DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2022年シーズン回顧 第6回 NCダイノス

巻き返しに失敗、チームは過渡期へ

2022年シーズン成績 

レギュラーシーズン:67勝74敗3分(勝率.475)6位

ポストシーズン:出場せず

 

 韓国シリーズ初優勝の2020年から一転、一部の選手の不祥事により2021年は7位と低迷したNCダイノス。オフシーズンに2013年の一軍本格的参入から主力として活躍していたナ・ソンボムがFA(フリーエージェント)でキアタイガーズへ移籍してしまい、補強としてFAとなっていたロッテの主力打者で個人通算2000安打を記録したソン・アソプ、トゥサンの主力打者として活躍し韓国シリーズ優勝経験もあるパク・コヌと2名の実績ある外野手を補強し穴を埋めようとした。そのため開幕前の評価は高かったが、残念ながら現実は違った。

 4月2日の本拠地昌原でのレギュラーシーズン開幕戦はSSGランダースの先発フォントに9回裏までの27人が一人も出塁できず完璧に抑えられ、韓国4年目の外国人選手ルチンスキーの7回無失点の好投も報われず、延長10回表に4点を勝ち越され10回裏も無安打無得点でまさかの継投ノーヒットノーランで敗れた。その後開幕3連敗で、4月6日、新戦力パク・コヌなどの活躍によりロッテジャイアンツ戦で5-0と完封で初勝利をあげるも、4月9日のLGツインス戦から4月14日のキウムヒーローズ戦まで5連敗となった。その後も勝率5割から遠ざかっていき、首位を独走するSSGとは大きな差がついてしまった。

 開幕から1か月が過ぎた5月3日の時点で9勝18敗の最下位に低迷していた。そして5月4日のサムソンライオンズ戦から5月10日のロッテ戦まで6連敗となると、翌5月11日のロッテ戦を前に2020年韓国シリーズ優勝監督のイ・ドンウク監督は更迭され、カン・イングォン監督代行が就任した。結局この日も敗れ7連敗となり9勝25敗と大きく負け越した最下位だったが、9位のハンファと大差がないのが幸いだった。5月12日のロッテ戦でようやくカン・イングォン監督代行に初勝利がもたらされるも低迷は続いた。ソン・アソプ、パク・コヌの新戦力は自身の役割を全うしていたが、長打力があり打線を稼げるナ・ソンボムの代わりになることはなかった。また2年目の外国人選手パーソンズが故障で離脱していた。

 2020年の韓国シリーズ優勝に貢献するも、故障で2021年は登板のなかった左腕の先発投手ク・チャンモが5月28日のトゥサンベアース戦で復帰、5-0と勝利し2020年7月以来の勝利投手となった。こうして先発投手陣の柱が復帰すると勢いがつき、6月10日のサムソン戦でのク・チャンモの3勝目で最下位から脱出し9位に浮上した。6月下旬は雨天中止が多く停滞気味で、7月7日のハンファ戦から7月12日のトゥサン戦まで5連敗となった。

 オールスター戦による中断期間が終わった7月28日、ク・チャンモの好投でキアタイガーズに勝利しサムソンを抜いて8位に浮上し勝率も4割台に戻していた。8月7日のロッテ戦ではこの試合でプロ初勝利をあげた21歳の先発キム・テギョンの好投などで11-0と勝利し、ロッテを抜いて7位に浮上した。8月10日には故障が長引き自由契約選手となったパーソンズの代役となる外国人選手ダーモディ(元埼玉西武)と契約し、さらなる浮上を図った。

 勝率も4割台半ばに上がり、8月20日には6位に浮上した。その後7位に後退したが9月11日のロッテ戦でノ・ジンヒョクなどの活躍により6連勝、6位に浮上した。さらに5位のキアが不調で差が縮まり、9月21日にはわずか0.5ゲーム差とNCにも5位浮上の可能性が見えてきた。しかし9月22日から9月24日までの直接対決3連戦で1勝2敗と負け越してしまった。

 キアとの5位争いは最後まで続いた。10月1日のLG戦から6日のSSGまで4連勝し希望をつないだが、10月7日のLG戦で敗れてしまい6位が確定し、2年連続でポストシーズン進出に失敗した。10月10日の昌原でのシーズン最終戦となったKT戦も敗れ、2019年の完成以降ポストシーズンが一度も開催されていない昌原NCパークには秋風が吹いていた(2020年の韓国シリーズは気温が低くなる11月後半の開催だったため室内の高尺スカイドームでの開催だった)。カン・イングォン監督代行就任以降は58勝50敗3分けと勝ち越していただけに、序盤の出遅れが惜しまれた。

 

【投手の成績】

防御率3.91(5位) 奪三振1168(2位) 被本塁打111(6位) 与四球515(4位)

[主な先発投手]

ルチンスキー    31試合 10勝12敗 防御率2.97

ク・チャンモ    19試合 11勝5敗 防御率2.10

シン・ミンヒョク  26試合 4勝9敗 防御率4.56

ソン・ミョンギ     22試合 5勝7敗  防御率4.51

イ・ジェハク      17試合  3勝8敗 防御率4.75

キム・テギョン   16試合 3勝2敗1ホールド 防御率3.25

ダーモディ     8試合 3勝5敗 防御率4.54

 先発の防御率(3.67)は10チーム中5位だった。韓国4年目の外国人選手ルチンスキーは3年連続10勝以上を記録したが、打線の援護に恵まれない試合も目立った。2020年の韓国シリーズ優勝に貢献した左腕のク・チャンモが復活し、自身最多の11勝を記録した。その他に安定した投球を続けた韓国人の先発投手がいなかったのが惜しまれる。その中では21歳のキム・テギョンが成長の可能性を感じさせた。

 故障によりわずか1勝で自由契約選手となったパーソンズの代役となったダーモディは3勝で安定感を欠いた。ポストシーズン進出のためにはルチンスキー、ク・チャンモに続くもう1枚の強固な先発投手が欠けていた。

 

[主なリリーフ投手]

キム・ヨンギュ    72試合 2勝7敗1セーブ13ホールド 防御率3.41

ウォン・ジョンヒョン 68試合 5勝1敗13ホールド  防御率2.98

イ・ヨンチャン    59試合 3勝3敗22セーブ 防御率2.08

キム・シフン     59試合 4勝5敗11ホールド 防御率3.24

リュ・ジヌク     51試合 4勝2敗4ホールド 防御率4.86

ハ・ジュニョン    47試合 3勝4ホールド 防御率4.62

キム・ジンホ     36試合 4勝1セーブ 防御率6.12

イム・ジョンホ    33試合 1勝2敗6ホールド 防御率3.24

 リリーフの防御率(4.24)で10チーム中3位だった。22歳の左腕キム・ヨンギュが中継ぎの柱となりチーム最多の72試合に登板した。右の中継ぎの柱は35歳のサイドハンド、ウォン・ジョンヒョンだった。抑えは2021年と同じくイ・ヨンチャンが任された。キム・ジンホは先発でも中継ぎでも活躍した。ナ・ソンボムの補償選手としてキアから移籍したハ・ジュニョンは左の中継ぎとして2019年以来の勝利を記録し復活を遂げた。

 

【野手の成績】

打率.257(5位) 本塁打105(6位) 得点646(5位) 盗塁100(3位) 失策127(2位)

捕手:ヤン・ウィジ    130試合 打率.283 20本塁打 94打点 3盗塁

一塁:オ・ヨンス     83試合   打率.238 6本塁打 31打点 0盗塁

二塁:パク・ミヌ     104試合 打率.267 4本塁打 38打点 21盗塁

三塁:ノ・ジンヒョク   115試合 打率.280 15本塁打 75打点 2盗塁

遊撃:キム・ジュウォン     96試合 打率.227 10本塁打   47打点   10盗塁

左翼:マティーニ     139試合 打率.300 16本塁打 85打点 4盗塁

中堅:パク・コヌ     111試合 打率.336 10本塁打  61打点 3盗塁

右翼:ソン・アソプ    138試合 打率.277 4本塁打 48打点 6盗塁

指名:イ・ミョンギ    94試合 打率.257 0本塁打 23打点 5盗塁

控え:パク・テオン、ユン・ヒョンジュン、ソ・ホチョル、ト・テフン、パク・チュニョン、クォン・ヒィドンなど

 打線の軸は正捕手のヤン・ウィジで、チーム最多の本塁打、打点を記録した。FAで移籍したパク・コヌは故障で離脱した時期が長く、ソン・アソプはロッテ時代ほどの打率を残せずチームの浮上に貢献したとは言えなかった。韓国1年目の外国人選手マティーニは安定した成績を残した。チームの生え抜きではパク・ミヌ、ノ・ジンヒョクの内野二人が攻守ともに大きな働きを見せた。

 若手では20歳のキム・ジュウォンが遊撃手として10本塁打、10盗塁を記録して大型内野手に成長する可能性を見せた。レギュラー選手は上位チームに見劣りしないが、控えの選手の層が薄かった。

 

【オフシーズンの動向】

  まずレギュラーシーズン終了後すぐにカン・イングォン監督代行が正式な監督に就任した。FAとなった選手は10チーム中最多の7名と多く、そのうちウォン・ジョンヒョンはキウムへ、ヤン・ウィジは古巣のトゥサンへ、ノ・ジンヒョクはロッテへと移籍した。またイ・ジェハクとパク・ミヌは再契約を結んだ。ヤン・ウィジの補償選手はチョン・チャンミン投手、ノ・ジンヒョクの補償選手はアン・ジュンヨル捕手が指名された(35歳のウォン・ジョンヒョンの移籍による補償選手は規定によりなし)。またヤン・ウィジが復帰したトゥサンからFAとなった捕手パク・セヒョクがNCと契約した。またパク・セヒョクの補償選手としては内野手パク・チュニョンが指名されトゥサンへ移籍した。FAとはならなかったが、ク・チャンモとは2029年までの最長7年の契約を結んだ。なおイ・ミョンギ、クォン・ヒィドンの2名のFA選手は2月3日時点でどの球団とも契約していない。

 ルチンスキーがMLBオークランドアスレティックスと契約、マティーニ、ダーモディとも再契約せず外国人選手は総入れ替えとなり、エリック・フェッド(フェディ)とテイラー・ワイドナーの投手2名、ジェイソン・マーティンの野手1名と合計3名の新外国人選手と契約した。

 2023 WBC韓国代表にはク・チャンモとイ・ヨンチャンの投手2名、パク・コヌの野手1名と合計3名の選手が選ばれた。

 

 カン・イングォン新監督はFAによる3名の主力選手流出、ルチンスキーのMLBへの復帰など苦しい状況からチームを再建することになった。以前は優勝候補にも挙げられるチームではあったが、過渡期に入ったと言える。2023年シーズンは残った生え抜きの選手たちを軸にしながら若手を育て、3年ぶりのポストシーズン進出、その先の2度目の韓国シリーズ優勝を目指すことになる。

 

 

(文責:ふるりん