先頭打者を打ち取ってマウンドを降り、守護神オ・スンファンが抑えるかと思われたが同点に追い付かれてしまった。試合は延長12回を終えて引き分けとなり、5年連続でポストシーズン進出に失敗した2020年シーズンは2年連続の8位で終了した。

 

【投手の成績】

防御率4.78(7位) 奪三振931(9位) 被本塁打151(4位) 与四球542(5位)

[主な先発投手]

ブキャナン     27試合 15勝7敗 防御率3.45

チェ・チェフン   26試合 11勝6敗   防御率3.58

ウォン・テイン     26試合  6勝10敗  防御率4.89

ライブリー     21試合 6勝7敗  防御率4.26

ペク・チョンヒョン 11試合 4勝4敗 防御率5.19

ホ・ユンドン    11試合 2勝1敗 防御率4.80

 先発投手のチーム防御率は4.33で10チーム中3位と比較的健闘した。ブキャナンは韓国1年目ながらも安定した投球で外国人選手としてはチームタイ記録のシーズン15勝を記録した。ライブリーも故障がちだったが威力ある投球を見せた。2019年は左の先発として活躍したペク・チョンヒョンが故障で離脱したが、プロ3年目の25歳のチェ・チェフンが左の先発の柱に成長した。プロ2年目の20歳で成長が期待された右腕ウォン・テインは、シーズン後半の8月以降は1勝8敗と体力不足が明らかだった。

 世代交代を推し進めようとするチームの方針もあり、ウォン・テインだけでなく高卒新人のホ・ユンドン、イ・スンミンも先発で起用され経験を積んだ。

 

[主なリリーフ投手]

イ・スンヒョン    65試合 1勝2敗14ホールド 防御率3.48

キム・ユンス     61試合 3勝5敗12ホールド  防御率4.66

ウ・ギュミン     52試合 3勝3敗7セーブ11ホールド  防御率6.19

チェ・ジグァン    51試合 1勝3敗15ホールド 防御率4.87

イム・ヒョンジュン  51試合 1勝1敗5ホールド 防御率1.78

オ・スンファン    45試合 3勝2敗18セーブ2ホールド 防御率2.64

ノ・ソンホ      45試合 2勝3敗10ホールド 防御率4.46

 リリーフのチーム防御率は5.47で10チーム中8位と、先発陣と比べて安定していなかった。38歳のオ・スンファンは時折セーブ失敗はあったものの、韓国での個人通算セーブ記録を295にまで伸ばした。ウ・ギュミンなどベテランのリリーフ陣が不調の中、29歳のイ・スンヒョンが自身最多のシーズン登板数を記録し中継ぎの柱に成長した。また21歳のキム・ユンスが中継ぎに定着したのも大きな収穫だった。左のリリーフではイム・ヒョンジュンがワンポイント要員として仕事を果たした。

 

【野手の成績】

打率.268(8位) 本塁打129(6位) 得点699(8位) 盗塁132(1位) 失策102(3位)

捕手:カン・ミンホ    119試合 打率.287 19本塁打 61打点 0盗塁

一塁:イ・ソンギュ    98試合   打率.181    10本塁打 30打点 3盗塁

二塁:キム・サンス    120試合 打率.304 5本塁打 47打点 10盗塁

三塁:イ・ウォンソク   121試合 打率.268 13本塁打 74打点 0盗塁

遊撃:カン・ハヌル       34試合 打率.305 1本塁打    10打点   1盗塁

左翼:ク・ジャウク    118試合 打率.307 15本塁打  78打点 19盗塁

中堅:パク・ヘミン    132試合 打率.290 11本塁打  55打点 34盗塁

右翼:キム・ホンゴン   97試合  打率.248 3本塁打  34打点 7盗塁

指名:キム・ドンヨプ   115試合 打率.312 20本塁打 74打点 4盗塁

控え:キム・ウンミン、キム・ジチャン、パク・ケェボム、イ・ハクチュ、イ・ソンゴン、パク・スンギュ、パルカなど

 不動の4番打者が不在で、本拠地・大邱サムソンライオンズパークは外野が狭く本塁打が出やすいが一発攻勢をかけられなかった。サラディーノ、パルカの2名の外国人選手で合計14本塁打、50打点しか記録できなかったのが響いた。カン・ミンホ、キム・サンス、イ・ウォンソク、ク・ジャウク、パク・ヘミンなど以前からの主力野手たちは安定した成績を残した。SKからトレードで移籍して2年目のキム・ドンヨプが2018年以来2年ぶりのシーズン20本塁打を記録し、ようやく本領を発揮した。

 特徴としてはチーム盗塁数が1位と、機動力で長打力不足の打線を補う形となった。高卒新人キム・ジチャンは二塁を中心に内野のユーティリティプレイヤーとして重宝されチーム最多の135試合に出場、打撃には課題が多かったがチーム2位の21盗塁で貢献度は高かった。20歳で2年目の若手外野手パク・スンギュも91試合に出場した。

 

【オフシーズンの動向】

 打線の補強のため、トゥサンからFA(フリーエージェント)となった強打の左打者オ・ジェイルと契約し、弱点の一塁手の補強に成功した。補償選手としてトゥサンからは若手の内野手パク・ケェボムが指名された。 FAとなったウ・ギュミン、イ・ウォンソクの2名の主力選手とは再契約した。外国人選手ではブキャナン、ライブリーの投手2名は再契約となったが、パルカとは再契約せず、新外国人選手としてホセ・ピレラ外野手(元広島)と契約した。

 

 2014年までの韓国シリーズ4連覇の黄金時代は昔日の栄光となり、2020年も下位に終わってしまった。2021年のオ・ジェイルに限らず2018年のカン・ミンホなど時折FAとなった有名選手を補強するがチーム力の向上につながらなかったため、2015年以来となる6年ぶりのポストシーズン進出のためにはさらなる若手選手の育成が必要となる。2020年、若手を積極的に起用し未来への投資に充てたホ・サミョン監督の2年目に期待したい。

 

(文責:ふるりん