新生SSGランダースの第一歩
2021年シーズン成績
レギュラーシーズン:66勝64敗14分(勝率.508)6位
ポストシーズン:出場せず
キム・ウォンヒョン新監督が就任し巻き返しを図るも、新世界(SSG)グループへの球団売却が発表され、2000年に創設され4度の韓国シリーズ優勝に輝いた栄光の歴史に幕を閉じたSKワイバーンス。2月23日にはMLBでの16年間で通算218本塁打を記録したベテラン外野手チュ・シンスとの契約が発表され、新球団の目玉としてすでに注目を集めていた。3月5日、新球団の名称がSSGランダースと発表され、3月30日、SK時代と似た色合いの赤を基調としたユニフォームが発表された。
4月3日、ロッテとの開幕戦は雨で中止となり、翌4月4日、本拠地・仁川でのロッテ戦がSSGランダース初のレギュラーシーズンの試合となった。記念すべきチーム初得点、初本塁打を記録したのはSKで15年間主砲として活躍してきたチェ・ジョンで、FA(フリーエージェント)でトゥサンから移籍してきた新戦力のチェ・ジュファンの2本塁打、先発の新外国人ルウィキの好投で5-3と初勝利をあげた。注目のチュ・シンスは4月8日のハンファ戦で韓国プロ野球での初本塁打を記録し勝利に貢献、新生SSGランダースはSKワイバーンスの最終年でチーム史上最低の9位に終わった2020年とは違う活気に満ち溢れていた。
5月24日までの6連勝で首位に立ち、2018年以来となる優勝を狙える位置につけた。6月半ばまでKT、LG、サムソンと首位争いを続けるもパク・チョンフン、ムン・スンウォンと2名の経験豊富な先発投手2名が故障で離脱し、ともに手術を受けるため2021年中の復帰は難しいと言われた。故障で4試合のみの登板だったルウィキは4月4日の1勝だけでウェーバー公示となり、代役の外国人選手ガビグリオが7月から合流したが、首位争いからは徐々に遠ざかった。
20歳のオ・ウォンソクなどの若手を先発投手として起用しチュ・シンス、チェ・ジョン、ハン・ユソムなどの野手たちが本塁打を量産してもリードを守り切れない試合が目立ち、8月下旬には6位にまで後退した。その後はキウム、NC、トゥサンとのし烈な中位争いが続いた。9月前半に一時4位にまで浮上するも、9月17日には7位にまで後退した。しかしなんとか踏みとどまりポストシーズン進出を争う5位以内の争いはともに10月まで混戦が続いた。
10月後半で残り試合が少なくなっても5位争いの先は見えなかった。10月22日のトゥサン戦でチェ・ジョンのリーグ最多の35号本塁打、チュ・シンスの3打点で勝利し4位に浮上した。その後5位に後退したが残り試合を勝ち切れば2年ぶりのポストシーズン進出となるところだった。しかし勝てば自力で5位以上が確定する10月30日のレギュラーシーズン最終戦・KT戦では高卒新人キム・ゴヌを1回途中で交代させると主導権を握れず3-8で敗れ、キアに勝ったキウムに勝率で抜かれ6位となり、2年連続のポストシーズン進出失敗となった。
レギュラーシーズン半分近くの70試合を消化した6月までの勝率は.574だったが、地力が問われる7月以降は勝率.435と失速していた。
【投手の成績】
防御率4.84(8位) 奪三振953(7位) 被本塁打149(1位) 与四球630(3位)
[主な先発投手]
フォント 25試合 8勝5敗 防御率3.46
オ・ウォンソク 33試合 7勝6敗2ホールド 防御率5.89
イ・テヤン 40試合 5勝10敗4ホールド 防御率5.73
ガビグリオ 15試合 6勝4敗 防御率5.86
チョ・ヨンウ 30試合 4勝8敗1ホールド 防御率5.67
チェ・ミンジュン 38試合 3勝3敗4ホールド 防御率5.86
先発のチーム防御率(5.22)は10チーム中10位と、ポストシーズン進出を逃した大きな要因となった。韓国1年目の外国人選手フォントがチーム最多の8勝を記録したが、何と言っても2020年に13勝を記録したパク・チョンフン、6勝を記録したムン・スンウォンの離脱が響いた。リリーフだったイ・テヤンを先発に転向させるなどしたが、状況の大きな改善に至らなかった。一方で高卒2年目の20歳の左腕オ・ウォンソクがプロ初勝利を含む7勝を記録、将来のエース候補として成長を見せた。高卒4年目の22歳の右腕チェ・ミンジュンも8月以降に先発として起用され経験を積んだ。
故障でウェーバー公示となったルウィキの代役の外国人選手ガビグリオは7月以降の登板だけで6勝を記録したが、防御率が高く結果を残したとは言えなかった。
[主なリリーフ投手]
キム・テフン 65試合 2勝4敗1セーブ16ホールド 防御率4.97
ソ・ジニョン 65試合 7勝5敗9セーブ3ホールド 防御率3.34
チャン・ジフン 59試合 2勝5敗1セーブ10ホールド 防御率3.92
キム・テッキョン 59試合 5勝1敗7セーブ4ホールド 防御率2.39
キム・サンス 50試合 4勝3敗6セーブ5ホールド 防御率5.09
パク・ミンホ 40試合 4勝0敗5ホールド 防御率3.73
リリーフの防御率(4.42)は10チーム中4位だったが、抑えの切り札を欠いた。開幕当初の4月はFA選手としてキウムから移籍したキム・サンスが抑えを任されたが振るわず、次に右腕ソ・ジニョン、シーズン終盤はキム・テッキョンが抑えとなった。中継ぎでは左腕キム・テフンがチーム最多タイの登板となった。若手では23歳の大卒新人チャン・ジフンが中継ぎで60試合に登板し欠かせない存在となった。
【野手の成績】
打率.261(5位) 本塁打185(1位) 得点755(1位) 盗塁100(4位) 失策102(6位)
捕手:イ・ジェウォン 107試合 打率.280 3本塁打 30打点 0盗塁
一塁:ロマック 107試合 打率.225 20本塁打 52打点 1盗塁
二塁:チェ・ジュファン 116試合 打率.256 18本塁打 67打点 2盗塁
三塁:チェ・ジョン 134試合 打率.278 35本塁打 100打点 8盗塁
遊撃:パク・ソンハン 135試合 打率.302 4本塁打 44打点 12盗塁
左翼:ハン・ユソム 135試合 打率.278 31本塁打 95打点 1盗塁
中堅:チェ・ジフン 136試合 打率.262 5本塁打 45打点 26盗塁
右翼:チュ・シンス 137試合 打率.265 21本塁打 69打点 25盗塁
指名:オ・テゴン 122試合 打率.268 9本塁打 35打点 9盗塁
控え:イ・フンニョン、イ・ヒョンソク、キム・ソンヒョン、チェ・ハン、キム・ガンミン、イ・ジョンボムなど
チーム本塁打、得点は10チーム中1位と打線は破壊力があった。最も注目されたチュ・シンスは39歳という年齢を感じさせず21本塁打、25盗塁と活躍した。またチーム最多の103四球とMLBで見せた選球眼の良さも相変わらずだった。新戦力のチェ・ジュファンも18本塁打と結果を残した。SK時代からの4番打者チェ・ジョンは右打者としてはプロ野球史上初の個人通算400本塁打を達成し、4年ぶり3度目の本塁打王の個人タイトルを受賞するなど存在感は相変わらずだった。左の長距離打者ハン・ユソムも31本塁打を記録し復活を遂げた。SK時代の2017年5月から契約している外国人選手ロマック(元横浜DeNA)は20本塁打にとどまり、36歳になった年齢による衰えが隠せなかった。
実績豊富な選手に加えて大卒2年目の24歳のチェ・ジフン、高卒5年目の23歳のパク・ソンハンがレギュラーとして活躍するなど若手の台頭も見られた。しかし攻撃陣に比べて投手陣が弱くリードを守れず、大味な試合が続き優勝争いから遠ざかり6位に終わった。
【オフシーズンの動向】
世代交代がある程度うまくいった影響か、オフシーズンは比較的静かだった。2022年のFA選手はいなかったが、投手ではパク・チョンフンとムン・スンウォン、野手ではハン・ユソムと計3名の選手と2022年から5年契約を結び、戦力の流出を防いだ。補強としてはロッテから自由契約となった右腕ノ・ギョンウン、LGから自由契約となった左腕コ・ヒョジュンの30代後半のベテラン2名と契約し、課題の投手陣の層を厚くした。
外国人選手の動向だが、まず2018年の韓国シリーズ優勝にも貢献したロマックが現役を引退した。先発投手陣の中心的役割を担ったフォントとは再契約したが、内容が悪かったガビグリオとは再契約しなかった。代わりに新外国人選手としてケビン・クロン内野手(元広島)、MLB通算90勝のイバン・ノバ投手と契約した。
新生SSGランダースの1年目として注目された2021年は6位に終わるも、チュ・シンスなどの補強がうまくいき、投打ともに若手の台頭も見られ困難が続くプロ野球界に明るい兆しをもたらした。SSGにとって2年目、キム・ウォンヒョン監督にとっても2年目となる2022年シーズンは3年ぶりのポストシーズン進出が目標となる。前身のSKワイバーンスと比べて遜色のないチームに成長できるか、今後を左右する重要な1年となるであろう。
(文責:ふるりん)