DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2023年シーズン回顧 第4回 NCダイノス

3年ぶりのポストシーズンで快進撃

2023年シーズン成績 

レギュラーシーズン:75勝67敗2分(勝率.528)4位

ポストシーズンプレーオフ敗退(対KT 2勝3敗)

 

 2022年シーズンオフ、2020年の韓国シリーズ初優勝に貢献した捕手ヤン・ウィジ、内野手ノ・ジンヒョク、リリーフ右腕ウォン・ジョンヒョンなどがFA(フリーエージェント)で移籍し、外国人選手以外の補強はトゥサンからFAとなっていた捕手パク・セヒョクくらいであり、2023年シーズンの開幕前の評価は高くなかった。2022年シーズン途中で監督代行となり、2023年から正式な監督に就任したカン・イングォン新監督に過渡期のチームを率いるのは難しいかのように思われた。

 4月1日の遠征先・大邱でのサムソンライオンズとのレギュラーシーズン開幕戦で、開幕投手の新外国人フェディが5回無失点など完封リレーで9-0と勝利した。5月になるSSGランダース、LG、ロッテの首位争いには加わらなかったが、4位か5位、勝率5割前後を維持し開幕前の下馬評を覆してはいた。特にフェッドは4月に4勝、5月に4勝と勢いが衰えず、多くの三振を奪い、2018年から2022年までMLBワシントンナショナルスで先発投手として活躍していた実力を発揮し、先発投手陣の柱となった。

 6月は好調を維持し、6月7日のサムソン戦から11日のSSG戦まで5連勝、ロッテを抜いて3位に浮上した。6月20日のLG戦に勝利し勝率は.574まで上がり、首位SSG、2位LGに接近した。フェディは6月までで11勝と驚異的なペースで勝利を重ねた。

 しかし6月23日のロッテ戦まで、7月5日のキウム戦までの2度の5連敗で勝率はちょうど5割にまで下がり、ロッテと同率4位に並ばれた。オールスター戦前後の1週間の中断期間を挟んで7月25日のキア戦までの5連勝で単独4位に浮上、8月8日のSSG戦まで5連勝で3位にまで浮上した。また8月4日、故障もあり4勝にとどまった外国人選手の右腕ワイドナーをウェーバー公示し、新外国人選手の左腕タナーと契約した。

 フェディも以前ほど勝ち星を積み重ねられず、エース格の左腕ク・チャンモは故障で離脱し、韓国人選手の先発の層が薄く混戦の上位争いで優位に立てなかった。8月13日、KTに抜かれ4位に後退した。9月8日のロッテ戦まで4連勝など好調を維持し、SSGを抜いて3位に浮上した。フェディは9月19日のトゥサン戦で19勝目をあげ、あと1勝でチーム史上初のシーズン20勝投手となるところだった。

 しかしフェディが20勝目をあげられないうちに、10月5日のSSG戦まで6連敗となりSSGと同率4位に並ばれ、試合のなかった10月6日には5位に後退した。激しい順位争いの中でキム・ヒョンジョン、キム・ジュウォン、キム・ヨンギュは中国・杭州アジア競技大会野球に韓国代表として出場、10月7日の台湾代表との決勝で勝利し優勝、キム・ジュウォンとキム・ヨンギュは兵役免除の恩典を得た。LGのレギュラーシーズン優勝が確定、2位KTとはゲーム差があり、3位の座をめぐってSSG、トゥサンと最後までし烈な順位争いが続いた。

 10月10日のハンファ戦でフェディがチーム史上初めてシーズン20勝を達成した。10月15日のサムソン戦で勝利し単独3位に浮上、残り2試合となった。しかし10月16、17日と6位が確定していたキアに連敗し、レギュラーシーズンは4位で終了し、ポストシーズンワイルドカード決定戦からの出場となった。

 2019年に開場した昌原NCパークでは初のポストシーズン開催となった10月19日のワイルドカード決定戦:トゥサン戦では3回表までに3点を奪われるが、4回裏にソ・ホチョルの満塁本塁打キム・ヒョンジュン本塁打で5-3と逆転した。5回表に5-5の同点に追い付かれるが、5回裏に1点を勝ち越し7回裏に2点を追加すると、8回裏にキム・ヒョンジュンの2本目の本塁打などで一気に6点を奪い、14-9で勝利しSSGとの準プレーオフに進出した。フェディが故障で準プレーオフの出場選手登録から外れ苦しい展開になるかと思われたが、10月22日、遠征先の仁川での第1戦では24歳の先発シン・ミンヒョクが好投、8回表にキム・ソンウクの本塁打で2点を先制し9回表に2点を追加、4-3で勝利した。続く10月23日の仁川での第2戦では1回表にマーティンのタイムリーなどで3点を先制、8回表のキム・ヒョンジュン本塁打などで追加点を奪い7-3で勝利した。そして10月25日、昌原での第3戦では1回裏にクォン・ヒィドンのタイムリーなどで3点を先制するも、2回表に5点を奪い逆転された。しかし2回裏にマーティンの本塁打などで7-5と逆転、相手の反撃を1点に抑え7-6で勝利、3連勝でKTとのプレーオフ進出を決めた。

 ワイルドカード決定戦、準プレーオフで合計4連勝という勢いはプレーオフに入っても続いた。10月30日、遠征先の水原での第1戦は4回表までに7点を奪い、ポストシーズン初登板となった先発フェディは6回1失点に抑え、9-5で勝利した。続く10月31日の水原での第2戦も1回表にパク・コヌの本塁打で2点を先制、3回表に1点を追加、先発シン・ミンヒョクは7回途中無失点に抑え3-2で勝利し、韓国シリーズ進出まであと1勝と迫った。

 しかし11月2日の昌原での第3戦、打線が沈黙し0-3で敗れ、続く11月3日の昌原での第4戦でも2-11と敗れた。11月5日、水原での第5戦はフェディが先発登板するかと思われたが状態が思わしくなくシン・ミンヒョクが先発した。NCは5回表までに2点を奪うも5回裏に2-2の同点に追い付かれ、6回裏にキム・ヨンギュが満塁のピンチから併殺打の間に1点を勝ち越されると、そのまま2-3で敗れ3連敗で対戦成績を2勝3敗とし、プレーオフ敗退となった。開幕前の評価を覆し、ポストシーズンではプレーオフで敗れたが快進撃を見せるなど一定の成果を残した2023年であった。

 

【投手の成績】

防御率3.83(2位) 奪三振1090(1位) 被本塁打99(4位) 与四球513(6位)

[主な先発投手]

フェディ      30試合 20勝6敗 防御率2.00

シン・ミンヒョク  29試合 5勝5敗 防御率3.98

ソン・ミョンギ     35試合 5勝5敗  防御率4.92

イ・ジェハク      15試合  5勝5敗 防御率4.54

チェ・ソンヨン   18試合 3勝4敗 防御率4.86

イ・ヨンジュン   24試合 3勝4敗 防御率4.30

タナー       11試合 5勝2敗 防御率2.92

 先発の防御率(3.76)は10チーム中2位だったが、これは最多勝最優秀防御率最多奪三振(209)と圧倒的な成績でシーズンMVP(最優秀選手)を受賞したフェディがあってこその数字である。シーズン途中の8月にウェーバー公示されその後サムソンと契約したワイドナーは4勝どまりで、代役のタナーの5勝と合わせても9勝どまりだった。韓国人投手ではシン・ミンヒョクが最多投球回数(122回)を記録したが、先発ローテーションの投手としては少し厳しかった。2022年と同じく韓国人の先発投手の柱を欠いており、2022年に11勝を記録した左腕ク・チャンモは故障で11試合のみの登板に終わった。若手では21歳の右腕イ・ヨンジュンが起用され可能性を感じさせた。

 

[主なリリーフ投手]

リュ・ジヌク     70試合 1勝4敗22ホールド 防御率2.15

イム・ジョンホ    65試合 4勝4敗15ホールド 防御率4.68

キム・ヨンギュ    63試合 2勝4敗24ホールド 防御率3.06

キム・シフン     61試合 4勝3敗3セーブ12ホールド 防御率4.44

イ・ヨンチャン    60試合 4勝4敗29セーブ 防御率4.13

ハ・ジュニョン    57試合 1勝2ホールド 防御率4.59

 リリーフの防御率(3.92)で10チーム中3位で、フェディを除く先発投手陣が信頼を得られない中、リリーフの負担は大きかった。中でも27歳の右腕リュ・ジヌクが自身最高の成績を残しチーム最多登板を記録、23歳の左腕キム・ヨンギュとともに中継ぎ陣を支えた。抑えは2022年までと同じくイ・ヨンチャンが任されたが、ポストシーズンを含め安定感を欠いた。

 

【野手の成績】

打率.270(3位) 本塁打98(5位) 得点679(3位) 盗塁111(4位) 失策130(1位)

捕手:パク・セヒョク   88試合 打率.211 6本塁打 32打点 1盗塁

一塁:ユン・ヒョンジュン 82試合   打率.252 5本塁打 27打点 1盗塁

二塁:パク・ミヌ     124試合 打率.316 2本塁打 46打点 26盗塁

三塁:ソ・ホチョル    114試合 打率.287 5本塁打 41打点 4盗塁

遊撃:キム・ジュウォン     127試合 打率.233 10本塁打   54打点   15盗塁

左翼:クォン・ヒィドン  96試合 打率.285 7本塁打 63打点 2盗塁

中堅:マーティン     118試合 打率.283 17本塁打  90打点 15盗塁

右翼:パク・コヌ     130試合 打率.319 12本塁打 85打点 7盗塁

指名:ソン・アソプ    140試合 打率.339 5本塁打 65打点 14盗塁

控え:キム・ヒョンジュン、アン・ジュンヨル、オ・ヨンス、チョン・ジェファン、ト・テフン、キム・ハンビョル、キム・ソンウクなど

 個人通算2416安打(プロ野球史上2位)の35歳の左打者ソン・アソプが2022年の不振から立ち直り、特に9月以降の活躍が目覚ましく自身初の首位打者となり打線をけん引した。生え抜きの俊足巧打の左打者パク・ミヌがソン・アソプとともにチャンスを作り、パク・コヌ、外国人選手マーティンなどが得点源となった。また生え抜きで2022年シーズン終了後にFAとなるも再契約した生え抜きのクォン・ヒィドンも打線に欠かせない存在だった。

 下位打線には21歳の遊撃手キム・ジュウォン、27歳でようやく一軍に定着した三塁手ソ・ホチョルなどが起用されるなど切れ目のない打線が構成され、ポストシーズンを勝ち抜いた原動力となった。他には軍から除隊されシーズン途中の8月にNCへ復帰、捕手のレギュラーに定着した24歳のキム・ヒョンジュンは6本塁打を記録し、杭州アジア競技大会ポストシーズンでも活躍した。

 

【オフシーズンの動向】

  2023年オフシーズン、FA選手がいなかったことで動きは少なかった。出場機会が減少していた38歳のベテラン内野手パク・ソンミンが世代交代の影響で現役を引退した。

 韓国1年目にして20勝を記録したフェディはシカゴホワイトソックスと契約し、MLBへ復帰した。マーティン、タナーと2名の外国人選手とは再契約せず、ダニエル・カスタノ投手、カイル・ハート投手、マット・デビッドソン内野手(元広島)の新外国人3名と契約した。

 

 2024年、カン・イングォン監督にとっては2年目のシーズンとなり、2年連続ポストシーズン進出だけでなく、2020年以来4年ぶり2度目の韓国シリーズ優勝が現実的な目標となる。ソン・アソプ、パク・コヌ、パク・ミヌなどのベテランとキム・ジュウォン、キム・ヒョンジュンなどの若手が融合し、先発投手陣が整備されればさらに上のチームへと成長できるポテンシャルはある。恐竜軍団がプロ野球界を制圧する日は遠くないのかもしれない。

 

(文責:ふるりん