DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2023年シーズン回顧 第1回 LGツインス

29年ぶりの韓国シリーズ優勝

 

2023年シーズン成績 

レギュラーシーズン:86勝56敗2分(勝率.606)1位

ポストシーズン韓国シリーズ優勝(対KT)4勝1敗

 

 2022年、LGツインスはレギュラーシーズン2位で進出したポストシーズンプレーオフから出場するもキウムヒーローズに敗れ、この責任を取る形でリュ・ジヒョン監督は退任、ネクセン(現キウム)、SK(現SSG)で監督経験のあるヨム・ギョンヨプ監督が就任した。オフシーズンには正捕手のユ・ガンナムがFA(フリーエージェント)となりロッテジャイアンツへ移籍したが、キアタイガーズからFAとなっていた強打の捕手パク・トンウォンと契約し戦力ダウンを防いだ。

 開幕前の3月、WBCワールドベースボールクラシック)に韓国代表として出場した抑えのコ・ウソクが故障で間に合わないなどの不安材料があり、4月1日のレギュラーシーズン開幕戦はKTウィズに敗れたが、その後は順調に勝利を積み重ねた。新戦力のパク・トンウォン、新外国人野手オースティンが期待に応え新たな打線の軸となった。コ・ウソクは4月後半に復帰したが、調子が上がらず抑えはキム・ジンソン、ハム・トクチュなどの日替わりが続いた。2022年韓国シリーズ優勝のSSGランダース、好調のロッテジャイアンツとの上位争いが続き、5月23日のSSG戦まで引き分け1つを挟んでの5連勝で単独首位に立った。

 6月2日から10日まで2度の3連敗がありSSGが首位に立ったが、6月11日のハンファイーグルス戦から16日のトゥサンベアース戦まで5連勝、再び首位に立った。いったん2位に後退したが6月27,28日にSSGとの直接対決に勝利し首位に返り咲くと、6月30日のキアタイガーズ戦まで5連勝となった。開幕前は弱点と指摘された二塁手に27歳のシン・ミンジェが定着し、走攻守に大きな存在感を示し、チームの勢いを象徴していた。

 7月は雨天中止が続いたが首位は維持し、1994年以来29年ぶりとなるレギュラーシーズン優勝に向けて勝負の後半戦に入った。7月26日のKTウィズ戦まで4連敗となり、2位SSGとは0.5ゲーム差となった。7月29日、22歳の期待の若手野手イ・ジュヒョンと2024年新人ドラフト1巡目指名権を交換要員に、キウムで先発投手として活躍していたチェ・ウォンテをトレードで補強し、是が非でも優勝しようとする姿勢を見せた。リリーフ陣は充実していたが、ケリー、プルトコの両外国人選手とイム・チャンギュ以外の先発投手陣に不安があった。こうして8月3日のキウム戦まで7連勝となり、2位SSGと5.5ゲーム差をつけ首位独走態勢に入った。さらに8月13日のキウム戦まで5連勝となった。その後は雨天中止も多く足踏みとなった。

 徐々にレギュラーシーズンの終わりが見えてくるとレギュラーシーズン優勝、2002年以来21年ぶりとなる韓国シリーズ進出が現実味を帯びてきた。7月までは不調だった韓国5年目のケリーが復活し、9月23日のSSG戦まで6連勝、9月27日のKTとのダブルヘッダー2連戦まで4連勝と一気に優勝へと近づいた。

 9月30日のトゥサン戦まで3連敗と足踏みしたが、試合がなかった10月3日、2位KTと3位NCダイノスがともに敗れたためLGのレギュラーシーズン優勝が確定した。翌10月4日、社稷への遠征先のロッテ戦で勝利し、優勝を祝った。この頃コ・ウソク、チョン・ウヨン、ムン・ボギョンが中国・杭州でのアジア競技大会に韓国代表として出場、10月7日の台湾代表との決勝戦で勝利し優勝、軍へ入隊していなかったチョン・ウヨンとムン・ボギョンは兵役免除の恩典を受けた。

 10月15日のトゥサン戦に勝利、試合終了後にレギュラーシーズン優勝トロフィーが授与され全日程を終えたLGは、韓国シリーズまで3週間以上試合がなく調整に務めた。11月7日からの韓国シリーズの対戦相手は、NCとのプレーオフに勝利したKTとなった。先発として活躍していた外国人投手プルトコが故障でアメリカ合衆国に帰国し出場できないなどの不安を抱える中、LGにとって21年ぶりの韓国シリーズとなった本拠地・蚕室での第1戦が始まった。先発ケリーが7回途中までを2失点に抑えるも打線が援護できず、9回表にコ・ウソクが1点を勝ち越され同点に追いつけず、2-3で敗れてしまった。

 そして11月8日の蚕室での第2戦、LGは1回表に先発チェ・ウォンテが4失点で降板と苦しい展開となったがリリーフ陣が追加点を与えず、打線は3回裏、6回裏、7回裏に1点ずつを返していった。そして8回裏にパク・トンウォンの2点本塁打で5-4と逆転、コ・ウソクが9回表を無失点に抑え韓国シリーズで21年ぶりの勝利を記録した。11月10日、遠征先の水原での第3戦は点の取り合いとなり、LGは6回表にパク・トンウォンの2試合連続本塁打で5-4と逆転するも、8回裏にコ・ウソクが3点を失い5-7と逆転された。しかし9回表にオ・ジファンの本塁打で8-7と逆転、イ・ジョンヨンが9回裏のピンチを抑え韓国シリーズ2勝目をあげた。

 11月11日、水原での第4戦では1回表にキム・ヒョンスの本塁打で2点を先制すると追加点をあげ、レギュラーシーズンではあまり活躍できなかった23歳の左腕キム・ユンシクが先発で6回途中1失点と好投、7回表のオ・ジファンの3試合連続本塁打などの7点などで15-4と勝利、3勝目をあげ29年ぶりの韓国シリーズ優勝まであと1勝とした。蚕室に戻った11月13日の第5戦では3回裏にパク・ヘミンのタイムリーなどで3点を先制し、5回裏と6回裏に追加点を奪い6-2で勝利、4連勝で対戦成績を4勝1敗とし、29年ぶり3度目の韓国シリーズ優勝を成し遂げた。韓国シリーズMVPには3本塁打8打点と活躍した33歳の生え抜きの内野手オ・ジファンが選ばれた。

 

【投手の成績】

防御率3.67(1位) 奪三振977(6位) 被本塁打74(10位) 与四球491(8位)

[主な先発投手]

イム・チャンギュ  30試合 14勝3敗 防御率3.42

ケリー       30試合 10勝7敗 防御率3.83

プルトコ      28試合 11勝3敗 防御率2.43

チェ・ウォンテ      26試合 9勝7敗 防御率3.42

イ・ジョンヨン   37試合 7勝2敗3セーブ1ホールド 防御率4.15

キム・ユンシク   17試合 6勝4敗 防御率4.22

 

 先発の防御率(3.92)は10チーム中5位だった。チーム最多勝は31歳のイム・チャンギュで、自己最多の14勝で韓国人選手としては最多投球回数(144回と3分の2)を記録した。チーム最多投球回数(178回と3分の2)を記録した韓国5年目の外国人投手ケリーは、レギュラーシーズン終盤や韓国シリーズで好投し前半戦の不振から立ち直った。7月にトレードで移籍したチェ・ウォンテは、LGで登板した試合の防御率が6点台と振るわなかった。その代わり、余裕のあったリリーフ陣から転向した右腕イ・ジョンヨンが先発投手陣の救世主となった。

 

[主なリリーフ投手]

キム・ジンソン   80試合 5勝1敗4セーブ21ホールド 防御率2.18

ユ・ヨンチャン   67試合 6勝3敗1セーブ12ホールド 防御率3.44

チョン・ウヨン   60試合 5勝6敗11ホールド 防御率4.70

パク・ミョングン  57試合 4勝3敗5セーブ9ホールド 防御率5.08

ハム・トクチュ   57試合 4勝4セーブ16ホールド 防御率1.62

チェ・ドンファン  45試合 0勝0敗1セーブ1ホールド 防御率3.19

コ・ウソク     44試合 3勝8敗15セーブ 防御率3.68

ペク・スンヒョン  42試合 2勝3敗11ホールド 防御率1.58

 

 リリーフの防御率(3.41)は10チーム中1位だった。特に38歳ながらチーム最多の80試合に登板、中継ぎだけでなく抑えでも登板したキム・ジンソンの働きが大きかった。2022年までリリーフの中心だったチョン・ウヨン、コ・ウソクが不調だったが、高卒新人パク・ミョングン、27歳で一軍初登板を果たしたユ・ヨンチャンの起用で補った。手薄な左腕のリリーフではハム・トクチュが中心となった。

 

 

【野手の成績】

打率.279(1位) 本塁打93(6位) 得点767(1位) 盗塁166(1位)  失策128(2位)

捕手:パク・トンウォン  130試合 打率.249 20本塁打 75打点 0盗塁

一塁:オースティン    139試合   打率.313 23本塁打 95打点 7盗塁

二塁:シン・ミンジェ   122試合 打率.277 0本塁打  28打点 37盗塁

三塁:ムン・ボギョン   131試合 打率.301 10本塁打 72打点 9盗塁

遊撃:オ・ジファン    126試合 打率.268 8本塁打  62打点   16盗塁

左翼:ムン・ソンジュ      136試合 打率.294 2本塁打 57打点 24盗塁

中堅:パク・ヘミン    144試合 打率.285 6本塁打 59打点 26盗塁

右翼:ホン・チャンギ   141試合 打率.332 1本塁打   65打点 23盗塁

指名:キム・ヒョンス      133試合 打率.293 6本塁打 88打点 2盗塁

控え:ホ・ドファン、ソ・ゴンチャン、キム・ミンソン、チョン・ジュヒョン、チェ・スンミン、イ・ジェウォンなど

 打率、得点、盗塁が10チーム中1位と攻撃力が高かった。特に4番打者としてチーム最多の23本塁打、95打点を記録したオースティンは、2021年、2022年と続いた頼れず外国人野手の不在を解消し、優勝に大きく貢献した。またキアから移籍したパク・トンウォンも20本塁打と活躍した。

 チーム最高打率(.332)で出塁率(.444)が高いホン・チャンギ、パク・ヘミンの上位打線が出塁しムン・ボギョン、オースティン、キム・ヒョンス、パク・トンウォン、オ・ジファンなどの中軸が返すというパターンが確立されていた。また主に下位打線に配置されたムン・ソンジュ、シン・ミンジェも盗塁数が多く、上位打線へつなげる役割を果たし切れ目がなかった。総じて主力選手が不動だったため控えの選手層は厚くはなく、若手の起用も場面が限定的だった。その中で35歳のベテランのユーティリティー内野手キム・ミンソンが112試合に出場し、存在感を発揮した。

 

【オフシーズンの動向】

 抑えとして韓国シリーズ優勝に貢献したコ・ウソクがポスティングによるMLB移籍を要請し、サンディエゴパドレスと契約した。2023年は一軍で19試合の登板にとどまった37歳のリリーフ左腕チン・ヘスが新人ドラフトの指名権とのトレードでロッテへ移籍した。2024年のFA選手となったイム・チャンギュ、ハム・トクチュ、オ・ジファンとは再契約したが、キム・ミンソンはサインアンドトレードでロッテへと移籍し、交換要員として同じ右打ちの内野手キム・ミンスが移籍してきた。またソ・ゴンチャン、ソン・ウンボムと実績のある選手たちが自由契約となった。

 外国人選手についてはケリー、オースティンの2名とは再契約したがプルトコとは再契約せず、新外国人選手ディートリック・エンス投手(元埼玉西武)と契約した。

 

 ようやく期待に応え、29年ぶりの韓国シリーズ優勝を果たしたLGツインス。2024年にはチーム初の韓国シリーズ連覇の期待がかかる。抑えのコ・ウソクがMLBに挑戦することになり、代わりとなる積極的な補強もなかったが、投打ともに連覇を狙える十分な戦力がそろっている。1990年、1994年と2度の韓国シリーズ優勝を果たした黄金時代を30年ぶりに再現できるか、ヨム・ギョンヨプ監督の手腕に注目が集まる。

 

 

(文責:ふるりん