DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2023年シーズン回顧 第2回 KTウィズ

2年ぶりの韓国シリーズ出場

2023年シーズン成績 

レギュラーシーズン:79勝62敗3分(勝率.560)2位

ポストシーズン韓国シリーズ準優勝 対LG(1勝4敗)

 

 2022年、3年連続でポストシーズンに進出するも準プレーオフで敗退、韓国シリーズ2連覇はならかったKTウィズ。オフシーズンにはサムソンライオンズで10年以上内野の主力として活躍したFA選手のキム・サンスと契約し、戦力補強に務めた。投打ともに経験豊富な選手がそろい、2023年シーズン開幕前は優勝候補の一角とみなされていた。

 しかし4月1日の開幕後は思うように勝てず、4月20日から30日まで引き分け1つを挟み9連敗、9位に停滞した。5月2日のSSGランダース戦で13日ぶりの勝利をあげるも、翌3日から11日のNCダイノス戦まで雨天中止を2日挟んで6連敗、最下位に沈んでいた。5月18日のLGツインス戦で敗れた時点で10勝24敗と大きく負け越し、手薄な内野手を補強するためロッテとのトレードでリリーフ左腕シム・ジェミンを交換要員にイ・ホヨンを獲得した。

 5月27日のサムソン戦までシーズン初の4連勝となったが依然最下位で、6月2日のトゥサンベアース戦までまたもや4連敗となってしまった。しかし翌6月3日のトゥサン戦から9日のキウムヒーローズ戦までシーズン初の6連勝、最下位を脱出し8位にまで浮上した。またこの日、新外国人選手として期待されながら1勝7敗と負け越していたサルサーをウェーバー公示し、2022年5月に自由契約選手となった外国人選手クエバスと契約し復帰させ、反撃の切り札とした。6月23日のキアタイガーズ戦でクエバスは復帰後初勝利を記録、KTも4連勝で7位に浮上した。7月5日のLG戦まで4連勝するも、翌7月6日から9日のキア戦まで4連敗で8位に後退と波が大きかった。しかしオールスター戦前後1週間の中断期間を挟んで7月21日のサムソン戦まで4連勝し6位に浮上すると、快進撃が始まった。

 ロッテを抜いて5位に浮上すると7月29日のNC戦で勝利し、ついに43勝43敗2分けの勝率5割に戻した。クエバスは好投を続け自身の連勝を重ね、8月4日のトゥサン戦でシーズン最多の7連勝となり3位にまで浮上した。SSG、NC、トゥサンなどとの混戦の上位争いの中、8月17日のトゥサン戦まで5連勝、8月19日のハンファ戦で勝利しついに2位にまで浮上した。

 8月は19勝4敗と好調を維持し、8月31日には勝率を.573まで上げたが首位LGとのゲーム差は4.5と決して小さくなかった。そして9月5日のLGとの直接対決に敗れ4連敗、7日のLG戦にも敗れゲーム差は6.5にまで広がり、NCなど3位以下のチームとの差を縮められたが何とか2位を維持した。しかし9月27日、LGとの直接対決のダブルヘッダーで連敗しゲーム差は8.5まで広がった。そして10月3日、2位KTがキア、3位NCがSSGに敗れたことで試合のなかったLGのレギュラーシーズン優勝が確定した。

 中国・杭州でのアジア競技大会野球にはカン・ベッコとパク・ヨンヒョンの2名が韓国代表として出場、10月7日の決勝戦で台湾代表に勝利し優勝、2名ともに兵役免除の恩典を得た。そしてレギュラーシーズン最終戦の10月10日、トゥサン戦に勝利し2位が確定、4年連続出場のポストシーズンプレーオフからの出場となった。しかしカン・ベッコが練習試合での負傷でプレーオフに出場できなくなった。

 10月30日からのプレーオフでは、SSGとの準プレーオフを3連勝の3試合で終わらせたNCと対決した。水原での第1戦は先発クエバスが先制され3回4失点で降板、その後も追加点を奪われ9回裏にペ・ジョンデの満塁本塁打で4点を返すも5-9で敗れた。10月31日の第2戦は先発ベンジャミンが5回3失点で降板、打線もあと1点が取れず2-3で敗れた。11月2日、敗れたら敗退となる遠征先の昌原での第3戦では2回表にペ・ジョンデの本塁打で2点を先制、先発コ・ヨンピョは6回無失点の好投で3-0とプレーオフ初勝利をあげた。

 11月3日、昌原での第4戦は打線が爆発し4回表まで8得点、先発クエバスが6回無失点と好投、11-2で勝利し決着は本拠地・水原での第5戦に持ち越された。11月5日の第5戦では5回表に2点を先制されたが、5回裏にキム・ミンヒョクの2点タイムリーで同点に追いつき、6回裏に併殺打の間に1点を勝ち越すとソン・ドンヒョン、パク・ヨンヒョン、キム・ジェユンの継投で守り切り3-2で勝利、第3戦以降の3連勝で対戦成績を3勝2敗とし、初優勝の2021年以来2年ぶりに韓国シリーズへと進出した。

 11月7日、遠征先の蚕室での韓国シリーズ第1戦ではプレーオフでの勢いがまだ残っていた。KTは4回表にチャン・ソンウのタイムリーで2-2の同点に追いつくと、9回表にムン・サンチョルのタイムリーで3-2と勝ち越し勝利した。翌11月8日の蚕室での第2戦は1回表にチャン・ソンウのタイムリーなどで4点を先制するが追加点を奪えず、7回裏に1点差まで詰められると、8回裏にパク・ヨンヒョンがオ・ジファンに逆転の2点本塁打を打たれ4-5と敗れた。

 本拠地水原での11月10日の第3戦では、8回裏にファン・ジェギュンのタイムリー、パク・ピョンホの本塁打で7-5と一度逆転するも、9回表にキム・ジェユンがオ・ジファンに2試合連続で逆転の3点本塁打を打たれ、7-8で敗れた。翌11月11日の水原での第4戦では先発オム・サンベクが5回途中3失点で降板すると4-15で敗れた。蚕室での11月13日の第5戦では先発コ・ヨンピョが3回裏に3点を先制されると2-6で敗れ、4連敗で対戦成績は1勝4敗となり、2年ぶりの韓国シリーズ優勝はならなかった。

 

 

【投手の成績】

防御率3.94(4位) 奪三振968(8位) 被本塁打83(8位) 与四球413(10位)

[主な先発投手]

コ・ヨンピョ    28試合 12勝7敗 防御率2.78

ベンジャミン    29試合 15勝6敗 防御率3.54

エバス      18試合 12勝0敗 防御率2.60

オム・サンベク   20試合 7勝6敗 防御率3.63

ペ・ジェソン    26試合 8勝10敗 防御率4.49

 先発投手の防御率3.87は10チーム中4位だった。サイドハンド右腕のコ・ヨンピョは3年連続で10勝以上と先発の柱として活躍した。韓国2年目の外国人選手で左腕ベンジャミンがチーム最多の15勝を記録、6月から復帰したクエバスは12勝負けなしで7月以降の上位争いで大きな役割を果たした。2022年に先発で13勝を記録した22歳のソ・ヒョンジュンは不調で未勝利に終わるなど、コ・ヨンピョ以外で信頼できる韓国人の先発投手が不足していた。

 

[主なリリーフ投手]

パク・ヨンヒョン   68試合 3勝3敗4セーブ32ホールド 防御率2.75

ソン・ドンヒョン   64試合 8勝5敗1セーブ15ホールド 防御率3.42

キム・ジェユン    59試合 5勝5敗32セーブ   防御率2.60

チュ・グォン     42試合 1勝2敗5ホールド 防御率4.40

イ・サンドン     36試合 4勝1敗1ホールド 防御率3.98

 リリーフの防御率は4.08で10チーム中4位だった。特に20歳のパク・ヨンヒョンと、22歳のソン・ドンヒョンの若手右腕2名がリリーフの柱として活躍した。抑えのキム・ジェユンは9月以降に安定を書いたがチーム最多の32セーブを記録した。先発、リリーフともに左腕不足だった。

 

【野手の成績】

打率.265(4位) 本塁打89(7位) 得点672(4位) 盗塁87(8位)  失策99(10位)

捕手:チャン・ソンウ   131試合 打率.288 11本塁打 65打点 1盗塁

一塁:パク・ピョンホ   132試合   打率.283  18本塁打 87打点 2盗塁

二塁:イ・ホヨン        85試合  打率.278 3本塁打 14打点 4盗塁

三塁:ファン・ジェギュン 109試合 打率.295 6本塁打 49打点 3盗塁

遊撃:キム・サンス       129試合 打率.271 3本塁打    56打点   5盗塁

左翼:アルフォード    133試合 打率.289 15本塁打  70打点 17盗塁

中堅:ペ・ジョンデ    97試合 打率.277 2本塁打  38打点 13盗塁

右翼:キム・ミンヒョク  113試合 打率.297 3本塁打  41打点 11盗塁

指名:カン・ベッコ    71試合 打率.265 8本塁打 39打点 3盗塁

控え:キム・ジュンテ、カン・ヒョヌ、パク・キョンス、ムン・サンチョル、オ・ユンソク、チャン・ジュヌォン、ソン・ミンソプ、チョ・ヨンホなど

 打線の中軸、4番打者を任されたのは37歳のパク・ピョンホだった。2年目の外国人選手アルフォードはチーム最多盗塁数も打撃面でやや物足りなさを残した。主力打者として期待されたカン・ベッコが不調や故障で数字を残せない中、その代役としてムン・サンチョルが9本塁打、46打点と存在感を示した。サムソンから移籍したキム・サンスは内野の要の遊撃手として攻守に活躍し、期待に応えた。

 圧倒的な成績を残した選手は少なく、打線や打順は日替わりとなる傾向があった。特に二塁手は固定されず、39歳のベテランのパク・キョンス以外にも5月にトレードでロッテから移籍したイ・ホヨン、オ・ユンソクなどとの併用となった。

 

【オフシーズンの動向】

 2024年のFA選手となった2名のリリーフのうち、2016年から抑えを任されていたキム・ジェユンはサムソンへと移籍し、補償選手としては右腕のムン・ヨンイクが指名された。もう1名のFA選手、チュ・グォンはKTと再契約した。2019年以来4年ぶりに復活した余剰戦力を対象とする2次ドラフトでは、サムソンから39歳となるサイドハンドのリリーフ右腕ウ・ギュミンを指名した。

 外国人選手ではクエバス、ベンジャミンと2名の投手とは再契約したが、アルフォードとは再契約しなかった。その代わり2020年まで主力打者として活躍しシーズンMVP(最優秀選手)に選ばれたメル・ロハス・ジュニア(元阪神)と契約した。

 

 2023年は5月まで出遅れたがシーズン後半の7月以降に巻き返し、4年連続ポストシーズン進出、2年ぶりの韓国シリーズ出場を果たすなど総合力の高さを示した。しかし若手の台頭はあまりなく、1999年生まれのカン・ベッコを除いて主力野手が高齢化しているため、世代交代が必要となってくるが、先を見据えた補強は見られない。2019年に就任し、2024年で6年目となるイ・ガンチョルはプロ野球10チームの監督で最も長い6年目に入る。様々な課題をどう乗り越え優勝争いに加わるチーム力を維持していくのか、注目が集まる。

 

(文責:ふるりん)`